14 / 65
第14話 猫耳もふもふタイム
しおりを挟む
「な、何これ……?」
クラリスに通された部屋を見るなり、ソフィアはそんな言葉を漏らした。
「何って、ソフィア様のお部屋ですが……」
クラリスが真顔で言う傍ら、ソフィアは愕然としていた。
明らかに、実家の一番良い部屋よりもグレードが高い部屋だったから。
まず第一に、とても広い。
広過ぎて逆に落ち着かないくらい広い。
壁は一面明るい色の花柄模様。
天井にはたくさんの蝋燭が刺さったシャンデリア。
ソフィアの身長の何倍もある大きな窓からは、夕暮れの陽がたっぷりと差し込んでいる。
天蓋付きのキングサイズベッドは見るからにふっかふかで清潔感があり、鏡台も見たことないくらい大きかった。
総じて、ソフィアが今まで住んでいた部屋が犬小屋に思えてくるほど上等な部屋だった。
「私は何か夢でも見ているのでしょうか?」
「いいえ、現実ですよ、ソフィア様」
クラリスが淡々と言って、荷物をテーブルに置く一方、後ろからついてきたハナコが『わーいっ、おっきいー!』と、ベッドにもふんっと寝転んだ。
それからお腹をごろりんと見せて、くうくうと寝息を立て始める。
「可愛らしいフェンリルちゃんですね」
「す、すみません、落ち着きがなくて」
「謝るようなことではありません、精霊たちは無邪気で気ままな存在ですから」
「そうなのですね」
精霊がどのような存在かよくわかっていないソフィアは頷く事しかできない。
「でも、クラリスさんも可愛いです!」
思った事を口にするソフィアに、クラリスは驚いたように目を丸める。
「ありがとう、ございます。お世辞でも嬉しいです」
「お世辞じゃないですよ、お目鼻立ちももちろんですが、特にその猫ちゃんチックなお耳が……」
「ああ、これですか」
クラリスが自分の耳を指さすと、ふわふわそうな耳がピクピクと動く。
「ふおおおおお動いてます!!」
「それはまあ、耳ですし」
一気にボルテージマックスになるソフィアに対し、クラリスの反応は冷ややかなものだった。
別に呆れているわけでもなく引いているわけでもなく、クラリスは元々感情抑揚が小さめで、表情のバリエーションが少ないだけである。
「クラリスさんは、猫ちゃんとのハーフなのですか?」
「厳密には獣人族と人間のハーフですね」
「なるほどー、それでそんな可愛らしいお耳を……」
じーーーーっと、ソフィアが物欲しそうな目でクラリスの耳を眺める。
「……触ってみますか?」
「いいんですか!?」
びゅんっと、クラリスのそばに接近するソフィア。
流石のクラリスも、ちょっぴり引いてしまう。
「え、ええ。好きなだけ、どうぞ」
「で、では、遠慮なく……」
恐る恐る、クラリスの猫耳に手を伸ばすソフィア。
むきゅ、と効果音が聞こえてきそうな感触が掌を覆う。
「はわわ……ふわふわで柔らかくて……とても気持ちいいです」
さわさわさわさわ。
「んっ……」
クラリスの表情がぴくりと強ばる。
心なしか頬に仄かな赤みが差していた。
案外、耳は弱いのかもしれない。
しかしもふることに夢中なソフィアは、そんなクラリスの反応に気づかない。
しばらくさわさわ撫で撫でと、癖になる感触を堪能していた。
そうしていると、クラリスが「む……」とすんすん鼻を鳴らした。
「大変失礼を承知の上でお聞きするのですが、ソフィア様」
「はい?」
ソフィアの全身を見渡してから、尋ねる。
「最後にいつ、お身体を洗われましたか?」
「はえっ? え、えっと……確か……二日前に水を被りました!」
普段、水浴びは五日に一度しか許されていないのだが、嫁ぎ先に行くからとどうしてもと頭を下げてようやく浴びることのできた水だった。
ちゃんと身は清めてきましたよと、妙なドヤ顔をするソフィアとは対照的に、クラリスは卒倒しそうになっていた。
「……先に荷物を片そうと思っておりましたが、気が変わりました」
きゅぴんと、クラリスは目を光らせる。
「あ、あの……なんだかお顔が怖いのですが……?」
「ソフィア様にはまずは、お風呂に入っていただきます」
「お、ふろ……?」
聴き慣れない単語に、ソフィアはこてんと小首を傾げるのであった。
【お知らせ】
本作は「小説家になろう」にも掲載しているのですが、
5位以内までもうひと息(現在6位)なので、
追い込みをかけるべく本日あと4話更新致します。
アルファポリスも併せて4話更新予定です。
更新時間は12時、19時、21時、22時を予定しております。
お楽しみに!
もしよろしければ、「小説家になろう」の方も応援頂けると幸いです。
↓なろうURL↓
https://ncode.syosetu.com/n3215hu/
引き続きどうぞどうぞよろしくお願い致します。
クラリスに通された部屋を見るなり、ソフィアはそんな言葉を漏らした。
「何って、ソフィア様のお部屋ですが……」
クラリスが真顔で言う傍ら、ソフィアは愕然としていた。
明らかに、実家の一番良い部屋よりもグレードが高い部屋だったから。
まず第一に、とても広い。
広過ぎて逆に落ち着かないくらい広い。
壁は一面明るい色の花柄模様。
天井にはたくさんの蝋燭が刺さったシャンデリア。
ソフィアの身長の何倍もある大きな窓からは、夕暮れの陽がたっぷりと差し込んでいる。
天蓋付きのキングサイズベッドは見るからにふっかふかで清潔感があり、鏡台も見たことないくらい大きかった。
総じて、ソフィアが今まで住んでいた部屋が犬小屋に思えてくるほど上等な部屋だった。
「私は何か夢でも見ているのでしょうか?」
「いいえ、現実ですよ、ソフィア様」
クラリスが淡々と言って、荷物をテーブルに置く一方、後ろからついてきたハナコが『わーいっ、おっきいー!』と、ベッドにもふんっと寝転んだ。
それからお腹をごろりんと見せて、くうくうと寝息を立て始める。
「可愛らしいフェンリルちゃんですね」
「す、すみません、落ち着きがなくて」
「謝るようなことではありません、精霊たちは無邪気で気ままな存在ですから」
「そうなのですね」
精霊がどのような存在かよくわかっていないソフィアは頷く事しかできない。
「でも、クラリスさんも可愛いです!」
思った事を口にするソフィアに、クラリスは驚いたように目を丸める。
「ありがとう、ございます。お世辞でも嬉しいです」
「お世辞じゃないですよ、お目鼻立ちももちろんですが、特にその猫ちゃんチックなお耳が……」
「ああ、これですか」
クラリスが自分の耳を指さすと、ふわふわそうな耳がピクピクと動く。
「ふおおおおお動いてます!!」
「それはまあ、耳ですし」
一気にボルテージマックスになるソフィアに対し、クラリスの反応は冷ややかなものだった。
別に呆れているわけでもなく引いているわけでもなく、クラリスは元々感情抑揚が小さめで、表情のバリエーションが少ないだけである。
「クラリスさんは、猫ちゃんとのハーフなのですか?」
「厳密には獣人族と人間のハーフですね」
「なるほどー、それでそんな可愛らしいお耳を……」
じーーーーっと、ソフィアが物欲しそうな目でクラリスの耳を眺める。
「……触ってみますか?」
「いいんですか!?」
びゅんっと、クラリスのそばに接近するソフィア。
流石のクラリスも、ちょっぴり引いてしまう。
「え、ええ。好きなだけ、どうぞ」
「で、では、遠慮なく……」
恐る恐る、クラリスの猫耳に手を伸ばすソフィア。
むきゅ、と効果音が聞こえてきそうな感触が掌を覆う。
「はわわ……ふわふわで柔らかくて……とても気持ちいいです」
さわさわさわさわ。
「んっ……」
クラリスの表情がぴくりと強ばる。
心なしか頬に仄かな赤みが差していた。
案外、耳は弱いのかもしれない。
しかしもふることに夢中なソフィアは、そんなクラリスの反応に気づかない。
しばらくさわさわ撫で撫でと、癖になる感触を堪能していた。
そうしていると、クラリスが「む……」とすんすん鼻を鳴らした。
「大変失礼を承知の上でお聞きするのですが、ソフィア様」
「はい?」
ソフィアの全身を見渡してから、尋ねる。
「最後にいつ、お身体を洗われましたか?」
「はえっ? え、えっと……確か……二日前に水を被りました!」
普段、水浴びは五日に一度しか許されていないのだが、嫁ぎ先に行くからとどうしてもと頭を下げてようやく浴びることのできた水だった。
ちゃんと身は清めてきましたよと、妙なドヤ顔をするソフィアとは対照的に、クラリスは卒倒しそうになっていた。
「……先に荷物を片そうと思っておりましたが、気が変わりました」
きゅぴんと、クラリスは目を光らせる。
「あ、あの……なんだかお顔が怖いのですが……?」
「ソフィア様にはまずは、お風呂に入っていただきます」
「お、ふろ……?」
聴き慣れない単語に、ソフィアはこてんと小首を傾げるのであった。
【お知らせ】
本作は「小説家になろう」にも掲載しているのですが、
5位以内までもうひと息(現在6位)なので、
追い込みをかけるべく本日あと4話更新致します。
アルファポリスも併せて4話更新予定です。
更新時間は12時、19時、21時、22時を予定しております。
お楽しみに!
