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すろと、上原が、ゆっくりと佐々野に近付く。

「先生!ダメです、危ない!」

何も出来ない佐々野。
上原に難なくカッターナイフを取り上げられてしまう。

「・・・暴漢を演じているつもりだろうが、殺気が全くないのはおかしいよ。それにリュウ君、君
の演技もひどいものだ」

リュウタロウ、苦笑いして佐々野から離れる。

「バレてましたか」
「役者の嘘を見抜くのが仕事なのでね」
「だから先生は素人物がお好きなんだ!企画物とか?あれは女優が嘘ばかりだからな!」
「黒木君、やめなさい。話を戻そう」
「はい。・・・リュウ君、どうして?」
「この二人がね、出待ちしていたんですYО。どうしても先生に会わせて欲しいって。で、話を聞
いたら面白かったんで、手を貸しました」

黒木、険しい表情で、須磨子と佐々野の方に向き直る。

「話って何だ?」

須磨子は、黒木をなかば無視するように、上原に話しかけた。

「私は、松井須磨子です。あなたは、島村抱月先生ですか?」
「・・・島村抱月を捜しているのか」
「そうなんですって!」

黒木が口を挟む。

「松井須磨子は、大正時代の女優だろう。何でここにいるんだ?」

この問いには、佐々野が答えた。

「僕も信じられない話なんですが、転生したそうです」
「いや、正確には松井須磨子の魂が、この女性の肉体に入った・・・そういう事だね」
「はい!」
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