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第二章 社長生活の開始

マネージャー、小林

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9時。
次にやって来たのは、マネージャーの小林だった。
年齢は二十代の後半。
坊主頭で、がっしりとした体格をしている。
明らかにスポーツマンらしかった。

「小林さんの経歴を教えてくれますか?」
小林は言った。
「小、中、高、大学で野球をやっていました」
「ああ、だからこんなにがっしりしているんですね」
「体力には自信があります。野球は、今でも草野球を毎週」
見たまんまだ。

「大学を出た後は、印刷会社で営業をしていました」
「ほう・・・営業を」
「そこで社長・・・お父様とお会いして、スカウトされて、ベガに入りました」

親父が自らスカウトしたのか。
それならば、相当なやり手に違いない。

「小林さんは、どんな営業手法を使うんですか?」
「いや・・・営業手法と言う程の物では」
「後学の為に教えて下さいよ」
「自分は、当たって砕けろ、です。とにかく取引先と仲良くなって、信頼を得て、仕事に繋げる。そんなやり方で、ずっとやって来ました」
「素敵ですね。自分は口下手で人見知りなんで、そういう体育会系のノリ、羨ましいです」
「社長、ちょっといいですか」

小林がオレの言葉を遮った。

「自分は、【体育会系】ではなく、【体育会】です」

そう言って、ニカッと笑った。
それだけで、性格に裏表がない事は想像出来た。

「声優プロダクションの仕事は楽しいですか?」
「楽しいですよ。僕は、売る物は何でもいいんです。機械でも、食べ物でも、人間でも。特にプロダクションは、人間と人間を繋げて何かを生み出す仕事ですから、やりがいがあります」

小林もまた、力強い味方になってくれそうだと、オレの直感が言っていた。

「ちなみに」
オレは尋ねた。
「小林さんは、ポジションは何処なんですか?」
小林は嬉しそうに答えた。
「現役の頃はピッチャーでした。変化球は一通り投げられます。一応、エースで四番だったんですよ。草野球では何処のポジションでも守れます。社長もどうですか、今度一緒に、ひと試合」

野球は、小学校の頃、子供会でやったソフトボールくらいしか経験がない。
しかし、小林を良く知る為だ。
「機会があったら是非、参加させて下さい」
そう答えると、また小林はニカッと笑った。
本当に心から野球が好きらしい。
この人懐っこさで仕事を取って来るのだろう。
頼れる戦力である事は間違いなかった。
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