神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

閑話

この子どこの子⁉︎ みんなの子

　都は抱きついているビクトラの腕を外すと、兄の黄虎の側に寄り

しゃがみ込んで目を合わせた。


「ねぇ、お兄ちゃん。お名前は？」

「うるせぇ邪神！あっちいけ！」

「わぁお！邪神なんて言葉知ってるんだね！凄いや。そうだね、私は神の力を持ってるよ。邪神ではないけど…だから君達のお母さんを助けたいんだけど…駄目かな？」

「父さんを返してよ！パン屋のおじさんが言ってた…グレース神は騎士達のあいしょうだって。男をたらしこむだけで、みんなを助ける力なんてないって！」


流石の言葉に、その場の誰もが目を見開き鋭い眼差しで子供達を睨み

つけた。しかし、皆を見上げ都は首を振る。


「そっか、私はそんな風に思われていたんだね？ありがとう。教えてくれて…そっか、だから君達はここに来たんだね」

「分かったかよ！なら父さんから手をひけ！」

「君は、ビクトラさんに会ったこと無いのにどうしてお父さんだと思うの？」

「だって、母さんが言ってたんだ！父さんは虎の獣人で、真っ白な毛皮に、青い瞳が綺麗な騎士なんだって！母さん以外に大切な物が出来たから家を出て行ったって！騎士隊で白い虎ってこいつしかいないじゃないか！」

「俺達の名前も父さんの名前から取ったって言ってた…」


都はそっと虎の子の手を握ると微笑み名を聞いた。


「…俺はビクトルト、こいつはビークルト、あいつはビクトーラ」

「あぁ、ビクトラさんの音だね？そっか、お母さんはビクトラさんみたいに強い獣人になって欲しかったんだね…でも、何で急に会いに来たのかな？もっと前にお母さんと一緒に来ればよかったのに…」

「…母さん、体が弱くて。最後に会いたいって…」



都はビクトルトを抱き締めると背中を摩り、抱き抱えた。



「そっか、なら会わせてあげないとね？お母さんの所に行こうか」

「お前も行くのかよ⁉︎」

「そうだよ？私は神なんだ、君のお母さんを見舞ってもいいでしょ？」

「お前が神様なら、何で母さんの具合は良くならないんだよ！俺等…母さんいなくなったら…」


泣き出すビクトルトに都は覚えたての調和を使った。

部屋の魔粒子は黒と白に集約され、ぶつけられ、濁りの無い24色が部

屋に満ち、子供達の纏う汚染された色が浄化され綺麗な色に変わる。


「す…すごい。俺…変体できるかも…」

「ふふ、出来るよ。やってごらん？」


ビクトルトは都の腕の中で力を込めて身体をブルッと震わせる。

そこにはまだまだ未完全な耳と尻尾を残した金髪の愛らしい男の子が

姿を現した。


「もう少し、力の使い方を覚えないとね？」

「お、おい…都。大丈夫か？こんなに神力使っちまって」


ビクトラは座ったまま都を見上げて心配した。


「ええ、まだ大丈夫です。この子達の憂いを、なんとかするのが大人の役目。ビクトラさん、貴方が父親であろうと無かろうと、大隊長として出来る事があるのなら…すべきです。その為の力なんでしょ？」


都は笑みを消し、しっかりとした眼差しで部屋にいる獣人に目をやると

静かに威圧する様に語りだした。

ニコリと微笑む都に、ビクトラは頭を掻いて膝を着いた。


「魔道騎士隊大隊長及び成人した獣人のみなさん、この世界は私が救います。しかし、その後この世界を救うのは貴方達大人と、未来ある子供達です。子供を泣かせてなんとしますか‼︎出来る術をもってこそ大人ですよね？」

「ビクトラさん、子供が貴方を親と言うのです。血の繋がりが万に一つも無くとも、貴方はこの国の大隊長なのですからこの国の子供等を守る責務があるはずです。皆さんも、力を貸してくれますね？」


ここまで言われると、誰も何も言えずその場に膝を着いて首を垂れ

拳を床に三度打ち付け誓約の証を見せた。

ビクトラも、大きく息を吐くと心を定め誓いを立てる。


「主神グレース•クラリス様、どうか我等に加護を。私は親ではありませんが、この子等を見守ると誓います」

「ふふふ、ビクトラさん。私達で見守りましょう？」

「ビクトルト君。私は…この世界の理を壊す事はしない…言っている意味、分かるかな？キツい言い方をすると、死ぬ運命の人を生かす事は出来ない…でも、私の力を使って生き延びたならそれも運命だから試しても良いよね？私達の出会いも…運命なんだから」



ビクトルトは都に抱きつき泣きながら「助けて」と繰り返した。


「都様はグレース様なの？」


ビークルトがおずおずと都の袖を掴んで引っ張った。


「そうだよ…神様としての名前がグレースで、人としての名前が都なんだ。どっちで呼んでくれても良いよ」

「みゃこしゃま、ぼくもだっこ」


ビクトーラがトトトと都に手を伸ばした。その姿に都はデレデレとし

纏めて三人を抱き抱えた。

「あぁ、本当に可愛い子達。お母さんの為に良く我慢したね？お菓子を食べたらお母さんに会いに行こうか」

「「うん！」」