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50. 公爵夫人
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「という感じです」
「要するに……公爵と妾は相思相愛ではないのね。借金による愛人関係があったものの契約期間は過ぎており、解放しなければいけなかった。それなのに変な勘違いをしている公爵がいつまでも彼女たちを拘束し続けているということね」
お妾さんとその娘たちが頷く。
「それに妃になりたいっていうのもただ屋敷から追い出されたかったからなのね」
「むしろなりたくないです。マリーナ姉様を見ていてどうしてあんなものになりたいと思えますか……」
厳しい妃教育……そんなものを間近で見せられては王子様との結婚に夢など抱けるわけない。そもそも夢というか、あれは魔の巣窟への入口だ。
「…………」
王妃の顔に苦い笑みが広がる。複雑な心境だ。彼女も必死に勉強をした、王宮を怖いと思う時期もあった。皇太子妃になってからも王妃になったばかりの頃も色々な苦労があった。今もあるにはあるのだが。
でもいつからだろうか……魔の巣窟のボス的存在になってしまったのは。
「旦那様……いえ、公爵様。私達に子供を授けてくださり、養ってくださったこと本当に感謝しております。私達のような身分の者に高価なものを下さり、身に余る待遇でした。しかし、どれだけお側にいようとあなたを愛することはできませんでした。所詮私達はお金の関係なのです。それに……なんか最近気色悪いし……。これ以上あなたと一緒にいるのは苦痛でしかありません。ですので……」
ですので別れてください。最後の言葉が出てこない。
公爵は目を輝かせた。
それは自分と別れたくないということ、やはり自分たちには芽生えていたのだ愛が。
「ご覧ください王妃様!彼女たちはアリス様に言わされているだけなのではないですか!?」
ハッ!
いや、そんなものではない。そもそもそんなものがあればこんな茶番劇には乗らない。アリスは進み出る。
「皆様方、このような足枷を付けられた生活を強いられたのです。求めれば慰謝料が出ます。契約の違約金も。それに、もらった宝石も良いものばかりでしょう?売ればよいのです!派手な生活をしなければ一生安泰の額になるはずです」
妾たちの目の色が変わる。当然といえば当然だが、金だ。今まで働きもせず囲われて生きてきた者。いきなり外の世界に飛び出して生きていけるのか不安になるのは当たり前。
「別れます。慰謝料をください」
一人の言葉に私もと3人が続く。その娘たちも一緒に出ていくと申し出る。
最後の一人……歩けない女性だけが無言を貫いている。公爵の目が縋るように向けられる。だが彼女が見ているのは王妃だ。いや、王妃だけではない王妃を通してこの場にいない公爵夫人も見ている。王妃が口を開く。
「あれは事故だったようですね。許すことはできませんが事故です。それに……愛人など。私の大切な、とても大切な親友の夫に愛人がいるなど気分の良いものではありません……早く別れてください。それにあなた自身もこんな気持ち悪い男とは別れるべきです」
王妃からの気持ち悪い発言にガーーーンと音が聞こえてくるようにショックを受けている公爵。
その顔面白い。
アリスは笑いを必死でこらえていた。
その時またまた伝えられる外部からの連絡。
「失礼いたします!公爵令嬢のマリーナ様とこ……公爵夫人がお見えです!」
今度は何が起きるのか……何やら胸焼け気味の王が許可を出すと二人の姿が現れる。
その場にいるアリス以外の者が驚愕に目を見開く。
王妃と一人の妾の目から涙がこぼれ落ちた。
「あなた………………」
王妃が夫人に手を伸ばしながらゆっくりと近づく。
「王妃様、ご挨拶申し上げます。長い間顔もお見せできず申し訳ございませんでした」
見事なカーテシーを披露する。それは見事な見事な……自分の足をしっかり地につけたもの。王妃の震える手が夫人に届く。
「歩けるようになったのね……」
妾の必死に押し殺そうとする嗚咽が聞こえるほど静まり返る室内。
「もともと歩けなくなってなどおりません。あの者には悪いと思いましたが、利用させていただきました」
「利用?」
思わず妾から呟かれた言葉。本来なら平民が公爵夫人に話しかける、王の前で勝手に声を出すなど不敬だが咎めるものは誰もいない。
「ええ。だって………………もうそこの変態と身体を重ねるのが嫌だったんだもの」
「「「………………」」」
夜の夫婦関係、それは夫婦間の大きな問題である。それが理由で関係が破綻することも、離縁につながることもある。皆わかっている。わかっているのだが…………
なんだそれは……と思わずにいられない。
「女にだらしなく、金でその身体を奪い心も手に入れることができると思っている勘違い男、政治的に優秀、でも非情。そんな男でも優しいところもあるとわかっているのです。足も動かせない女……触られたときに痛い……というとピタリと止まってやめてくださるのですよ」
「「「……………」」」
そんなこた興味もなければ、聞きたくもない。
「あら、王妃様までそんな顔をなさって。そもそも王妃様から聞いたお話しでこのようなことをしましたのに……」
王妃は訝しげな顔をした後、冷や汗が出てきた。
「この人は妾だけでなく外にもたくさんの女がおりますの……中には娼婦も。皆様、私がなぜ夫と関係をもちたくないかおわかりになったでしょう?私は夫の女癖のせいで病になるなど嫌なのです」
殿方達はきまり悪気な顔をしている。地位のある男ばかり、妻一筋などというものはほぼいないだろう。中には病にかかっている者もいるかもしれない。それでも色々な女性に手を出すクズ野郎もいる。女性を軽んじているのか……下半身のコントロールが不能なのか……。
