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最終章
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サリザンドの総長任命式にコルやソレスも呼ばれ、4人で帝都に
行く事になったけど、サリザンドはポータルを使う事を拒んだ。
理由は単純で、都と歩いた道を歩きたかったからだと言う。
俺達は4人で久しぶりに都との想い出話しをしながら帝都に向かった。
領地を出て10日が過ぎ、やっと帝都に入る事が出きた。しかし、俺達
はまずしなければならない事がある。
それは正装!
俺以外の誰もが服なんてなんでも良い、風呂は三日に一度、髭もボー
ボーだから、まずはサロンに3人をぶち込んだ。
俺達は綺麗だとか、ぎゃあぎゃあ文句を言っていたけど、
「都の神核と久しぶりに会えるかも知れないのに、そんな汚くていいの?」
その一言で3人は黙ってくれた。都様々だよ!
本当にコイツらときたら物乞いと変わんない位に汚れてるのに
気にしないなんて…信じられない!
3人を身綺麗にする為にサロンに連れて行き、その間にルーナは
コルとソレスの礼服を買いに行った。仕立てる程の余裕も無かった為、
既製品を買い求めたが、なかなか安くて良いものが手に入った。
「オラ、この服嫌ぇーだ」
「うむ。首が苦しいな…羽の付け根も…なんだか…」
身体の半分が獣体の二人はモゾモゾと落ち着かないでいる。
「仕方ないだろ?オーダーメイドする時間も金も無かったんだから。文句言うなよな!」
既製品であっても、ルーナ、コル、ソレスは若干の着せられた感は
ある物の、中々に立派に見えた。
唯一、サリザンドは協会から支給された深緑色に金糸の縁取りのされた
ジャケットに、艶のある白の長いローブを羽織っていた。
そして、その胸元には魔導学協会のシンボルの百合の紋章と、都から
貰ったペンダントトップを重ねたブローチが付けられている。
「サリザンド殿は立派に見えるだ!けんど、物語に出てくる悪い魔法使いのようだで、子供が見たらチビるだよ!」
真顔で揶揄うソレスの頬をつねり上げたサリザンドは、憎々しく
言った。
「また、核蘇生呪法使って欲しいみたいだな?今度は魔粒子核1/4程削ってやろうか?そうなったら空も飛べぬ様になるなぁ?ソレス」
「っっ!こらヤバいだ!オラ先いくだよ!」
賑やかな街に、少し浮かれた熱が4人の晴れる事の無かった心を少し
軽くさせている。都の事を忘れた日は1日も無かったが、人々の笑顔や
喧騒に心が前向きになっていた。
今月に入ってから、毎日見る夢がある。
「皆でお茶会をしようぜ!」
幼い頃、一度だけお会いしたあの方と向き合いお茶を飲む。
目覚めた後は思い出す事も出来ないような、些細な話しをテーブルを
囲む黒く塗り潰された人影達とした。
それでも、ニコニコと嬉しそうに笑ってくれる笑顔は、あの頃と何も
変わらず優しくて美しい。僕は目覚めると、胸元を握りしめる。
あの方は、僕を助けてくれた様に世界を助けてくれた。
亡くなったと聞いた時は、母さんも父さんも、僕も泣いて、泣いて…
立ち直るのにどれ位の月日を要したか。
そんなあの方が夢に現れてから、僕は突き動かされる様に帝都に
向かっていた。何か理由があるわけでも無く、ただ行かなくては…
そう思ったんだ。
西から鉄道を乗り継ぎ、帝都に近付くにつれてペンダントに触れる
僕の胸が熱くなるのを感じた。きっと何かあるんだ…都様が残したこの
ペンダントにはまだ役割がある。
僕はまるでそれが僕を勇者にでもしてくれる様な気になっていた。
「よぉ!兄ぃちゃん、何処に向かうんだい?」
帝都と西部を繋ぐ関所で、領地を出る手続きの列に並んでいると、行商
人の男がサバトラの青年に声を掛けた。
「セロンまで!」
「あぁ!復活祭に行くのか!」
「復活祭?」
「なんだ、知らねぇのか?毎年この期間はグレース神の誕生と世界の復活を祝う祭りがあるんだ!色々な店が所狭しと並んで、歌って、踊って食倒れる祭りだよ!」
楽し気に話す行商人の男の口調に、明確な目的があった訳では無かった
サバトラの青年も、その熱が移ったのかワクワクして列の先頭の動きを
見て、まだかまだかと自分の番を待った。
帝都に入ると、セロンまではまだまだ距離があるというのに、いつも
以上に賑わっていて、青年はキョロキョロと行き交う人々を眺めては、
