村人にいじめ殺された少年が、転生して村の土地神になった話

村を捨てる

村人たちは、社に手を合わせ、祈ると、その瞬間、バタン！と、社の戸が開いた。

「おおっ！？」

立っていたのは、荷物をまとめたブチ。

「何だら？」
「風か？」
「いや、神様が、お答え下さったずら！」

ブチの姿は、村人たちには見えない。
ブチが視えるのは、ミコだけであり、ブチと話が出来るのも、ミコだけである。

「ありがとうごぜえます、神様・・・」
「お助け下せえ、お守り下せえ・・・」

熱心に自分に祈りを捧げる村人たちを見るブチ。
顔には、苦悶の表情が浮かんでいた。

「困った時だけ神頼みしてもダメなんじゃ！」
「ブチ様・・・」
「お前たちの事なんか知った事か・・・わしは逃げる！」

ブチは、祈る村人たちを置いて、走り去った。

「ブチ様・・・まさか・・・？」

ブチの表情から何かを読み取ったミコ。
ブチの走り去った方をしばし心配そうに見つめていたが・・・やがてミコは、ブチを追って走り出した。