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36. 婚姻条件②
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「私は魔法石の製造をしているのでその利益もありますし、魔物の討伐依頼を受けて報酬をもらう機会が多々あります。自分の食い扶持は自分で稼ぎますので不要です」
「王子妃としての仕事もありますよ、あれもこれもとこなすことができますか?」
「魔法石の製造はすぐにできますし、販売は姉たちが全てやってくれます。討伐もそんなに頻繁に行うわけではありません。ガルベラ王国には我がカサバイン家が、他国にもそれぞれ兵はおりますし頻繁に依頼されることはないのです。王子妃の仕事については王子様方の婚約者様もいらっしゃるのですから……余裕がありますよね。今までの仕事と王子妃の仕事の両立はできます」
側室腹の王子の妃に仕事など任せる気など無いくせに。
「本当に良いのですね?」
「ええ、構いません。そろそろ私の条件書を見ていただいてもよろしいでしょうか?」
ダイラス国側がアリスが提示した目の前の条件書を読む。
「こんな条件で良いのか……?」
一人の大臣がポツリと呟く。
1.カサバイン家の者はダイラス国の者の許可なくアリスに会いに来ることができる。逆も然り。
2.王宮の許可無しで魔物の退治をしても良い。退治の際の口出し無用。退治により得た物は全てアリスの個人資産とする。
3.他国から魔物退治等の為に武力を請われたとき出動する。ただし、ダイラス国に戦争をしかけてくる相手からは断る。
外務大臣がアリスに問いかける。
「許可を得ずなど……そんなにご実家の方々に頻繁に会いたいのですか?なんのために?もしや……ご実家に我が国の情報を渡す気ですか?」
「面白いことをおっしゃいますね。渡して何か良いことがありますか?」
何も無い。そんなものなくても本気で攻められたら一日で終わる。
「家族と会いたいと思うのは当然でしょう。なんのために……そうですね……兄弟の仲のためとでも言っておきましょうか。あとは魔物退治で連携しなければならないときも速やかに会う必要がありますね」
アリスにとって最も大切なのは1番の条件だ。
いつものように穏やかな微笑みでありながらブルブルと震えながら問いかけてくる王妃。
「………………もう一度聞かせてください。本当にこれで良いのですね?ガルベラ王国からの要求が何も無いようですが」
誰よりも先にそれが侮辱的なことだと気づいたのは王妃のよう。
「構わないとのことです」
アリスの嘲笑で何人かも気づいたよう。
「「「!!!」」」
ダイラス国の者たちの表情が怒りに満ちる。わかっていない者もいるが。圧倒的な相手に無条件ということは多々ある。何も条件など出せないからだ。しかし、この場合は違う。ガルベラ王国はダイラス国からもらう価値のあるものなど一つもないと言っているのだ。ガルベラ王国にとってダイラス国は取るに足らない国として認識されているということに他ならない。
屈辱でしかない。
「アリス嬢がこれで良いなら良いでしょう。我が国にとってなんら不利になる条件はないのですから。むしろ、お金持ちで剣術・魔法と才能豊かなアリス嬢を我が国に迎えることで様々な脅威から国民を守ることができるでしょう。素晴らしいことですわ」
ねえ、陛下と声をかけられ、王様はああとしか答えられない。王妃のこんな強張った表情は初めて見た。
「それでは、婚姻条件は纏まりましたしブランク様。これから末永くよろしくお願いします」
「あ、ああ」
「お義母様もよろしくお願いいたします」
「え、ええ」
流石親子。急に声をかけられたときの返答の雰囲気がそっくりだ。
「陛下、婚姻の暁にはお義父様とお呼びしても?あっ、王子様方のことはお義兄様と呼んでもよろしいかしら?」
「ああ、こんな美人な娘ができるなんて大歓迎だよ」
大歓迎と言いつつ、引きつった顔なのはなぜだろうか。
「……構わないよ。ブランクは僕たちの弟だ。ブランクの花嫁はもちろん僕たちの義妹だよ」
長男のマクシムが2人の王子と視線を交えた後、うっすらと笑って答える。こちらはまたなんか不気味な反応。
「王妃様のことは王妃様とお呼びするのが一番良いですよね?」
「ええ、そうね」
((だって、私達は他人同士))
