神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

咲狛洋々

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新世界編

使えるものは神様でも使え(1)

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 サリザンドとグレースは西のモルトゥーレ大森林の最奥へと訪れて

いた。それは、以前にソレスが言っていた大きな神核という物を見る

為であった。



「グレース様、これが神核です…最初は、私にも視認出来る神核があるとは思ってもいませんでした…それに、触れてみてください。」



サリザンドは神核を守るように絡まる木々の隙間に手を当てて、

グレースを促した。グレースも、促されるままに手を伸ばして

その神核にそっと触れている。



「…生きて…いるのか?神力に…あふれる魔粒子…俺は鼓動に似た振動も感じるぞ?」

「えぇ。私もですよ…この神核の持ち主はきっと高位の神、もしくは四聖獣の一柱の誰かなのではないかと思っていますが…」



触れる指先がじんわりと温かくなるのを感じながら、グレースは

それまで心を支配していた焦りや不安、恐れという感情が凪いでゆく

のを感じていた。



「なぁ、サリザンド。なんでなんだろうなぁ…なんでエルザードやテュルケット、カイリは俺達をここまで苦しませるんだろう…俺はさ…死ぬことも、覚悟はしていたんだ。でも、皆と一緒が良いんだよ…死ぬなら…お前等と抱き合って死にたい…。なのに、なんで都だけなんだ」



静かに額を神核に預け、グレースは目を瞑り考えていた。



「それは…きっと…この世界に私達が贄として選ばれてしまったからでしょうね」

「はっ、そんな大層な世界かよ…」

「そうですね。まぁ、ネガティブになるのは都を失った時まで取っておきましょう。そんな日が来ない様に頑張るんですよ!さて、どうやってこの神核をオブテューレまで運びますかね?」

「えぇ?ノープランかよ…」

「そりゃ、そうでしょ!本当ならソレスを連れて来るつもりだったんですよ?」

「ソレスなら何とか出来たのかよ?」



「彼は玄武の直系ではなく麒麟の直系なのですよ…確かに、この隠し村の住人は玄武の直系が多いですけど、ソレスは間違いなく麒麟の子孫なのです!」

「なんでそんな事分かるんだよ?」

「隠し村に…4日前にも来たのですが、その時にソレスと同じ獣体を持った村人に会ったんです。彼はこの村の村長で、彼の従兄だそうです。そして、なぜソレスが玄武の子孫であると言っていたのかを知りました。麒麟は、神を天に送る役割を担っているのだそうです。そしてその役割は代々魔粒子核の大きな者が選ばれているらしく、選ばれた者以外は皆玄武の末裔として育てるんですって」

「ふーん。で?麒麟の末裔だったらどうしてこの神核をどうにか出来ると思っているんだ?」

「あくまでも可能性の一つとしてソレスを使うつもりだったのですが、この神核が麒麟の神核ならば、直系子孫のソレスならその身に受け入れられるのではと…」

「おい、神核の受け入れは出来ても権能が無い身体から無理やり剥がしたら死ぬぞ」

「えぇ、でも依り代になら…」

「?あれって龍の着ぐるみみたいな物じゃないの?」

「あの龍体は生まれてから十歳位で脱け落ちる抜け殻の様なものらしいです。元々、龍と麒麟は青龍と黄龍と同じくらい近しい存在だったそうで、麒麟の持つ能力は魂や魔粒子核に強く遺伝して、身体へは龍種が遺伝するみたいですね。でも龍種の遺伝は十歳程で失われる様です…だから自身の意識や魂と馴染みやすく、外部からの影響を受けにくいらしく、依り代として皆愛用しているそうです。ですので、依り代もくっつくかなと」

「ほー。ならあいつの本体さえ使わなきゃ問題ないのか」

「まぁ、彼の愛用品を差し出せと言うのですから…抵抗されるかもしれませんね。だって彼は別にグレース様や都を好きなわけじゃないでしょ?」

「あぁそういや、あいつからアプローチ受けた事ねぇな」

「多分、都もないのでは?」


すでにソレスから都がアプローチを受けている事をしらない二人は、

ソレスがこの作戦に乗ってはくれないかもしれないと心配していた。





 その頃、オブテューレ教会裏の泉にはソレスやリャーレ、アガット

達が集まっていた。何が出来る訳でもないが、皆これが都との別れと

なるかもしれないと神妙な面持ちで泉の周りに集まり、祈りを捧げて

いた。


「ここから…神が天へと戻るのならば…お願いです。都様を…都様を連れて行かないでください…私達には都様が必要なのです…」



リャーレは、初めてここで都と出会った時の事を思い出していた。



あの日、予言通りに私達を魅了して止まない厄災の様な存在が目の前に

空から降りてきた。その、漆黒の髪を靡かせ七色に輝く神力を纏った

貴方の姿は美しく、言葉では言い表せない程でした…。

その美しさに魂が魅了されて、自身が隠し持っていた野蛮な本能を

むき出しにする程に溺れていった。そしていつの間にか、都様の

影として潜んでいたグレース様を愛してしまった。

しかし、やはり私は都様…あなたをにお近くに居て頂かないと

心が落ち着きません。

こんな事を言ったら、グレース様に大層怒られるでしょうね?

愛せないが離れるな、なんて都合の良い事を言うなと…。

自分でもそう思います…私は愛せないけれど、都様からは愛されてい

たい。まるで、グレース様から返してもらえない愛を都様に求めている

様な物です…。

浅ましい自分が嫌になりますよ…だから、私は決めたのです。

その答えをちゃんと都様に伝えたい。



懺悔にも似た祈りを捧げるリャーレの横で、ソレスが腹ばいになって

太い手で水面をパシャパシャと叩いている。ソレスには理解できな

かった。


なぜ、あん時オラは魅了に掛かっでしまっただべ…依り代のこん身体に

呪法や制約は通用しね。

……だども権能ならば話は別だな、んだが魂の抜げた身体に加護や権能

なんてモンはあり得ねぇだ。

ならば都様が元々持ってたって事になんねか?オラの魂が都様を好い

とるでね、依り代にも影響が出たんだべかなぁ?だとすだら…

オラ、オラ、オラ…やっぱり都様に居なくなってもらったら…困るだ。

オラの初恋だ…ちゃんと、ちゃんと…実らなくったってもう一度、

想いは伝えてぇだ。

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