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162.花は枯れる①
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その後幾度も暗殺未遂は繰り返されたものの、全て返り討ちにし誰も怪我一つすることなく過ぎる日々。
そして――――――アリスは臨月を迎えた。
「お母様大丈夫なんだよね?」
「お母様つらそう」
アリスは臨月を迎え、ほぼ寝たきりとなっていた。顔は血の気が無く、周囲の者達は度々アリスの口元に手をあて呼吸の確認をする程だった。
「お母様は強い人だから大丈夫だよ」
母を心配する双子の肩を抱き寄せるのはブランクだ。彼は口ではそう言ったものの心の中は不安でいっぱいだった。最初はつわりや妊娠による体調不良だと思っていたが、あまりにも酷すぎる。
今彼女の身体の中は大量の魔力がぐるぐると駆け巡り、いつ爆発してもおかしくない状態だとイリスとフランクが言っていた。妊娠によるもののようだがなぜそのような状態になってしまったのかわからずお手上げ状態だった。
暗い雰囲気が漂う部屋に扉をノックする音が響く。
「やあ、アリスの具合はどうだい?」
入室してきたのはルカと……
「失礼しまぁす。まあ広いお部屋!ルカ様ぁ、クレアもお妃様になったらこんなお部屋に住めるんですね!楽しみですぅ」
ルカの身体に胸を押し付けながら彼の腕に自らの腕を絡めるクレアだ。
部屋にいた者たちの眉間にシワが寄る。なんなのだ、こいつは。
「クレア、アリスは調子が悪いんだ。静かにね」
「いっけな~い。クレア悪い子ちゃんですね。でも優しいルカ様もす・て・き」
……この娘の頭の中は大丈夫なのか。
「ルカ兄上、いらっしゃいませ。アリスは……ご覧の通りです」
「……顔色が悪いね」
「本当、まるで死体みたいですね」
「「「!!!?」」」
王子妃に対して――というよりも生きている者になんという言い草。子供も目の前にいるというのに……イリスとフランク、エリアスが殺気立つ。
「タリス嬢、縁起でもないことを言わないでくれ。それにアリスは王子妃だ、不敬が過ぎる」
ブランクの怒りを抑えた言葉に動揺することなく、こわ~いと甘えた声を出すクレア。
「クレア、そういうことを言ってはいけないよ」
「え~。でもクレア素直だから思ったこと口に出しちゃうんですぅ。小さい子みたいだねって言われるんですよぉ」
流石にそれはまずいと窘めるルカに不満げに口を尖らせながらも、そんな自分って可愛いでしょアピールするクレア。誰の感情が爆発してもおかしくない部屋に響く凛とした2つの子供の声。
「頭の中に花が咲いてるやつには何を言っても無駄だよ」
「大丈夫。花はいつか枯れるもの」
「彼女の花はもう枯れるよ」
「「だってとっても弱い花だから」」
頭が弱い脳内お花畑女はもうすぐ自滅する。
人並み外れた美貌に浮かぶ冷たい表情にゾクゥと背筋に冷たいものを感じた大人たちは冷静さを取り戻す。静まり返る部屋。
だがこんなときでも愚か者はどこまでも愚かなもので――
「な……あなたたちなんなのよ。子供が大人のこと馬鹿にして。王孫だからって何よ!?私は王子妃になるんだから。あなた達より偉いのよ!?」
何を言っているのか、頭が悪すぎる。
男爵家の血を引く妃と王族の血、他国の大貴族の血を持つ王孫どちらが上の立場かなどと比べるまでもない。そもそもまだクレアは妃でもないが。ただの男爵家の令嬢である。
「「時間の無駄(だ)ね」」
ラルフとオリビアのため息混じりの言葉にクレアはかっとなり、なんとか彼らを傷つけてやりたくなる。
「~っ、~~っ、どいつもこいつも私のこと馬鹿にして」
子供たちの態度は普段から自分を相手にしていないアリスを思い起こさせる。
