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24. 大掃除②
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リリアは気絶したかった。……が、気絶などしている場合ではない。自分の意見をしっかり言わねばこの先どうなるかわからない。スッと彼女の手をとりあえず外す。
「ごめんなさい。そんなことを言われても困ってしまうわ。私はただの居候。他家の人事に口など出せないわ」
落ち着いてきちんと伝える。というか頼られても迷惑でしか無い。自分もこの勘違いヤローんんっ……お花畑使用人の味方だと思われてはたまったものではない。
「居候……?リリア様はカサバイン家のご令嬢ですよね……?確かに公爵の実のお子様ではありませんが……別邸でもなくこの本邸でお暮らしになっているではありませんか。それに皆様にもあの女よりも可愛がられているではありませんか!?」
リリアの額に冷や汗が再び光る。別に自分にやましいことがあるからではない。聡明な御子息ご令嬢方はそんなことはわかっている。しかし、あの女って……。彼らの妹をあの女とか言うべきでなし。彼らの視線がより一層冷ややかなものになる。なぜ愚かなものは何度も何度も同じことを繰り返すのだろう。
「私達がいつアリスよりもその子を可愛がったというのかしら?」
冷たい視線が嘘のように優しい声音で尋ねるエミリア。いや、普通に怖いんですけど。しかし、愚かなものは優しい声音に騙される。
「だってエミリア様はいつもお茶会の時に美味しそうなお菓子をリリア様に出して、あの女には出しませんでした!それどころか何やら気持ちの悪いものを出していたではありませんか!」
ピシッと空気が凍った。何やら皆ゲッという顔をしてサッと顔をそらす。
「気持ち悪い……?」
「はい!だって色もなんか変な混ざったようなものでしたし、形もセンスのない幼子が粘土で作ったようなもので、気持ちが悪かったです!そんなものをわざわざ料理人に命じて作らせるなんて、あの女が嫌いじゃなければしませんよね」
ふんって鼻息が出ている。どうだとでも言いたげな様子。
「ふふっ」
エミリアが笑う。
「そんなに気持ち悪かったかしら?」
「はい!きっとあの女も嫌な思いでいっぱいだったと思います。流石エミリア様」
尊敬してますとでも言いたげに目をキラキラさせている女に対しニッコリと笑う。
「あれは私が作ったのよ」
「は?」
今聞いたことが理解できない。いや、言葉の意味は理解できるが信じたくない。聞き返す女にニコニコするだけで何も言わないエミリア。
「君の言う気持ちわ……と失礼。個性的な見た目のお菓子を作ったのは間違いなくエミリアだよ」
冷ややかな視線が向けられ慌てて言い直すジャック。
「あれ、見た目は個性的だけど味は絶品なのよ~。それに治癒力もあるから体の調子がかなり良くなるの」
アンジェが続けて説明を加える。
「エミリアは菓子作りが好きなんだ。味は良いんだがな……なにせ見た目があれだろう?誰も食べたがらないんだ。だけどアリスは気にせず食べるもんだから……」
ちらっとエミリアを見るジャック。
「アリスは誰よりも可愛い可愛い妹よ。なぜ私自らが作ったお菓子をお妾さんの子にあげなくてはいけないの?」
妾という言葉が出た時にリリアとクビを言い渡された使用人以外の一同の視線が冷ややかなものになる。リリアは肩身が狭い思いで黙って俯く。
「ですが!ですがっ!なぜリリア様にあんなに美味しそうなケーキを出したんですか?!誰もが憧れる有名店の物もありました!」
「フフッ……あれは殿方たちから頂いたものなの」
「?……流石たくさんの殿方から慕われているエミリア様です」
何を言いたいのかわからない。エミリアはヤレヤレと首を横に振る。
「顔見知り程度にも関わらず私に好意を持つ者からの食べ物の贈り物を口にするなんて嫌だわ」
「えっ……?」
貴族、平民に関わらず好意を持つものに贈り物をするのはよくあることだ。アピールするのに必須アイテムだろうに。
「えっ……?だって何が入っているかわからないじゃない」
女の反応こそ信じられないという反応をするエミリア。
「俺達ってカサバインだろう?まあこの見た目に優秀さ……愛だの恋だので近づいてくるやつ、権力目当てに縁続きになりたいってやつがたくさんいるわけだ」
「はい……。?」
「自分のものにせんと、まあいろいろと仕掛けてくるやつが多いんだよ。効果があるかわからない惚れ薬とか媚薬とか、本人の髪の毛とか体液とか……まあいろいろと入ってることがあるわけだ」
「!?」
驚く使用人。その驚きはどういう意味なのだろうか。異物混入について?自分が尊敬するリリアへそんなものを食べさせていたこと?
