122 / 200
新世界編
都とカイリ
しおりを挟む見覚えがあります。この白い世界…天界…ですか?
あーあ、また死んじゃったのかな?結局何にも出来なかったな…。
グレース、ごめんな…一人残しちまってさ。泣くだろうな…でも
ビクトラさん達が慰めてくれるよね。
「都…さん?」
誰かに呼びかけられて、都は振り向くとそこには金髪金眼の男の子が
立っていた。
「…カイリ、さん?」
「うん。本名は神居戒理」
「え…?」
「…私は貴方の遠い先祖になるのかな…正確には兄の子孫だけど」
「んんん?」
「この身体と貴方の魂が融合したのは…貴方が私の魂の生まれ変わりだからなんだ」
「…えぇぇもーー勘弁してください」
「ごめん」
「情報過多‼︎というか、貴方が先祖だったとして時間軸おかしくないですか?」
「江戸初期、私は漁師だった」
「話進むんかい!……どうぞ続けて下さい」
スンとジト目になったカイリを見て、都はおずおずと話を促した。
「海神に見染められ、天界に呼ばれた…そして天帝と出会ったんだ」
「天帝の治める世界に時間は存在しない…星に降る時、あるべき時間に降ろされる。だから天界で神核が穢され壊された時、貴方の母親に天帝が神核を宿してくれたんだ…それが貴方だ。そして、双葉君にも神核の一部は引き継がれてる」
「……頭おかしくなりそう」
「エルザードが双葉君を狙わせたのは、貴方が双葉君を守ると…分かっていたからだ。テュルケット自身で双葉君の神核を狙わせ、地球にまだ神核が残っている、こっちの世界には神核は無いと思わせたかった…追撃の使徒も全て消え…テュルケットも力を使い果たし淀みに堕ち…そう舞台は整った」
これは酷い…自分たちの都合でよくもまぁ子孫を狙わせられた物だな。
「はぁ……で、今カイリさんはどこにいるんですか?」
「もう、私はどこにも存在していない…これはエルザードに頼んでトラップとして残した記憶の残滓が身体に集まり会話をしている」
「エルザードさん?彼と貴方が出会える筈がない」
「エルザードはね、私が切り離した権能なんだよ」
「んん?」
「使徒だったんだ。ダレンティア家前身の麒麟の一族から嫁いだ嫁のマルークは、私の良き理解者だったよ…私亡き後、テュルケットを止める者が必要だった。だから彼にはテュルケットの右腕として使え続けてもらい、何としても皇室に血族を代々残してもらう必要があった…苦しみを与えてしまったけれど…」
「お陰で良いタイミングで私の記憶を宿したエルザードが産まれた」
「ジジさんの事も…分かっていたんですか?貴方をずっとずっとずっと待っていたのに」
「あぁ。だから彼の愛を受け取ってはならなかったんだ私の欠片をこの世界に残し続け、貴方に引き合わせる為に」
都はヒュッと喉に息が詰まるのを感じ、カイリを見つめた。
何を考えているんだろう…この人は。ジジさんが呪われる事も知って
いたのか?知っていて…彼を惹きつけ続けたのか?
テュルケットを止めたかったのなら自分で止めれば良かった
じゃないか…
「そうも、いかなかったんだよ…私はね、何度もテュルケットに殺されては蘇生され権能も祝福も奪われて…最後には身体と魂しか残っていなかったんだ…魔粒子核もなく、寿命も人間より少し長い程度で…只の人間だったんだ…何もできなかったんだよ…心を折らぬ様にする事で精一杯だった」
忘れてた…また脳内ボイス読まれてる。
「テュルケット…頭おかしくない?ずっと側に置いて置きたかったんだよね?貴方を…なのになんでそんな事する必要があったんだ?」
「テュルケットが私を求めるのは、純粋な愛だからじゃない」
「未来視でテュルケットは私の神核が自身を殺す未来を見た。私はもう、この世界の為に神々や民を犠牲にしたくないんだ」
「意味がわからないよ…だったら双葉をよべばその未来は確定じゃないか…」
「はははっ!貴方はそれを黙って見ていられたかい?」
「でも、世界を双葉が滅ぼすと言ってエルザードはテュルケットを唆したんだよね?テュルケットからしてみたらこの星が滅びたら、自分を狙う者は居なくなる…双葉を狙わなくても万々歳じゃないか?」
「世界を滅ぼすと言ったね」
「……自己中かよ」
だからエルザードは、双葉を狙わせ俺を殺し、この世界に呼んだ…
双葉を囮にして…そう言う事なのか?
