6 / 8
『俺には主人公補正がないので、俺の物語が始まらない』
しおりを挟む「第2話 新学期初日」
春──それは出会いの季節。この桜乱れる美しい季節に人々は桜色の恋に落ちてしまう。それが、その花と同じように季節をすぎて散ってしまうかは当人次第である。
「絶対、かわいい娘と出会って青春ラブコメを始めるんだ!!そうさ俺の物語はラブコメだったんだ!!!」
思わず叫んでしまったが、俺もその出会いの季節にかける男の1人である。
周りを見るとご近所さんが口をぽかんとあけてこちらを見ていた。朝の爽やかな通学路で叫ぶような馬鹿高校生がいたら誰だってそんな反応をしてしまうだろう。
しかし、そんな事は関係ない。俺は自分の物語さえ始まればそれでいいんだ。今日は2年の新学期初日、転校生が来てもおかしくはない。俺はこの日に出会いを求めるためにたくさんの準備をしてきた。
「やべっ!急がねぇと」
主人公補正があれば確実に起こる女の子との出会い方──それは遅刻しそうで急いでいる女の子との交差点でのぶつかり!あらかたぶつかりそうな場所は把握しておいたしかもいつもより遅めに家を出て遅刻少女と出会うにはベストな時間だ!
そんなことを思っていると第一の交差点に着いた。すると、どうだろう右手側の道から走る女の子の姿が見えた。
しめた!走る速度と距離を考える限りここにたどり着くまでに5.4秒……いや5.3か。タイミングを見計らって飛び出しぶつかるだけだ。
ダッダッダッと足音が近ずいてきた
「いっけなーい、遅刻、遅刻!」
よし、今だ!思いっきり地面を左足で蹴り飛び出した。
少女は目を丸くして驚いていた……すると、彼女は加えていた食パンを天高くフリスビーの様に投げた。そして「ごめん」と小さく呟いたようにも聞こえたが、俺の肩に手を当てぐっと下に押し彼女は空へと高く舞い上がった。
俺にも何が起こったか分からなかった。踏み台(正確には踏まれてないので踏み台ではないのだが)にされて仰向けに倒れてしまった俺は、彼女が太陽と重なるくらい飛んでいたのを見ているだけだった。
彼女はそこまでする必要は無いのだが空中で1度、前に回転し宙にあったパンを咥えるとスタッ綺麗に着地した。
「ごめん、急いでるから!」
彼女はそう言い残し去っていって行った。
肩を叩き制服についた汚れを落しながらゆっくりと立ち上がった。どんどんと小さくなっていく彼女を見つめながら。
「おいおい、それは無いだろう……」
しかし、仰向けになった自分の上を彼女が飛んだことによってスカートの中を拝むことが出来た。
「白か……」
どうやら、また主人公補正は発動しなかったがラッキースケベは持ち合わせていたようだ。
ラッキースケベも主人公補正だっけ?まぁいいや。
── 『俺には主人公補正がないので、俺の物語が始まらない』第1巻 2話 「新学期初日」 遅刻少女より
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
俺の娘、チョロインじゃん!
ちゃんこ
ファンタジー
俺、そこそこイケてる男爵(32) 可愛い俺の娘はヒロイン……あれ?
乙女ゲーム? 悪役令嬢? ざまぁ? 何、この情報……?
男爵令嬢が王太子と婚約なんて、あり得なくね?
アホな俺の娘が高位貴族令息たちと仲良しこよしなんて、あり得なくね?
ざまぁされること必至じゃね?
でも、学園入学は来年だ。まだ間に合う。そうだ、隣国に移住しよう……問題ないな、うん!
「おのれぇぇ! 公爵令嬢たる我が娘を断罪するとは! 許さぬぞーっ!」
余裕ぶっこいてたら、おヒゲが素敵な公爵(41)が突進してきた!
え? え? 公爵もゲーム情報キャッチしたの? ぎゃぁぁぁ!
【ヒロインの父親】vs.【悪役令嬢の父親】の戦いが始まる?
疲れる目覚まし時計
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
朝、僕が布団の中でまどろんでいると、姉さんが起こしに来た。
まだ時間が早いから寝ようとする僕を、姉さんが起こそうとする。
その起こし方がとても特殊で……。
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本
しましまのしっぽ
恋愛
男性向け(女声)シチュエーションボイス台本です。
関西弁彼女の台本を標準語に変えたものもあります。ご了承ください
ご自由にお使いください。
イラストはノーコピーライトガールさんからお借りしました
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる