2 / 10
絶対服従幼稚園 2話
しおりを挟む
「アハハハハ!」
「今度はあの滑り台で遊ぼうよ!」
よく晴れた日の午後。この日は年長クラス全員で、近くの公園に遊びに来ていた。幼稚園の園庭にはない遊具がたくさんあるため、園児たちのお気に入りの場所だ。
「…。」
タクミは、楽しそうに遊びまわる園児たちの輪から外れ、ひとり公園のベンチに座っていた。時折、心配した先生が声を掛けにくるものの、今日はどうしても、楽しく遊ぶ気分にはなれなかった。
「…おやおや、ボクは遊ばないのかい?」
一人で過ごしているタクミに、そう声をかけてきたのは、白髪頭のおばあさんだった。おばあさんは、ゆっくりとした足取りで近づくと、よいしょ、と声を出しながら、隣のベンチに腰掛ける。
「…遊ばない。」
タクミがそう返すと、おばあさんは優しく微笑みながら、穏やかな口調で語りかけた。
「そうかい。まぁ、遊びたくない時もあるよねぇ。…何か嫌なことでもあったのかい?」
「…ショウタくんが、おもちゃをとるの。」
「ショウタくん…同じクラスのお友だちかい?ボクのおもちゃをとっちゃうの?」
「うん、そう。僕が遊んでたのに、いつも救急車とか、持っていくの。ダメだよって言っても、聞いてくれないの。」
「そうかいそうかい。それは悔しいねぇ。ボクは頑張って、『ダメだ』って言ってるのにねぇ…それは嫌だねぇ…。」
「うん…そうなの…。」
タクミは、今にも泣きだしそう、といった表情で、地面を見つめている。その様子を見ていたおばあさんは、何かを思いついたように、小さなリュックサックから、何かを取り出した。そして何かをつぶやく、タクミに向けて差し出した。
「はい。これ、ボクにあげるよ。」
「…?なぁに?これ。」
「これはね、『魔法のお守り』なんだ。このお守りにお祈りしながら、誰かに向ってしゃべると、その相手を『絶対服従』させられるのさ。」
「ゼッタイ…フク…ジュウ?」
「どんなことでも、相手がボクの言うことを聞くってことさ。」
「どんなことでも…じゃあ、このお守りを使えば、ショウタくんがおもちゃをとらない…っってこと?」
「ああ、そうとも。そのお友だちが、ボクのおもちゃをとろうとした時に、お祈りしながらいうのさ。『今は僕が遊んでるんだから、このおもちゃを持って行っちゃダメだよ!』ってね。すると、お友達はボクの言うことを聞いてくれるはずだよ。」
「…ホントにそんなことできるの?」
「ああ、本当だとも。ただし、気をつけなきゃいけないことが、二つあるんだ。」
「気をつけること?なぁに?」
「一つ目は、『何をさせるか、ちゃんと細かく説明しなきゃいけない』ってことだよ。ただ『やめて!』と言うだけじゃ、何をやめればいいのか分からないからね。そして二つ目は、このお守りを使って悪さをしないってこと。とっても強い力だから、決して悪いことに使ってはならないのさ。…分かったかい?」
「ええと…ちゃんと説明するのと…悪いことに使わないの…うん、分かったよ!」
「ふふふ、それじゃあ、頑張ってね。」
「うん!ありがとう、おばあさん!」
「今度はあの滑り台で遊ぼうよ!」
よく晴れた日の午後。この日は年長クラス全員で、近くの公園に遊びに来ていた。幼稚園の園庭にはない遊具がたくさんあるため、園児たちのお気に入りの場所だ。
「…。」
タクミは、楽しそうに遊びまわる園児たちの輪から外れ、ひとり公園のベンチに座っていた。時折、心配した先生が声を掛けにくるものの、今日はどうしても、楽しく遊ぶ気分にはなれなかった。
「…おやおや、ボクは遊ばないのかい?」
一人で過ごしているタクミに、そう声をかけてきたのは、白髪頭のおばあさんだった。おばあさんは、ゆっくりとした足取りで近づくと、よいしょ、と声を出しながら、隣のベンチに腰掛ける。
「…遊ばない。」
タクミがそう返すと、おばあさんは優しく微笑みながら、穏やかな口調で語りかけた。
「そうかい。まぁ、遊びたくない時もあるよねぇ。…何か嫌なことでもあったのかい?」
「…ショウタくんが、おもちゃをとるの。」
「ショウタくん…同じクラスのお友だちかい?ボクのおもちゃをとっちゃうの?」
「うん、そう。僕が遊んでたのに、いつも救急車とか、持っていくの。ダメだよって言っても、聞いてくれないの。」
「そうかいそうかい。それは悔しいねぇ。ボクは頑張って、『ダメだ』って言ってるのにねぇ…それは嫌だねぇ…。」
「うん…そうなの…。」
タクミは、今にも泣きだしそう、といった表情で、地面を見つめている。その様子を見ていたおばあさんは、何かを思いついたように、小さなリュックサックから、何かを取り出した。そして何かをつぶやく、タクミに向けて差し出した。
「はい。これ、ボクにあげるよ。」
「…?なぁに?これ。」
「これはね、『魔法のお守り』なんだ。このお守りにお祈りしながら、誰かに向ってしゃべると、その相手を『絶対服従』させられるのさ。」
「ゼッタイ…フク…ジュウ?」
「どんなことでも、相手がボクの言うことを聞くってことさ。」
「どんなことでも…じゃあ、このお守りを使えば、ショウタくんがおもちゃをとらない…っってこと?」
「ああ、そうとも。そのお友だちが、ボクのおもちゃをとろうとした時に、お祈りしながらいうのさ。『今は僕が遊んでるんだから、このおもちゃを持って行っちゃダメだよ!』ってね。すると、お友達はボクの言うことを聞いてくれるはずだよ。」
「…ホントにそんなことできるの?」
「ああ、本当だとも。ただし、気をつけなきゃいけないことが、二つあるんだ。」
「気をつけること?なぁに?」
「一つ目は、『何をさせるか、ちゃんと細かく説明しなきゃいけない』ってことだよ。ただ『やめて!』と言うだけじゃ、何をやめればいいのか分からないからね。そして二つ目は、このお守りを使って悪さをしないってこと。とっても強い力だから、決して悪いことに使ってはならないのさ。…分かったかい?」
「ええと…ちゃんと説明するのと…悪いことに使わないの…うん、分かったよ!」
「ふふふ、それじゃあ、頑張ってね。」
「うん!ありがとう、おばあさん!」
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた
黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。
その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。
曖昧なのには理由があった。
『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。
どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。
※小説家になろうにも随時転載中。
レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。
それでも皆はレンが勇者だと思っていた。
突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。
はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。
ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。
※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。
中途半端なソウルスティール受けたけど質問ある?
ミクリヤミナミ
ファンタジー
仮想空間で活動する4人のお話です。
1.カールの譚
王都で生活する鍛冶屋のカールは、その腕を見込まれて王宮騎士団の魔王討伐への同行を要請されます。騎士団嫌いの彼は全く乗り気ではありませんがSランク冒険者の3人に説得され嫌々魔王が住む魔都へ向かいます。
2.サトシの譚
現代日本から転生してきたサトシは、ゴブリンの群れに襲われて家族を奪われますが、カール達と出会い力をつけてゆきます。
3.生方蒼甫の譚
研究者の生方蒼甫は脳科学研究の為に実験体であるサトシをVRMMORPG内に放流し観察しようとしますがうまく観察できません。仕方がないので自分もVRMMORPGの中に入る事にしますが……
4.魔王(フリードリヒ)の譚
西方に住む「魔王」はカール達を自領の「クレータ街」に連れてくることに成功しますが、数百年ぶりに天使の襲撃を2度も目撃します。2度目の襲撃を退けたサトシとルークスに興味を持ちますが……
老婆の魔法
一宮 沙耶
大衆娯楽
老婆と会った翌朝、女性となっていた。男性と女性はどちらが幸せ? 幸せって何?
偏ったシチュエーションですが、そんな永遠なテーマを一緒に考えさせてください。
今回は、タイトルとは違って、少しシリアスな内容ですが、飽きずにお付き合いくださいね。
うちの兄がヒロインすぎる
ふぇりちた
ファンタジー
ドラモンド伯爵家の次女ソフィアは、10歳の誕生日を迎えると共に、自身が転生者であることを知る。
乙女ゲーム『祈りの神子と誓いの聖騎士』に転生した彼女は、兄ノアがメインキャラの友人────つまり、モブキャラだと思い出す。
それもイベントに巻き込まれて、ストーリー序盤で退場する不憫な男だと。
大切な兄を守るため、一念発起して走り回るソフィアだが、周りの様子がどうもおかしい。
「はい、ソフィア。レオンがお花をくれたんだ。
直接渡せばいいのに。今度会ったら、お礼を言うんだよ」
「いや、お兄様。それは、お兄様宛のプレゼントだと思います」
「えっ僕に? そっか、てっきりソフィアにだと………でも僕、男なのに何でだろ」
「う〜ん、何ででしょうね。ほんとに」
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
結城 隆一郎 の事件簿 Seazon 4
一宮 沙耶
大衆娯楽
パラレルワールドで結婚願望が叶うの?
たった半年ぐらいの時間ですが、いろいろなことが起こります。
また、「老婆の魔法って、古いでしょ。本当に幸せになれるの?」の占い師にも再登場いただきました。
淡々と流れるお話しですが、お楽しみくださいね。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
誰もシナリオを知らない、乙女ゲームの世界
Greis
ファンタジー
【注意!!】
途中からがっつりファンタジーバトルだらけ、主人公最強描写がとても多くなります。
内容が肌に合わない方、面白くないなと思い始めた方はブラウザバック推奨です。
※主人公の転生先は、元はシナリオ外の存在、いわゆるモブと分類される人物です。
ベイルトン辺境伯家の三男坊として生まれたのが、ウォルター・ベイルトン。つまりは、転生した俺だ。
生まれ変わった先の世界は、オタクであった俺には大興奮の剣と魔法のファンタジー。
色々とハンデを背負いつつも、早々に二度目の死を迎えないために必死に強くなって、何とか生きてこられた。
そして、十五歳になった時に騎士学院に入学し、二度目の灰色の青春を謳歌していた。
騎士学院に馴染み、十七歳を迎えた二年目の春。
魔法学院との合同訓練の場で二人の転生者の少女と出会った事で、この世界がただの剣と魔法のファンタジーではない事を、徐々に理解していくのだった。
※小説家になろう、カクヨムでも投稿しております。
小説家になろうに投稿しているものに関しては、改稿されたものになりますので、予めご了承ください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる