【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ

文字の大きさ
上 下
27 / 186

27. 大掃除⑤

しおりを挟む
 項垂れながら去っていく元騎士たちを見送る面々。フー……と息をつきかけてからの……

「そうだっ!」

 何がそうだっ、だ。早く目の前から消えてくれ……。唐突に叫んだのはまたまた使用人の女。

「旦那様」

「えっ!俺?」

 急に指名されたロナルドは驚く。

「旦那様はリリア様のことが一番ですよね!アリス様よりもリリア様のほうが大事ですよね?!」

 彼女は一体何がしたいのか……。解雇されないためになんとかしようと必死だったのが、アリスが皆に愛されていないことを証明するのに必死になっている。それで自分は皆んなのためにアリスを虐げたと理由付けたいのだろうが。

「いや、何をもってして一番と言っているのかはわからないが。俺の一番はエレナだ!」

 ビシッと親指で自分を指して言うロナルドに白けた視線が突き刺さる。愛妻家を気取っているが、愛人いるし……と聞こえてくるようだ。んんっと咳払いするロナルド。

「まあ……子どもたちには皆平等に接しているつもりだ。だがアリスとリリアはこいつらが成人してからの子供だ。こいつらとアリス、リリアへの態度が違って見えたのはあるかもしれないな」

 赤ちゃんや幼子と成人した子供への可愛がり方が同じであるのは想像したくない。妻や夫がいる兄姉はゲッと顔をしかめる。ちなみに独身は三男のカイルのみ。

「そんなことはわかっております!でもいつもリリア様には遠征先や出先からお土産をたくさん持ち帰るのにあの小娘にはないじゃないですか!」

 ……あの女の次は小娘。怒りを通り越して呆れしか無い。

「ああ、リリアはカサバイン家の娘じゃないからな」

「リリア様になんてことを……!」

「母上の血を引いていないし、養子にも入っていないからカサバイン家の者じゃないだろう。父上も一応カサバイン家の者だが、母上に関係があるからカサバインの名を名乗れるだけだからな」

「長男よ話しを掻っ攫わないでくれ。土産は単純な話だ。アリスは幼き日から色々な戦場に行っていたから金もあるし、欲しいものは自分で買っていた。だから、土産はいらないらしい。それに、エレナから色々与えられていたようだしな」

「色々……?でも部屋にはそんなものはなかったはず……」

「あら……仕えるべき家の娘のものを物色するなんてはしたない」

 扇で口元を覆いながら吐き出されたエミリアの言葉に女の顔がカッと赤くなる。

「貴金属の管理も仕事の一つです!」

「あらあら、それは侍女の役目であなたみたいな下級使用人のお役目ではなくってよ」

 更に赤く染まる顔。

「アリスは別邸で自分のものは管理していたのよ。ちゃ~んと貴金属を安心して任せられるような人間にね。ちなみにあなたがくすねたものはアリスが作ったガラス玉よ」

 ウインクして答えるセイラ。ちなみにすでに30代。まだまだウインクが似合うのが不思議だ。セイラはアリスの顔を思い出す。ただのガラス玉を喜んで盗む様を思い浮かべていたのか……ニタニタしながら作っている様子は少々気味が悪かった。

「ですが!ですがっ!本当に可愛ければ断られてもプレゼントするべきです!」

 まだ言うか。そんなものは本人たちの問題だ。他者に口出しされるものではない。

「口では平等と言いながら、ご自分でも気づかれないうちに心のなかでリリア様を一番に思っているのです!」
 
 もう女が何をしたいのかよくわからかい。ロナルドは、はーっと息を吐き出すとリリアの頭を撫でる。それを見た女の目が光り輝く。

「俺は子どもたちが危険な場面に出くわしたとき、助けるのはリリアだろう」

「やっぱり……「だが」」

「それはリリアが弱いからだ。他の子らは俺にできることは自分でできる。できないことは俺にもできないだろう。だからそもそも助けることなどできない。それだけカサバインの子らは化け物なんだ」

