76 / 186
76. 義兄と語る②
しおりを挟む
アリスはチラリとお菓子を美味しそうに食べる王子たちを見る。皆王妃と同じく金髪に金の瞳をしている。ダイラス国は従兄弟等血縁関係があるものと結婚を繰り返す傾向が強い為、大体の王族はこの色合い。
皇太子マキシムは優しげで穏やかな雰囲気の為、優雅な動作がとても似合う。体格も程よく筋肉がついた細マッチョ。纏う雰囲気やいつも微笑んでいるようで目は冷たいところが王妃にそっくりだと思う。
ユーリはガシッとした身体つきでザ・武人といった感じ。姿勢や態度を崩しがちで少し品がない。後継者争いが起きないように人を苛立たせる程正義感強めに振る舞うくせがある。だが、時折見せる冷たい視線は正義感とは程遠い。
ルカはひょろ~とした身体つきで、態度も飄々としている。だいたいいつもニコニコと笑っていて一番何を考えているのか分かりづらい男。
じーと見ているとルカと目が合う。にこりと笑いかけられた。
「結局、ザラ様王宮に残るんだって?」
ザラの姪であるキャリーがユーリの婚約者になったことで、二人が婚姻すれば伯爵家からの支援が引き続き行われることになった。二人が婚姻後、ザラは王宮から離れる選択肢があることを示されたが首を横に振ったそう。
「ええ、そのようですね」
「それはそうだろうね。彼女は心から父上のことを慕っているからね」
「まあ見た目はそれなりに良いし、そこそこ優しいからね。怖~い王妃や冷た~い使用人に囲まれる中での唯一の癒やしぐらいにはなるよね」
ユーリの問いかけに答えるマキシムとルカ。彼らの会話からはザラへの嫌悪感はなさそうだ。
「あら。母上様の恋敵が王宮に居座るというのに随分呑気なのですね」
ああ、と3人は笑う。
だってあの方は無害だから……と。
「父上の気持ちは自分に無いってきちんと理解しているし、母上のことも心から怖がってるしな。何かをやらかす気配がまったくない」
ユーリ義兄様……それは一応褒め言葉なのですよね?
「アリス知ってる?昔は使用人たちに嫌がらせされたり、視線も滅茶苦茶冷たいものだったけど、今ではかなり緩和されたんだよ」
そもそも金蔓の彼女に嫌がらせしている方がおかしいと思うのは自分だけなのか。まあそれはさておき、彼女の振る舞いは相思相愛の王妃がいる王の側妃として完璧なものだった。王の寵愛なく、出しゃばらず、傲慢な言動もしない、親から多大なる献金もある。誰がどう見ても政略によるものだとわかる。それに何より……
「ブランクが後継者争いに無害だったからね」
優秀な王妃腹の王子たちに比べ劣る存在。これならば王妃も3人の王子たちも何か脅かされることはない。忌々しい存在から一転……存在感もなく、政治にも関与してこない、ただの金だけ側妃に哀れみを感じる者が多くなった。
即ち可哀想と見られがちになった。
「それに比べてブランクはいただけない」
皇太子も毒を吐くことがあるのね、とお茶を飲みつつ思う。
「ブランクは傲慢さが隠しきれていないからな」
あら、正義感が強い人間が人の悪口を言っても良いのかしら?
「自分では完璧に隠しているつもり、というよりも……そもそも傲慢だと思っていないみたいだけどね」
あいつの傲慢さ、プライドの高さは自分たち以上だと思うと小さい声で足された。
ザラの元で育てられたブランクは徹底的に出しゃばらず、存在感を消すように育てられた。その甲斐あってか後継者争いに参加しようとか、王妃や異母兄に敵対心はないよう。だが王子なのになぜ自分は兄たちのように敬われない。母親の金で給料を払ってやっているのになぜ使用人たちは自分の言いなりにならない等々、傲慢な考えを抱いている。そしてそれを隠しきれていない。
ザラではなく野心のある母親の元で育っていたらかなりの我儘傲慢不遜王子になっていたと皆思っている。まだこの程度で済んでいるのはザラのおかげだと。むしろ、あんな息子自分なら嫌だわーと同情的な目で見られることもしばしば。
彼らのブランクに対する評価を黙って聞いていたアリスは唐突に際どい質問をした。
皇太子マキシムは優しげで穏やかな雰囲気の為、優雅な動作がとても似合う。体格も程よく筋肉がついた細マッチョ。纏う雰囲気やいつも微笑んでいるようで目は冷たいところが王妃にそっくりだと思う。
ユーリはガシッとした身体つきでザ・武人といった感じ。姿勢や態度を崩しがちで少し品がない。後継者争いが起きないように人を苛立たせる程正義感強めに振る舞うくせがある。だが、時折見せる冷たい視線は正義感とは程遠い。
ルカはひょろ~とした身体つきで、態度も飄々としている。だいたいいつもニコニコと笑っていて一番何を考えているのか分かりづらい男。
じーと見ているとルカと目が合う。にこりと笑いかけられた。
「結局、ザラ様王宮に残るんだって?」
ザラの姪であるキャリーがユーリの婚約者になったことで、二人が婚姻すれば伯爵家からの支援が引き続き行われることになった。二人が婚姻後、ザラは王宮から離れる選択肢があることを示されたが首を横に振ったそう。
「ええ、そのようですね」
「それはそうだろうね。彼女は心から父上のことを慕っているからね」
「まあ見た目はそれなりに良いし、そこそこ優しいからね。怖~い王妃や冷た~い使用人に囲まれる中での唯一の癒やしぐらいにはなるよね」
ユーリの問いかけに答えるマキシムとルカ。彼らの会話からはザラへの嫌悪感はなさそうだ。
「あら。母上様の恋敵が王宮に居座るというのに随分呑気なのですね」
ああ、と3人は笑う。
だってあの方は無害だから……と。
「父上の気持ちは自分に無いってきちんと理解しているし、母上のことも心から怖がってるしな。何かをやらかす気配がまったくない」
ユーリ義兄様……それは一応褒め言葉なのですよね?
