36 / 186
36. 婚姻条件②
しおりを挟む
「私は魔法石の製造をしているのでその利益もありますし、魔物の討伐依頼を受けて報酬をもらう機会が多々あります。自分の食い扶持は自分で稼ぎますので不要です」
「王子妃としての仕事もありますよ、あれもこれもとこなすことができますか?」
「魔法石の製造はすぐにできますし、販売は姉たちが全てやってくれます。討伐もそんなに頻繁に行うわけではありません。ガルベラ王国には我がカサバイン家が、他国にもそれぞれ兵はおりますし頻繁に依頼されることはないのです。王子妃の仕事については王子様方の婚約者様もいらっしゃるのですから……余裕がありますよね。今までの仕事と王子妃の仕事の両立はできます」
側室腹の王子の妃に仕事など任せる気など無いくせに。
「本当に良いのですね?」
「ええ、構いません。そろそろ私の条件書を見ていただいてもよろしいでしょうか?」
ダイラス国側がアリスが提示した目の前の条件書を読む。
「こんな条件で良いのか……?」
一人の大臣がポツリと呟く。
1.カサバイン家の者はダイラス国の者の許可なくアリスに会いに来ることができる。逆も然り。
2.王宮の許可無しで魔物の退治をしても良い。退治の際の口出し無用。退治により得た物は全てアリスの個人資産とする。
3.他国から魔物退治等の為に武力を請われたとき出動する。ただし、ダイラス国に戦争をしかけてくる相手からは断る。
外務大臣がアリスに問いかける。
「許可を得ずなど……そんなにご実家の方々に頻繁に会いたいのですか?なんのために?もしや……ご実家に我が国の情報を渡す気ですか?」
「面白いことをおっしゃいますね。渡して何か良いことがありますか?」
何も無い。そんなものなくても本気で攻められたら一日で終わる。
「家族と会いたいと思うのは当然でしょう。なんのために……そうですね……兄弟の仲のためとでも言っておきましょうか。あとは魔物退治で連携しなければならないときも速やかに会う必要がありますね」
アリスにとって最も大切なのは1番の条件だ。
いつものように穏やかな微笑みでありながらブルブルと震えながら問いかけてくる王妃。
「………………もう一度聞かせてください。本当にこれで良いのですね?ガルベラ王国からの要求が何も無いようですが」
誰よりも先にそれが侮辱的なことだと気づいたのは王妃のよう。
「構わないとのことです」
アリスの嘲笑で何人かも気づいたよう。
「「「!!!」」」
ダイラス国の者たちの表情が怒りに満ちる。わかっていない者もいるが。圧倒的な相手に無条件ということは多々ある。何も条件など出せないからだ。しかし、この場合は違う。ガルベラ王国はダイラス国からもらう価値のあるものなど一つもないと言っているのだ。ガルベラ王国にとってダイラス国は取るに足らない国として認識されているということに他ならない。
屈辱でしかない。
「アリス嬢がこれで良いなら良いでしょう。我が国にとってなんら不利になる条件はないのですから。むしろ、お金持ちで剣術・魔法と才能豊かなアリス嬢を我が国に迎えることで様々な脅威から国民を守ることができるでしょう。素晴らしいことですわ」
ねえ、陛下と声をかけられ、王様はああとしか答えられない。王妃のこんな強張った表情は初めて見た。
「それでは、婚姻条件は纏まりましたしブランク様。これから末永くよろしくお願いします」
「あ、ああ」
「お義母様もよろしくお願いいたします」
「え、ええ」
流石親子。急に声をかけられたときの返答の雰囲気がそっくりだ。
「陛下、婚姻の暁にはお義父様とお呼びしても?あっ、王子様方のことはお義兄様と呼んでもよろしいかしら?」
「ああ、こんな美人な娘ができるなんて大歓迎だよ」
大歓迎と言いつつ、引きつった顔なのはなぜだろうか。
「……構わないよ。ブランクは僕たちの弟だ。ブランクの花嫁はもちろん僕たちの義妹だよ」
長男のマクシムが2人の王子と視線を交えた後、うっすらと笑って答える。こちらはまたなんか不気味な反応。
「王妃様のことは王妃様とお呼びするのが一番良いですよね?」
「ええ、そうね」
((だって、私達は他人同士))
ウフフと笑い合う王妃とアリス。
王様は目を擦る。
先程から目がチカチカするので気のせいかと思っていたが、間違いない。
王妃とアリスの間には火花が散っている。
「王子妃としての仕事もありますよ、あれもこれもとこなすことができますか?」
「魔法石の製造はすぐにできますし、販売は姉たちが全てやってくれます。討伐もそんなに頻繁に行うわけではありません。ガルベラ王国には我がカサバイン家が、他国にもそれぞれ兵はおりますし頻繁に依頼されることはないのです。王子妃の仕事については王子様方の婚約者様もいらっしゃるのですから……余裕がありますよね。今までの仕事と王子妃の仕事の両立はできます」
側室腹の王子の妃に仕事など任せる気など無いくせに。
「本当に良いのですね?」
「ええ、構いません。そろそろ私の条件書を見ていただいてもよろしいでしょうか?」
ダイラス国側がアリスが提示した目の前の条件書を読む。
「こんな条件で良いのか……?」
一人の大臣がポツリと呟く。
1.カサバイン家の者はダイラス国の者の許可なくアリスに会いに来ることができる。逆も然り。
2.王宮の許可無しで魔物の退治をしても良い。退治の際の口出し無用。退治により得た物は全てアリスの個人資産とする。
3.他国から魔物退治等の為に武力を請われたとき出動する。ただし、ダイラス国に戦争をしかけてくる相手からは断る。
外務大臣がアリスに問いかける。
「許可を得ずなど……そんなにご実家の方々に頻繁に会いたいのですか?なんのために?もしや……ご実家に我が国の情報を渡す気ですか?」
「面白いことをおっしゃいますね。渡して何か良いことがありますか?」
何も無い。そんなものなくても本気で攻められたら一日で終わる。
「家族と会いたいと思うのは当然でしょう。なんのために……そうですね……兄弟の仲のためとでも言っておきましょうか。あとは魔物退治で連携しなければならないときも速やかに会う必要がありますね」
アリスにとって最も大切なのは1番の条件だ。
いつものように穏やかな微笑みでありながらブルブルと震えながら問いかけてくる王妃。
「………………もう一度聞かせてください。本当にこれで良いのですね?ガルベラ王国からの要求が何も無いようですが」
誰よりも先にそれが侮辱的なことだと気づいたのは王妃のよう。
「構わないとのことです」
アリスの嘲笑で何人かも気づいたよう。
「「「!!!」」」
ダイラス国の者たちの表情が怒りに満ちる。わかっていない者もいるが。圧倒的な相手に無条件ということは多々ある。何も条件など出せないからだ。しかし、この場合は違う。ガルベラ王国はダイラス国からもらう価値のあるものなど一つもないと言っているのだ。ガルベラ王国にとってダイラス国は取るに足らない国として認識されているということに他ならない。
屈辱でしかない。
「アリス嬢がこれで良いなら良いでしょう。我が国にとってなんら不利になる条件はないのですから。むしろ、お金持ちで剣術・魔法と才能豊かなアリス嬢を我が国に迎えることで様々な脅威から国民を守ることができるでしょう。素晴らしいことですわ」
ねえ、陛下と声をかけられ、王様はああとしか答えられない。王妃のこんな強張った表情は初めて見た。
「それでは、婚姻条件は纏まりましたしブランク様。これから末永くよろしくお願いします」
「あ、ああ」
「お義母様もよろしくお願いいたします」
「え、ええ」
流石親子。急に声をかけられたときの返答の雰囲気がそっくりだ。
「陛下、婚姻の暁にはお義父様とお呼びしても?あっ、王子様方のことはお義兄様と呼んでもよろしいかしら?」
「ああ、こんな美人な娘ができるなんて大歓迎だよ」
大歓迎と言いつつ、引きつった顔なのはなぜだろうか。
「……構わないよ。ブランクは僕たちの弟だ。ブランクの花嫁はもちろん僕たちの義妹だよ」
長男のマクシムが2人の王子と視線を交えた後、うっすらと笑って答える。こちらはまたなんか不気味な反応。
「王妃様のことは王妃様とお呼びするのが一番良いですよね?」
「ええ、そうね」
((だって、私達は他人同士))
ウフフと笑い合う王妃とアリス。
王様は目を擦る。
先程から目がチカチカするので気のせいかと思っていたが、間違いない。
王妃とアリスの間には火花が散っている。
476
お気に入りに追加
5,149
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
妹がいなくなった
アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。
メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。
お父様とお母様の泣き声が聞こえる。
「うるさくて寝ていられないわ」
妹は我が家の宝。
お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。
妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結保証】第二王子妃から退きますわ。せいぜい仲良くなさってくださいね
ネコ
恋愛
公爵家令嬢セシリアは、第二王子リオンに求婚され婚約まで済ませたが、なぜかいつも傍にいる女性従者が不気味だった。「これは王族の信頼の証」と言うリオンだが、実際はふたりが愛人関係なのでは? と噂が広まっている。ある宴でリオンは公衆の面前でセシリアを貶め、女性従者を擁護。もう我慢しません。王子妃なんてこちらから願い下げです。あとはご勝手に。
いつだって二番目。こんな自分とさよならします!
椿蛍
恋愛
小説『二番目の姫』の中に転生した私。
ヒロインは第二王女として生まれ、いつも脇役の二番目にされてしまう運命にある。
ヒロインは婚約者から嫌われ、両親からは差別され、周囲も冷たい。
嫉妬したヒロインは暴走し、ラストは『お姉様……。私を救ってくれてありがとう』ガクッ……で終わるお話だ。
そんなヒロインはちょっとね……って、私が転生したのは二番目の姫!?
小説どおり、私はいつも『二番目』扱い。
いつも第一王女の姉が優先される日々。
そして、待ち受ける死。
――この運命、私は変えられるの?
※表紙イラストは作成者様からお借りしてます。
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!
天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。
魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。
でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。
一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。
トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。
互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。
。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.
他サイトにも連載中
2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。
よろしくお願いいたします。m(_ _)m
悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます
綾月百花
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
初耳なのですが…、本当ですか?
あおくん
恋愛
侯爵令嬢の次女として、父親の仕事を手伝ったり、邸の管理をしたりと忙しくしているアニーに公爵家から婚約の申し込みが来た!
でも実際に公爵家に訪れると、異世界から来たという少女が婚約者の隣に立っていて…。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる