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異世界転生編

第6話 それでも足掻く(2)

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 そして俺を───その右足で踏み付け、拘束した。

「がはっ…!」

 急激に上から体重がかかり、強制的に地面に倒れさせられる。その衝撃が内臓にまでほとばしり、痛みのあまり喘ぐような声を上げてしまう。


 グルルゥッ………


 獣の考えを理解するのは容易だった。
 その目が完全に俺を見下していたからだ。ここまでの抵抗を嘲笑うかのように。そして全てが無意味となったことに。


 グルルゥ…


 再び獣は唸った。足に込める力を少し強くしながら。

「ぐっ……」

 そして俺の苦しそうな顔を見て、愉快そうな顔をするのだ。
 圧倒的な彼我の差を前にはすべてが無意味だと、絶望しろと。
 獣の目が物語っていることは、それを始めて見たものでも理解できるほどに明確に表れていた。

 獣は強者の余裕でもって、俺をその右足で踏み付け、見下していたのだった。

 だが、それで良いのだ。

 なぜなら俺は───





 この時に賭けていたのだから。




 一瞬のこの隙をずっと待っていた。
 強者の驕りを。その時に見せる強者故の弱さを。

 とても確実とは言えない勝負。だからこその賭けなのだ。

 そしてそれに勝ったということ。

 今この瞬間なら───

「<支配ドミネイト>ッ!」

 コイツを──殺せる。

 驕った獣は俺に触れる選択を取った。
 そしてスキルに反応する前に、俺の従順な下僕と化した。

 ならば───
「死ね」
 ───コイツに容赦など要らない。

 俺は獣に無慈悲な指示を出す。


 グルゥ……


 抵抗するように、獣は俺から少しでも離れようと駆け出した。
 だが、そんな抵抗も束の間、何も理解のできない獣は、その意志に反して己の爪で己の首を引き裂いた。
 大量の血が吹き出し、地面が赤黒く染まっていく。
 俺はその様子を見守る。散々と俺を殺そうとしてきた獣の死を。

 それは呆気ない時間だった。死とはこんなにも呆気ないものなのかと。俺にそう思わせるには十分な瞬間だった。

 残ったのは1つの事実のみ。
 俺が獣を殺したということだけ。

 ボロボロになりながらも、獣を殺すことに成功した。
 目前に広がる血溜まりと、倒れる獣の死体を見て───

「ざまぁみろ」

 ───俺は一言、虚空に向かって呟いた。






>「枷月葵カサラギアオイ」のレベルがLv1からLv52に変更されました
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