「アリス知ってる?昔は使用人たちに嫌がらせされたり、視線も滅茶苦茶冷たいものだったけど、今ではかなり緩和されたんだよ」
そもそも金蔓の彼女に嫌がらせしている方がおかしいと思うのは自分だけなのか。まあそれはさておき、彼女の振る舞いは相思相愛の王妃がいる王の側妃として完璧なものだった。王の寵愛なく、出しゃばらず、傲慢な言動もしない、親から多大なる献金もある。誰がどう見ても政略によるものだとわかる。それに何より……
「ブランクが後継者争いに無害だったからね」
優秀な王妃腹の王子たちに比べ劣る存在。これならば王妃も3人の王子たちも何か脅かされることはない。忌々しい存在から一転……存在感もなく、政治にも関与してこない、ただの金だけ側妃に哀れみを感じる者が多くなった。
即ち可哀想と見られがちになった。
「それに比べてブランクはいただけない」
皇太子も毒を吐くことがあるのね、とお茶を飲みつつ思う。
「ブランクは傲慢さが隠しきれていないからな」
あら、正義感が強い人間が人の悪口を言っても良いのかしら?
「自分では完璧に隠しているつもり、というよりも……そもそも傲慢だと思っていないみたいだけどね」
あいつの傲慢さ、プライドの高さは自分たち以上だと思うと小さい声で足された。
ザラの元で育てられたブランクは徹底的に出しゃばらず、存在感を消すように育てられた。その甲斐あってか後継者争いに参加しようとか、王妃や異母兄に敵対心はないよう。だが王子なのになぜ自分は兄たちのように敬われない。母親の金で給料を払ってやっているのになぜ使用人たちは自分の言いなりにならない等々、傲慢な考えを抱いている。そしてそれを隠しきれていない。
ザラではなく野心のある母親の元で育っていたらかなりの我儘傲慢不遜王子になっていたと皆思っている。まだこの程度で済んでいるのはザラのおかげだと。むしろ、あんな息子自分なら嫌だわーと同情的な目で見られることもしばしば。
彼らのブランクに対する評価を黙って聞いていたアリスは唐突に際どい質問をした。
405
お気に入りに追加
5,154
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結保証】領地運営は私抜きでどうぞ~もう勝手におやりください~
ネコ
恋愛
伯爵領を切り盛りするロザリンは、優秀すぎるがゆえに夫から嫉妬され、冷たい仕打ちばかり受けていた。ついに“才能は認めるが愛してはいない”と告げられ離縁を迫られたロザリンは、意外なほどあっさり了承する。すべての管理記録と書類は完璧に自分の下へ置いたまま。この領地を回していたのは誰か、あなたたちが思い知る時が来るでしょう。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結保証】ご自慢の聖女がいるのだから、私は失礼しますわ
ネコ
恋愛
伯爵令嬢ユリアは、幼い頃から第二王子アレクサンドルの婚約者。だが、留学から戻ってきたアレクサンドルは「聖女が僕の真実の花嫁だ」と堂々宣言。周囲は“奇跡の力を持つ聖女”と王子の恋を応援し、ユリアを貶める噂まで広まった。婚約者の座を奪われるより先に、ユリアは自分から破棄を申し出る。「お好きにどうぞ。もう私には関係ありません」そう言った途端、王宮では聖女の力が何かとおかしな騒ぎを起こし始めるのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結保証】第二王子妃から退きますわ。せいぜい仲良くなさってくださいね
ネコ
恋愛
公爵家令嬢セシリアは、第二王子リオンに求婚され婚約まで済ませたが、なぜかいつも傍にいる女性従者が不気味だった。「これは王族の信頼の証」と言うリオンだが、実際はふたりが愛人関係なのでは? と噂が広まっている。ある宴でリオンは公衆の面前でセシリアを貶め、女性従者を擁護。もう我慢しません。王子妃なんてこちらから願い下げです。あとはご勝手に。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
願いの代償
らがまふぃん
恋愛
誰も彼もが軽視する。婚約者に家族までも。
公爵家に生まれ、王太子の婚約者となっても、誰からも認められることのないメルナーゼ・カーマイン。
唐突に思う。