心浮き立つのを押さえ切れず尻尾をピンと立てて耳をあちらこちらに
向けていた。
「グレース神のシンボル太陽と月を象ったペンダントはどうだい!家族や恋人に渡せばご利益がある事間違いなしだ!」
「グレース神に浄化をして頂いた聖水で作った蒸留酒、″グレーシア″
今年の初出しだよ!飲んできな!」
そんな声が各店から響き渡った。楽し気な声を聞きつつも、セロン
へと向かう人の流れに乗って、熱気に満ちたその空気に青年は目を
輝かせた。
「ついに魔道学協会の総長か…あっという間だったな」
「あぁ。あっという間か…俺からしたらやっとだ」
「サリザンドよ、あの呪法は本当に成功するのか?」
「あげなおそろしか呪法の実験はもうしたくねーだよ!」
「ははっ!二人は実験台にされて毎日ボロボロだったもんな」
「んだよぉ!オラもう嫌だ」
「まぁ、そのお陰で俺は魔道学協会の総長だ。研究も認められた…後は都の神核を取り戻してあれを試すしか無い…」
「それ…上手く行くのかよ」
「グレース神は必ず渡す筈だ」
「「…」」
青年の横を通り過ぎる男達の会話に、青年は胸が急に熱くなり思わず
その後を追い、真ん中の男の服の袖を引っ張った。
「あのっ!」
急に服を引っ張られたサリザンドが振り返り、青年を見下ろした。
青年はドキドキしなが四人を見渡し、胸元の洋服をぎゅっと握って
いる。
「…なにか用か?」
「何、サリザンドの知り合い?」
「いや…」
「あの!僕アリアと言います!」
「やぁ、アリア。何か用かい?」
ルーナがアリアにニコリと笑うと手を差し出した。
軽く握手をすると、ルーナは時計を見てサリザンドに先に行けと
促した。
「悪いな、俺は先を急ぐ。その男が君の話を聞く」
そう言ってサリザンド達は前を見て歩き出した為、アリアは慌てて
声を掛けた。
「皆様、お茶会は如何ですか?」
思わず口を吐いて出た言葉にアリアは目を見開いた。
何故そんな事を言ったのか、僕にも分からなかった。
けれど、はっきりと分かる。
きっと僕はこの人達に会わないといけなかったのだと。
僕を彼等に会わせる為に…都様は僕を旅に出したんだ。
きっとそう、そうなんだ!
アリアは、胸元のペンダントを握りしめてもう一度言った。
「貴方達とお茶会をしたいのです!」
「「‼︎」」
ルーナにとってその言葉は慰めで、癒しで、喜びを与える言葉で
あった。
彼は今なんて言った?『お茶会をしたい』そう…言ったのか?
なぜ…なぜ、彼がその言葉を知っているんだろう。
「 なん…で…その言葉… 」
手が震える。もしかして、彼は都の生まれ変わりなんだろうか?
だから俺達に声を掛けてきたのか?都なのか?
「 あの!すみません…急に!実は僕…都様に呼ばれた様な気がして、帝都に出てきたんです。皆さんを見たら急にペンダントが熱くなった気がして、きっと都様が皆さんを探しているんじゃ無いかって! 」
アリア…君は、何者なんだ?それにペンダントだって?
ルーナは慌てて自分のペンダントをアリアに見せた。
「 ペンダントって…これの事かい? 」
「 はいっ‼︎僕のとは少し色の数が違いますが…これです 」
アリアは首から下げたペンダントをルーナに見せた。
すると、ルーナは今まで出した事も無いような大声をだした。
「 サリザンドッ‼︎ サリザンド‼︎ 」
ルーナの少し後に立っていたサリザンド達は驚き目を見開いている。
そして、ルーナの元に近寄った。
「 なんだっ!急に大声をだし……て… 」
サリザンドはアリアの手に輝くペンダントを見て、口元を手で覆った。
「 それ…もしかして…都 」
「 はい。私がまだ子供だった頃、都様に頂いたんです。いつか淀みが消えたら城に遊びに来て欲しいって…これがあれば入れてもらえるよって… 」
ルーナはアリアのペンダントに恐る恐る触れた。
じんわりと手から伝わる都の神核の鼓動にも似た神力の波動に、
知らず知らずに涙を溢していた。
「 都…こんな所にも…隠れていたの? 」
「 サリザンドッ…都だ…都の核がここにもあった! 」
サリザンド達も、震える手をペンダントに翳してその核を確かめて
いた。
「 夢で…都様が毎日、お茶会をしようって誘って下さるのです…そこには沢山の人影も一緒なんですけど……きっと皆さんの事なのかなって直感的に思ったんです 」
ふにゃりと笑うアリアの顔は、まるで照れ笑いした時の都の笑顔に
よく似ていた。
都!お前は一体どれ程の神核を削りペンダントに隠している?
