【完結】公爵家の末っ子娘は嘲笑う

たくみ

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10. 隣国王家 8年後②

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 空気の悪い食堂で食事を終えたブランクが向かったのは、王子たちが勉強する部屋だ。ブランクが入室するともうすでに3人の王子と教師がいた。

「ブランク様。遅いですよ。3人の王子様はもう既にいらっしゃっていますよ」

 遅い……いやいや、まだ開始時間7分前だ。ブランクはいつも5~9分前に来るようにしている。3人の王子は10分前に来る。ちなみに教師はいつも開始時間に来る。

 しかし、こうしてたまに早めに来て教師より遅く来た生徒を叱るという憂さ晴らしをするのだ。今も何やら愚痴愚痴言っているが、しょんぼりした振りをしてやり過ごす。

「先生、もう開始時間を過ぎています。ブランクも至らぬところがあったかもしれませんが、勉強が遅れますと父上にどう思われるか……」

 先生が心配です、と言うのは長男のマキシム。その言葉にはっとした表情をした後に、うんうんと感心した眼差しを向ける。そして、チラッとブランクの方に見下した眼差しを向ける。

 はいはい、どうせ自分は出来損ないですよ。内心で呟きながら授業を真面目に受ける。教師がいろいろと投げかけてくる言葉に一つも詰まることなく答えていく3人の王子。ブランクだけが答えられたり、答えられなかったりしている。

 ちなみに今は皆で勉強しているがちゃんと一人ずつ教師はついている。この時間は皆で交流するのが目的だ。だからその年齢にあった質問をされている。

 能ある鷹は爪を隠すというが、彼は全く違う。基本的に頭の出来が兄王子3人のほうが良いのだ。これでもかなり努力している。その甲斐もあって、ブランクもバカではない。

 ブランクが答えを間違うと教師は非常にバカにした視線を投げかけてくるが、兄王子たちは特に気にしている様子もない。正解したときも興味なさげだ。

 ブランクは自分の頭の出来に非常に満足していた。だって優秀ではないが、悪すぎではないから。むしろ、賢いと言えるレベル。ちなみに剣の腕も魔法も優れているが、兄王子には勝てないレベル。ブランクは特に剣が好きだったが、これがやってもやっても優秀にはなれないでいた。

 だからこそ、兄王子たち”は”何もしてこないと考えている。彼の分析はこうだ。

 頭が良すぎる、優秀すぎる。→ 王位狙ってるんだろ?クビチョンパ

 バカすぎる → 王家のただのお荷物、むしろ税金泥棒、もはやお邪魔レベルだからクビチョンパ

 剣の腕、魔法に才がありすぎる → 普通に自分の命が危険だからクビチョンパ

 そこそこ賢く、剣の腕・魔法もできるが兄王子より劣る。しかも一生懸命にやってこのレベル → まあ気に入らないやつだが、金蔓でもあるし、自分たちのほうが王位にふさわしい。警戒する必要なし。一応生かしておいてやるか。

 ちなみに開始時間の5~9分前に勉強部屋に来るのもやる気がありすぎると思われないためだったりする。普通は先に来て兄王子たちを出迎えるべきだと思うかもしれない。しかし、彼はそう思わない。

 早く来る王子方。それに比べ遅刻はしないが兄王子たちよりも遅い側妃腹王子。どちらがよく見えるかは一目瞭然である。使用人たちがますます兄王子に尊敬の眼差しを送り、自分を蔑みの眼差しで見てくる。

 とにかくブランクは王妃や兄王子たちをよく見せるように側妃に教育されていた。しかし、愚か者になりすぎないようにとも教育されていた。

 だってただの愚か者は相手の地雷を踏むだけだ。ある程度賢く、実力として劣る相手、自分をさり気なくそうと気づかれることなく引き立てる相手を敵視する人間は少ない。

 まあその代わり使用人からはたまに殺意さえ感じる鋭い視線を感じるときもあるが。

 慣れたといえば慣れたその視線。赤子の頃から蔑みの視線の中で過ごしてきたのだ。慣れないほうがおかしい。

 でも、たまに思う。

 なんでそんな視線を向けられるのか……

 だって自分は王子だ

 彼らより身分は上の人間

 王妃の敵だから

 兄王子の敵だからなのか

 だとしてもなぜ彼らが王子相手にそんな視線を向けるのか

 大臣なのか?

 将軍なのか?

 功臣なのか?

 国にとって重大な何かを成し遂げたのか?
 
 勘違い甚だしい

 お前らはただの使用人なのに。



 

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