モブによるモブの為の狂想曲(カプリッチョ)

えりんこ

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物語は急激に加速して息切れをする

愛だろっ、愛

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無理やりエラルド様が私を送ってくれた その間も当然のようにアリーナは不抜けていた
彼も何も言わなかった 唯、手だけは握り締められていた。
だけ見るとあら不思議 まるでヒロインみたいじゃありませんか?
悲しいかな? アリーナは相変わらず残念なモブだった

馬車を降りる時エラルドも一緒に降りてパパ上やママ上に礼儀正しく挨拶していった
近いうちにきちんと挨拶に来ると言って爽やかに去っていった。
(ワイルドなのに爽やかって何よ!!)
シナリオが一気に崩壊しているのはどうしてでしょうか?

おまけに・・・エラルドが私の事好きだって 好きだって言ったー
(大事な事なので二回言いました)

(現在進行形らしい)

これは喜ぶべきでしょうか? 又、知恵熱が出て寝込みそうだ

おかしいな~確かに記憶が甦った時は婚約破棄は阻止しよう!とか思っていたよ?
でもエラルドに好かれているなんて思ってもいなかったから
その後のプランまったく考えてなかったんだ(えへっ)
人は此れを《行き当たりばったり》《昨日は人の身今日は我が身》って感じでしょうか?

令嬢としてはあるまじき行為だがアリーナはベットにダイブした
学園に入学してから数ヶ月・・・たった数ヶ月で激動の人生を過ごしたみたいだ。

参ったな アリーナだってエラルドの事はけして嫌いではない
むしろ好きよ 友達としてだと思うけど。顔は野生的な美丈夫、身長も高いし侯爵家・嫡男で将来は将来有望の超優良物件(なんせ未来の国王様の側近候補だ)性格だって脳筋なところはあるけど基本的に優しい。此処までエラルドの条件並べてみておよそ、悪いところが見当たらない。いや、むしろ好条件過ぎる

前世のお姉様達に紹介なぞしたら槍持って盾もって涎を垂らして何処までも追いかけて行きそう(わー想像つくな)
エラルドのキス、そして告白・・・無い頭を振り渋って色々、考えてみる。
嫌じゃなかった 突然すぎて自分のキャパ超え過ぎて倒れたけど
抱き締められた時の匂いも嫌じゃなかった。
(どうしても好きになれない香りってあるよね? パパ上の寝具なぞ絶対に触りたくも無い 匂い嗅ぐなんて持っての外だ。あれは加齢臭だな 違うか・・・)

思考が脱線している違う、そうじゃなくて本能的な匂い あれが嫌では無かった
恋・・・と呼ぶには自信がなさすぎる だって告白されてキスされて
好きになっちゃいました~なんてどこの乙女ゲームよ? あっ、ここがそうか・・・
でも残念ながら所詮、アリーナはモブだ。
毎回、お馴染みのフレーズですまないがモブなのだ。

けしてヒロインにはなれないのだ ヒロイン・・・ヒロイン?!
やばい、明日会う約束をしてたんだった!すっかり忘れてたよ ごめんよヒロイン
これ以上面倒臭い事にどうか巻き込まれませんように
この世界に転生させた神様!いるんだったらどうかお願いしますよ!

*************************

昨日は散々だった 本当だったらこのままダラダラと寝ていたい
けどヒロインとの約束の時間が迫っている・・・くっそー、こんな所にも死亡トラップがあったとは迂闊だった。
(私、ヒロインとの約束この戦いが終わったら先週、買って積んでいたままの《氷の王太子の契約レンアイ~甘いお仕置きに酔いしれて~》を読むんだ!)

フラグなんて無いさ~ フラグなんて噓さ~♪ 
だけどちょっと だけどちょっとモブだって怖いさ!

しかしこの世界にもチョッと過激な乙女小説やたらと増えたのは不思議だな~
私の願望が世界を救う?!やっぱり乙女に必要なのはイケメンとエロスなんだな~
現実逃避をしても現状は何も変わらない (仕方ない行くか・・・)

「おっ、アリーナ出かけるのか?」
ゲッ、会いたくないと出くわしてしまった 
「昨日もエラルド殿と一緒に帰ってきたんだって?お前急激に仲良くなってんな~?どんな手を使ったんだ? 我妹ながら吃驚だぜ!」
「お兄様、お下品なお言葉はおひゃめになって・・・」
「アリーナ・・・噛んでる 無理スンナ」
あっあ、兄よ休日なのに貴方は予定が無いのですね

アリーナの意味深な眼差しに気がついた兄は態と気がつかない振りをして視線を逸らした

(知っているのですよ兄者様、学園時代に良くつるんでいたお仲間のギョーム男爵3男のベンジャミン様はこの度婚約が整って兄者と遊んでくれない事も王宮の騎士に就職した子爵家5男のハワード様も王宮の侍女の恋人が出来てラブラブ真っ最中で相手にされない事も アリーナは知っておるのです。あっ、ついでに家の庭師のボブも近所のパン屋の娘さんのジーナちゃんと親密な関係だそうですわよ 皆、同じ様なモブ仲間だと言うのにどうしてこうして差がついてしまったのでしょうか?)

「兄さんさ、特別条件悪くないのに・・・・」
「出掛けるんだろうアリーナ?遅くなるなよ?ところでどこ行くんだ?」
「誤魔化さなくても良いのに。私は本屋で級友の子爵令嬢とお会いしますわ 遅くはなりません それでは行ってまいりますわ お土産は気が向いたら買ってまいりますわ 期待せずに待っててね」
顔を引き釣りながらも兄が見送ってくれた・・・・可哀想な兄ちゃん

1時少し前に待ち合わせの場所である書店に着いた
何時来ても本屋は良い、わくわくする。此方の世界には漫画もアニメもゲームも無い
だから小説を読むしかないじゃないか!!ロマンス小説の棚に吸い寄せられそうになるが
買い漁っている時間は無い でもな~見たいな~チョッとだけなら良いよね?
棚に手を伸ばした瞬間

「アリーナ様~お待ちになりました~?」
ヒロインことエレオノーラが走って此方にやってくる
アリーナは涙を飲んで棚から手を引っ込めた。

「私も今来たとこです お話があるとか?どうしますここの本屋の隣にあるカフェにでも入りますか?それとも今日は天気が良いから公園かどこかでお話します?」

エレオノーラは即答で「公園でお願いします」と言い切った
歩いて数分のわりと大きい公園に二人で入る。ここの公園は貴族街の中にあり入り口にも王宮警邏隊が駐在しており治安維持のため園内パトロールをしているのでならず者は入ってこれない、貴族の女性や子供達がくつろげる安心な場所であった。小腹が空いたらカフェだってあるのだ。

「デートで来るにはとても素敵な場所ですね」とエレオノーラがはしゃぎ出す
そうなのだ此処は定番のデートスポットだった
(私も何度も皆様とご一緒したわ~〔ゲームの中だけど〕一番、好き、嫌いの無い場所だもんね)
「ところで相談したい事って何なのかしら?」

ヒロインとマッタリお茶を飲むために休日返上で来た訳じゃないのだ
ヒロインエレオノーラは困ったような仕草をした
(うん、可愛いっちゃ可愛いけど小動物みたいだよな)
「あの~、その~アリーナ様、気になる方が出来た時ってどうすればいいのでしょうか?」

はあ~い?気になる人?気になる人って男の人?
「ハイ、誰にも言っていないんですけど学園でその人の事ばかり目で追うようになってしまって気がつくと彼の事ばかり考えています。その時、胸が痛いんです。もう如何したらいいのか分からなくて」

真っ赤な顔が可愛い・・・エレオノーラさんや それは恋よ
わーわーわー恋だーーー恋する乙女がここにいるぞー
「で 何で私に言うの?恋の相談なんて専門外も良いとこだと思うけど?」
「私、アリーナ様以外親しい方おりませんし それにジェレミアが言ってたんです アリーナ様はロマンス(小説)の神様だって」

あの~私、広○香美じゃありませんわ! 冬にスキーもいきませんわ!←(前世限定)
スライムめー、何言っちゃってくれてんの?絞める 絶対に 明日校舎の裏に呼び出してやる!!

「それは誤解よエレオノーラさん。私なんて恋愛初心者も良い所よ?ご期待に添えませんよ ところで貴女の気になっている男性は誰なのかしら?教えてくれる?」
まさか腹黒王子脳筋エラルドじゃあるまいな?
私の婚約者に私の親友の婚約者・・・違うよね?

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