51 / 186
51. 一件落着
しおりを挟む
「皆が私をどう思っているか、わかった……」
可哀想なほど項垂れている公爵。
「陛下」
公爵を見る王。いや、なんかあまり顔を見たくないから首元あたりを見ておこう。
「このようなことになり申し訳ございません。全て私の責任にございます。我が家の妾の子を殿下方の妃にと申しておりましたが撤回致します。マリーナに関しましては可能であれば……このまま皇太子妃にしていただきたくお願い申し上げます」
なっ……図々しいと少数の声が上がる。未来の王妃の親になる野望を持つ者だ。が、正式な抗議が上る前に王妃が先制パンチをかます。
「もちろんです。マリーナほど皇太子妃にふさわしいものはおりません。マリーナほど完璧に妃教育を終えたものはおりませんのよ」
お前らの娘では能足りん。
「ありがとうございます。…………そして私は公爵を引退し、王宮からも去りたいと思います」
契約違反、監禁まがい。非人道的な行いだが相手は平民。それにそもそも愛人契約自体は同意されており、生活も足枷以外は高待遇。悲しいかな罪としては少々弱い。彼女たちへの慰謝料も公爵家を傾けさせるほどのものではない。
では何が一番ヤバイって?公爵のメンタル、羞恥心だ。これだけ皆の前で醜態を晒したのだ。もうここにいたくないと思うのは当然のこと。王も同じ男……なんか性癖とか暴露された日には彼と同じ決断をするだろう。
「許可す「「ダメです」」」
仲良く二人の女声の声がする。こんな非情なことを言うのはこの二人以外にはいない。
「王妃……、アリス……」
「性癖がなんですか!?女を失ったからなんですか!?あなたにはまだ政治力があります!それに王妃には実家の力も必要です。マリーナの役に立つべきです!それに公爵が退いたら夫人まで隠居しなくてはならないでしょう」
久しぶりに会えた親友。公爵と離婚する気はなさそうだが、本音を言ったぶん仲良くなるのかむしろ悪くなるのかはわからない。だが足が動くなら外に出られることも増えそうだ。今までの分もたくさん交流するつもりなのに。
「大丈夫ですよ公爵。やったことは非人道的な行い。ですが、彼女たちは感謝もしているのです。ただ相手の気持ちをすべて無視するような鬼畜のごとく所業をしたわけではないのですから!そんなに恥ずかしがらなくても良いのですよ!」
妾たちがうんうんと頷く。間違いなく娼館に売られるよりも幸せな生活だった。でも、契約期間過ぎてるし、足枷つけるし、なんかただのエロオヤジじゃね?とか思ってしまい気持ち悪くなってしまったのだ。
「いや、でも……」
いやいや、普通に嫌なんですけど。大臣たちも目がキョドっているじゃないか。
「え~~~~~い、やかましい!私にはまだ父上が必要なのです!恥ずかしい思いをするのがなんですか!?色々な方に迷惑をかけたのですから、何か利益を生み出してから去ってください!それに王妃になったときに後ろ盾や金がなければ私が惨めではないですか!変態だろうが政治力はあるんですからいいんですよ!」
マリーナが叫んだ。最後のが本音と言ったところだろう。いつも穏やかなマリーナから銭ゲバ発言が出たことで大臣たちは口がぽかーんと開いている。
「大丈夫ですよ公爵」
「アリス様……?」
「ここにいる殿方たちの中には特殊な性癖を持った者がたくさんおります。うまく隠しているだけ。きっと公爵に色々言ってくるものもおりましょう。そのときは私におっしゃってください。その方たちの恥ずかしい秘密を教えて差し上げます」
大臣たちの顔が青ざめる。ハハッそんなことができるものかと強気なものもいるよう。だが賢いものはアリスの目を見て本気だと悟る。
「アリス様……」
公爵の目が潤む。
「良いのですよ。マリーナ様が結婚されたら私達は家族になるのですから」
アリスの慈愛の笑み。
誰がそんな言葉と笑みに絆されるか。そもそもこんなふうに辱めをうけているのはアリスのせい。目が潤んでいるのは羞恥心から。
「公爵よ。私にはまだお前が必要だ。マリーナにも」
「陛下」
なぜ視線を逸らして言うのですか。しかし、と大臣たちをちらっと見る。自分の利益ばかりを考える者の多いこと。自分も女性のことでは利己的だが、国のことは第一に考えているつもりだ。
「畏まりました。ですが、なんのお咎めもなしというわけには参りません。しばらく謹慎したいと思います」
「あと、1年の減給でしょうか。こうしてあなたの私的な事情で会議が開かれたのですから、その迷惑料を国に払うのです」
アリス様……騒ぎを起こしたのはあなたですが……。
が、原因は自分だ。自分の愚かな行いのせい。
深々と頭を下げる。
「それでは、解散としよう」
王が疲れ切った声で告げる。
皆も何か疲れ切った顔をしていた。
可哀想なほど項垂れている公爵。
「陛下」
公爵を見る王。いや、なんかあまり顔を見たくないから首元あたりを見ておこう。
「このようなことになり申し訳ございません。全て私の責任にございます。我が家の妾の子を殿下方の妃にと申しておりましたが撤回致します。マリーナに関しましては可能であれば……このまま皇太子妃にしていただきたくお願い申し上げます」
なっ……図々しいと少数の声が上がる。未来の王妃の親になる野望を持つ者だ。が、正式な抗議が上る前に王妃が先制パンチをかます。
「もちろんです。マリーナほど皇太子妃にふさわしいものはおりません。マリーナほど完璧に妃教育を終えたものはおりませんのよ」
お前らの娘では能足りん。
「ありがとうございます。…………そして私は公爵を引退し、王宮からも去りたいと思います」
契約違反、監禁まがい。非人道的な行いだが相手は平民。それにそもそも愛人契約自体は同意されており、生活も足枷以外は高待遇。悲しいかな罪としては少々弱い。彼女たちへの慰謝料も公爵家を傾けさせるほどのものではない。
では何が一番ヤバイって?公爵のメンタル、羞恥心だ。これだけ皆の前で醜態を晒したのだ。もうここにいたくないと思うのは当然のこと。王も同じ男……なんか性癖とか暴露された日には彼と同じ決断をするだろう。
「許可す「「ダメです」」」
仲良く二人の女声の声がする。こんな非情なことを言うのはこの二人以外にはいない。
「王妃……、アリス……」
「性癖がなんですか!?女を失ったからなんですか!?あなたにはまだ政治力があります!それに王妃には実家の力も必要です。マリーナの役に立つべきです!それに公爵が退いたら夫人まで隠居しなくてはならないでしょう」
久しぶりに会えた親友。公爵と離婚する気はなさそうだが、本音を言ったぶん仲良くなるのかむしろ悪くなるのかはわからない。だが足が動くなら外に出られることも増えそうだ。今までの分もたくさん交流するつもりなのに。
「大丈夫ですよ公爵。やったことは非人道的な行い。ですが、彼女たちは感謝もしているのです。ただ相手の気持ちをすべて無視するような鬼畜のごとく所業をしたわけではないのですから!そんなに恥ずかしがらなくても良いのですよ!」
妾たちがうんうんと頷く。間違いなく娼館に売られるよりも幸せな生活だった。でも、契約期間過ぎてるし、足枷つけるし、なんかただのエロオヤジじゃね?とか思ってしまい気持ち悪くなってしまったのだ。
「いや、でも……」
いやいや、普通に嫌なんですけど。大臣たちも目がキョドっているじゃないか。
「え~~~~~い、やかましい!私にはまだ父上が必要なのです!恥ずかしい思いをするのがなんですか!?色々な方に迷惑をかけたのですから、何か利益を生み出してから去ってください!それに王妃になったときに後ろ盾や金がなければ私が惨めではないですか!変態だろうが政治力はあるんですからいいんですよ!」
マリーナが叫んだ。最後のが本音と言ったところだろう。いつも穏やかなマリーナから銭ゲバ発言が出たことで大臣たちは口がぽかーんと開いている。
「大丈夫ですよ公爵」
「アリス様……?」
「ここにいる殿方たちの中には特殊な性癖を持った者がたくさんおります。うまく隠しているだけ。きっと公爵に色々言ってくるものもおりましょう。そのときは私におっしゃってください。その方たちの恥ずかしい秘密を教えて差し上げます」
大臣たちの顔が青ざめる。ハハッそんなことができるものかと強気なものもいるよう。だが賢いものはアリスの目を見て本気だと悟る。
「アリス様……」
公爵の目が潤む。
「良いのですよ。マリーナ様が結婚されたら私達は家族になるのですから」
アリスの慈愛の笑み。
誰がそんな言葉と笑みに絆されるか。そもそもこんなふうに辱めをうけているのはアリスのせい。目が潤んでいるのは羞恥心から。
「公爵よ。私にはまだお前が必要だ。マリーナにも」
「陛下」
なぜ視線を逸らして言うのですか。しかし、と大臣たちをちらっと見る。自分の利益ばかりを考える者の多いこと。自分も女性のことでは利己的だが、国のことは第一に考えているつもりだ。
「畏まりました。ですが、なんのお咎めもなしというわけには参りません。しばらく謹慎したいと思います」
「あと、1年の減給でしょうか。こうしてあなたの私的な事情で会議が開かれたのですから、その迷惑料を国に払うのです」
アリス様……騒ぎを起こしたのはあなたですが……。
が、原因は自分だ。自分の愚かな行いのせい。
深々と頭を下げる。
「それでは、解散としよう」
王が疲れ切った声で告げる。
皆も何か疲れ切った顔をしていた。
486
お気に入りに追加
5,149
あなたにおすすめの小説
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
【完結保証】第二王子妃から退きますわ。せいぜい仲良くなさってくださいね
ネコ
恋愛
公爵家令嬢セシリアは、第二王子リオンに求婚され婚約まで済ませたが、なぜかいつも傍にいる女性従者が不気味だった。「これは王族の信頼の証」と言うリオンだが、実際はふたりが愛人関係なのでは? と噂が広まっている。ある宴でリオンは公衆の面前でセシリアを貶め、女性従者を擁護。もう我慢しません。王子妃なんてこちらから願い下げです。あとはご勝手に。
遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
いつだって二番目。こんな自分とさよならします!
椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。
ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。
ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。
嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。
そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!?
小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。
いつも第一王女の姉が優先される日々。
そして、待ち受ける死。
――この運命、私は変えられるの?
※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。
義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。
克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。
11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位
11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位
11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位
11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位
【完結保証】領地運営は私抜きでどうぞ~もう勝手におやりください~
ネコ
恋愛
伯爵領を切り盛りするロザリンは、優秀すぎるがゆえに夫から嫉妬され、冷たい仕打ちばかり受けていた。ついに“才能は認めるが愛してはいない”と告げられ離縁を迫られたロザリンは、意外なほどあっさり了承する。すべての管理記録と書類は完璧に自分の下へ置いたまま。この領地を回していたのは誰か、あなたたちが思い知る時が来るでしょう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる