【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ

文字の大きさ
上 下
145 / 186

130.安穏

しおりを挟む
 3人の目に映ったのは―――――――――― 

「「「え~~~~~~」」」

「こっちがえ~~~~~~だよ!何だいその反応は!?」

 双子の父親であるブランクだった。

「アリスがフルーツタルトを持って行くようにって言うから来たのに」

「「いらっしゃいお父様!」」

 瞬時に輝かしい笑顔を浮かべ、父親に抱きつく二人。



 いらっしゃいって……ここ私の家なんだけど、ルビーが呆れているとトントンと再び扉をノックする音が部屋に響いた。

 そして現れたのは

 茶色の髪の毛と瞳を持つ高身長の

 可もない不可もない顔立ちの



 フツメンだった。



 黙る双子たち。

 ルビーははっとする。この子たちトキにまで失礼なことを言うんじゃ……!?

 フツメン?フツメンなのか?

 それとも……ありきたり~?ありきたり~?なのか

 身構えるルビーだったが



 双子は黙ったままだった。


 トキは跪き頭を垂れた。

「ブランク様、ラルフ様、オリビア様拝謁いたします」

「いやいや公式な場でもないしそんなに堅苦しくなる必要はないよ」

 ブランクはトキに近づき立たせた。

「そうよ遊びに来たのは私たちなんだから」

「自分の家くらい気楽にいなよ」

「王族が家にいるのに平民が家で落ち着けるわけないでしょ」

「「ルビーちゃんはいつも通りだけどね」」

「うるさいわね。こんなにしょっちゅう来られたらいやでも慣れるわよ」

 ぎゃあぎゃあと騒ぐ我が子たちとルビーを見て、懐かしさを感じるブランク。ルビーは双子には敬語を使わない。なぜなら敬語をやめないと毎日遊びに来るぞと脅されたからだ。

 最初はルビーもぎこちなかったがリトルアリス相手ということもあり、アリスと話しているような気分になりすぐに慣れた。


「あーあー!あーあー!」

 赤ちゃんの泣き声が部屋に響いた。

「おーよしよし……皆様少々失礼致します」

 トキは一言断りをいれると手際よくおしめを変えていく。双子がその様子をトキの両隣に立って見ている。替え終わった後3人は赤ちゃんを取り囲みながら何やら楽しく話をしている。

 ルビーはおしめを外のゴミ箱に捨てるために外に出た。

 ゴミ箱に捨て、振り返るとブランクが立っていた。

「ブランク…………王子様」

「えっと……とても優しそうなご主人だね」

「ええ、私には勿体ないほど良い方でございます」

 本当に彼はなぜルビーを選んでくれたのだろうか。

「…………………………」

 ブランクは言葉を探しているのか口をモゴモゴとさせている。それとも何か言いたいことでもあるのだろうか。


「あらルビー浮気?ダメよあんな素敵な旦那様を悲しませちゃあ」

「「!?」」

 浮気!?誰が!?
 声をかけてきたのは隣に住む話好きのおばさんだった。

「違うわよ。この人はただの知り合いよ!」

「わかってるわよ~。ちょっとからかっただけじゃない。あなたがトキにメロメロなのは皆知ってるわよお」

 バシンっと思いっきり背中を叩かれた。痛い。

「以前ルビーさんに迷子になってしまった私の子供を保護してもらったんです」

「あら~あなたあの可愛い双子ちゃんのパパさん?髪の毛の色は同じだけど顔立ちはあんまり似てないわね」

 双子たちはルビーの家では本来の色に戻しているが外に出る時は髪の毛を茶色にしている。今ブランクも子供たちと同様茶色の髪に変えている。

「はははよく言われます。子供たちは妻に似ているんです」

「んま~よっぽときれいな奥様なのね。あなたもハンサムさんだからお似合い夫婦ね」

「ありがとうございます」

 にこやかに答えるブランクにおばさんは好意を持ったのか話し続ける。

「ここのご主人ね。騎士様なのよ。でも休日は修道院とかいろいろ困った人達の手伝いをするよくできた人でね~。あっ、でもルビーちゃんや甥っ子君のことも本当に大切にしているのよ。ルビーちゃんもご主人も自分の子どもでもないのにえらいわよね~。でもご主人も幸せ者よね~。ルビーちゃん今は平民だけど、元はお貴族様なのよ。ご主人良い人だけど顔は微妙だしド平民の血筋だし、本来ルビーちゃんみたいな高貴なお嬢さんをお嫁になんてもらえないわよ~」

 その後もしゃべるしゃべるおばさま。

 ルビーは勘弁してくれと思いながらブランクを見るが、へっぽこでも王族。さわやかスマイルが顔に張り付いている。

 ひたすら相槌を打つだけの一方的な会話が終わり、たくさん話すことができて満足そうなおばさまは去っていった。

 いや、流石に長すぎだ。怒っていないといいが……。


「ルビー」

「は、はい!」

 思わず大きな声が出てしまった。恥ずかしい。ブランクはそんなルビーを真っ直ぐに見据えると口を開いた。

「幸せなんだね」

 そういう彼の瞳はとても穏やかだった。

「はい、私はとても幸せです。…………王子様は幸せですか?」

 いや、いちいち聞かなくてもわかる。だが昔のことが懐かしくて尋ねていた。幼稚で愚かで、自分中心でしか物事を考えられなかった自分たち。

 だがそんな自分たちが今こんなに穏やかな瞳をしていられるのは

「もちろん、私も幸せだよ。お互い少し大人になることができたようだね」

「きっと…………………そうだと思います」

 自分を変えることができたからだと思う。
 
 二人の間には穏やかな空気が漂う。





 その空気感のせいだろうか。

 彼らのやりとりを盗み見ていた視線に気づかなかったのは。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

愛されない皇妃~最強の母になります!~

椿蛍
ファンタジー
愛されない皇妃『ユリアナ』 やがて、皇帝に愛される寵妃『クリスティナ』にすべてを奪われる運命にある。 夫も子どもも――そして、皇妃の地位。 最後は嫉妬に狂いクリスティナを殺そうとした罪によって処刑されてしまう。 けれど、そこからが問題だ。 皇帝一家は人々を虐げ、『悪逆皇帝一家』と呼ばれるようになる。 そして、最後は大魔女に悪い皇帝一家が討伐されて終わるのだけど…… 皇帝一家を倒した大魔女。 大魔女の私が、皇妃になるなんて、どういうこと!? ※表紙は作成者様からお借りしてます。 ※他サイト様に掲載しております。

辺境は独自路線で進みます! ~見下され搾取され続けるのは御免なので~

紫月 由良
恋愛
 辺境に領地を持つマリエ・オリオール伯爵令嬢は、貴族学院の食堂で婚約者であるジョルジュ・ミラボーから婚約破棄をつきつけられた。二人の仲は険悪で修復不可能だったこともあり、マリエは快諾すると学院を早退して婚約者の家に向かい、その日のうちに婚約が破棄された。辺境=田舎者という風潮によって居心地が悪くなっていたため、これを機に学院を退学して領地に引き籠ることにした。  魔法契約によりオリオール伯爵家やフォートレル辺境伯家は国から離反できないが、関わり合いを最低限にして独自路線を歩むことに――。   ※小説家になろう、カクヨムにも投稿しています

いつだって二番目。こんな自分とさよならします!

椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。 ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。 ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。 嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。  そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!? 小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。 いつも第一王女の姉が優先される日々。 そして、待ち受ける死。 ――この運命、私は変えられるの? ※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。

処理中です...