「あーあ。あなた達母親にそっくりね。ていうかアリス様がこんなふうになってるのってきっと天罰よね。私とルカ様のこと認めないし、邪魔するし。あっ!私ってルカ様にも天にも愛されちゃってるのかも。あなた達も私を馬鹿にしてたら呪われちゃうかもよぉ?…………ひっ!?」
「クレア言い過ぎだ。すまない、ここは私に免じてそれを下ろしてもらえないだろうか?」
ルカのその言葉にイリス、フランク、エリアスがクレアの首元に突き付けていた剣をゆっくりと下ろした。しかしクレアには鋭い視線が突き刺さったままだった。
「ふ、不敬よ!ルカ様ぁ、こいつら使用人のくせに私にこんな無礼な真似を……!」
「やめるんだ、クレア。さあ行こう。君クレアを外へ」
「なんで……なんで、私は悪くないのに……!」
無理矢理引き摺られながらも叫び続けるクレアは非常に醜い。
「ブランク、すまなかったね」
扉が閉まり静まり返る部屋の中、ルカがブランクに声を掛ける。
「ルカ兄上があんな女に夢中になるのがわかりません」
「性格最悪だよね。顔も微妙だし」
「わかっているなら……」
「でも男は肉欲に溺れるものだろう?」
「…………………………」
あっけらかんと言うルカにブランクは言葉が出ない。その隙にルカはラルフとオリビアの前にしゃがみ込む。
「ラルフ、オリビア。クレアがごめんね」
「「大丈夫だよ」」
これまたこちらもあっけらかんとした言いようにルカはクレアよりも5歳児の方が大人だと苦い笑みが溢れる。だが次の言葉に固まった。
「「もうすぐ花は枯れるよ」」
「は?」
驚くルカに二人は妖しい笑みを浮かべる。
「恨みを負う覚悟がない人間はダメだよ」
「恨みを負っている自覚がない人間はダメよ」
「自分の価値を、力量をわかっていない人間はダメだよ」
「自分のことばかりの人間はダメよ」
「「自分が利用されているのに気づかない人間はダメ(だ)よ」」
これが5歳児の言葉か?
天才的な頭脳を持つことは知っていたが、これは――――不気味だ。双子の言葉に寒気を感じたルカは慌てて部屋を出て行った。
そして――――――アリスは臨月を迎えた。
「お母様大丈夫なんだよね?」
「お母様つらそう」
アリスは臨月を迎え、ほぼ寝たきりとなっていた。顔は血の気が無く、周囲の者達は度々アリスの口元に手をあて呼吸の確認をする程だった。
「お母様は強い人だから大丈夫だよ」
母を心配する双子の肩を抱き寄せるのはブランクだ。彼は口ではそう言ったものの心の中は不安でいっぱいだった。最初はつわりや妊娠による体調不良だと思っていたが、あまりにも酷すぎる。
今彼女の身体の中は大量の魔力がぐるぐると駆け巡り、いつ爆発してもおかしくない状態だとイリスとフランクが言っていた。妊娠によるもののようだがなぜそのような状態になってしまったのかわからずお手上げ状態だった。
暗い雰囲気が漂う部屋に扉をノックする音が響く。
「やあ、アリスの具合はどうだい?」
入室してきたのはルカと……
「失礼しまぁす。まあ広いお部屋!ルカ様ぁ、クレアもお妃様になったらこんなお部屋に住めるんですね!楽しみですぅ」
ルカの身体に胸を押し付けながら彼の腕に自らの腕を絡めるクレアだ。
部屋にいた者たちの眉間にシワが寄る。なんなのだ、こいつは。
「クレア、アリスは調子が悪いんだ。静かにね」
「いっけな~い。クレア悪い子ちゃんですね。でも優しいルカ様もす・て・き」
……この娘の頭の中は大丈夫なのか。
「ルカ兄上、いらっしゃいませ。アリスは……ご覧の通りです」
「……顔色が悪いね」
「本当、まるで死体みたいですね」
「「「!!!?」」」
王子妃に対して――というよりも生きている者になんという言い草。子供も目の前にいるというのに……イリスとフランク、エリアスが殺気立つ。
「タリス嬢、縁起でもないことを言わないでくれ。それにアリスは王子妃だ、不敬が過ぎる」
