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127.ルビー魔物に襲われた記憶
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大事な人を失くそうと時間は過ぎていく。こなすべき仕事はこなさねばならない。今日も修道院は多くの患者でざわついている。そんな中でも目立つ甲高い声。
「ボスさ~~~ん」
ボスに対して甘い声を上げるのはルビーではない。ビアンカだ。
彼女はボスさん、ボスさんと他の患者には目もくれず、ひたすらボスにくっついている。周囲にどんな目で見られようと構わないと言わんばかりに。
「ルビー、あなた見られてるわよ」
「わかってるわよ。私からボスさんを盗ることができて嬉しいんでしょ」
勝ち誇ったような見下すような視線をルビーに向けるビアンカ。その顔には以前のような優しさはない。傲慢で意地が悪そうな顔だ。
「悔しくないの?」
「あんまり」
強がりではなく本当に悔しいとかは思わなかった。むしろウェンディが生きている間には色々と貰えて良かったと思っているくらいだ。
ボスはウェンディが亡くなった後、笑顔や口数が減ったルビーから辛気臭い女と言って離れていった。ボスからルビーへの気持ちが薄れていっていることに気づいたビアンカはボスへ猛アプローチをかまし見事射止めたというわけだ。
「あなた大人になったわね」
周りもその言葉にうんうんと頷く。ルビーは周囲の反応にうっさいと言うと顔を真っ赤にして逃げていった。
「あの子最近いい感じよね。ツンデレだけど」
「きっとウェンディのおかげよね」
「それに比べてあっちは物を貰っても一切誰にも分けようとしないし、ボスさんがいないときは仕事もしないし、どんどん態度が悪化していってるわよね」
「まあルビーが気にしてないのが救いよね」
先輩修道女たちから離れ廊下に佇むルビー。
その目には涙が浮かんでいた。
「ルビー」
呼ばれて振り返った先にいたのは修道長だった。
「あらあら意外と泣き虫さんね」
慌てて目を擦るルビーを暖かい眼差しで見る修道長。
「ウェンディがいなくなって寂しいわね」
こくりと頷くルビー。
「でもあの子に恥じない生き方をするって決めたから、落ち込んでなんていられない」
「そう」
「それでは仕事があるので失礼します」
去っていくルビーの後ろ姿を見えなくなるまで見続ける修道長だった。
先程の場所に戻ったルビー。再びあの男女が視界に入る。
悔しくなんかない。それは本心だ。
だが、
ジロジロ
ニヤニヤと
鬱陶しくてたまらない!
最近は同室ということもあり寝る前に必ずもらったものを見せつけたり、褒められたの~可愛いって言われたの~ルビーの悪口言ってわよ~といちいちボスとの会話などを報告してくる。
あ、そうですかという感じではあるが毎日だと鬱陶しいことこの上ない。
でも
なんだかこの感じ昔自分がやったことと似ていると感じるのは気のせいだろうか。
~~~~~~
今日はルビーは清掃当番だった。もくもくと部屋や廊下を掃除していると外から悲鳴が聞こえてきた。それも一つではないたくさんの悲鳴だ。
何事?
ちょうど目の前にあった外に続く扉を開き一歩踏み出した。
「え?」
ルビーは目の前の光景に足が動かなくなった。
「きゃー来ないでー!」
「た、助けてくれー!」
「皆逃げろ!」
「魔物だー!」
そう、人々を襲う20体程の魔物の姿があった。
一瞬牛かと思ったが、茶色に異常に発達した筋肉質の身体。そして額に生える一本の鋭い角が普通の牛ではないと物語っている。
魔物はその鋭い角で次から次へと人を襲っていく。その巨体に見合わぬ素早い動きは避けるのが難しい。
に……逃げなくては。幸いにもすぐ後ろに扉がある。だが下がろうとした足が止まる。
「お、おばあさん……!」
腰痛持ちでよく来るおばあさんがおろおろとしているのが目に入った。いつも優しく穏やかな笑みでありがとうと言ってくれる人。孫が結婚すると喜んでいた顔が頭を過る。
気づいたら駆け出し、彼女の腕を掴んでいた。
「こっちよ!」
「ルビーちゃん!?」
「急いで!」
少々強引に引っ張りながら扉に向かうがその前に人集りができている。
「嘘でしょ……?」
扉が閉まっている――――――。
群がる人たちがどれだけ叩こうと声を張り上げようと中にいる人は開ける気がないようだ。すまないすまないと声が聞こえてくる。
あっちは駄目だ。
キョロキョロしているとボスとそれにくっつくビアンカがいた。こんなときにも彼女はルビーと目が合うとフフンと鼻で笑い絡めていた腕の力を更に強める。
こんなときにまでやらなくとも、実に呆れたものだ。……………………嘘でしょっ!?