カムイと俺とルーナ…この3個に神核がある事は分かっていた。
他に宮廷内でペンダントやカフス、ピアスを持つ者から借りて調べた
が、他には無かった。あぁ!都、都!やってくれたな…。
あの悪戯っ子め‼︎
こんな一番デカい神核を入れたペンダントをこんな子供に与えていた
なんて!だからなのか?あの時神体の力でも、都を取り戻せなかった
のは…。今すぐにでも試したい!だが、我慢だ…グレース神の神核を
貰い受けるまで…我慢だ。
頭を抱え、イライラしながらも口元が緩んで行くのを止められない
サリザンドの顔を見たアリアは、嬉しそうに笑うとペンダントを外して
ルーナに手渡した。
「これが…必要なんですよね?」
「なんで…」
「僕、子供の頃…白汚染で目が見えなかったんです。だからか、心の声が分かるんです…勿論超能力的な意味では無いですけど…都様に偶然出会って…目を治して貰って…僕は都様の為にずっと祈っていました。天界で…都様に僕達を見ていて下さいって。でも…きっと都様は…皆さんの所に帰りたかったのかなって…思うんです」
そう、きっとそうなんだと思う。こうやって皆さん、自分のペンダン
トやブローチを握りしめて泣いているのは、都様を今でも想っている
からですよね?なら、返して差し上げたい。僕も都様の願いを叶えて
あげたいから。
都様、今、貴方様へご恩返し致します。
やっと…帰れましたね。
行く事になったけど、サリザンドはポータルを使う事を拒んだ。
理由は単純で、都と歩いた道を歩きたかったからだと言う。
俺達は4人で久しぶりに都との想い出話しをしながら帝都に向かった。
領地を出て10日が過ぎ、やっと帝都に入る事が出きた。しかし、俺達
はまずしなければならない事がある。
それは正装!
俺以外の誰もが服なんてなんでも良い、風呂は三日に一度、髭もボー
ボーだから、まずはサロンに3人をぶち込んだ。
俺達は綺麗だとか、ぎゃあぎゃあ文句を言っていたけど、
「都の神核と久しぶりに会えるかも知れないのに、そんな汚くていいの?」
その一言で3人は黙ってくれた。都様々だよ!
本当にコイツらときたら物乞いと変わんない位に汚れてるのに
気にしないなんて…信じられない!