ブランクの怒りを抑えた言葉に動揺することなく、こわ~いと甘えた声を出すクレア。
「クレア、そういうことを言ってはいけないよ」
「え~。でもクレア素直だから思ったこと口に出しちゃうんですぅ。小さい子みたいだねって言われるんですよぉ」
流石にそれはまずいと窘めるルカに不満げに口を尖らせながらも、そんな自分って可愛いでしょアピールするクレア。誰の感情が爆発してもおかしくない部屋に響く凛とした2つの子供の声。
「頭の中に花が咲いてるやつには何を言っても無駄だよ」
「大丈夫。花はいつか枯れるもの」
「彼女の花はもう枯れるよ」
「「だってとっても弱い花だから」」
頭が弱い脳内お花畑女はもうすぐ自滅する。
人並み外れた美貌に浮かぶ冷たい表情にゾクゥと背筋に冷たいものを感じた大人たちは冷静さを取り戻す。静まり返る部屋。
だがこんなときでも愚か者はどこまでも愚かなもので――
「な……あなたたちなんなのよ。子供が大人のこと馬鹿にして。王孫だからって何よ!?私は王子妃になるんだから。あなた達より偉いのよ!?」
何を言っているのか、頭が悪すぎる。
男爵家の血を引く妃と王族の血、他国の大貴族の血を持つ王孫どちらが上の立場かなどと比べるまでもない。そもそもまだクレアは妃でもないが。ただの男爵家の令嬢である。
「「時間の無駄(だ)ね」」
ラルフとオリビアのため息混じりの言葉にクレアはかっとなり、なんとか彼らを傷つけてやりたくなる。
「~っ、~~っ、どいつもこいつも私のこと馬鹿にして」
子供たちの態度は普段から自分を相手にしていないアリスを思い起こさせる。
「あーあ。あなた達母親にそっくりね。ていうかアリス様がこんなふうになってるのってきっと天罰よね。私とルカ様のこと認めないし、邪魔するし。あっ!私ってルカ様にも天にも愛されちゃってるのかも。あなた達も私を馬鹿にしてたら呪われちゃうかもよぉ?…………ひっ!?」
「クレア言い過ぎだ。すまない、ここは私に免じてそれを下ろしてもらえないだろうか?」
ルカのその言葉にイリス、フランク、エリアスがクレアの首元に突き付けていた剣をゆっくりと下ろした。しかしクレアには鋭い視線が突き刺さったままだった。
「ふ、不敬よ!ルカ様ぁ、こいつら使用人のくせに私にこんな無礼な真似を……!」
「やめるんだ、クレア。さあ行こう。君クレアを外へ」
「なんで……なんで、私は悪くないのに……!」
無理矢理引き摺られながらも叫び続けるクレアは非常に醜い。
「ブランク、すまなかったね」
扉が閉まり静まり返る部屋の中、ルカがブランクに声を掛ける。
「ルカ兄上があんな女に夢中になるのがわかりません」
「性格最悪だよね。顔も微妙だし」
「わかっているなら……」
「でも男は肉欲に溺れるものだろう?」
「…………………………」
あっけらかんと言うルカにブランクは言葉が出ない。その隙にルカはラルフとオリビアの前にしゃがみ込む。
「ラルフ、オリビア。クレアがごめんね」
「「大丈夫だよ」」
これまたこちらもあっけらかんとした言いようにルカはクレアよりも5歳児の方が大人だと苦い笑みが溢れる。だが次の言葉に固まった。
「「もうすぐ花は枯れるよ」」
「は?」
驚くルカに二人は妖しい笑みを浮かべる。
「恨みを負う覚悟がない人間はダメだよ」
「恨みを負っている自覚がない人間はダメよ」
「自分の価値を、力量をわかっていない人間はダメだよ」
「自分のことばかりの人間はダメよ」
「「自分が利用されているのに気づかない人間はダメ(だ)よ」」
これが5歳児の言葉か?
天才的な頭脳を持つことは知っていたが、これは――――不気味だ。双子の言葉に寒気を感じたルカは慌てて部屋を出て行った。
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