ルビーの目が見開かれた。
ボスがビアンカを近づいてきた魔物に向かって突き飛ばしたからだ。
目を見張るビアンカにボスは自分の女をどうしようが勝手だろう?と笑いながら逃げていった。かつての友に鋭い角が迫るのを直視できず目を逸らす。
「なんなんだい、あの男は……」
おばあさんの呟きに全くだと思いつつ、ボスの側に居続けていたら自分が……と思ったら震えた。
おばあさんがルビーだけ逃げるように言うが、そんなことはしたくなかった。幸いなことに魔物の数がそこまで多くはない。うまくいけば逃げられるはず。
再び辺りを見回すと広い道で魔物がいないところがあった。あそこだ!おばあさんの手をひいて走る。
たまに振り返りながら……それが一瞬の緩みを生んだ。前に視線を戻した時、真正面に魔物が一頭いた。猛スピードで駆けてくる。
距離があるから避けられる。
だが動かない足。
おばあさんがルビーの前に出る。
あっ……それはいけない。
おばあさんに覆いかぶさって目を強く瞑る。
が衝撃が来ない。
「王宮の兵士が来たぞー!」
「騎士様!助けてくださいー!」
騒ぎに気づいた王宮の兵士が到着したようだ。ゆっくりと目を開くと目の前に魔物を斬りつけた一人の騎士が立っていた。彼はすぐさま次の魔物に向かっていった。
「あの人…………」
「怪我はないかい!?」
「私はないわよ!おばあさんは!?」
「私は老い先短いからいいんだよ!私なんか庇わなくたって良かったのに……」
魔法の発動が見える。一瞬アリスが浮かんだが……違う。彼女の魔法はもっと優美で華やかだ。
魔力を使えない魔物だったのですぐに鎮圧された。
ほっと息を吐く。
「痛いよー!」
至るところからそのような声が上がる。怪我人だけであれば良いが……。
「あ!行かなきゃ!」
こういうときこそ、治癒魔法の出番だ。走り出すルビーに再び声がかけられた。
「ルビーちゃん!」
足を止め振り返るルビー。
「ありがとうね!」
手を振り再び走り出すルビーを見送るおばあさん。
「本当に変わったわ」
ついこの間まで心のないお礼だと文句を言っていたのに、今では心からのお礼を受ける存在になっている。大事な人を失った。男にも捨てられた。それでも彼女は前に進んでいく力を持っている。
「どうか彼女に幸あらんことを」
おばあさんは手の指を組むと、天にそう願った。
最後の人の手当が終わりふーーーっと息を吐くルビー。残念ながら亡くなった者もいた。ビアンカも……。
それにしても怖かった。
何もできなかった。
もっと強い魔物や数多くの魔物と戦うアリス。彼女がいかにすごいのか改めて思い知らされた。
なんで自分は彼女にあんな態度を取れたのか。
本当に
本当に……
恥ずかしい。
「ボスさ~~~ん」
ボスに対して甘い声を上げるのはルビーではない。ビアンカだ。
彼女はボスさん、ボスさんと他の患者には目もくれず、ひたすらボスにくっついている。周囲にどんな目で見られようと構わないと言わんばかりに。
「ルビー、あなた見られてるわよ」
「わかってるわよ。私からボスさんを盗ることができて嬉しいんでしょ」
勝ち誇ったような見下すような視線をルビーに向けるビアンカ。その顔には以前のような優しさはない。傲慢で意地が悪そうな顔だ。
「悔しくないの?」
「あんまり」
強がりではなく本当に悔しいとかは思わなかった。むしろウェンディが生きている間には色々と貰えて良かったと思っているくらいだ。
ボスはウェンディが亡くなった後、笑顔や口数が減ったルビーから辛気臭い女と言って離れていった。ボスからルビーへの気持ちが薄れていっていることに気づいたビアンカはボスへ猛アプローチをかまし見事射止めたというわけだ。
「あなた大人になったわね」
周りもその言葉にうんうんと頷く。ルビーは周囲の反応にうっさいと言うと顔を真っ赤にして逃げていった。
「あの子最近いい感じよね。ツンデレだけど」
「きっとウェンディのおかげよね」
「それに比べてあっちは物を貰っても一切誰にも分けようとしないし、ボスさんがいないときは仕事もしないし、どんどん態度が悪化していってるわよね」
「まあルビーが気にしてないのが救いよね」
先輩修道女たちから離れ廊下に佇むルビー。
その目には涙が浮かんでいた。
「ルビー」
呼ばれて振り返った先にいたのは修道長だった。
「あらあら意外と泣き虫さんね」
慌てて目を擦るルビーを暖かい眼差しで見る修道長。
「ウェンディがいなくなって寂しいわね」
こくりと頷くルビー。
「でもあの子に恥じない生き方をするって決めたから、落ち込んでなんていられない」
「そう」
「それでは仕事があるので失礼します」
去っていくルビーの後ろ姿を見えなくなるまで見続ける修道長だった。
先程の場所に戻ったルビー。再びあの男女が視界に入る。
悔しくなんかない。それは本心だ。
だが、
ジロジロ
ニヤニヤと
鬱陶しくてたまらない!
