勇者の曾孫の迷走録

たくみ

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27.エリザさん友達紹介してください⑤

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「「「ありがとう!!!」」」

「いよっ!救世主!」

「英雄!」

「イケメンー!」

 退治を終え子爵家に戻った俺達を迎えたのは子爵親子と領民、レナベルだった。領民たちは溢れんばかりの歓声を上げる。

 だが、特に喜んでいたのは泣きじゃくりながら俺に抱きつく子爵だろう。

「アレン君、リカルド君、ありがとう!本当にありがとう!……アレン君よく無事でいてくれた。さあ、屋敷に」

 まあいろいろな意味で嬉しいようだ。再びお邪魔させていただく子爵邸。食堂に案内されるとテーブルには豪華な食事が並べられていた。

「身体を動かしお疲れでしょう?領民がいろいろ食材を持ってきてくれたのです。それをうちのシェフがちゃちゃっと調理致しました。お口に合うと良いのですが」

 こんなにもたくさんの豪華な食事を用意してもらって申し訳ないくらいだ。だが腹はへっている。

「どれも美味しそうですね。いただきます」

 なので素直にいただく。

 食べ進めていく俺達。

『おいしいもっふ~~~』

『ああ非常に美味だ。皆の気持ちがこもっていると思うと更に美味だな』

 凄い勢いで食べ進めていくのはもっふんとライオン丸だ。退治した後に姿を消していたのだが、食事と聞き姿を現したよう。

 ライオン丸はサイズ変更して椅子にちょこんと座りながら優雅にナイフやフォークを操っている。あのふわふわ丸いお手々でどうやっているのだろうか……。

 もっふんは椅子の上に何個もクッションを置き、絶妙なバランスで座っている。料理を魔法で浮かび上がらせ丸呑みしている。

「………………そんなに食べていつも食事はどうしているんだい?」

 すごい勢いで消えていく料理を見て疑問が湧いた。

『天界にいるときは腹がすかない。だから天界に戻れば良いのだ』

『そうもふ。でも人間界のご飯美味しいから食べたくなるもふ。もっとちゃんと用意しろもふ』

「そうか、特に何も言われなかったから食事は不要だと勝手に思っていたよ」

 食べたいなら言ってくれ。そもそも姿を現さないのだからあげようがない。だがそういえば召喚した際にお腹が空いたと騒いでいた。

 まあ彼らだって知識という部分で頑張ったのだからたくさん食べると良い。多少食べ過ぎな気もするが。

 それに比べ……ちらと横を見る。そこにはあまり食が進まぬリカルドがいた。食べていなくはないのだが、緊張した面持ちでレナベル嬢をちらちらと伺っている。

 これはもしや告白のタイミングでも伺っているのか?

 一瞬己のことのようにドキンッとトキメイてしまったが、よく考えたらこんな人がいる前で魔物を退治したヒーローに告白なんかされたらNoと言い難い。

 リカルドだってわかっているはず。彼はそんな小狡いことはしない。直球タイプだ。

 ということはこの後に告白タイムか!?

 ではここは俺に任せろ。

「レナベル嬢、リカルド大活躍だったんですよ。俺なんてぶんぶんしっぽを振り下ろされて避けることしか出来なかったんですけど、リカルドはこう口の中に槍を投げ入れてやっつけちゃったんですよ。いや~俺は怖くてあんな魔物の口に近づくことなんてできませんよ」

「そうなんですね。リカルド様は実践の授業でもいつもトップの成績。私いつも羨ましく思っておりましてよ」

「いや、俺は実践だけで……」

「先日の抜き打ちテストもお二人方だけ満点だったそうですね」

「いや、それはたまたまで……」

「毎回お二方だけ満点のこと多いですよね」

「………………」

 リカルド、謙遜はし過ぎないほうが良いのかもしれないぞ。しょぼーんとなってしまったリカルドを見てレナベルはクスリと笑う。

「羨ましいとも感じますが……実践も頭脳も優秀なんてとても素敵だと思います」

 フワリと微笑んで言われた言葉にリカルドの頬が朱に染まる。とても嬉しそうだ。

 レナベルは音もなく持っていたナイフとフォークをテーブルに置くと姿勢を改めた。

「アレン様、リカルド様。本来であれば関わりのなかった貴方がたにこのような無理を言ったこと謝罪致します。申し訳ございませんでした。けれど貴方がたのおかげて子爵領及び我が領、その周辺領は救われました。誠に感謝申し上げます」

 改めて言われるとなんか照れるな。きっとリカルドはデレデレとした顔をしているだろうなと思い横を見るとひどく強張った顔をしていた。

「リカルド?」

 俺の呼びかけに気づかぬのかリカルドは青褪めたままレナベル嬢を見ている。

 レナベル嬢は構わず話し続ける。

 彼女は気づかない。なぜなら彼の顔を見ていないから。

 彼女は視線を落としていた。

「リカルド様、こんなときに人目がある場で言うことではないかもしれませんが……」

 えっ、これはまさか彼女から……?

 おい、リカルドお前もそう思わないか?と心の中でワクワクとしながら隣を見ると僅かに青褪めているリカルドがいた。

「宜しければ私と婚約を前提としてお付き合いして頂けないでしょうか?」

 言い切った後にフワリと微笑みやっと視線を彼に向けたレナベルの目に先程よりも青褪めたリカルドが映った。

 軽く見開かれる目。

「リカルド様……?」

 彼女の呼び掛けにピクリと反応したリカルドはふーっと長ーーーく息を吐く。いつもの血色に戻っていく顔。

 そして彼は答えた。





「お断りします」



 と。


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