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89. アリスとルビー 時々ルカ①
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二人は互いに視線を合わせたまま暫く無言だった。
が先にルビーが口を開いた。
「何しに来たのよ?馬鹿にしに来たの?」
平民になったルビーはこれ以上失うものはないと敬語すら使わなくなった。そんはルビーに対しアリスは薄っすらと笑うばかり。
「そういうところが……そういうところが苛つくのよ!嫌いなのよ!いつも私の話しなんて適当に流して、真面目に相手にしない!何様よ!」
「ルビー嬢、不敬「ルカ様、お黙りを」はい」
不敬を咎めようとしたのに……解せぬ。
「仕方ないではありませんか」
「何が言いたいのよ」
「あなたがどんな相手になるというのです?」
「は…………?」
「見てください。まずこの輝くばかりの美貌と抜群のスタイル!あなたのちょっと可愛らしいだけの質素なお顔とペタンコボディと比べるまでもありません」
まあ人それぞれ好みはあるが、一般的に見てどちらが美しいかスタイルが良いかと聞かれたら全ての人がアリスと答えるだろう。
「次に剣術、魔法!その弱腕では剣を持つこともできぬでしょう?魔法は治癒魔法は使えるようですが、私に比べたらミジンコレベル。私から見たらあなたの魔法などあってないに等しいもの」
「女に剣は必要な「それに出自!」」
ルビーの十八番である話しの遮りをかますアリス。驚きで思わず言葉を失うルビー。
「この世で唯一無二の存在であるカサバイン家の末っ子娘!世界最強の大国ガルベラ王国の筆頭貴族にして、王家からの信頼厚く、同時に恐れられる家!あなたのような弱小伯爵家とは格が違うのですよ」
まあ、過去に母国では色々とあったし、王家からの実家の扱いもどうかと思うときもあったが今はそんなの無視だ。
「私だって宰「ああ!」」
またまた遮るアリス。
「あなたは侯爵位である宰相の孫でしたね。でもあなたのご実家は伯爵家でしょう?何を勘違いされているのやら……。侯爵の爵位も父君の兄上が継がれる上に、何やら次期侯爵と伯爵は非常に仲が悪いそうですね。もともと仲が良くないのに父君が兄上の婚約者を寝取ったことで完全に縁が切れたとか……事実ですか?宰相からもあまりにも愚かすぎて父娘共に捨て置かれてるそうではないですか」
「そんなことない!」
「あら?次期侯爵の御息女はとても優秀で宰相様自ら教える姿も見られたとか……。あなたは……?」
「わ……私にはそこまでレベルの高いことは求められてなかったもの」
「なんと!王子妃予定の者よりも優秀さが求められるとは!従姉妹様は皇太子妃予定でございますか?あら、でも既にマリーナ様がいらっしゃいますよね?はっ!では次代?少々気が早いのでは?」
ちなみにルビーの従姉妹の侯爵令嬢は同じ侯爵家の令息と婚約間近と噂がある。ルビーは何かないかと必至に考える。
「…………!」
ニヤリと笑うルビー。
「色々持ってるくせに、あなたは夫の愛を得られなかったじゃない!彼が選んだのは私よ!」
これは勝った!
これだけは勝った!