ウフフと笑い合う王妃とアリス。
王様は目を擦る。
先程から目がチカチカするので気のせいかと思っていたが、間違いない。
王妃とアリスの間には火花が散っている。
「王子妃としての仕事もありますよ、あれもこれもとこなすことができますか?」
「魔法石の製造はすぐにできますし、販売は姉たちが全てやってくれます。討伐もそんなに頻繁に行うわけではありません。ガルベラ王国には我がカサバイン家が、他国にもそれぞれ兵はおりますし頻繁に依頼されることはないのです。王子妃の仕事については王子様方の婚約者様もいらっしゃるのですから……余裕がありますよね。今までの仕事と王子妃の仕事の両立はできます」
側室腹の王子の妃に仕事など任せる気など無いくせに。
「本当に良いのですね?」
「ええ、構いません。そろそろ私の条件書を見ていただいてもよろしいでしょうか?」
ダイラス国側がアリスが提示した目の前の条件書を読む。
「こんな条件で良いのか……?」
一人の大臣がポツリと呟く。
1.カサバイン家の者はダイラス国の者の許可なくアリスに会いに来ることができる。逆も然り。
2.王宮の許可無しで魔物の退治をしても良い。退治の際の口出し無用。退治により得た物は全てアリスの個人資産とする。
3.他国から魔物退治等の為に武力を請われたとき出動する。ただし、ダイラス国に戦争をしかけてくる相手からは断る。
外務大臣がアリスに問いかける。
「許可を得ずなど……そんなにご実家の方々に頻繁に会いたいのですか?なんのために?もしや……ご実家に我が国の情報を渡す気ですか?」
「面白いことをおっしゃいますね。渡して何か良いことがありますか?」
何も無い。そんなものなくても本気で攻められたら一日で終わる。
「家族と会いたいと思うのは当然でしょう。なんのために……そうですね……兄弟の仲のためとでも言っておきましょうか。あとは魔物退治で連携しなければならないときも速やかに会う必要がありますね」
アリスにとって最も大切なのは1番の条件だ。
いつものように穏やかな微笑みでありながらブルブルと震えながら問いかけてくる王妃。
「………………もう一度聞かせてください。本当にこれで良いのですね?ガルベラ王国からの要求が何も無いようですが」
誰よりも先にそれが侮辱的なことだと気づいたのは王妃のよう。
「構わないとのことです」
アリスの嘲笑で何人かも気づいたよう。
「「「!!!」」」
ダイラス国の者たちの表情が怒りに満ちる。わかっていない者もいるが。圧倒的な相手に無条件ということは多々ある。何も条件など出せないからだ。しかし、この場合は違う。ガルベラ王国はダイラス国からもらう価値のあるものなど一つもないと言っているのだ。ガルベラ王国にとってダイラス国は取るに足らない国として認識されているということに他ならない。
屈辱でしかない。
「アリス嬢がこれで良いなら良いでしょう。我が国にとってなんら不利になる条件はないのですから。むしろ、お金持ちで剣術・魔法と才能豊かなアリス嬢を我が国に迎えることで様々な脅威から国民を守ることができるでしょう。素晴らしいことですわ」
ねえ、陛下と声をかけられ、王様はああとしか答えられない。王妃のこんな強張った表情は初めて見た。
「それでは、婚姻条件は纏まりましたしブランク様。これから末永くよろしくお願いします」
「あ、ああ」
「お義母様もよろしくお願いいたします」
「え、ええ」
流石親子。急に声をかけられたときの返答の雰囲気がそっくりだ。
「陛下、婚姻の暁にはお義父様とお呼びしても?あっ、王子様方のことはお義兄様と呼んでもよろしいかしら?」
「ああ、こんな美人な娘ができるなんて大歓迎だよ」
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「……構わないよ。ブランクは僕たちの弟だ。ブランクの花嫁はもちろん僕たちの義妹だよ」
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「王妃様のことは王妃様とお呼びするのが一番良いですよね?」
「ええ、そうね」
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王様は目を擦る。
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