 化け物と言われながらもまあね~と笑っているでかい子どもたち。

「リリアはカサバインではない。だからこそ厳しい状況であるアリスと比べ優雅に見える生活をしていられるんだ」

 あくまで見えるというだけだ。他のものがしているような過酷な訓練も戦場に出向くこともない。でもこの完璧超人一家にはかなり気を使った生活をしている。

「!?」

「それはリリアもわかっているはずだ。それに俺にとってカサバインはすべてだ」

 俺だけ血はつながってないけどな……と薄く笑う。

「エレナと結婚したからには俺もカサバイン家の者だ。それに恥じない者でなければならない」

「「「「「「浮気したけどね」」」」」」

 ボソッと6人分の声がする。バッと子供たちを見るとサッと視線を逸らされた。見事な反射神経。

 まあ愛人とその子供を作ってしまったのは事実。だが、エレナも子どもたちもそれに対して冷たい視線を投げかけても何かをすることはしない。エミリアは少々やらかしているような気もするが。

 彼らが恥ずべきなのは力の無き者。無論カサバイン家の者すべてが完璧超人だったわけではない。だが、努力すればある程度の者にはなれる。そして、その努力とカサバイン家の権力があればまあ世の中なんとかなるでしょうというのが彼らの考えだ。

 ロナルドとて昔は書類仕事のできない剣と魔法が得意なただの将軍だった。だが誰でも将軍になれるわけでもないし、それだけでも十分だと思っていた。

 が、エレナの夫となり生活基盤もしっかりしてくると気付いた。以前よりも書類仕事ができていることに。それをエレナに話すとニッコリ笑った。次の日からエレナ直伝の書類仕事のスキルアップ実践授業が始まった。

 どんな技を使ったのかわからなかったが、どれだけ詰め込まれても理解できなかったことが理解できるようになっていた。今ではお捌き将軍だなんて呼ばれている。

 自分の力を発揮せよ、自分で限界を決めるな。それがカサバインだ。性格が悪い?変態?変わり者?そんなものは彼らの才で黙らせれば良いのだ。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

遺棄令嬢いけしゃあしゃあと幸せになる☆婚約破棄されたけど私は悪くないので侯爵さまに嫁ぎます!

天田れおぽん
ファンタジー
婚約破棄されましたが私は悪くないので反省しません。いけしゃあしゃあと侯爵家に嫁いで幸せになっちゃいます。  魔法省に勤めるトレーシー・ダウジャン伯爵令嬢は、婿養子の父と義母、義妹と暮らしていたが婚約者を義妹に取られた上に家から追い出されてしまう。  でも優秀な彼女は王城に住み、個性的な人たちに囲まれて楽しく仕事に取り組む。  一方、ダウジャン伯爵家にはトレーシーの親戚が乗り込み、父たち家族は追い出されてしまう。  トレーシーは先輩であるアルバス・メイデン侯爵令息と王族から依頼された仕事をしながら仲を深める。  互いの気持ちに気付いた二人は、幸せを手に入れていく。 。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.。oOo。.:♥:.  他サイトにも連載中 2023/09/06 少し修正したバージョンと入れ替えながら更新を再開します。  よろしくお願いいたします。m(_ _)m

召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます

かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~ 【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】 奨励賞受賞 ●聖女編● いきなり召喚された上に、ババァ発言。 挙句、偽聖女だと。 確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。 だったら好きに生きさせてもらいます。 脱社畜! ハッピースローライフ! ご都合主義万歳! ノリで生きて何が悪い! ●勇者編● え?勇者? うん?勇者? そもそも召喚って何か知ってますか? またやらかしたのかバカ王子ー! ●魔界編● いきおくれって分かってるわー! それよりも、クロを探しに魔界へ! 魔界という場所は……とてつもなかった そしてクロはクロだった。 魔界でも見事になしてみせようスローライフ! 邪魔するなら排除します! -------------- 恋愛はスローペース 物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

【完結保証】第二王子妃から退きますわ。せいぜい仲良くなさってくださいね

ネコ
恋愛
公爵家令嬢セシリアは、第二王子リオンに求婚され婚約まで済ませたが、なぜかいつも傍にいる女性従者が不気味だった。「これは王族の信頼の証」と言うリオンだが、実際はふたりが愛人関係なのでは? と噂が広まっている。ある宴でリオンは公衆の面前でセシリアを貶め、女性従者を擁護。もう我慢しません。王子妃なんてこちらから願い下げです。あとはご勝手に。

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・

青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。 婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。 「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」 妹の言葉を肯定する家族達。 そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。 ※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。

魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します

怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。 本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。 彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。 世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。 喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

処理中です...