彼は間違いなくアリスよりもルビーを好いている。それに二人はまだ閨も共にしていない。
「夫が他の女に心を寄せ、他の女のために行動する気分はどうだった?魔物が現れれば突き出される気分はどう?あははっ!私なら嫌だわ!最悪よ!あなた……憐れだわ!」
高らかに言い放つルビー。対するアリスは呆れ顔だ。
「何よ……何なのよ、その顔は!?」
「夫と仲良くせねばならぬのですか?」
「は?」
「嫌いな相手とベッドを共にせねばならぬのですか?」
「え?」
「私はどうでも良い……嫌いな人間と夫だからといって仲良くしようと思いません。むしろ触れられなくて……よっしゃ!と思ってしまいますが」
「………………でも普通仲良くしようと思うものじゃ……。子供も必要だろうし……」
「最初はあちらもそれなりの関係を築こうとしているようでしたが、所詮は口だけ。そのうち口も態度も仲良くする気がない相手になぜ私が歩み寄らねばならぬのですか?子供は……いないならいないで良いですし、産むならば別に彼の子供でなくてもねぇ。国にとっても重要なのは彼の血ではなく私の魔力を受け継ぐ子供でしょう?」
「でも普通は……」
「そもそも庶出の第四王子と他国から来た王子妃。大事なのは婚姻関係にあるということです。そもそもブランク様と会わずとも会話がなくとも寂しくありませんし。公務も公式行事以外はこれだけたくさんの使用人がいるのですから、用がある時は彼らが伝達係になってくれれば良いですよね」
「ブランクのこと……嫌いなのね」
ニコリと笑むアリス。それは肯定としか捉えようがない。
「それに、私よりもあなたの方が憐れじゃないですか」
「…………何を……」
「大好きなルカ王子に愛されなくて」
「なっ……!婚約破棄にはなったけど、ルカ様は私のことを愛しているわよ!でも王様の命令だから仕方なく……!」
「ねえ、どんな気分でした?愛する人の婚約者になれたのに、愛されない気分は?」
「黙りなさいよ!いつだってルカ様はお優しかったわ!私に優しかった!愛されていなくなんてない!」
ふふっとちらりとルカを見るアリス。
「僕は君が大嫌いだった……いや、大嫌いだよ」
「ルカ様……?」
「でも君以上に嫌いなブランクの想い人だし、僕が他の人と婚約したら何するかわからないぐらい君は愚か者だから、君と婚約しただけだよ。君との交流は苦痛だったけど、ブランクへの嫌がらせができたのは良かったね。ブランクの良い顔が見れたよ」
「ルカ様は私とブランクの仲を嫉妬してたんじゃ……」
「アハハっなぜ僕が?」
「なぜって……だって、私達の仲を見て悔しそうな顔をするブランクを見て嬉しそうにしていらしたではないですか……」
「アハハっ君最低だね。ブランクがショックを受けてるのわかっていたんだ。わかった上で彼に優しくしたり、馴れ馴れしく接して、いざとなったら僕との仲を見せつけていたんだね」
「それは……でも、嫉妬してほしくて」
「それやめてくれるかな?」
「えっ?」
「嫉妬してないし。そもそもブランクが嫌いだから嫌がらせで君と婚約したって言ってるだろ。あいつを羨ましいと思ったことなんてないよ。ああ、まあアリスと婚姻したことは羨ましくはなかったけど運の良いやつとは思ったね」
「では私のことは……」
「うん?嫌いだよ。お花畑の頭、軽はずみな言動、王子の婚約者としてありえないよね。それをカバーする何かを持っているわけでもないし。容姿、地位、君が持ってるもので突出したものって何?ああ、性格の悪さ?そんなもの僕は魅力的に感じないよ。
まあ色々と我慢することもあったけど、無事に破棄できて良かったよ。婚約者としての日々は苦痛だったけどブランクを苦しめられたから良かったかな?ありがとうルビー嬢」
ルカの言葉に涙が溢れるルビー。ルカのことは本気で好いていたようだ。
「…………んでよ……」
ルビーの目がアリスを捉える。
「もう一度お願いできますか?」
「なんでよ!」
「もう少し詳しく」
「なんで処刑じゃないのよ!?不敬罪で処刑って意見もあったんでしょ!?こんな……こんな目に合うなら処刑の方がましよ!」
平民落ち?
修道院行き?
婚約破棄?
