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31.兄弟過去話②
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「嫉妬なんていうのは誰でもするものだよ」
「まあそうですけど……」
でもこの人がリカルドに嫉妬。目の前のリカルドに劣らぬ美貌、頭脳、落ち着きをもつこの人が?
「あの、でもリカルドのどこに?」
「え?」
「あっと……リカルドができないやつって言ってるわけじゃなくて。むしろかっこいいし、頭いいし、背高いし、剣も魔法も上手いし、俺が勝てるものなんて血筋くらいですけど。なんかお兄さんの嫉妬を買うような感じじゃないっていうか……」
上手く言えないが、なんだろう。お兄さんの方が余裕があるというのか、上に感じるというのか。とりあえずお兄さんがリカルドに嫉妬……なんか想像ができない。
俺の言葉に何がおもしろいのかお兄さんはクスクスと笑っている。
「アレン君はいい人だね」
「え?」
「君がいろいろな物を持っているから嫉妬とは無縁なだけかな?」
「え?」
疑問府を浮かべてしまう俺を見て更に笑うお兄さん。
「いやいやすまない。少し顔が面白くて。ところでどうしてそんな話しを弟さんにしたんだい?ああ、最初は弟さんからの羨ましい?っていう質問だったみたいだけど、君は嫉妬とかとは無縁そうだから掘り下げないタイプだろう?そしてそのやり取りを私に話すなんて何かあったのかな?と思ったんだけれど……」
鋭いな。
「……クラスの男子で自分のお兄さんのことを羨ましい、いや妬ましいって話しているやつがいたんです。友達と話すだけじゃなくて悪評も広めていて、家でも色々と騒ぎを起こしてお兄さんから後継者の座を奪おうとしてるんですよ」
その男子はあまり付き合いがないので俺の勝手な印象だが、もともと少し暗めのひねくれたやつだった。だがどんどん顔つきが変わっていき、今では危ないやつという印象だ。
お兄さんとの仲の悪化によりそうなってしまったよう。
それを見て俺は思った。
兄弟にあれほどまでの憎悪を抱いてしまうものなのか、と。
いや、まあ俺とて貴族に生まれた身。後継問題でいろいろゴタゴタする家があるのも知識としては知っている。が、実際に間近で見たのは初めてだった。
だからスタンにも直球で聞いてみた。本心はわからないがとりあえずはそこまで恨まれていない気がする。たぶんだけど。
だから他の兄弟にも話しを聞いてみようと思った。リカルドに聞こうと思ったんだが、残念ながら彼は留守だったのでお兄さんが話し相手となったが。
「ふーん……」
お兄さんは俺をじーーーーっと見ると面白そうに笑うと言った。
「僕もリカルドに消えろって思ったことも、実際に手を出したこともあるけどね」
「!?」
「そんなに驚くことでもないと思うけどなぁ」
「えっ、あ、いやでも……二人仲いいですし」
「今はね。僕もアイツのことはばかわいいと思っているよ。それに、我が領地の最終兵器だとも」
お兄さんの目がキラリと薄暗く光る。ばかわいいってバカと可愛いかけてるよな。ちょっとリカルドに似合う言葉とか思ってしまった。すまんリカルド。
「それは、なんとなくわかります」
お兄さんはこの伯爵領を継ぐ身。身内であろうと領地や国に何かあれば、弟だろうと過酷な場に送り出す覚悟がなければならない。
はっ!
いやいや、それは置いといて……。
「そんな焦った顔しないで。今から話すよ。僕はねリカルドのことが嫌いだった。妬ましくて妬ましくて仕方なかった」
「いや、どこが?」
「あはは、アレン君は結構失礼だよね」
「すみません」
リカルドはこの人の弟だった。素直に謝るとくすりと笑われた。
「リカルドは幼いときから優秀だった。いや、天才というべきか……。まさに英雄の血を引くにふさわしいガキだった」
トリスタンはゆっくりと瞬きをすると、俺をまっすぐに見据え過去を語りだした。
「まあそうですけど……」
でもこの人がリカルドに嫉妬。目の前のリカルドに劣らぬ美貌、頭脳、落ち着きをもつこの人が?
「あの、でもリカルドのどこに?」
「え?」
「あっと……リカルドができないやつって言ってるわけじゃなくて。むしろかっこいいし、頭いいし、背高いし、剣も魔法も上手いし、俺が勝てるものなんて血筋くらいですけど。なんかお兄さんの嫉妬を買うような感じじゃないっていうか……」
上手く言えないが、なんだろう。お兄さんの方が余裕があるというのか、上に感じるというのか。とりあえずお兄さんがリカルドに嫉妬……なんか想像ができない。
俺の言葉に何がおもしろいのかお兄さんはクスクスと笑っている。
「アレン君はいい人だね」
「え?」
「君がいろいろな物を持っているから嫉妬とは無縁なだけかな?」
「え?」
疑問府を浮かべてしまう俺を見て更に笑うお兄さん。
「いやいやすまない。少し顔が面白くて。ところでどうしてそんな話しを弟さんにしたんだい?ああ、最初は弟さんからの羨ましい?っていう質問だったみたいだけど、君は嫉妬とかとは無縁そうだから掘り下げないタイプだろう?そしてそのやり取りを私に話すなんて何かあったのかな?と思ったんだけれど……」
鋭いな。
「……クラスの男子で自分のお兄さんのことを羨ましい、いや妬ましいって話しているやつがいたんです。友達と話すだけじゃなくて悪評も広めていて、家でも色々と騒ぎを起こしてお兄さんから後継者の座を奪おうとしてるんですよ」
その男子はあまり付き合いがないので俺の勝手な印象だが、もともと少し暗めのひねくれたやつだった。だがどんどん顔つきが変わっていき、今では危ないやつという印象だ。
お兄さんとの仲の悪化によりそうなってしまったよう。
それを見て俺は思った。
兄弟にあれほどまでの憎悪を抱いてしまうものなのか、と。
いや、まあ俺とて貴族に生まれた身。後継問題でいろいろゴタゴタする家があるのも知識としては知っている。が、実際に間近で見たのは初めてだった。
だからスタンにも直球で聞いてみた。本心はわからないがとりあえずはそこまで恨まれていない気がする。たぶんだけど。
だから他の兄弟にも話しを聞いてみようと思った。リカルドに聞こうと思ったんだが、残念ながら彼は留守だったのでお兄さんが話し相手となったが。
「ふーん……」
お兄さんは俺をじーーーーっと見ると面白そうに笑うと言った。
「僕もリカルドに消えろって思ったことも、実際に手を出したこともあるけどね」
「!?」
「そんなに驚くことでもないと思うけどなぁ」
「えっ、あ、いやでも……二人仲いいですし」
「今はね。僕もアイツのことはばかわいいと思っているよ。それに、我が領地の最終兵器だとも」
お兄さんの目がキラリと薄暗く光る。ばかわいいってバカと可愛いかけてるよな。ちょっとリカルドに似合う言葉とか思ってしまった。すまんリカルド。
「それは、なんとなくわかります」
お兄さんはこの伯爵領を継ぐ身。身内であろうと領地や国に何かあれば、弟だろうと過酷な場に送り出す覚悟がなければならない。
はっ!
いやいや、それは置いといて……。
「そんな焦った顔しないで。今から話すよ。僕はねリカルドのことが嫌いだった。妬ましくて妬ましくて仕方なかった」
「いや、どこが?」
「あはは、アレン君は結構失礼だよね」
「すみません」
リカルドはこの人の弟だった。素直に謝るとくすりと笑われた。
「リカルドは幼いときから優秀だった。いや、天才というべきか……。まさに英雄の血を引くにふさわしいガキだった」
トリスタンはゆっくりと瞬きをすると、俺をまっすぐに見据え過去を語りだした。
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