最近は同室ということもあり寝る前に必ずもらったものを見せつけたり、褒められたの~可愛いって言われたの~ルビーの悪口言ってわよ~といちいちボスとの会話などを報告してくる。
あ、そうですかという感じではあるが毎日だと鬱陶しいことこの上ない。
でも
なんだかこの感じ昔自分がやったことと似ていると感じるのは気のせいだろうか。
~~~~~~
今日はルビーは清掃当番だった。もくもくと部屋や廊下を掃除していると外から悲鳴が聞こえてきた。それも一つではないたくさんの悲鳴だ。
何事?
ちょうど目の前にあった外に続く扉を開き一歩踏み出した。
「え?」
ルビーは目の前の光景に足が動かなくなった。
「きゃー来ないでー!」
「た、助けてくれー!」
「皆逃げろ!」
「魔物だー!」
そう、人々を襲う20体程の魔物の姿があった。
一瞬牛かと思ったが、茶色に異常に発達した筋肉質の身体。そして額に生える一本の鋭い角が普通の牛ではないと物語っている。
魔物はその鋭い角で次から次へと人を襲っていく。その巨体に見合わぬ素早い動きは避けるのが難しい。
に……逃げなくては。幸いにもすぐ後ろに扉がある。だが下がろうとした足が止まる。
「お、おばあさん……!」
腰痛持ちでよく来るおばあさんがおろおろとしているのが目に入った。いつも優しく穏やかな笑みでありがとうと言ってくれる人。孫が結婚すると喜んでいた顔が頭を過る。
気づいたら駆け出し、彼女の腕を掴んでいた。
「こっちよ!」
「ルビーちゃん!?」
「急いで!」
少々強引に引っ張りながら扉に向かうがその前に人集りができている。
「嘘でしょ……?」
扉が閉まっている――――――。
群がる人たちがどれだけ叩こうと声を張り上げようと中にいる人は開ける気がないようだ。すまないすまないと声が聞こえてくる。
あっちは駄目だ。
キョロキョロしているとボスとそれにくっつくビアンカがいた。こんなときにも彼女はルビーと目が合うとフフンと鼻で笑い絡めていた腕の力を更に強める。
こんなときにまでやらなくとも、実に呆れたものだ。……………………嘘でしょっ!?
ルビーの目が見開かれた。
ボスがビアンカを近づいてきた魔物に向かって突き飛ばしたからだ。
目を見張るビアンカにボスは自分の女をどうしようが勝手だろう?と笑いながら逃げていった。かつての友に鋭い角が迫るのを直視できず目を逸らす。
「なんなんだい、あの男は……」
おばあさんの呟きに全くだと思いつつ、ボスの側に居続けていたら自分が……と思ったら震えた。
おばあさんがルビーだけ逃げるように言うが、そんなことはしたくなかった。幸いなことに魔物の数がそこまで多くはない。うまくいけば逃げられるはず。
再び辺りを見回すと広い道で魔物がいないところがあった。あそこだ!おばあさんの手をひいて走る。
たまに振り返りながら……それが一瞬の緩みを生んだ。前に視線を戻した時、真正面に魔物が一頭いた。猛スピードで駆けてくる。
距離があるから避けられる。
だが動かない足。
おばあさんがルビーの前に出る。
あっ……それはいけない。
おばあさんに覆いかぶさって目を強く瞑る。
が衝撃が来ない。
「王宮の兵士が来たぞー!」
「騎士様!助けてくださいー!」
騒ぎに気づいた王宮の兵士が到着したようだ。ゆっくりと目を開くと目の前に魔物を斬りつけた一人の騎士が立っていた。彼はすぐさま次の魔物に向かっていった。
「あの人…………」
「怪我はないかい!?」
「私はないわよ!おばあさんは!?」
「私は老い先短いからいいんだよ!私なんか庇わなくたって良かったのに……」
魔法の発動が見える。一瞬アリスが浮かんだが……違う。彼女の魔法はもっと優美で華やかだ。
魔力を使えない魔物だったのですぐに鎮圧された。
ほっと息を吐く。
「痛いよー!」
至るところからそのような声が上がる。怪我人だけであれば良いが……。
「あ!行かなきゃ!」
こういうときこそ、治癒魔法の出番だ。走り出すルビーに再び声がかけられた。
「ルビーちゃん!」
足を止め振り返るルビー。
「ありがとうね!」
手を振り再び走り出すルビーを見送るおばあさん。
「本当に変わったわ」
ついこの間まで心のないお礼だと文句を言っていたのに、今では心からのお礼を受ける存在になっている。大事な人を失った。男にも捨てられた。それでも彼女は前に進んでいく力を持っている。
「どうか彼女に幸あらんことを」
おばあさんは手の指を組むと、天にそう願った。
最後の人の手当が終わりふーーーっと息を吐くルビー。残念ながら亡くなった者もいた。ビアンカも……。
それにしても怖かった。
何もできなかった。
もっと強い魔物や数多くの魔物と戦うアリス。彼女がいかにすごいのか改めて思い知らされた。
なんで自分は彼女にあんな態度を取れたのか。
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