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新世界編

終わりの始まり(2)

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 サリザンドは、あの日部屋を飛び出した後の事を話し出した。

「都の消失を聞いて、絶望よりも疑問の方が大きかったんです。だから
趣味に使っていた南へと繋がるポータルで、南の遺跡に向かいました。」


サリザンドは鞄から何冊かの本と、何かの欠片を取り出しテーブルの

上に置いて、話を続けた。


「この本は私の師匠が残した本です。師匠は四聖獣と神をつなぐ中核、麒麟の加護を持つ方で、色々と神の事や神力について記述を残していました」


本を開いて、パラパラとページを捲り、ある一節をサリザンドは

指さした。


「ここを読んで下さい」


そう言われ、グレースが本の向きを変えて読み出した。


「神の…力の、源である…何て文字…読めない。」

「神核です」

「あ、あぁ。…神核は、神の数だけ世界に散りながら…大地を巡り…ええと…」



辿々しく本を読むグレースに、サリザンドは日が暮れると本を取り上げ

読み出した。


「はぁ…。大地を巡り神が降り立つ、日出る泉に集まり、また天に還り新たなる神となる」


「お、おう…で、どういう意味だ?」


「この世界で死んだ古の神々は、神核を大地に還元してこの世界や天界で犯した罪や悔いなどの穢れを浄化させていたんです。そして、穢れが浄化された後、この地に降り立った場所からまた天に還って新たな神として生まれ変わったと書いてあるんです」

「ふぅん。で、それが何でそれが都の消失と関係すると思ったんだよ?」

「おかしいと思ったのは、魂がグレース様の身体にあるのに、飛ばした意識が消えたからと言って、なぜラファエラ殿は都の魂を切り離したのか…という事でした」

「確かに、戻って来れない何等かの事情がある、だから魂を入れた依代を向かわせる。その理屈はわかりますが…四聖獣の神核まで使って、安易すぎだと思ったんです」

「それに、ソレスの連絡を待つべきだったとも思いました。そして、本来の神核の主人である都が消えたなら、グレース様も消えていないとおかしいんですよ」

「神核を譲渡するには制約や血の縛り、要は子供など血を分けた肉体が必要なんです。制約だって皇族にのみ使われただけで、鑑定部の秘匿された制約ですから、ラファエラ殿が知っている筈はない。しかしグレース様はあの場で暴れていた…だから、都は生きている。そう確信しました」

「いや、ラファエラも大分パニクってたぞ?」

「はい、ラファエラ殿が作為的に都を陥れた…なんて事は思っていません。あの西の場所に居た…ジジ•フィルポット…過去の人です、しかも大昔の。彼が原因なんではないかと師匠の手記やメモを見て思ったんです。師匠の死の一ヶ月前の日記に、ジジと酒を飲み交わし世界の憂いを語り合った、と書いてあったから…彼は生きている…そして都と会ったのでは?と」


サリザンドは、苦々しい顔で本のページを捲り、次に話を進めようと

した時だった。


「あ、あぁ。ジジな、アイツ不老不死だからな…まぁ、都が依代失ったのは確かにアイツの所為なんだが…」

「まるで知っていたかの様に言いますね。ジジ•フィルポット…彼がどこにいるのかが分かれば…」

「ん?いや、アイツこっち居るし…」

「……はぁ⁉︎なんっだと?俺は…玄武の結界守りを説き伏せて…都が生きている事を知ったと言うのに…元凶がこっちにいるんですか⁉︎」


「いや、お前全然連絡つかねーんだもん。あれから大変だったんだぞ」


ジジとカイリ、都の状況説明を受けたサリザンドは頭を抱えた。

ジジが不老不死で、都に危害を加えた事も問題だが、カイリの肉体が

存在している事が大問題だとグレース達に訴えた。


「淀みが…溜まりに溜まって、暴発しそうなのはこのカイリ様の肉体の持つ魅了の所為ですよ!あぁぁ!もっと早くになんで師匠の家を調べて来なかったんだ俺は‼︎」

「テュルケット神が神核や魔粒子化した力を吸収し、天帝をも恐れぬ暴虐の神となったのは、本来なら天界に還る筈の物が魅了に引き寄せられこの世界に留まっていたからですよ!力を吸い取られた神核は穢れのみをこの地に残した…それが今噴き出そうとしている」


「何でそんな肉体を残していたんです!死んだ時に燃やすべきだったんだ!今すぐその身体、破壊しなくては!」


グレースは、ソファに項垂れ朱雀の肩に顔を埋めポツリと呟く。


「…都の魂…癒着して外れないんだよ…身体から」


その言葉にサリザンドは目を剥き、口を開いたまま呆然と固まった。

誰も彼もがサリザンドの辿り着いた答えに、都の状況に、なす術も

無いのだと諦め掛けていた。


コンコンとノックが部屋に響き、コレットが戸を開けて対応した。


「グレース様、失礼致します。サリューン様付き近衛騎士が参っております。」


サリューンの近衛騎士が部屋を訪れ、グレースとサリザンドに

至急法廷へ来て欲しいという伝言を伝えた。


「分かった。サリザンド、行くぞ」

「嫌です…私にはすべき事がある。事を引っ掻き回した者の相手をしている暇なんてありません」

「サリザンド…一度…視点を切り替えにいこうぜ。俺達は今…どつぼにはまってる。きっと、知恵はここだけにある訳じゃ無い。皆の集まる場所で…皆の知恵を借りないか?」


「…私以上の知恵を持つ者がいるのですか?」

「そう思ってたから、俺達はエルザードの後手に回ってるんだろ?」

「…わかり…ました」

「ヴィク、お前はここにいろ。きっとヤルダの事だろうから」

「いや…行くさ。俺の兄貴だ…アイツの尻拭いは弟の役目だ」

「…そうかよ。好きにしろ」





 










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