どうして頑張っているのか。
どうして生きていたいのか。
もう、いいのではないだろうか。
メルナーゼが生を諦めたとき、世界の運命が決まった。
*ご都合主義です。わかりづらいなどありましたらすみません。笑って読んでくださいませ。本編15話で完結です。番外編を数話、気まぐれに投稿します。よろしくお願いいたします。
※ありがたいことにHOTランキング入りいたしました。たくさんの方の目に触れる機会に感謝です。本編は終了しましたが、番外編も投稿予定ですので、気長にお付き合いくださると嬉しいです。たくさんのお気に入り登録、しおり、エール、いいねをありがとうございます。R7.1/31
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】期間限定聖女ですから、婚約なんて致しません
との
恋愛
第17回恋愛大賞、12位ありがとうございました。そして、奨励賞まで⋯⋯応援してくださった方々皆様に心からの感謝を🤗
「貴様とは婚約破棄だ!」⋯⋯な〜んて、聞き飽きたぁぁ!
あちこちでよく見かける『使い古された感のある婚約破棄』騒動が、目の前ではじまったけど、勘違いも甚だしい王子に笑いが止まらない。
断罪劇? いや、珍喜劇だね。
魔力持ちが産まれなくて危機感を募らせた王国から、多くの魔法士が産まれ続ける聖王国にお願いレターが届いて⋯⋯。
留学生として王国にやって来た『婚約者候補』チームのリーダーをしているのは、私ロクサーナ・バーラム。
私はただの引率者で、本当の任務は別だからね。婚約者でも候補でもないのに、珍喜劇の中心人物になってるのは何で?
治癒魔法の使える女性を婚約者にしたい? 隣にいるレベッカはささくれを治せればラッキーな治癒魔法しか使えないけど良いのかな?
聖女に聖女見習い、魔法士に魔法士見習い。私達は国内だけでなく、魔法で外貨も稼いでいる⋯⋯国でも稼ぎ頭の集団です。
我が国で言う聖女って職種だからね、清廉潔白、献身⋯⋯いやいや、ないわ〜。だって魔物の討伐とか行くし? 殺るし?
面倒事はお断りして、さっさと帰るぞぉぉ。
訳あって、『期間限定銭ゲバ聖女⋯⋯ちょくちょく戦闘狂』やってます。いつもそばにいる子達をモフモフ出来るまで頑張りま〜す。
ーーーーーー
ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。
完結まで予約投稿済み
R15は念の為・・
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
大好きな旦那様が愛人を連れて帰還したので離縁を願い出ました
ネコ
恋愛
戦地に赴いていた侯爵令息の夫・ロウエルが、討伐成功の凱旋と共に“恩人の娘”を実質的な愛人として連れて帰ってきた。彼女の手当てが大事だからと、わたしの存在など空気同然。だが、見て見ぬふりをするのももう終わり。愛していたからこそ尽くしたけれど、報われないのなら仕方ない。では早速、離縁手続きをお願いしましょうか。
廃妃の再婚
束原ミヤコ
恋愛
伯爵家の令嬢としてうまれたフィアナは、母を亡くしてからというもの
父にも第二夫人にも、そして腹違いの妹にも邪険に扱われていた。
ある日フィアナは、川で倒れている青年を助ける。
それから四年後、フィアナの元に国王から結婚の申し込みがくる。
身分差を気にしながらも断ることができず、フィアナは王妃となった。
あの時助けた青年は、国王になっていたのである。
「君を永遠に愛する」と約束をした国王カトル・エスタニアは
結婚してすぐに辺境にて部族の反乱が起こり、平定戦に向かう。
帰還したカトルは、族長の娘であり『精霊の愛し子』と呼ばれている美しい女性イルサナを連れていた。
カトルはイルサナを寵愛しはじめる。
王城にて居場所を失ったフィアナは、聖騎士ユリシアスに下賜されることになる。
ユリシアスは先の戦いで怪我を負い、顔の半分を包帯で覆っている寡黙な男だった。
引け目を感じながらフィアナはユリシアスと過ごすことになる。
ユリシアスと過ごすうち、フィアナは彼と惹かれ合っていく。
だがユリシアスは何かを隠しているようだ。
それはカトルの抱える、真実だった──。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる