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第49話 美味しくて、褒められて、嬉しい
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夕食刻、食堂。
「……美味しい」
まろやかなデミグラスソースがかかったフワッフワのハンバーグを食べて、ソフィアは思わず言葉を溢す。
今日も今日とて豪勢な夕食を堪能する事ができて、ソフィアの幸福度は鰻登りであった。
衣はサックサク中はぷりっぷりなエビフライも、とろとろチーズとブラックペッパーが効いたリゾットも、ソフィアの表情を笑顔で彩ってくれる。
今日一日、精霊魔法の訓練にせっせと精を出していた疲労感もあって、より美味しく感じられていた。
「君は本当に美味しそうに食べるな」
隣で巨大な骨つき肉を切り分けていたアランが興味深げに言う。
「あっ、すみません、落ち着きが無くて……」
貴族令嬢としてあるまじき振る舞いだと、ソフィアは慌てて表情を「すんっ」と元に戻す。
「いや、そのままでいい。そのくらい感情が豊かな方が、こちらとしても見応えがある」
「はあ……そういうものでしたら」
気にする必要もないかと、ソフィアはキャベツのサラダを口に運ぶ。
「ん~~~」
ソフィアに笑顔が舞い戻った。
おそらくアランの計らいによって定番メニュー化したキャベツのサラダも、日によってドレッシングが変わっていて全く飽きが来なかった。
酸味の効いたオニオンドレッシングがかかったキャベツをもしゃもしゃと、ソフィアは食べ進める。
(……まるでうさぎみたいだな)
そうアランに思われているなど、本人は知る由もない。
後ろで控えているうさ耳のメイドが今日も今日とて満足げに頷いている事も、知る由も無いだろう。
「そういえば」
ソフィアがキャベツのサラダを食べ終わるのを待って、アランが口を開く。
「モーリスから、今日の訓練の事を聞いた」
ぴくっとソフィアの肩が震え、フォークから付け合わせのにんじんがぽろりと落ちる。
「……ど、どのようにでしょう?」
ぎぎぎっと、錆びついた時計の針のように首を動かし、緊張気味に尋ねるソフィア。
「よく頑張っていたようだな、偉いぞ」
「あ、え……」
褒められると思っていたかったのか、ソフィアはきょとんと目を丸めた。
「休む事なく、精霊魔法の制御に全力を尽くしていたと聞いている。制御は繊細な感覚が必要とされるから、最初はなかなか苦戦しただろうが、よくぞ投げ出さずにやり切ったな」
「そんな……私は言われた事をしただけで、大した事はしてませんよ……」
褒められ慣れていないソフィアは咄嗟に否定の言葉を口にしてしまうが、アランの褒めの追従は止まらない。
「だが、最後まで頑張った事は事実だろう? 決して楽ではない精霊魔法の制御に真面目に取り組んだ、それ自体が良い事だ」
「そう、でしょうか……」
「俺がそう思ったんだ、だから遠慮なく受け取るといい」
力強く頷くアランに、ソフィアの表情が緩む。
「えへへ……」
やがて抑えきれなくなった喜びと照れの感情に、ソフィアはくしゃりとはにかむ。
嬉しかった。
ただただ、嬉しかった。
今までずっとお前はダメだダメだと謗(そし)る言葉しかぶつけられてこなかったから。
温かくて優しい褒めの言葉に、ソフィアは胸がいっぱいになる思いだった。
「はっ……」
「どうした?」
急に夢から現実に戻ってきたような反応をするソフィアに、アランは眉を顰める。
「ま、まだまだ、褒められるには、実力不足ですので! モーリスさんに最初に言われた、一メートル四方の土塊を作るのにはまだまだ時間がかかりそうです」
しょんもりと肩を落とすソフィアに、アランは息をついて言う。
「モーリスから聞いていると思うが、ソフィアの今日一日の上達速度は、普通の何十倍も速いものだ。とてつもない才能がある上に、努力も惜しまない。我々としてはこれ以上何も望むものがないほど、よくやっている」
ソフィアの、自分を卑下する癖にアランはとっくに気付いている。
だから多少強引でも、ソフィアに受け止めて欲しかった。
自分はよくやっているという、自信を。
そんなアランの思惑が功を奏したのか。
「ありがとう、ございます……嬉しい、です」
気恥ずかしそうに、だがしっかりとソフィアは喜色を浮かべた。
「うむ」
と、アランは再び大きく頷いてから切り出す。
「それはさておき……むしろ君は頑張りすぎだ。訓練中、一度も休憩を取らなかったそうじゃないか」
「え……それが普通では?」
ソフィアの返答に、アランは面食らった。
「……美味しい」
まろやかなデミグラスソースがかかったフワッフワのハンバーグを食べて、ソフィアは思わず言葉を溢す。
今日も今日とて豪勢な夕食を堪能する事ができて、ソフィアの幸福度は鰻登りであった。
衣はサックサク中はぷりっぷりなエビフライも、とろとろチーズとブラックペッパーが効いたリゾットも、ソフィアの表情を笑顔で彩ってくれる。
今日一日、精霊魔法の訓練にせっせと精を出していた疲労感もあって、より美味しく感じられていた。
「君は本当に美味しそうに食べるな」
隣で巨大な骨つき肉を切り分けていたアランが興味深げに言う。
「あっ、すみません、落ち着きが無くて……」
貴族令嬢としてあるまじき振る舞いだと、ソフィアは慌てて表情を「すんっ」と元に戻す。
「いや、そのままでいい。そのくらい感情が豊かな方が、こちらとしても見応えがある」
「はあ……そういうものでしたら」
気にする必要もないかと、ソフィアはキャベツのサラダを口に運ぶ。
「ん~~~」
ソフィアに笑顔が舞い戻った。
おそらくアランの計らいによって定番メニュー化したキャベツのサラダも、日によってドレッシングが変わっていて全く飽きが来なかった。
酸味の効いたオニオンドレッシングがかかったキャベツをもしゃもしゃと、ソフィアは食べ進める。
(……まるでうさぎみたいだな)
そうアランに思われているなど、本人は知る由もない。
後ろで控えているうさ耳のメイドが今日も今日とて満足げに頷いている事も、知る由も無いだろう。
「そういえば」
ソフィアがキャベツのサラダを食べ終わるのを待って、アランが口を開く。
「モーリスから、今日の訓練の事を聞いた」
ぴくっとソフィアの肩が震え、フォークから付け合わせのにんじんがぽろりと落ちる。
「……ど、どのようにでしょう?」
ぎぎぎっと、錆びついた時計の針のように首を動かし、緊張気味に尋ねるソフィア。
「よく頑張っていたようだな、偉いぞ」
「あ、え……」
褒められると思っていたかったのか、ソフィアはきょとんと目を丸めた。
「休む事なく、精霊魔法の制御に全力を尽くしていたと聞いている。制御は繊細な感覚が必要とされるから、最初はなかなか苦戦しただろうが、よくぞ投げ出さずにやり切ったな」
「そんな……私は言われた事をしただけで、大した事はしてませんよ……」
褒められ慣れていないソフィアは咄嗟に否定の言葉を口にしてしまうが、アランの褒めの追従は止まらない。
「だが、最後まで頑張った事は事実だろう? 決して楽ではない精霊魔法の制御に真面目に取り組んだ、それ自体が良い事だ」
「そう、でしょうか……」
「俺がそう思ったんだ、だから遠慮なく受け取るといい」
力強く頷くアランに、ソフィアの表情が緩む。
「えへへ……」
やがて抑えきれなくなった喜びと照れの感情に、ソフィアはくしゃりとはにかむ。
嬉しかった。
ただただ、嬉しかった。
今までずっとお前はダメだダメだと謗(そし)る言葉しかぶつけられてこなかったから。
温かくて優しい褒めの言葉に、ソフィアは胸がいっぱいになる思いだった。
「はっ……」
「どうした?」
急に夢から現実に戻ってきたような反応をするソフィアに、アランは眉を顰める。
「ま、まだまだ、褒められるには、実力不足ですので! モーリスさんに最初に言われた、一メートル四方の土塊を作るのにはまだまだ時間がかかりそうです」
しょんもりと肩を落とすソフィアに、アランは息をついて言う。
「モーリスから聞いていると思うが、ソフィアの今日一日の上達速度は、普通の何十倍も速いものだ。とてつもない才能がある上に、努力も惜しまない。我々としてはこれ以上何も望むものがないほど、よくやっている」
ソフィアの、自分を卑下する癖にアランはとっくに気付いている。
だから多少強引でも、ソフィアに受け止めて欲しかった。
自分はよくやっているという、自信を。
そんなアランの思惑が功を奏したのか。
「ありがとう、ございます……嬉しい、です」
気恥ずかしそうに、だがしっかりとソフィアは喜色を浮かべた。
「うむ」
と、アランは再び大きく頷いてから切り出す。
「それはさておき……むしろ君は頑張りすぎだ。訓練中、一度も休憩を取らなかったそうじゃないか」
「え……それが普通では?」
ソフィアの返答に、アランは面食らった。
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