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新世界編

都とカイリ

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 見覚えがあります。この白い世界…天界…ですか?

あーあ、また死んじゃったのかな?結局何にも出来なかったな…。

グレース、ごめんな…一人残しちまってさ。泣くだろうな…でも

ビクトラさん達が慰めてくれるよね。


「都…さん?」


誰かに呼びかけられて、都は振り向くとそこには金髪金眼の男の子が

立っていた。


「…カイリ、さん?」

「うん。本名は神居戒理」

「え…?」

「…私は貴方の遠い先祖になるのかな…正確には兄の子孫だけど」

「んんん?」

「この身体と貴方の魂が融合したのは…貴方が私の魂の生まれ変わりだからなんだ」

「…えぇぇもーー勘弁してください」

「ごめん」

「情報過多‼︎というか、貴方が先祖だったとして時間軸おかしくないですか?」

「江戸初期、私は漁師だった」

「話進むんかい!……どうぞ続けて下さい」


スンとジト目になったカイリを見て、都はおずおずと話を促した。


「海神に見染められ、天界に呼ばれた…そして天帝と出会ったんだ」

「天帝の治める世界に時間は存在しない…星に降る時、あるべき時間に降ろされる。だから天界で神核が穢され壊された時、貴方の母親に天帝が神核を宿してくれたんだ…それが貴方だ。そして、双葉君にも神核の一部は引き継がれてる」

「……頭おかしくなりそう」

「エルザードが双葉君を狙わせたのは、貴方が双葉君を守ると…分かっていたからだ。テュルケット自身で双葉君の神核を狙わせ、地球にまだ神核が残っている、こっちの世界には神核は無いと思わせたかった…追撃の使徒も全て消え…テュルケットも力を使い果たし淀みに堕ち…そう舞台は整った」


これは酷い…自分たちの都合でよくもまぁ子孫を狙わせられた物だな。


「はぁ……で、今カイリさんはどこにいるんですか?」

「もう、私はどこにも存在していない…これはエルザードに頼んでトラップとして残した記憶の残滓が身体に集まり会話をしている」

「エルザードさん?彼と貴方が出会える筈がない」

「エルザードはね、私が切り離した権能なんだよ」

「んん?」

「使徒だったんだ。ダレンティア家前身の麒麟の一族から嫁いだ嫁のマルークは、私の良き理解者だったよ…私亡き後、テュルケットを止める者が必要だった。だから彼にはテュルケットの右腕として使え続けてもらい、何としても皇室に血族を代々残してもらう必要があった…苦しみを与えてしまったけれど…」

「お陰で良いタイミングで私の記憶を宿したエルザードが産まれた」

「ジジさんの事も…分かっていたんですか?貴方をずっとずっとずっと待っていたのに」

「あぁ。だから彼の愛を受け取ってはならなかったんだ私の欠片をこの世界に残し続け、貴方に引き合わせる為に」


都はヒュッと喉に息が詰まるのを感じ、カイリを見つめた。

何を考えているんだろう…この人は。ジジさんが呪われる事も知って

いたのか?知っていて…彼を惹きつけ続けたのか?

テュルケットを止めたかったのなら自分で止めれば良かった

じゃないか…


「そうも、いかなかったんだよ…私はね、何度もテュルケットに殺されては蘇生され権能も祝福も奪われて…最後には身体と魂しか残っていなかったんだ…魔粒子核もなく、寿命も人間より少し長い程度で…只の人間だったんだ…何もできなかったんだよ…心を折らぬ様にする事で精一杯だった」


忘れてた…また脳内ボイス読まれてる。

「テュルケット…頭おかしくない?ずっと側に置いて置きたかったんだよね?貴方を…なのになんでそんな事する必要があったんだ?」


「テュルケットが私を求めるのは、純粋な愛だからじゃない」

「未来視でテュルケットは私の神核が自身を殺す未来を見た。私はもう、この世界の為に神々や民を犠牲にしたくないんだ」

「意味がわからないよ…だったら双葉をよべばその未来は確定じゃないか…」

「はははっ!貴方はそれを黙って見ていられたかい?」

「でも、世界を双葉が滅ぼすと言ってエルザードはテュルケットを唆したんだよね?テュルケットからしてみたらこの星が滅びたら、自分を狙う者は居なくなる…双葉を狙わなくても万々歳じゃないか?」

世界テュルケットを滅ぼすと言ったね」

「……自己中かよ」


だからエルザードは、双葉を狙わせ俺を殺し、この世界に呼んだ…

双葉を囮にして…そう言う事なのか?


「そうだよ」

「神核で殺すってどういう事さ」

「貴方が淀みをその神核に全て受け入れ、浄化する。淀みに堕ちた者は浄化されると本当の意味で死を迎える…」

「それ、俺は大丈夫なわけ?」

「……覚悟が必要だ」

「えぇぇ…マジかよ…死ぬのか?」

「貴方の神核と引き換えに行う浄化だからね…」

「相討ちかよ…そうかよ…俺っ、俺…愛してる奴等がいるんだ…でさ、家族を作ろうってさ…約束したんだよ…俺、まだあいつらに愛してるって言ってやれてない…」

「もう、時間がない」

「な、なぁ、神体壊すじゃダメなのか?テュルケットの神体壊したらお終いだろ!?」

「神体に意味はない…テュルケットの神核に意味があるんだ」

「ふぅっ、ぐっっ…えっえっえぐっ…うぇぇっ嫌だっ死にたくない」

「貴方がやらなくても、貴方は死ぬ。愛する者を道連れに」

「俺だってっ、愛されたいっうぇっ、えっえっ愛したい…」

「グレースは残る」

「……ひっく…うぅっ…ひっく…そっかぁ…ひっく…そっかぁ」

そうか、だから…グレースだったんだな。月読命が俺の為に、グレース

を残してくれたんだな。


「分かったよぉ…死ねば良いんだろ?死んでやらぁ」

「最後にさ、皆んなに会えるかな?」

「…ごめん…なさい」

「ふざけんなよ…俺はお前らの駒になる為に生きているんじゃないぞ」

「えぇ…ごめんな…ごめんな…私が悪い…天界などに行った所為…ごめんなさい…」

頭を下げ続け、泣くカイリを見つめながら都は一つ願いは叶えられない

かとカイリに聞いた。

その願いを聞いたカイリはまたしても首を横に振る。

「そっかぁ、まぁそんな甘くねぇよな…」

「で、いつやるの?…今でしょ?とか言うなよ?」

「結界が崩れる二週間後」

「その間、カイリさんが表にでんの?」

「…はい」

「なんでさ…俺じゃだめなのかよ」

「予言から外れた行動をされると…困る」

「うっ…うぇっあーーーーーーー‼︎」

「あーーーーーーーーー!くそっ!くそっ!くそっ!」

「双葉!グレース!ラファエラ!ルーナ!サリザンド!朱雀さん!ビクトラさん、アガットさん、リャーレさん、ソレス…愛してる、愛してる!…愛しているよ…すごく、すごく…愛しているんだ…だから、幸せになってくれよ?」

愛を叫びながら、都は意識を落として行った。




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