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130.安穏
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3人の目に映ったのは――――――――――
「「「え~~~~~~」」」
「こっちがえ~~~~~~だよ!何だいその反応は!?」
双子の父親であるブランクだった。
「アリスがフルーツタルトを持って行くようにって言うから来たのに」
「「いらっしゃいお父様!」」
瞬時に輝かしい笑顔を浮かべ、父親に抱きつく二人。
いらっしゃいって……ここ私の家なんだけど、ルビーが呆れているとトントンと再び扉をノックする音が部屋に響いた。
そして現れたのは
茶色の髪の毛と瞳を持つ高身長の
可もない不可もない顔立ちの
フツメンだった。
黙る双子たち。
ルビーははっとする。この子たちトキにまで失礼なことを言うんじゃ……!?
フツメン?フツメンなのか?
それとも……ありきたり~?ありきたり~?なのか
身構えるルビーだったが
双子は黙ったままだった。
トキは跪き頭を垂れた。
「ブランク様、ラルフ様、オリビア様拝謁いたします」
「いやいや公式な場でもないしそんなに堅苦しくなる必要はないよ」
ブランクはトキに近づき立たせた。
「そうよ遊びに来たのは私たちなんだから」
「自分の家くらい気楽にいなよ」
「王族が家にいるのに平民が家で落ち着けるわけないでしょ」
「「ルビーちゃんはいつも通りだけどね」」
「うるさいわね。こんなにしょっちゅう来られたらいやでも慣れるわよ」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ我が子たちとルビーを見て、懐かしさを感じるブランク。ルビーは双子には敬語を使わない。なぜなら敬語をやめないと毎日遊びに来るぞと脅されたからだ。
最初はルビーもぎこちなかったがリトルアリス相手ということもあり、アリスと話しているような気分になりすぐに慣れた。
「あーあー!あーあー!」
赤ちゃんの泣き声が部屋に響いた。
「おーよしよし……皆様少々失礼致します」
トキは一言断りをいれると手際よくおしめを変えていく。双子がその様子をトキの両隣に立って見ている。替え終わった後3人は赤ちゃんを取り囲みながら何やら楽しく話をしている。
ルビーはおしめを外のゴミ箱に捨てるために外に出た。
ゴミ箱に捨て、振り返るとブランクが立っていた。
「ブランク…………王子様」
「えっと……とても優しそうなご主人だね」
「ええ、私には勿体ないほど良い方でございます」
本当に彼はなぜルビーを選んでくれたのだろうか。
「…………………………」
ブランクは言葉を探しているのか口をモゴモゴとさせている。それとも何か言いたいことでもあるのだろうか。
「あらルビー浮気?ダメよあんな素敵な旦那様を悲しませちゃあ」
「「!?」」
浮気!?誰が!?
声をかけてきたのは隣に住む話好きのおばさんだった。
「違うわよ。この人はただの知り合いよ!」
「わかってるわよ~。ちょっとからかっただけじゃない。あなたがトキにメロメロなのは皆知ってるわよお」
バシンっと思いっきり背中を叩かれた。痛い。
「以前ルビーさんに迷子になってしまった私の子供を保護してもらったんです」
「あら~あなたあの可愛い双子ちゃんのパパさん?髪の毛の色は同じだけど顔立ちはあんまり似てないわね」
双子たちはルビーの家では本来の色に戻しているが外に出る時は髪の毛を茶色にしている。今ブランクも子供たちと同様茶色の髪に変えている。
「はははよく言われます。子供たちは妻に似ているんです」
「んま~よっぽときれいな奥様なのね。あなたもハンサムさんだからお似合い夫婦ね」
「ありがとうございます」
にこやかに答えるブランクにおばさんは好意を持ったのか話し続ける。
「ここのご主人ね。騎士様なのよ。でも休日は修道院とかいろいろ困った人達の手伝いをするよくできた人でね~。あっ、でもルビーちゃんや甥っ子君のことも本当に大切にしているのよ。ルビーちゃんもご主人も自分の子どもでもないのにえらいわよね~。でもご主人も幸せ者よね~。ルビーちゃん今は平民だけど、元はお貴族様なのよ。ご主人良い人だけど顔は微妙だしド平民の血筋だし、本来ルビーちゃんみたいな高貴なお嬢さんをお嫁になんてもらえないわよ~」
その後もしゃべるしゃべるおばさま。
ルビーは勘弁してくれと思いながらブランクを見るが、へっぽこでも王族。さわやかスマイルが顔に張り付いている。
ひたすら相槌を打つだけの一方的な会話が終わり、たくさん話すことができて満足そうなおばさまは去っていった。
いや、流石に長すぎだ。怒っていないといいが……。
「ルビー」
「は、はい!」
思わず大きな声が出てしまった。恥ずかしい。ブランクはそんなルビーを真っ直ぐに見据えると口を開いた。
「幸せなんだね」
そういう彼の瞳はとても穏やかだった。
「はい、私はとても幸せです。…………王子様は幸せですか?」
いや、いちいち聞かなくてもわかる。だが昔のことが懐かしくて尋ねていた。幼稚で愚かで、自分中心でしか物事を考えられなかった自分たち。
だがそんな自分たちが今こんなに穏やかな瞳をしていられるのは
「もちろん、私も幸せだよ。お互い少し大人になることができたようだね」
「きっと…………………そうだと思います」
自分を変えることができたからだと思う。
二人の間には穏やかな空気が漂う。
その空気感のせいだろうか。
彼らのやりとりを盗み見ていた視線に気づかなかったのは。
「「「え~~~~~~」」」
「こっちがえ~~~~~~だよ!何だいその反応は!?」
双子の父親であるブランクだった。
「アリスがフルーツタルトを持って行くようにって言うから来たのに」
「「いらっしゃいお父様!」」
瞬時に輝かしい笑顔を浮かべ、父親に抱きつく二人。
いらっしゃいって……ここ私の家なんだけど、ルビーが呆れているとトントンと再び扉をノックする音が部屋に響いた。
そして現れたのは
茶色の髪の毛と瞳を持つ高身長の
可もない不可もない顔立ちの
フツメンだった。
黙る双子たち。
ルビーははっとする。この子たちトキにまで失礼なことを言うんじゃ……!?
フツメン?フツメンなのか?
それとも……ありきたり~?ありきたり~?なのか
身構えるルビーだったが
双子は黙ったままだった。
トキは跪き頭を垂れた。
「ブランク様、ラルフ様、オリビア様拝謁いたします」
「いやいや公式な場でもないしそんなに堅苦しくなる必要はないよ」
ブランクはトキに近づき立たせた。
「そうよ遊びに来たのは私たちなんだから」
「自分の家くらい気楽にいなよ」
「王族が家にいるのに平民が家で落ち着けるわけないでしょ」
「「ルビーちゃんはいつも通りだけどね」」
「うるさいわね。こんなにしょっちゅう来られたらいやでも慣れるわよ」
ぎゃあぎゃあと騒ぐ我が子たちとルビーを見て、懐かしさを感じるブランク。ルビーは双子には敬語を使わない。なぜなら敬語をやめないと毎日遊びに来るぞと脅されたからだ。
最初はルビーもぎこちなかったがリトルアリス相手ということもあり、アリスと話しているような気分になりすぐに慣れた。
「あーあー!あーあー!」
赤ちゃんの泣き声が部屋に響いた。
「おーよしよし……皆様少々失礼致します」
トキは一言断りをいれると手際よくおしめを変えていく。双子がその様子をトキの両隣に立って見ている。替え終わった後3人は赤ちゃんを取り囲みながら何やら楽しく話をしている。
ルビーはおしめを外のゴミ箱に捨てるために外に出た。
ゴミ箱に捨て、振り返るとブランクが立っていた。
「ブランク…………王子様」
「えっと……とても優しそうなご主人だね」
「ええ、私には勿体ないほど良い方でございます」
本当に彼はなぜルビーを選んでくれたのだろうか。
「…………………………」
ブランクは言葉を探しているのか口をモゴモゴとさせている。それとも何か言いたいことでもあるのだろうか。
「あらルビー浮気?ダメよあんな素敵な旦那様を悲しませちゃあ」
「「!?」」
浮気!?誰が!?
声をかけてきたのは隣に住む話好きのおばさんだった。
「違うわよ。この人はただの知り合いよ!」
「わかってるわよ~。ちょっとからかっただけじゃない。あなたがトキにメロメロなのは皆知ってるわよお」
バシンっと思いっきり背中を叩かれた。痛い。
「以前ルビーさんに迷子になってしまった私の子供を保護してもらったんです」
「あら~あなたあの可愛い双子ちゃんのパパさん?髪の毛の色は同じだけど顔立ちはあんまり似てないわね」
双子たちはルビーの家では本来の色に戻しているが外に出る時は髪の毛を茶色にしている。今ブランクも子供たちと同様茶色の髪に変えている。
「はははよく言われます。子供たちは妻に似ているんです」
「んま~よっぽときれいな奥様なのね。あなたもハンサムさんだからお似合い夫婦ね」
「ありがとうございます」
にこやかに答えるブランクにおばさんは好意を持ったのか話し続ける。
「ここのご主人ね。騎士様なのよ。でも休日は修道院とかいろいろ困った人達の手伝いをするよくできた人でね~。あっ、でもルビーちゃんや甥っ子君のことも本当に大切にしているのよ。ルビーちゃんもご主人も自分の子どもでもないのにえらいわよね~。でもご主人も幸せ者よね~。ルビーちゃん今は平民だけど、元はお貴族様なのよ。ご主人良い人だけど顔は微妙だしド平民の血筋だし、本来ルビーちゃんみたいな高貴なお嬢さんをお嫁になんてもらえないわよ~」
その後もしゃべるしゃべるおばさま。
ルビーは勘弁してくれと思いながらブランクを見るが、へっぽこでも王族。さわやかスマイルが顔に張り付いている。
ひたすら相槌を打つだけの一方的な会話が終わり、たくさん話すことができて満足そうなおばさまは去っていった。
いや、流石に長すぎだ。怒っていないといいが……。
「ルビー」
「は、はい!」
思わず大きな声が出てしまった。恥ずかしい。ブランクはそんなルビーを真っ直ぐに見据えると口を開いた。
「幸せなんだね」
そういう彼の瞳はとても穏やかだった。
「はい、私はとても幸せです。…………王子様は幸せですか?」
いや、いちいち聞かなくてもわかる。だが昔のことが懐かしくて尋ねていた。幼稚で愚かで、自分中心でしか物事を考えられなかった自分たち。
だがそんな自分たちが今こんなに穏やかな瞳をしていられるのは
「もちろん、私も幸せだよ。お互い少し大人になることができたようだね」
「きっと…………………そうだと思います」
自分を変えることができたからだと思う。
二人の間には穏やかな空気が漂う。
その空気感のせいだろうか。
彼らのやりとりを盗み見ていた視線に気づかなかったのは。
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