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第二章 社長生活の開始

毎週水曜日

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毎週水曜日の、左右田さんの演技レッスンは、過酷ではあったが楽しみでもあった。
最初はつかみどころのなかった新谷ねむとどんどん仲良くなっていけている事も、オレの自信になっていた。

二回目のレッスンは、筋トレのやり方だった。
特に発声時に必要な、腹筋を中心に鍛える。

「筋肉は酸素を保存する。叫び続けたり、怒鳴り続けたりする芝居の時には、その酸素の備蓄量、つまり筋肉の量が物を言うんだ」

さらに左右田さんは続けた。

「砂浜みたいな、地面がふわふわな場所でジャンプするのと、地面がコンクリートの所でジャンプするのと、どっちが高く跳べる?ミサイルだって、発射台がしっかりしてなきゃ真っ直ぐ飛ばないんだぞ!」

両足を揃えて、上げ下げする腹筋。
両足を揃えて、キープする腹筋。
身体をV字にした状態から、ボートをこぐように、両足をひきつける、伸ばす、を繰り返す腹筋。
さまざまな方法で腹筋を苛め抜かれた。

「どうした二代目、もうダウンか?」

なにくそ、と思って続けていたが、3セット目でオレは力尽きた。

「気にしなさんな・・・この下腹部の腹筋は、日常生活では使わない腹筋だから、スポーツをやっていたっていう奴でも厳しい腹筋なんだ。まあ、騙されたと思って一か月続けてみな・・・一回きちんと作ってしまえば、両足を上げたまま本を一冊読めるようになる」

実際、プロの声優には必要な腹筋らしかった。
その証拠に、ねむはこのカリキュラムを簡単にクリアして見せた。
正直プライドが傷ついたが、仕方ない。

「それから、基礎運動としてはおろそかにされがちだが、【ブレストレーニング】・・・台詞術って言うのは、呼吸を操る技だ。色んな呼吸を自由自在に操れるようにならなきゃならん」

吸って、吐く。
吸って、吸って、吐く。
8カウントで吸って、8カウントで吐く。
ワンブレスで一気に吸って、ワンブレスで一気に吐く。
深い呼吸、暖かい呼吸で。
広く吸って、深く吐く。

オレとねむは、ひたすら様々な呼吸法を練習させられた。

「最後は奥義を教えてやる」

左右田さんの基礎トレーニング方法のレッスンは、佳境を迎えていた。
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