村人にいじめ殺された少年が、転生して村の土地神になった話

ブチとミコ

「ブチ様、これ、お供え物だ」

ミコは、畑で取れた野菜を、社の前に置いた。
駆け寄って来たブチは、早速野菜をかじる。

「うーん」
「どうだ？美味いか？」
「・・・まずい！お供え物なら、もっと美味い物を持って来んか！」

ブチの悪態はいつもの事なので、ミコはにこにことブチを見守っている。
その視線に気付き、赤くなるブチ。

「なんじゃ、ジロジロ見るな！」
「ええじゃろう、見ていても」
「・・・勝手にしろ」

しばし見つめ合う二人。
ミコの視線には、ブチに対する深い愛情がこめられていた。
すると、ブチが口を開く。

「・・・全く、お前は不細工じゃのう」
「・・・そうかのう」
「だからいつまでたっても嫁の貰い手がないんじゃ。お前もいい年なんじゃから、そろそろ嫁に行け。ま、わしだったら、お前のような醜女（しこめ）は絶対に嫁にせんがな！」

さすがにこの悪態には、ミコの表情が曇った。

「非道い事を言う」
「何が非道い」
「わしだって年頃じゃ・・・好きな者くらいおる」