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第二章 社長生活の開始
はだかの王様
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ゲネプロが終わり。
ゲネプロを観に来ていた新谷ねむが、オレと左右田さんの所にやって来た。
「凄く良かったです」
開口一番、ねむはそう言った。
「ああ、私も出たかったなあ・・・!」
レギュラーの仕事を持っているねむは、稽古スケジュールと自分の仕事のスケジュールがなかなかかみ合わず、仕方なく今回の出演を断念していた。
「社長、次はいつやるんですか?」
まだ本番の幕が開いていないのに、もう次の話か。
「次は絶対、出して下さいね!」
そう笑って、ねむは帰って行った。
オレは恐る恐る、左右田さんに尋ねた。
「今日の公演は、どうだったんですか?」
左右田さんは、少し考えて言った。
「細かい直しは沢山あるが・・・みんな頑張ってくれたんじゃないか?」
「ですよね!オレ、感動しました。何度も稽古で見ている芝居なのに、泣けたし、笑えたし」
「・・・・・」
左右田さんは、少し考えて、一言、こう言った。
「はだかの王様だ」
「はだかの王様?」
「芝居を創る人間は誰しも、はだかの王様なんだ。終演後、客はみんな『良かったよ』『楽しかった』って駆け寄って来る。しかしその何%が本気でそう言ってくれているか、それはわからない。周りの人間を、感想を、信用するな、とは言わん。だが、お前さんはいつまでたってもはだかの王様だ。素直な子供が、『王様ははだかだ!』って口にした瞬間、全てが終わる。・・・その矜持だけは、いつまでも持っていて欲しい」
真剣な物言いだった。
左右田さんの長い演劇人生において、いろいろ・・・本当にいろいろあったのだろう、そんな歴史が言わせた重い一言だった。
オレはありがたく左右田さんの言葉を心に刻んだ。
お客様の反応は、上々だったと言って良い。
声優にプロテストは無い。
しかしまだ売り出し中とはいえプロとして活動している人間が、全力で役作りをし、演技を考え、演じた作品なのだ。
みんなの思いもあいまって、この朗読公演はとても良い、いや、鬼気迫る仕上がりになっていた。
明日はいよいよ、本番初日の幕が上がる。
ゲネプロを観に来ていた新谷ねむが、オレと左右田さんの所にやって来た。
「凄く良かったです」
開口一番、ねむはそう言った。
「ああ、私も出たかったなあ・・・!」
レギュラーの仕事を持っているねむは、稽古スケジュールと自分の仕事のスケジュールがなかなかかみ合わず、仕方なく今回の出演を断念していた。
「社長、次はいつやるんですか?」
まだ本番の幕が開いていないのに、もう次の話か。
「次は絶対、出して下さいね!」
そう笑って、ねむは帰って行った。
オレは恐る恐る、左右田さんに尋ねた。
「今日の公演は、どうだったんですか?」
左右田さんは、少し考えて言った。
「細かい直しは沢山あるが・・・みんな頑張ってくれたんじゃないか?」
「ですよね!オレ、感動しました。何度も稽古で見ている芝居なのに、泣けたし、笑えたし」
「・・・・・」
左右田さんは、少し考えて、一言、こう言った。
「はだかの王様だ」
「はだかの王様?」
「芝居を創る人間は誰しも、はだかの王様なんだ。終演後、客はみんな『良かったよ』『楽しかった』って駆け寄って来る。しかしその何%が本気でそう言ってくれているか、それはわからない。周りの人間を、感想を、信用するな、とは言わん。だが、お前さんはいつまでたってもはだかの王様だ。素直な子供が、『王様ははだかだ!』って口にした瞬間、全てが終わる。・・・その矜持だけは、いつまでも持っていて欲しい」
真剣な物言いだった。
左右田さんの長い演劇人生において、いろいろ・・・本当にいろいろあったのだろう、そんな歴史が言わせた重い一言だった。
オレはありがたく左右田さんの言葉を心に刻んだ。
お客様の反応は、上々だったと言って良い。
声優にプロテストは無い。
しかしまだ売り出し中とはいえプロとして活動している人間が、全力で役作りをし、演技を考え、演じた作品なのだ。
みんなの思いもあいまって、この朗読公演はとても良い、いや、鬼気迫る仕上がりになっていた。
明日はいよいよ、本番初日の幕が上がる。
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