周りの反応、婚約者からの本音。
なんでこんな嫌な思いをしないといけないの。
いっそのこと死を与えられたほうが楽じゃない。
「なんでって…………」
アリスの声に伏せていた顔を上げる。
喉からヒッと声が漏れる。
アリスの顔には悪魔と見紛うばかりの、
残酷な美しい笑みが張り付いていたから。
が先にルビーが口を開いた。
「何しに来たのよ?馬鹿にしに来たの?」
平民になったルビーはこれ以上失うものはないと敬語すら使わなくなった。そんはルビーに対しアリスは薄っすらと笑うばかり。
「そういうところが……そういうところが苛つくのよ!嫌いなのよ!いつも私の話しなんて適当に流して、真面目に相手にしない!何様よ!」
「ルビー嬢、不敬「ルカ様、お黙りを」はい」
不敬を咎めようとしたのに……解せぬ。
「仕方ないではありませんか」
「何が言いたいのよ」
「あなたがどんな相手になるというのです?」
「は…………?」
「見てください。まずこの輝くばかりの美貌と抜群のスタイル!あなたのちょっと可愛らしいだけの質素なお顔とペタンコボディと比べるまでもありません」
まあ人それぞれ好みはあるが、一般的に見てどちらが美しいかスタイルが良いかと聞かれたら全ての人がアリスと答えるだろう。
「次に剣術、魔法!その弱腕では剣を持つこともできぬでしょう?魔法は治癒魔法は使えるようですが、私に比べたらミジンコレベル。私から見たらあなたの魔法などあってないに等しいもの」
「女に剣は必要な「それに出自!」」
ルビーの十八番である話しの遮りをかますアリス。驚きで思わず言葉を失うルビー。
「この世で唯一無二の存在であるカサバイン家の末っ子娘!世界最強の大国ガルベラ王国の筆頭貴族にして、王家からの信頼厚く、同時に恐れられる家!あなたのような弱小伯爵家とは格が違うのですよ」
まあ、過去に母国では色々とあったし、王家からの実家の扱いもどうかと思うときもあったが今はそんなの無視だ。
「私だって宰「ああ!」」
またまた遮るアリス。
「あなたは侯爵位である宰相の孫でしたね。でもあなたのご実家は伯爵家でしょう?何を勘違いされているのやら……。侯爵の爵位も父君の兄上が継がれる上に、何やら次期侯爵と伯爵は非常に仲が悪いそうですね。もともと仲が良くないのに父君が兄上の婚約者を寝取ったことで完全に縁が切れたとか……事実ですか?宰相からもあまりにも愚かすぎて父娘共に捨て置かれてるそうではないですか」
「そんなことない!」
「あら?次期侯爵の御息女はとても優秀で宰相様自ら教える姿も見られたとか……。あなたは……?」
「わ……私にはそこまでレベルの高いことは求められてなかったもの」
「なんと!王子妃予定の者よりも優秀さが求められるとは!従姉妹様は皇太子妃予定でございますか?あら、でも既にマリーナ様がいらっしゃいますよね?はっ!では次代?少々気が早いのでは?」
ちなみにルビーの従姉妹の侯爵令嬢は同じ侯爵家の令息と婚約間近と噂がある。ルビーは何かないかと必至に考える。
「…………!」
ニヤリと笑うルビー。
「色々持ってるくせに、あなたは夫の愛を得られなかったじゃない!彼が選んだのは私よ!」
これは勝った!
これだけは勝った!
