召喚勇者はにげだした

大島Q太

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5.ラッキースケベの呪い

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サバラは手を振りながらそのまま去っていった。やった、豚肉!豚肉!俺はさっさと用事を済ませるために冒険者クランに入った。
薬草の買い取りは冒険者クランが一手に引き受けている。台の上のベルで受付を呼び、薬草を並べた。受付のおじさん「ミドー:舐め犬 後背位」がいらっしゃいと、並べた薬草をひとつひとつ丁寧に確認している。
「おおタロー。またたくさん摘んできたな」
そう言って薬草の分の銀貨を素早く計算する。討伐や護衛ミッションを受ければ、もっとたくさん稼げるのだろう。変に目立ちたくないのと、めんどくさいのとめんどくさいので採取だけをしている。

召喚の間から俺が消えて1カ月後、消えた勇者コジン・ジョウホウの手配書が国中に出回った。
冒険者クランでその手配書を見つけた時は卒倒しそうになったが、ラッキーなことに似顔絵がクソ似てない。なんで目の中に星が何個も光ってんだよ。何だこの尖った顎は。肩幅広っ。
ということでかなり高額の懸賞金付きで指名手配されているのに、今のところ誰も俺に気付いてなさそうだ。
このままずっと気付かれないためにも大人しくスローライフを決め込む必要がある。

「タローはほんとにその手配書が好きだな。その勇者様ってかっこいいもんな」
ミドーがほほえましそうに俺を見ていた。
この世界の美の基準が分からん。ただミドーは俺が冒険者クランに来るたびに、この手配書とにらめっこするせいで、勇者様に恋していると思っている。否定する方が面倒なのでコクリとうなずいて冒険者クランを出た。



今日の晩御飯はサバラの家でいただくとして、やっぱり手ぶらじゃ行きにくいよな。サバラの親父さんたちは異世界に来たばかりの俺に、見返りを求めず善意だけで色々と教えてくれたいい人たちだから。遠慮するかもしれないが、甘いものを買って行こう。
シストルの街にもかなり土地勘がついてきた。甘いものと言えば裏路地沿いの果物屋だなとそっちへ向かった。



突如。裏路地から怒声が響く。

「ヒーヤッハーッ 大人しくシロォー!」

何事かと辺りを見回していると、男が3人がかりで赤い塊を檻に入れているように見えた。どうしよう、たぶんさっきの頭の悪そうな声はあの人たちだ。3人だけ世紀末みたいなガラの悪さだ。
助けた方がいいのかな?と足を止めて悩んでいると、俺の横を赤い軍服風の格好をした男が通り過ぎ、さっそうとその男たちの方に向かう。
背も身幅も大きく、カフェオレ色の髪は短く刈り揃えられていた。パッと見、強そうに見えた。

男は檻の中を確認すると一人の男に詰め寄った。並ぶと男の方が頭一つ分ほど大きい。何かを言い合っている。これは彼が解決するかもしれないと期待を込めて見ていると。ガラの悪い3人は男を囲み、ワンパンで男を地面に沈めた。

マジか。なんでその程度の実力で前に出たんだ。

軍服男はボコボコに蹴られている。俺は悩むのをやめて男たちに近づく。
「一日一善パンチ!」
とりあえず、一番手前のやつを殴った。身体強化をかけているから現代っ子の俺でもめちゃくちゃ痛いパンチが出せる。なぜか男の服がはじけ飛んでいる。
「一日一善キック!」
ワンパンで倒された仲間を呆然と見下ろしている奴のすねを蹴った、すっごい痛がっている。人が痛がっている姿ってなんか笑えるな。なぜかズボンがはじけ飛んでいる。
最後に残ったやつは俺をみながらふるふると首を振って震えている。
「一日一善チョップ!」
かくして3人目も服まではじけ飛んで、パンツ一丁で地面に沈んだ。ラッキースケベの呪いおそるべし。


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