難儀なこと……アリスは彼らを嘲笑いながら冷たく見据えた。
「要するに……公爵と妾は相思相愛ではないのね。借金による愛人関係があったものの契約期間は過ぎており、解放しなければいけなかった。それなのに変な勘違いをしている公爵がいつまでも彼女たちを拘束し続けているということね」
お妾さんとその娘たちが頷く。
「それに妃になりたいっていうのもただ屋敷から追い出されたかったからなのね」
「むしろなりたくないです。マリーナ姉様を見ていてどうしてあんなものになりたいと思えますか……」
厳しい妃教育……そんなものを間近で見せられては王子様との結婚に夢など抱けるわけない。そもそも夢というか、あれは魔の巣窟への入口だ。
「…………」
王妃の顔に苦い笑みが広がる。複雑な心境だ。彼女も必死に勉強をした、王宮を怖いと思う時期もあった。皇太子妃になってからも王妃になったばかりの頃も色々な苦労があった。今もあるにはあるのだが。
でもいつからだろうか……魔の巣窟のボス的存在になってしまったのは。
「旦那様……いえ、公爵様。私達に子供を授けてくださり、養ってくださったこと本当に感謝しております。私達のような身分の者に高価なものを下さり、身に余る待遇でした。しかし、どれだけお側にいようとあなたを愛することはできませんでした。所詮私達はお金の関係なのです。それに……なんか最近気色悪いし……。これ以上あなたと一緒にいるのは苦痛でしかありません。ですので……」
ですので別れてください。最後の言葉が出てこない。
公爵は目を輝かせた。
それは自分と別れたくないということ、やはり自分たちには芽生えていたのだ愛が。
「ご覧ください王妃様!彼女たちはアリス様に言わされているだけなのではないですか!?」
ハッ!
いや、そんなものではない。そもそもそんなものがあればこんな茶番劇には乗らない。アリスは進み出る。
「皆様方、このような足枷を付けられた生活を強いられたのです。求めれば慰謝料が出ます。契約の違約金も。それに、もらった宝石も良いものばかりでしょう?売ればよいのです!派手な生活をしなければ一生安泰の額になるはずです」
妾たちの目の色が変わる。当然といえば当然だが、金だ。今まで働きもせず囲われて生きてきた者。いきなり外の世界に飛び出して生きていけるのか不安になるのは当たり前。
「別れます。慰謝料をください」
一人の言葉に私もと3人が続く。その娘たちも一緒に出ていくと申し出る。
最後の一人……歩けない女性だけが無言を貫いている。公爵の目が縋るように向けられる。だが彼女が見ているのは王妃だ。いや、王妃だけではない王妃を通してこの場にいない公爵夫人も見ている。王妃が口を開く。
「あれは事故だったようですね。許すことはできませんが事故です。それに……愛人など。私の大切な、とても大切な親友の夫に愛人がいるなど気分の良いものではありません……早く別れてください。それにあなた自身もこんな気持ち悪い男とは別れるべきです」
王妃からの気持ち悪い発言にガーーーンと音が聞こえてくるようにショックを受けている公爵。
その顔面白い。
アリスは笑いを必死でこらえていた。
その時またまた伝えられる外部からの連絡。
「失礼いたします!公爵令嬢のマリーナ様とこ……公爵夫人がお見えです!」
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その場にいるアリス以外の者が驚愕に目を見開く。
王妃と一人の妾の目から涙がこぼれ落ちた。
「あなた………………」
王妃が夫人に手を伸ばしながらゆっくりと近づく。
「王妃様、ご挨拶申し上げます。長い間顔もお見せできず申し訳ございませんでした」
見事なカーテシーを披露する。それは見事な見事な……自分の足をしっかり地につけたもの。王妃の震える手が夫人に届く。
「歩けるようになったのね……」
妾の必死に押し殺そうとする嗚咽が聞こえるほど静まり返る室内。
「もともと歩けなくなってなどおりません。あの者には悪いと思いましたが、利用させていただきました」
「利用?」
思わず妾から呟かれた言葉。本来なら平民が公爵夫人に話しかける、王の前で勝手に声を出すなど不敬だが咎めるものは誰もいない。
「ええ。だって………………もうそこの変態と身体を重ねるのが嫌だったんだもの」
「「「………………」」」
夜の夫婦関係、それは夫婦間の大きな問題である。それが理由で関係が破綻することも、離縁につながることもある。皆わかっている。わかっているのだが…………
なんだそれは……と思わずにいられない。
「女にだらしなく、金でその身体を奪い心も手に入れることができると思っている勘違い男、政治的に優秀、でも非情。そんな男でも優しいところもあるとわかっているのです。足も動かせない女……触られたときに痛い……というとピタリと止まってやめてくださるのですよ」
「「「……………」」」
そんなこた興味もなければ、聞きたくもない。
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王妃は訝しげな顔をした後、冷や汗が出てきた。
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殿方達はきまり悪気な顔をしている。地位のある男ばかり、妻一筋などというものはほぼいないだろう。中には病にかかっている者もいるかもしれない。それでも色々な女性に手を出すクズ野郎もいる。女性を軽んじているのか……下半身のコントロールが不能なのか……。
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