3人を身綺麗にする為にサロンに連れて行き、その間にルーナは
コルとソレスの礼服を買いに行った。仕立てる程の余裕も無かった為、
既製品を買い求めたが、なかなか安くて良いものが手に入った。
「オラ、この服嫌ぇーだ」
「うむ。首が苦しいな…羽の付け根も…なんだか…」
身体の半分が獣体の二人はモゾモゾと落ち着かないでいる。
「仕方ないだろ?オーダーメイドする時間も金も無かったんだから。文句言うなよな!」
既製品であっても、ルーナ、コル、ソレスは若干の着せられた感は
ある物の、中々に立派に見えた。
唯一、サリザンドは協会から支給された深緑色に金糸の縁取りのされた
ジャケットに、艶のある白の長いローブを羽織っていた。
そして、その胸元には魔導学協会のシンボルの百合の紋章と、都から
貰ったペンダントトップを重ねたブローチが付けられている。
「サリザンド殿は立派に見えるだ!けんど、物語に出てくる悪い魔法使いのようだで、子供が見たらチビるだよ!」
真顔で揶揄うソレスの頬をつねり上げたサリザンドは、憎々しく
言った。
「また、核蘇生呪法使って欲しいみたいだな?今度は魔粒子核1/4程削ってやろうか?そうなったら空も飛べぬ様になるなぁ?ソレス」
「っっ!こらヤバいだ!オラ先いくだよ!」
賑やかな街に、少し浮かれた熱が4人の晴れる事の無かった心を少し
軽くさせている。都の事を忘れた日は1日も無かったが、人々の笑顔や
喧騒に心が前向きになっていた。
今月に入ってから、毎日見る夢がある。
「皆でお茶会をしようぜ!」
幼い頃、一度だけお会いしたあの方と向き合いお茶を飲む。
目覚めた後は思い出す事も出来ないような、些細な話しをテーブルを
囲む黒く塗り潰された人影達とした。
それでも、ニコニコと嬉しそうに笑ってくれる笑顔は、あの頃と何も
変わらず優しくて美しい。僕は目覚めると、胸元を握りしめる。
あの方は、僕を助けてくれた様に世界を助けてくれた。
亡くなったと聞いた時は、母さんも父さんも、僕も泣いて、泣いて…
立ち直るのにどれ位の月日を要したか。
そんなあの方が夢に現れてから、僕は突き動かされる様に帝都に
向かっていた。何か理由があるわけでも無く、ただ行かなくては…
そう思ったんだ。
西から鉄道を乗り継ぎ、帝都に近付くにつれてペンダントに触れる
僕の胸が熱くなるのを感じた。きっと何かあるんだ…都様が残したこの
ペンダントにはまだ役割がある。
僕はまるでそれが僕を勇者にでもしてくれる様な気になっていた。
「よぉ!兄ぃちゃん、何処に向かうんだい?」
帝都と西部を繋ぐ関所で、領地を出る手続きの列に並んでいると、行商
人の男がサバトラの青年に声を掛けた。
「セロンまで!」
「あぁ!復活祭に行くのか!」
「復活祭?」
「なんだ、知らねぇのか?毎年この期間はグレース神の誕生と世界の復活を祝う祭りがあるんだ!色々な店が所狭しと並んで、歌って、踊って食倒れる祭りだよ!」
楽し気に話す行商人の男の口調に、明確な目的があった訳では無かった
サバトラの青年も、その熱が移ったのかワクワクして列の先頭の動きを
見て、まだかまだかと自分の番を待った。
帝都に入ると、セロンまではまだまだ距離があるというのに、いつも
以上に賑わっていて、青年はキョロキョロと行き交う人々を眺めては、
心浮き立つのを押さえ切れず尻尾をピンと立てて耳をあちらこちらに
向けていた。
「グレース神のシンボル太陽と月を象ったペンダントはどうだい!家族や恋人に渡せばご利益がある事間違いなしだ!」
「グレース神に浄化をして頂いた聖水で作った蒸留酒、″グレーシア″
今年の初出しだよ!飲んできな!」
そんな声が各店から響き渡った。楽し気な声を聞きつつも、セロン
へと向かう人の流れに乗って、熱気に満ちたその空気に青年は目を
輝かせた。
「ついに魔道学協会の総長か…あっという間だったな」
「あぁ。あっという間か…俺からしたらやっとだ」
「サリザンドよ、あの呪法は本当に成功するのか?」
「あげなおそろしか呪法の実験はもうしたくねーだよ!」
「ははっ!二人は実験台にされて毎日ボロボロだったもんな」
「んだよぉ!オラもう嫌だ」
「まぁ、そのお陰で俺は魔道学協会の総長だ。研究も認められた…後は都の神核を取り戻してあれを試すしか無い…」
「それ…上手く行くのかよ」
「グレース神は必ず渡す筈だ」
「「…」」
青年の横を通り過ぎる男達の会話に、青年は胸が急に熱くなり思わず
その後を追い、真ん中の男の服の袖を引っ張った。
「あのっ!」
急に服を引っ張られたサリザンドが振り返り、青年を見下ろした。
青年はドキドキしなが四人を見渡し、胸元の洋服をぎゅっと握って
いる。
「…なにか用か?」
「何、サリザンドの知り合い?」
「いや…」
「あの!僕アリアと言います!」
「やぁ、アリア。何か用かい?」
ルーナがアリアにニコリと笑うと手を差し出した。
軽く握手をすると、ルーナは時計を見てサリザンドに先に行けと
促した。
「悪いな、俺は先を急ぐ。その男が君の話を聞く」
そう言ってサリザンド達は前を見て歩き出した為、アリアは慌てて
声を掛けた。
「皆様、お茶会は如何ですか?」
思わず口を吐いて出た言葉にアリアは目を見開いた。
何故そんな事を言ったのか、僕にも分からなかった。
けれど、はっきりと分かる。
きっと僕はこの人達に会わないといけなかったのだと。
僕を彼等に会わせる為に…都様は僕を旅に出したんだ。
きっとそう、そうなんだ!
アリアは、胸元のペンダントを握りしめてもう一度言った。
「貴方達とお茶会をしたいのです!」
「「‼︎」」
ルーナにとってその言葉は慰めで、癒しで、喜びを与える言葉で
あった。
彼は今なんて言った?『お茶会をしたい』そう…言ったのか?
なぜ…なぜ、彼がその言葉を知っているんだろう。
「 なん…で…その言葉… 」
手が震える。もしかして、彼は都の生まれ変わりなんだろうか?
だから俺達に声を掛けてきたのか?都なのか?
「 あの!すみません…急に!実は僕…都様に呼ばれた様な気がして、帝都に出てきたんです。皆さんを見たら急にペンダントが熱くなった気がして、きっと都様が皆さんを探しているんじゃ無いかって! 」
アリア…君は、何者なんだ?それにペンダントだって?
ルーナは慌てて自分のペンダントをアリアに見せた。
「 ペンダントって…これの事かい? 」
「 はいっ‼︎僕のとは少し色の数が違いますが…これです 」
アリアは首から下げたペンダントをルーナに見せた。
すると、ルーナは今まで出した事も無いような大声をだした。
「 サリザンドッ‼︎ サリザンド‼︎ 」
ルーナの少し後に立っていたサリザンド達は驚き目を見開いている。
そして、ルーナの元に近寄った。
「 なんだっ!急に大声をだし……て… 」
サリザンドはアリアの手に輝くペンダントを見て、口元を手で覆った。
「 それ…もしかして…都 」
「 はい。私がまだ子供だった頃、都様に頂いたんです。いつか淀みが消えたら城に遊びに来て欲しいって…これがあれば入れてもらえるよって… 」
ルーナはアリアのペンダントに恐る恐る触れた。
じんわりと手から伝わる都の神核の鼓動にも似た神力の波動に、
知らず知らずに涙を溢していた。
「 都…こんな所にも…隠れていたの? 」
「 サリザンドッ…都だ…都の核がここにもあった! 」
サリザンド達も、震える手をペンダントに翳してその核を確かめて
いた。
「 夢で…都様が毎日、お茶会をしようって誘って下さるのです…そこには沢山の人影も一緒なんですけど……きっと皆さんの事なのかなって直感的に思ったんです 」
ふにゃりと笑うアリアの顔は、まるで照れ笑いした時の都の笑顔に
よく似ていた。
都!お前は一体どれ程の神核を削りペンダントに隠している?
カムイと俺とルーナ…この3個に神核がある事は分かっていた。
他に宮廷内でペンダントやカフス、ピアスを持つ者から借りて調べた
が、他には無かった。あぁ!都、都!やってくれたな…。
あの悪戯っ子め‼︎
こんな一番デカい神核を入れたペンダントをこんな子供に与えていた
なんて!だからなのか?あの時神体の力でも、都を取り戻せなかった
のは…。今すぐにでも試したい!だが、我慢だ…グレース神の神核を
貰い受けるまで…我慢だ。
頭を抱え、イライラしながらも口元が緩んで行くのを止められない
サリザンドの顔を見たアリアは、嬉しそうに笑うとペンダントを外して
ルーナに手渡した。
「これが…必要なんですよね?」
「なんで…」
「僕、子供の頃…白汚染で目が見えなかったんです。だからか、心の声が分かるんです…勿論超能力的な意味では無いですけど…都様に偶然出会って…目を治して貰って…僕は都様の為にずっと祈っていました。天界で…都様に僕達を見ていて下さいって。でも…きっと都様は…皆さんの所に帰りたかったのかなって…思うんです」
そう、きっとそうなんだと思う。こうやって皆さん、自分のペンダン
トやブローチを握りしめて泣いているのは、都様を今でも想っている
からですよね?なら、返して差し上げたい。僕も都様の願いを叶えて
あげたいから。
都様、今、貴方様へご恩返し致します。
やっと…帰れましたね。
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