【2章完結】女神にまで「無能」と言われた俺が、異世界で起こす復讐劇

騙道みりあ

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異世界転生編

第30話 魔術師ギルドマスターと戦士長と支配者と(2)

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「対処法は知ってるか?」

 俺の質問に二人は悩むような様子を見せる。

「考えられることには考えられますが…女神ほどであれば対策している、もしくは意味を成さない可能性が高いかと」
「それでも一応教えてくれるか?」

 曖昧な言い方なのは未だ誰も試したことが無いからだ。それくらいは俺にも予想できた。

 ただ、情報は少しでも集めておきたい。

「例えば…結界貫通等の効果を持った武器だったり、結界を解除するような魔法、スキルならば対抗できるかもしれません。ですが、これはあくまで女神の使用するスキルを結界だと仮定した場合です。固有スキルは幅が広く、特殊なものも多いので確定はできません」

 言い方から考えるに、結界とは少し違うのだろう。感覚的であれ、そう捉えているに違いない。

 横にいるガーベラも何も突っ込まないということは概ね同じ意見ということだ。

 あの女神のことだ。弱点があったところで必ず補完しているだろう。それでも可能性を捨てるのは惜しい。

 尤も、一度試してみる、などという手段を取ることは不可能だ。確実な情報集めが必要となる。

───現状では何とも言えないな…。とりあえずは手駒を潰しておくべきか。となると最初は……駿河屋光輝スルガヤコウキ

 もちろん、個人的な恨みもあるのだが。

 というよりむしろ、個人的な恨みが最も大きい理由かもしれない。

 正当化するならば、女神が最重要視しているのが駿河屋光輝スルガヤコウキだから、か。

 その駿河屋光輝スルガヤコウキが倒されたとなれば、女神も何かしら動かなくてはならないだろう。

 ただ、女神に俺の存在を勘付かれてはならない。それだけでなく、女神に敵対する人間がいるということも思わせたくない。

───魔族を偽って殺すか?というかそもそも殺せるのか?

「アオイ殿?」
「ん?あぁ、すまない」

 少し考え過ぎたようだ、という言い訳はしない。

「それで、勇者についてはどれくらい知っている?」
「一応、我々が担当する勇者については知っていますが……固有スキルは知りません」
「そりゃ…そうか」

 固有スキルはトップシークレットな情報らしい。固有スキルを教えるということは、いわば切り札を教えているようなもの。

───そうなると、俺の切り札は女神や勇者にバレてるんだよなぁ……。

「出来れば勇者たちの様子を教えてほしい。どれくらい強いのか、とか」
「ああ、分かった」

 その一言で何を察したのか、ガーベラは直ぐに肯定した。

 続けて戦士長も首を縦に振る。

「そういえば、ガーベラは帰らなくて良いのか?」
「帰る?魔術師ギルドに、という意味だろうが、まぁ私が帰ることは多くないからな」

 そう言われ、初めて魔術師ギルドに入ったときのことを思い出す。

 あそこでは確かガーベラを始めて見たという人も多かった。

 あまり人前に姿を表すことがないということか、と納得する。であれば数日帰らない程度、大した問題にもならないだろう。

「そうか、それなら良いんだが──」

 俺も決して建設的な話がしたくてこの話題を振ったわけではない。故に軽く流すこととした。

「──話は変わるが、スキルについて詳しいことを聞かせてくれないか?」
「そういえばアオイ殿はこの世界についてまだ知らないのでしたね。でしたら俺からスキルについて、ガーベラから魔法について説明しましょう」
「ああ、ありがとう」

「スキルについてですが……これは技能とでも言いましょうか。例をあげると分かりやすいと思うのですが、例えば料理スキルと言うものがあります。スキルにはレベルが1から9まであって、料理スキルのレベルが上昇すると料理に効果が付くようになるんです。リラックス効果だったり、体力を回復したり、と。あと、同じ料理でも味が美味しくなったりもします。確かに料理自体はスキルが無くともできるのですが、スキルがある方がその効果が良くなる、といった感じです。剣術スキルなんかもそうですね。剣を使うこと自体は誰にでもできますが、やはりスキルを持つかどうかは強さに直接関わってきます」

 解釈が難しいところだ。

 俺がスキルを1つも所有していないからイメージが持ち辛い。

 ただ、

───ゲームのように自由にスキルを取っていく、ということでは無さそうだな。

 それだけは理解できた。

「スキルの獲得条件は様々ですが、大抵はそれに精通することで得られます。例えば主婦はたいてい、料理スキルを持っています」

 経験に基づいてそれがスキルという形で目に見えるということだろうか。

 固有スキルとスキルは全くの別物だと思って良さそうだ。

「なるほど。ではやはりスキルを覚えるには修行を積むしかないと?」
「そういうことです」

 おおよその理解は図れた。これ以上は図書館にでも行けば良いだろう。

「スキルについては終わったようなので、私から魔法について説明させてもらう」
「ああ、頼む」

 戦士長の話は終わったと判断したのだろう。
 続いてガーベラが話し始めた。

「魔法については──およそイメージは持てているだろう。そのイメージで間違っていない。実際、私も使っていたしな」

 魔法陣を作り出し、そこから炎を生み出すなど。

 仕組みもある程度は理解できている。女神も使用していると言っていた。

「魔法の階級について説明したいと思う。魔法にはそのレベルに応じて第1階級から第5階級までの階級区分が与えられる。私が使った<炎闘牛鬼イグニ>、あれは第4階級の魔法に当たる。そもそも魔法が使えるかどうか、は才能による。魔法が使えるというだけでも希少な人材なのだ。それに加え、第3階級以上の魔法を使える者は魔術師の中でもほんの10%ほど。第4階級、第5階級などあってないようなものだ。それと……第0階級という特殊な魔法もある。固有スキルと似たような立ち位置だと考えて欲しい」
「ふむ…」

 頷くも、少しロマンを潰された気分だ。

 第一、この世界で言う才能とは天職のことだ。天職が魔法系統であれば、確実に魔法への適正がある。

 もちろん、そうでない人の一握りも魔法は使えるだろう。ただ、それは役立つというレベルの魔法であり、真の意味で魔法を使えるかどうかは天職によってしまう。

 つまり、俺は魔法を使えないのだ。

 これは軽いショックであるが、同時に勇者全員が魔法を使いこなしてくるわけではないということに安心も覚えた。

「なるほどな、ありがとう」

 ガーベラの説明はざっくりとしたものだったが、スキルと同様、図書館にでも行けば良い。

 詳しいことは人に聞くより書物を読むほうが確実だ。

「そういえば、勇者たちの訓練はいつからなんだ?」
「明日からです」

 サッと答えを用意する戦士長の優秀さより、明日からということに驚きを覚えた。

───早いな。女神の手際の良さもだが…女神は焦っている?時間に余裕がない?

 女神に何か計画があるかはさておき、あの女神のことだ。まさかただ勇者を育てて魔王を倒させるだけが目的ではないだろう。

 それを通過点とするような計画を考えていると思った方が良い。

「分かった。報告だけは毎日頼む。それと…俺のことは魔術師ギルドの一員として処理してれ。あまり素顔がバレたくないから…深いフードの付いたローブを頼みたい」
「分かった、そこらへんは私に任せてくれ」

───これで一先ず、目前の問題は解決。

 ラテラのことは話さない。戦士長やガーベラに言えばなんとかしてくれるだろうが、彼女の善意を無下にするのは気が引ける。

───今度、ラテラの元にも顔を出した方が良いか?そこらへんも考えて行動しないとな…。

 戦士長とガーベラの協力も仰ぎながら、情報収集に励む必要がありそうだ。
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