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76. 義兄と語る②

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 アリスはチラリとお菓子を美味しそうに食べる王子たちを見る。皆王妃と同じく金髪に金の瞳をしている。ダイラス国は従兄弟等血縁関係があるものと結婚を繰り返す傾向が強い為、大体の王族はこの色合い。

 皇太子マキシムは優しげで穏やかな雰囲気の為、優雅な動作がとても似合う。体格も程よく筋肉がついた細マッチョ。纏う雰囲気やいつも微笑んでいるようで目は冷たいところが王妃にそっくりだと思う。

 ユーリはガシッとした身体つきでザ・武人といった感じ。姿勢や態度を崩しがちで少し品がない。後継者争いが起きないように人を苛立たせる程正義感強めに振る舞うくせがある。だが、時折見せる冷たい視線は正義感とは程遠い。

 ルカはひょろ~とした身体つきで、態度も飄々としている。だいたいいつもニコニコと笑っていて一番何を考えているのか分かりづらい男。

 じーと見ているとルカと目が合う。にこりと笑いかけられた。

「結局、ザラ様王宮に残るんだって?」

 ザラの姪であるキャリーがユーリの婚約者になったことで、二人が婚姻すれば伯爵家からの支援が引き続き行われることになった。二人が婚姻後、ザラは王宮から離れる選択肢があることを示されたが首を横に振ったそう。

「ええ、そのようですね」

「それはそうだろうね。彼女は心から父上のことを慕っているからね」

「まあ見た目はそれなりに良いし、そこそこ優しいからね。怖~い王妃や冷た~い使用人に囲まれる中での唯一の癒やしぐらいにはなるよね」

 ユーリの問いかけに答えるマキシムとルカ。彼らの会話からはザラへの嫌悪感はなさそうだ。

「あら。母上様の恋敵が王宮に居座るというのに随分呑気なのですね」

 ああ、と3人は笑う。

 だってあの方は無害だから……と。

「父上の気持ちは自分に無いってきちんと理解しているし、母上のことも心から怖がってるしな。何かをやらかす気配がまったくない」

 ユーリ義兄様……それは一応褒め言葉なのですよね?

「アリス知ってる?昔は使用人たちに嫌がらせされたり、視線も滅茶苦茶冷たいものだったけど、今ではかなり緩和されたんだよ」

 そもそも金蔓の彼女に嫌がらせしている方がおかしいと思うのは自分だけなのか。まあそれはさておき、彼女の振る舞いは相思相愛の王妃がいる王の側妃として完璧なものだった。王の寵愛なく、出しゃばらず、傲慢な言動もしない、親から多大なる献金もある。誰がどう見ても政略によるものだとわかる。それに何より……

「ブランクが後継者争いに無害だったからね」

 優秀な王妃腹の王子たちに比べ劣る存在。これならば王妃も3人の王子たちも何か脅かされることはない。忌々しい存在から一転……存在感もなく、政治にも関与してこない、ただの金だけ側妃に哀れみを感じる者が多くなった。

 即ち可哀想と見られがちになった。

「それに比べてブランクはいただけない」

 皇太子も毒を吐くことがあるのね、とお茶を飲みつつ思う。

「ブランクは傲慢さが隠しきれていないからな」

 あら、正義感が強い人間が人の悪口を言っても良いのかしら?

「自分では完璧に隠しているつもり、というよりも……そもそも傲慢だと思っていないみたいだけどね」

 あいつの傲慢さ、プライドの高さは自分たち以上だと思うと小さい声で足された。

 ザラの元で育てられたブランクは徹底的に出しゃばらず、存在感を消すように育てられた。その甲斐あってか後継者争いに参加しようとか、王妃や異母兄に敵対心はないよう。だが王子なのになぜ自分は兄たちのように敬われない。母親の金で給料を払ってやっているのになぜ使用人たちは自分の言いなりにならない等々、傲慢な考えを抱いている。そしてそれを隠しきれていない。

 ザラではなく野心のある母親の元で育っていたらかなりの我儘傲慢不遜王子になっていたと皆思っている。まだこの程度で済んでいるのはザラのおかげだと。むしろ、あんな息子自分なら嫌だわーと同情的な目で見られることもしばしば。

 彼らのブランクに対する評価を黙って聞いていたアリスは唐突に際どい質問をした。

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