「そんなものを可愛い妹に食べさせると思うか?」
そんなもの……。いやいや、そんなものを自分の妹に食べさせていたではないか。異母妹も妹ではある。
「フフッ。大丈夫よ。マジでやばいやつはテーブルに出してないし。アリスがある程度異物のお菓子はリリアの口に入らないようにコントロールしてたもの」
なんてこと無いように言うセイラ。だがリリアは振り返る。エミリアとのお茶会は地獄だった。アリスがいるときはアリスがうまくどれに入っているか教えてくれた。問題はいないときだった。腹痛、頭痛、筋肉痛、吐き気……等々いろいろな症状が表れた。しばらくニコニコと見て、少しすると治癒を施してくれたが。
………………
まあ施してくれたとか思う時点で自分って終わってると思うが。相手は勝手気ままなカサバイン家の人間。仕方なし。ちゃんと治癒してくれるだけ有り難いと思わなければやっていられない。
「ごめんなさい。そんなことを言われても困ってしまうわ。私はただの居候。他家の人事に口など出せないわ」
落ち着いてきちんと伝える。というか頼られても迷惑でしか無い。自分もこの勘違いヤローんんっ……お花畑使用人の味方だと思われてはたまったものではない。
「居候……?リリア様はカサバイン家のご令嬢ですよね……?確かに公爵の実のお子様ではありませんが……別邸でもなくこの本邸でお暮らしになっているではありませんか。それに皆様にもあの女よりも可愛がられているではありませんか!?」
リリアの額に冷や汗が再び光る。別に自分にやましいことがあるからではない。聡明な御子息ご令嬢方はそんなことはわかっている。しかし、あの女って……。彼らの妹をあの女とか言うべきでなし。彼らの視線がより一層冷ややかなものになる。なぜ愚かなものは何度も何度も同じことを繰り返すのだろう。
「私達がいつアリスよりもその子を可愛がったというのかしら?」
冷たい視線が嘘のように優しい声音で尋ねるエミリア。いや、普通に怖いんですけど。しかし、愚かなものは優しい声音に騙される。
「だってエミリア様はいつもお茶会の時に美味しそうなお菓子をリリア様に出して、あの女には出しませんでした!それどころか何やら気持ちの悪いものを出していたではありませんか!」
ピシッと空気が凍った。何やら皆ゲッという顔をしてサッと顔をそらす。
「気持ち悪い……?」
「はい!だって色もなんか変な混ざったようなものでしたし、形もセンスのない幼子が粘土で作ったようなもので、気持ちが悪かったです!そんなものをわざわざ料理人に命じて作らせるなんて、あの女が嫌いじゃなければしませんよね」
ふんって鼻息が出ている。どうだとでも言いたげな様子。
「ふふっ」
エミリアが笑う。
「そんなに気持ち悪かったかしら?」
「はい!きっとあの女も嫌な思いでいっぱいだったと思います。流石エミリア様」
尊敬してますとでも言いたげに目をキラキラさせている女に対しニッコリと笑う。
「あれは私が作ったのよ」
「は?」
今聞いたことが理解できない。いや、言葉の意味は理解できるが信じたくない。聞き返す女にニコニコするだけで何も言わないエミリア。
「君の言う気持ちわ……と失礼。個性的な見た目のお菓子を作ったのは間違いなくエミリアだよ」
冷ややかな視線が向けられ慌てて言い直すジャック。
「あれ、見た目は個性的だけど味は絶品なのよ~。それに治癒力もあるから体の調子がかなり良くなるの」
アンジェが続けて説明を加える。
「エミリアは菓子作りが好きなんだ。味は良いんだがな……なにせ見た目があれだろう?誰も食べたがらないんだ。だけどアリスは気にせず食べるもんだから……」
ちらっとエミリアを見るジャック。
「アリスは誰よりも可愛い可愛い妹よ。なぜ私自らが作ったお菓子をお妾さんの子にあげなくてはいけないの?」
妾という言葉が出た時にリリアとクビを言い渡された使用人以外の一同の視線が冷ややかなものになる。リリアは肩身が狭い思いで黙って俯く。
「ですが!ですがっ!なぜリリア様にあんなに美味しそうなケーキを出したんですか?!誰もが憧れる有名店の物もありました!」
「フフッ……あれは殿方たちから頂いたものなの」
「?……流石たくさんの殿方から慕われているエミリア様です」
何を言いたいのかわからない。エミリアはヤレヤレと首を横に振る。
「顔見知り程度にも関わらず私に好意を持つ者からの食べ物の贈り物を口にするなんて嫌だわ」
「えっ……?」
貴族、平民に関わらず好意を持つものに贈り物をするのはよくあることだ。アピールするのに必須アイテムだろうに。
「えっ……?だって何が入っているかわからないじゃない」
女の反応こそ信じられないという反応をするエミリア。
「俺達ってカサバインだろう?まあこの見た目に優秀さ……愛だの恋だので近づいてくるやつ、権力目当てに縁続きになりたいってやつがたくさんいるわけだ」
「はい……。?」
「自分のものにせんと、まあいろいろと仕掛けてくるやつが多いんだよ。効果があるかわからない惚れ薬とか媚薬とか、本人の髪の毛とか体液とか……まあいろいろと入ってることがあるわけだ」
「!?」
驚く使用人。その驚きはどういう意味なのだろうか。異物混入について?自分が尊敬するリリアへそんなものを食べさせていたこと?
「そんなものを可愛い妹に食べさせると思うか?」
そんなもの……。いやいや、そんなものを自分の妹に食べさせていたではないか。異母妹も妹ではある。
「フフッ。大丈夫よ。マジでやばいやつはテーブルに出してないし。アリスがある程度異物のお菓子はリリアの口に入らないようにコントロールしてたもの」
なんてこと無いように言うセイラ。だがリリアは振り返る。エミリアとのお茶会は地獄だった。アリスがいるときはアリスがうまくどれに入っているか教えてくれた。問題はいないときだった。腹痛、頭痛、筋肉痛、吐き気……等々いろいろな症状が表れた。しばらくニコニコと見て、少しすると治癒を施してくれたが。
………………
まあ施してくれたとか思う時点で自分って終わってると思うが。相手は勝手気ままなカサバイン家の人間。仕方なし。ちゃんと治癒してくれるだけ有り難いと思わなければやっていられない。
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