「そうだよ」
「神核で殺すってどういう事さ」
「貴方が淀みをその神核に全て受け入れ、浄化する。淀みに堕ちた者は浄化されると本当の意味で死を迎える…」
「それ、俺は大丈夫なわけ?」
「……覚悟が必要だ」
「えぇぇ…マジかよ…死ぬのか?」
「貴方の魂と引き換えに行う浄化だからね…」
「相討ちかよ…そうかよ…俺っ、俺…愛してる奴等がいるんだ…でさ、家族を作ろうってさ…約束したんだよ…俺、まだあいつらに愛してるって言ってやれてない…」
「もう、時間がない」
「な、なぁ、神体壊すじゃダメなのか?テュルケットの神体壊したらお終いだろ!?」
「神体に意味はない…テュルケットの神核に意味があるんだ」
「ふぅっ、ぐっっ…えっえっえぐっ…うぇぇっ嫌だっ死にたくない」
「貴方がやらなくても、貴方は死ぬ。愛する者を道連れに」
「俺だってっ、愛されたいっうぇっ、えっえっ愛したい…」
「グレースは残る」
「……ひっく…うぅっ…ひっく…そっかぁ…ひっく…そっかぁ」
そうか、だから…グレースだったんだな。月読命が俺の為に、グレース
を残してくれたんだな。
「分かったよぉ…死ねば良いんだろ?死んでやらぁ」
「最後にさ、皆んなに会えるかな?」
「…ごめん…なさい」
「ふざけんなよ…俺はお前らの駒になる為に生きているんじゃないぞ」
「えぇ…ごめんな…ごめんな…私が悪い…天界などに行った所為…ごめんなさい…」
頭を下げ続け、泣くカイリを見つめながら都は一つ願いは叶えられない
かとカイリに聞いた。
その願いを聞いたカイリはまたしても首を横に振る。
「そっかぁ、まぁそんな甘くねぇよな…」
「で、いつやるの?…今でしょ?とか言うなよ?」
「結界が崩れる二週間後」
「その間、カイリさんが表にでんの?」
「…はい」
「なんでさ…俺じゃだめなのかよ」
「予言から外れた行動をされると…困る」
「うっ…うぇっあーーーーーーー‼︎」
「あーーーーーーーーー!くそっ!くそっ!くそっ!」
「双葉!グレース!ラファエラ!ルーナ!サリザンド!朱雀さん!ビクトラさん、アガットさん、リャーレさん、ソレス…愛してる、愛してる!…愛しているよ…すごく、すごく…愛しているんだ…だから、幸せになってくれよ?」
愛を叫びながら、都は意識を落として行った。
0
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。
小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。
そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。
先輩×後輩
攻略キャラ×当て馬キャラ
総受けではありません。
嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。
ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。
だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。
え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。
でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!!
……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。
本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。
こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。
美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました
SEKISUI
BL
ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた
見た目は勝ち組
中身は社畜
斜めな思考の持ち主
なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う
そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される
強制悪役令息と4人の聖騎士ー乙女ハーレムエンドー
チョコミント
BL
落ちこぼれ魔法使いと4人の聖騎士とのハーレム物語が始まる。
生まれてから病院から出た事がない少年は生涯を終えた。
生まれ変わったら人並みの幸せを夢見て…
そして生前友人にもらってやっていた乙女ゲームの悪役双子の兄に転生していた。
死亡フラグはハーレムエンドだけだし悪い事をしなきゃ大丈夫だと思っていた。
まさか無意識に悪事を誘発してしまう強制悪役の呪いにかかっているなんて…
それになんでヒロインの個性である共魔術が使えるんですか?
魔力階級が全てを決める魔法の世界で4人の攻略キャラクターである最上級魔法使いの聖戦士達にポンコツ魔法使いが愛されています。
「俺なんてほっといてヒロインに構ってあげてください」
執着溺愛騎士達からは逃げられない。
性描写ページには※があります。
目が覚めたら、カノジョの兄に迫られていた件
水野七緒
BL
ワケあってクラスメイトの女子と交際中の青野 行春(あおの ゆきはる)。そんな彼が、ある日あわや貞操の危機に。彼を襲ったのは星井夏樹(ほしい なつき)──まさかの、交際中のカノジョの「お兄さん」。だが、どうも様子がおかしくて──
※「目が覚めたら、妹の彼氏とつきあうことになっていた件」の続編(サイドストーリー)です。
※前作を読まなくてもわかるように執筆するつもりですが、前作も読んでいただけると有り難いです。
※エンドは1種類の予定ですが、2種類になるかもしれません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる