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27. 大掃除⑤
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項垂れながら去っていく元騎士たちを見送る面々。フー……と息をつきかけてからの……
「そうだっ!」
何がそうだっ、だ。早く目の前から消えてくれ……。唐突に叫んだのはまたまた使用人の女。
「旦那様」
「えっ!俺?」
急に指名されたロナルドは驚く。
「旦那様はリリア様のことが一番ですよね!アリス様よりもリリア様のほうが大事ですよね?!」
彼女は一体何がしたいのか……。解雇されないためになんとかしようと必死だったのが、アリスが皆に愛されていないことを証明するのに必死になっている。それで自分は皆んなのためにアリスを虐げたと理由付けたいのだろうが。
「いや、何をもってして一番と言っているのかはわからないが。俺の一番はエレナだ!」
ビシッと親指で自分を指して言うロナルドに白けた視線が突き刺さる。愛妻家を気取っているが、愛人いるし……と聞こえてくるようだ。んんっと咳払いするロナルド。
「まあ……子どもたちには皆平等に接しているつもりだ。だがアリスとリリアはこいつらが成人してからの子供だ。こいつらとアリス、リリアへの態度が違って見えたのはあるかもしれないな」
赤ちゃんや幼子と成人した子供への可愛がり方が同じであるのは想像したくない。妻や夫がいる兄姉はゲッと顔をしかめる。ちなみに独身は三男のカイルのみ。
「そんなことはわかっております!でもいつもリリア様には遠征先や出先からお土産をたくさん持ち帰るのにあの小娘にはないじゃないですか!」
……あの女の次は小娘。怒りを通り越して呆れしか無い。
「ああ、リリアはカサバイン家の娘じゃないからな」
「リリア様になんてことを……!」
「母上の血を引いていないし、養子にも入っていないからカサバイン家の者じゃないだろう。父上も一応カサバイン家の者だが、母上に関係があるからカサバインの名を名乗れるだけだからな」
「長男よ話しを掻っ攫わないでくれ。土産は単純な話だ。アリスは幼き日から色々な戦場に行っていたから金もあるし、欲しいものは自分で買っていた。だから、土産はいらないらしい。それに、エレナから色々与えられていたようだしな」
「色々……?でも部屋にはそんなものはなかったはず……」
「あら……仕えるべき家の娘のものを物色するなんてはしたない」
扇で口元を覆いながら吐き出されたエミリアの言葉に女の顔がカッと赤くなる。
「貴金属の管理も仕事の一つです!」
「あらあら、それは侍女の役目であなたみたいな下級使用人のお役目ではなくってよ」
更に赤く染まる顔。
「アリスは別邸で自分のものは管理していたのよ。ちゃ~んと貴金属を安心して任せられるような人間にね。ちなみにあなたがくすねたものはアリスが作ったガラス玉よ」
ウインクして答えるセイラ。ちなみにすでに30代。まだまだウインクが似合うのが不思議だ。セイラはアリスの顔を思い出す。ただのガラス玉を喜んで盗む様を思い浮かべていたのか……ニタニタしながら作っている様子は少々気味が悪かった。
「ですが!ですがっ!本当に可愛ければ断られてもプレゼントするべきです!」
まだ言うか。そんなものは本人たちの問題だ。他者に口出しされるものではない。
「口では平等と言いながら、ご自分でも気づかれないうちに心のなかでリリア様を一番に思っているのです!」
もう女が何をしたいのかよくわからかい。ロナルドは、はーっと息を吐き出すとリリアの頭を撫でる。それを見た女の目が光り輝く。
「俺は子どもたちが危険な場面に出くわしたとき、助けるのはリリアだろう」
「やっぱり……「だが」」
「それはリリアが弱いからだ。他の子らは俺にできることは自分でできる。できないことは俺にもできないだろう。だからそもそも助けることなどできない。それだけカサバインの子らは化け物なんだ」
化け物と言われながらもまあね~と笑っているでかい子どもたち。
「リリアはカサバインではない。だからこそ厳しい状況であるアリスと比べ優雅に見える生活をしていられるんだ」
あくまで見えるというだけだ。他のものがしているような過酷な訓練も戦場に出向くこともない。でもこの完璧超人一家にはかなり気を使った生活をしている。
「!?」
「それはリリアもわかっているはずだ。それに俺にとってカサバインはすべてだ」
俺だけ血はつながってないけどな……と薄く笑う。
「エレナと結婚したからには俺もカサバイン家の者だ。それに恥じない者でなければならない」
「「「「「「浮気したけどね」」」」」」
ボソッと6人分の声がする。バッと子供たちを見るとサッと視線を逸らされた。見事な反射神経。
まあ愛人とその子供を作ってしまったのは事実。だが、エレナも子どもたちもそれに対して冷たい視線を投げかけても何かをすることはしない。エミリアは少々やらかしているような気もするが。
彼らが恥ずべきなのは力の無き者。無論カサバイン家の者すべてが完璧超人だったわけではない。だが、努力すればある程度の者にはなれる。そして、その努力とカサバイン家の権力があればまあ世の中なんとかなるでしょうというのが彼らの考えだ。
ロナルドとて昔は書類仕事のできない剣と魔法が得意なただの将軍だった。だが誰でも将軍になれるわけでもないし、それだけでも十分だと思っていた。
が、エレナの夫となり生活基盤もしっかりしてくると気付いた。以前よりも書類仕事ができていることに。それをエレナに話すとニッコリ笑った。次の日からエレナ直伝の書類仕事のスキルアップ実践授業が始まった。
どんな技を使ったのかわからなかったが、どれだけ詰め込まれても理解できなかったことが理解できるようになっていた。今ではお捌き将軍だなんて呼ばれている。
自分の力を発揮せよ、自分で限界を決めるな。それがカサバインだ。性格が悪い?変態?変わり者?そんなものは彼らの才で黙らせれば良いのだ。
「そうだっ!」
何がそうだっ、だ。早く目の前から消えてくれ……。唐突に叫んだのはまたまた使用人の女。
「旦那様」
「えっ!俺?」
急に指名されたロナルドは驚く。
「旦那様はリリア様のことが一番ですよね!アリス様よりもリリア様のほうが大事ですよね?!」
彼女は一体何がしたいのか……。解雇されないためになんとかしようと必死だったのが、アリスが皆に愛されていないことを証明するのに必死になっている。それで自分は皆んなのためにアリスを虐げたと理由付けたいのだろうが。
「いや、何をもってして一番と言っているのかはわからないが。俺の一番はエレナだ!」
ビシッと親指で自分を指して言うロナルドに白けた視線が突き刺さる。愛妻家を気取っているが、愛人いるし……と聞こえてくるようだ。んんっと咳払いするロナルド。
「まあ……子どもたちには皆平等に接しているつもりだ。だがアリスとリリアはこいつらが成人してからの子供だ。こいつらとアリス、リリアへの態度が違って見えたのはあるかもしれないな」
赤ちゃんや幼子と成人した子供への可愛がり方が同じであるのは想像したくない。妻や夫がいる兄姉はゲッと顔をしかめる。ちなみに独身は三男のカイルのみ。
「そんなことはわかっております!でもいつもリリア様には遠征先や出先からお土産をたくさん持ち帰るのにあの小娘にはないじゃないですか!」
……あの女の次は小娘。怒りを通り越して呆れしか無い。
「ああ、リリアはカサバイン家の娘じゃないからな」
「リリア様になんてことを……!」
「母上の血を引いていないし、養子にも入っていないからカサバイン家の者じゃないだろう。父上も一応カサバイン家の者だが、母上に関係があるからカサバインの名を名乗れるだけだからな」
「長男よ話しを掻っ攫わないでくれ。土産は単純な話だ。アリスは幼き日から色々な戦場に行っていたから金もあるし、欲しいものは自分で買っていた。だから、土産はいらないらしい。それに、エレナから色々与えられていたようだしな」
「色々……?でも部屋にはそんなものはなかったはず……」
「あら……仕えるべき家の娘のものを物色するなんてはしたない」
扇で口元を覆いながら吐き出されたエミリアの言葉に女の顔がカッと赤くなる。
「貴金属の管理も仕事の一つです!」
「あらあら、それは侍女の役目であなたみたいな下級使用人のお役目ではなくってよ」
更に赤く染まる顔。
「アリスは別邸で自分のものは管理していたのよ。ちゃ~んと貴金属を安心して任せられるような人間にね。ちなみにあなたがくすねたものはアリスが作ったガラス玉よ」
ウインクして答えるセイラ。ちなみにすでに30代。まだまだウインクが似合うのが不思議だ。セイラはアリスの顔を思い出す。ただのガラス玉を喜んで盗む様を思い浮かべていたのか……ニタニタしながら作っている様子は少々気味が悪かった。
「ですが!ですがっ!本当に可愛ければ断られてもプレゼントするべきです!」
まだ言うか。そんなものは本人たちの問題だ。他者に口出しされるものではない。
「口では平等と言いながら、ご自分でも気づかれないうちに心のなかでリリア様を一番に思っているのです!」
もう女が何をしたいのかよくわからかい。ロナルドは、はーっと息を吐き出すとリリアの頭を撫でる。それを見た女の目が光り輝く。
「俺は子どもたちが危険な場面に出くわしたとき、助けるのはリリアだろう」
「やっぱり……「だが」」
「それはリリアが弱いからだ。他の子らは俺にできることは自分でできる。できないことは俺にもできないだろう。だからそもそも助けることなどできない。それだけカサバインの子らは化け物なんだ」
化け物と言われながらもまあね~と笑っているでかい子どもたち。
「リリアはカサバインではない。だからこそ厳しい状況であるアリスと比べ優雅に見える生活をしていられるんだ」
あくまで見えるというだけだ。他のものがしているような過酷な訓練も戦場に出向くこともない。でもこの完璧超人一家にはかなり気を使った生活をしている。
「!?」
「それはリリアもわかっているはずだ。それに俺にとってカサバインはすべてだ」
俺だけ血はつながってないけどな……と薄く笑う。
「エレナと結婚したからには俺もカサバイン家の者だ。それに恥じない者でなければならない」
「「「「「「浮気したけどね」」」」」」
ボソッと6人分の声がする。バッと子供たちを見るとサッと視線を逸らされた。見事な反射神経。
まあ愛人とその子供を作ってしまったのは事実。だが、エレナも子どもたちもそれに対して冷たい視線を投げかけても何かをすることはしない。エミリアは少々やらかしているような気もするが。
彼らが恥ずべきなのは力の無き者。無論カサバイン家の者すべてが完璧超人だったわけではない。だが、努力すればある程度の者にはなれる。そして、その努力とカサバイン家の権力があればまあ世の中なんとかなるでしょうというのが彼らの考えだ。
ロナルドとて昔は書類仕事のできない剣と魔法が得意なただの将軍だった。だが誰でも将軍になれるわけでもないし、それだけでも十分だと思っていた。
が、エレナの夫となり生活基盤もしっかりしてくると気付いた。以前よりも書類仕事ができていることに。それをエレナに話すとニッコリ笑った。次の日からエレナ直伝の書類仕事のスキルアップ実践授業が始まった。
どんな技を使ったのかわからなかったが、どれだけ詰め込まれても理解できなかったことが理解できるようになっていた。今ではお捌き将軍だなんて呼ばれている。
自分の力を発揮せよ、自分で限界を決めるな。それがカサバインだ。性格が悪い?変態?変わり者?そんなものは彼らの才で黙らせれば良いのだ。
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