勇者の曾孫の迷走録

たくみ

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26.エリザさん友達紹介してください④

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 窓から飛び出した俺達は今森の中の茂みに隠れている。

 俺達の視線の先にはそれはそれは毒々しい紫色の2つの頭を持つ大蛇みたいな魔物がいた。

 魔物の近くには何人か倒れており、あまり直視したくない光景があった。格好からして子爵が派遣した兵たちだろう。

 今森には対魔物の結界が張られており、魔物は森の中から出られないようにしてある。子爵は結界魔法が得意だそう。だからこそ周辺の領主は自分の領地は安全だと慢心し動こうとしない。

 派兵するのには金もかかるし下手したら自領の人員が減ってしまう。だから小狡い領主たちは子爵一人になんとかさせようと無視を決め込んでいる。

 俺からすればそんな一人の結界魔法に頼りきりなんて不安しか感じないが、まあ人にはそれぞれ考えがあるということなのだろう。特に子爵領の周辺領の領主は能力がないくせに欲深く悪知恵だけは働くようなものばかり。

 だが今はそれらに憤慨している場合ではない。

「どうする?」

「う~ん……こう見た感じ毒持ってそうだよな?あんまり近づきすぎず遠距離攻撃が妥当じゃないか?」

「ああ、それ『あいつは毒持ってないぞ』」

 リカルドの考えに賛同しようとする俺の声に被せてきたのはライオン丸だった。いつからそこに?

「えっ!?あんな見た目で?」

『見た目に騙されたらダメもふ』

「うおっ!もっふん」

 お前もいつからいたんだ。
 というか今俺達がいる茂みがギュウギュウ詰めなんだが、非常に狭い。なによりも隠れていることがバレそうだ。

『あいつの攻撃は巻き付くとしっぽ叩きと噛みつくと丸呑みもふ』

「そうか」

『そうもふ』

「じゃあ騙されたも何も見た目通りの攻撃をしてくるわけだな?」

『……毒はないもふ』

「とりあえずこれでやってみるか……」

 そう言うリカルドは既に弓を構え、矢を放つ体制に入っていた。ヒュンっと魔物の鱗のないお腹めがけてまっすぐに飛んでいく魔法でできた矢。

 そのまま突き刺さ………………らなかった。

 ふしゅうと音がしたかと思ったら魔物の尾が俺達に向かって振り下ろされた。

「げっ、バレた」

 散り散りになる俺達。

『あいつお腹は鱗無いように見えるけど、硬いもふ』

 そういうことは早く言って欲しい。休み無しにブンブンと振り下ろされる尾。いやいやすごいな、疲れないのか?

 逃げているだけではどうにもならない。これは魔法の剣よりも実体のある剣の方が良いかもしれない。家にある父が大切にしているでかくて硬くて丈夫な剣を魔法で呼び寄せる。

 ちなみに人などは難しいが小さいもので場所がわかっているものなら転移魔法を俺は使える。我ながら優秀だ。

 思いっきり振り下ろす。

 カキーン…………………………

 ………………やべぇ、欠けた。

 とりあえず家に戻しておこう。後は知らん。

 だって俺今忙しいし。


「なあ、あいつの口の中は柔らかそうだよな?」

 無言で尾を躱し続けていたリカルドがポツリと呟く。

「毒もないみたいだし……うん、いけるいける」

 自問自答をしたかと思うと片方の頭の方へ猛スピードで駆けて行く。

 おい、まさか

 ぱかっと口を開き迎え撃つ片方の頭部。

 リカルドは魔法で槍を創り上げそのまま口の中にーーー




 入らず思いっきり槍を投げた。

 見事にスポーンと口の中に吸い込まれていく槍。

 口内から入った槍が首の後ろから飛び出たかと思うと、どすんと片方の頭部が崩れ落ちた。

「お前が入るんじゃないんかい!?」

 俺はてっきりわざと飲み込まれて体内から攻撃するつもりかと……。思わず叫んでしまった俺を尻目にリカルドは同じ方法でもう片方の頭部も倒す。

「アレン」

 塵となっていく魔物(魔物は絶命すると塵になる)を見届けたリカルドが俺の名を呼びながら近づいてくる。

「リカルド、お疲れ。これでレナベル嬢も笑顔に「アレン」」

 遮られる言葉。リカルドはガシッと両手で俺の肩を掴むととても真剣な表情で俺を見てくる。なんだ?大事な話しか?えっ、今?

「お前毒がないからっていくら身体が硬いからって魔物の体内に入ろうとしたら駄目だぞ」

「は?」

『そうもふ。消化液で溶かされるもふ』

 もっふんまで。

『無謀なことをしていては命がいくらあっても足りないぞ』

 ライオン丸まで。

「いや、俺は……」

 リカルドなら飛び込んで行きそうだと思っただけで、自身はそんなことをやろうなんて考えていない。

「命は大切にしないといけないぞ」

 リカルドの言葉にコクコクと頷く精霊獣2匹。


 やめてくれ

 なんか突拍子もないことを思いついたやつを見るような目で俺を見るのは……

 俺はただリカルドならやりそうだと思っただけなんだーーーーーーーーーー!


 というか今回精霊獣たちは戦っていない。一体何しに来たんだと思いながら恨めしげな目で見ていると

『我らは脳筋ではない、知識があるのだ』

『そうもふ。ありがたーーーい助言をしてやったもふ』

「!?」

 なんか俺等が脳筋みたいな言い方するじゃないか。これでも俺等は学園で優秀だと言われているのに。

 ………………うん?

 こいつら……今心読んだか?

『アレンは気を抜くと色々と顔に出やすいタイプもふ~』

 違った。

 

 やれやれと言わんばかりに横に揺れるもっふん。もっさもっさと毛が揺れる様はなんとも顔を埋めたくなる様だった。

 




 
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