彼は間違いなくアリスよりもルビーを好いている。それに二人はまだ閨も共にしていない。
「夫が他の女に心を寄せ、他の女のために行動する気分はどうだった?魔物が現れれば突き出される気分はどう?あははっ!私なら嫌だわ!最悪よ!あなた……憐れだわ!」
高らかに言い放つルビー。対するアリスは呆れ顔だ。
「何よ……何なのよ、その顔は!?」
「夫と仲良くせねばならぬのですか?」
「は?」
「嫌いな相手とベッドを共にせねばならぬのですか?」
「え?」
「私はどうでも良い……嫌いな人間と夫だからといって仲良くしようと思いません。むしろ触れられなくて……よっしゃ!と思ってしまいますが」
「………………でも普通仲良くしようと思うものじゃ……。子供も必要だろうし……」
「最初はあちらもそれなりの関係を築こうとしているようでしたが、所詮は口だけ。そのうち口も態度も仲良くする気がない相手になぜ私が歩み寄らねばならぬのですか?子供は……いないならいないで良いですし、産むならば別に彼の子供でなくてもねぇ。国にとっても重要なのは彼の血ではなく私の魔力を受け継ぐ子供でしょう?」
「でも普通は……」
「そもそも庶出の第四王子と他国から来た王子妃。大事なのは婚姻関係にあるということです。そもそもブランク様と会わずとも会話がなくとも寂しくありませんし。公務も公式行事以外はこれだけたくさんの使用人がいるのですから、用がある時は彼らが伝達係になってくれれば良いですよね」
「ブランクのこと……嫌いなのね」
ニコリと笑むアリス。それは肯定としか捉えようがない。
「それに、私よりもあなたの方が憐れじゃないですか」
「…………何を……」
「大好きなルカ王子に愛されなくて」
「なっ……!婚約破棄にはなったけど、ルカ様は私のことを愛しているわよ!でも王様の命令だから仕方なく……!」
「ねえ、どんな気分でした?愛する人の婚約者になれたのに、愛されない気分は?」
「黙りなさいよ!いつだってルカ様はお優しかったわ!私に優しかった!愛されていなくなんてない!」
ふふっとちらりとルカを見るアリス。
「僕は君が大嫌いだった……いや、大嫌いだよ」
「ルカ様……?」
「でも君以上に嫌いなブランクの想い人だし、僕が他の人と婚約したら何するかわからないぐらい君は愚か者だから、君と婚約しただけだよ。君との交流は苦痛だったけど、ブランクへの嫌がらせができたのは良かったね。ブランクの良い顔が見れたよ」
「ルカ様は私とブランクの仲を嫉妬してたんじゃ……」
「アハハっなぜ僕が?」
「なぜって……だって、私達の仲を見て悔しそうな顔をするブランクを見て嬉しそうにしていらしたではないですか……」
「アハハっ君最低だね。ブランクがショックを受けてるのわかっていたんだ。わかった上で彼に優しくしたり、馴れ馴れしく接して、いざとなったら僕との仲を見せつけていたんだね」
「それは……でも、嫉妬してほしくて」
「それやめてくれるかな?」
「えっ?」
「嫉妬してないし。そもそもブランクが嫌いだから嫌がらせで君と婚約したって言ってるだろ。あいつを羨ましいと思ったことなんてないよ。ああ、まあアリスと婚姻したことは羨ましくはなかったけど運の良いやつとは思ったね」
「では私のことは……」
「うん?嫌いだよ。お花畑の頭、軽はずみな言動、王子の婚約者としてありえないよね。それをカバーする何かを持っているわけでもないし。容姿、地位、君が持ってるもので突出したものって何?ああ、性格の悪さ?そんなもの僕は魅力的に感じないよ。
まあ色々と我慢することもあったけど、無事に破棄できて良かったよ。婚約者としての日々は苦痛だったけどブランクを苦しめられたから良かったかな?ありがとうルビー嬢」
ルカの言葉に涙が溢れるルビー。ルカのことは本気で好いていたようだ。
「…………んでよ……」
ルビーの目がアリスを捉える。
「もう一度お願いできますか?」
「なんでよ!」
「もう少し詳しく」
「なんで処刑じゃないのよ!?不敬罪で処刑って意見もあったんでしょ!?こんな……こんな目に合うなら処刑の方がましよ!」
平民落ち?
修道院行き?
婚約破棄?
周りの反応、婚約者からの本音。
なんでこんな嫌な思いをしないといけないの。
いっそのこと死を与えられたほうが楽じゃない。
「なんでって…………」
アリスの声に伏せていた顔を上げる。
喉からヒッと声が漏れる。
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