もしよろしければ、「小説家になろう」の方も応援頂けると幸いです。
↓なろうURL↓
https://ncode.syosetu.com/n3215hu/
引き続きどうぞどうぞよろしくお願い致します。
15
お気に入りに追加
2,961
あなたにおすすめの小説
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
幼妻は、白い結婚を解消して国王陛下に溺愛される。
秋月乃衣
恋愛
旧題:幼妻の白い結婚
13歳のエリーゼは、侯爵家嫡男のアランの元へ嫁ぐが、幼いエリーゼに夫は見向きもせずに初夜すら愛人と過ごす。
歩み寄りは一切なく月日が流れ、夫婦仲は冷え切ったまま、相変わらず夫は愛人に夢中だった。
そしてエリーゼは大人へと成長していく。
※近いうちに婚約期間の様子や、結婚後の事も書く予定です。
小説家になろう様にも掲載しています。
【完結】長い眠りのその後で
maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。
でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。
いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう?
このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!!
どうして旦那様はずっと眠ってるの?
唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。
しょうがないアディル頑張りまーす!!
複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です
全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む)
※他サイトでも投稿しております
ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです
殿下、側妃とお幸せに! 正妃をやめたら溺愛されました
まるねこ
恋愛
旧題:お飾り妃になってしまいました
第15回アルファポリス恋愛大賞で奨励賞を頂きました⭐︎読者の皆様お読み頂きありがとうございます!
結婚式1月前に突然告白される。相手は男爵令嬢ですか、婚約破棄ですね。分かりました。えっ?違うの?嫌です。お飾り妃なんてなりたくありません。
私がいなくなった部屋を見て、あなた様はその心に何を思われるのでしょうね…?
新野乃花(大舟)
恋愛
貴族であるファーラ伯爵との婚約を結んでいたセイラ。しかし伯爵はセイラの事をほったらかしにして、幼馴染であるレリアの方にばかり愛情をかけていた。それは溺愛と呼んでもいいほどのもので、そんな行動の果てにファーラ伯爵は婚約破棄まで持ち出してしまう。しかしそれと時を同じくして、セイラはその姿を伯爵の前からこつぜんと消してしまう。弱気なセイラが自分に逆らう事など絶対に無いと思い上がっていた伯爵は、誰もいなくなってしまったセイラの部屋を見て…。
※カクヨム、小説家になろうにも投稿しています!
婚約者が王子に加担してザマァ婚約破棄したので父親の騎士団長様に責任をとって結婚してもらうことにしました
山田ジギタリス
恋愛
女騎士マリーゴールドには幼馴染で姉弟のように育った婚約者のマックスが居た。
でも、彼は王子の婚約破棄劇の当事者の一人となってしまい、婚約は解消されてしまう。
そこで息子のやらかしは親の責任と婚約者の父親で騎士団長のアレックスに妻にしてくれと頼む。
長いこと男やもめで女っ気のなかったアレックスはぐいぐい来るマリーゴールドに推されっぱなしだけど、先輩騎士でもあるマリーゴールドの母親は一筋縄でいかなくて。
脳筋イノシシ娘の猪突猛進劇です、
「ザマァされるはずのヒロインに転生してしまった」
「なりすましヒロインの娘」
と同じ世界です。
このお話は小説家になろうにも投稿しています
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
【完結】何故こうなったのでしょう? きれいな姉を押しのけブスな私が王子様の婚約者!!!
りまり
恋愛
きれいなお姉さまが最優先される実家で、ひっそりと別宅で生活していた。
食事も自分で用意しなければならないぐらい私は差別されていたのだ。
だから毎日アルバイトしてお金を稼いだ。
食べるものや着る物を買うために……パン屋さんで働かせてもらった。
パン屋さんは家の事情を知っていて、毎日余ったパンをくれたのでそれは感謝している。
そんな時お姉さまはこの国の第一王子さまに恋をしてしまった。
王子さまに自分を売り込むために、私は王子付きの侍女にされてしまったのだ。
そんなの自分でしろ!!!!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる