神々にもてあそばれて転生したら神様扱いされました。

神話編

再会（2）

　ジジは頬杖を付いて考えていた。

神力を使い果たしたとして、淀みに堕ちる事があるのだろうか？

俺が知るだけでも淀みに堕ちる方法はいくつかある。

一つ、全ての神を統べる天帝による神罰
一つ、神の魂を汚す、もしくは破壊する
一つ、神核が破壊される
一つ、禁忌を犯し神の制約から外れる
一つ、信仰を失う

「なぁ、ルーナ。テュルケットの神託が下されなくなったのはいつ頃からだ？」

「さぁ…俺が生まれてからテュルケット神を見たのは 200 年前の立皇式が最初で最後だ…教会の神託公開式などに参列した事は何度かあるから、10 年前までは確実に神として存在していたんじゃないか？」

ルーナは最後に参列した、サムオール家の陞爵と魔獣の増加を告げる

公開式を思い出していた。そこでテュルケット神を見る事はなかった

な、と考えていた。

「…それが本当にテュルケットからの神託かどうかは分からないよ？」

都はルーナの顔を見ながら考えを話し出した。

「神が不在である事を国民には伝えられない、その場しのぎに予言を持ち出して神託と偽ったとしたら、神があたかも居る様に見せかけれる…本当はもっと昔にテュルケットは淀みにおちていたのかも？でも、そうしたら地球を襲ったのは誰なんだってなるよね？」

都は色々とかみ合わない時間のずれが気になって仕方がなかった。

「都、お前の世界で一巡りの日数はどの程度だ？」

「え？一巡りって 1 年って事？」

「うんと、1 年は 365 日、1 月は約 30 日、1 日は 24 時間かな…あ、、、この世界…倍速だ」

ジジが目を細め、都の意図を探る。

「この世界って…俺が居た世界に比べて進みが早いんだ…1 年は 10 か月、1 か月は長い時は 60 日、1 日は 24 時間だけど体感的には 15 時間な感じだし…最初の頃、夜が明けるのが早いと思ってたけど、それは季節的な物だと思ってた」

「そうじゃない、ここの 1 時間や 1 分は地球のそれとはくらべものにならない程早いんだ…基準の速度があっちより早いから…俺が襲われたのは約 1 年前。それより倍だったとしたらこっちでは 2 年前まではテュルケット神は存在した事になる」

「俺も天界に居たし、天界の 1 日が数週間に値するなら正確な差異が分からないからなんとも言えないけど、大きく見積もって 3 年前まではテュルケットは地上に存在した事になる…」

ルーナはふと思った事を口にした。

「神殿はいつからテュルケットの不在に気付いていたんだろうね？都やグレース様をなんであんな簡単に受け入れて改宗を認めたか疑問だったんだよな。まぁ、都の邪魔にならないなら良いかと安易に思ってたんだけど」

「そうか…まずは神殿関係者と話をしないと始まらんな」

「とりあえず、お前らの作戦は一旦止めておけ。下手したらテュルケットよりもタチの悪い物が入り込むぞ。そうなったらあの神核だ…殺し合うどころかそいつらでも十分に共存出来る可能性がある。」

「都、仲間を連れて西の結界の張り直しをした方が良い。俺も力を貸そう」

都はジジの言葉に頷くと、冷めたお茶をぐっと飲み干し心を決めた。

「まずは仲間と合流、本体に戻って神体に残る神核を取り除く対策を練る。そして結界の張り直しだな！」

「都、それもそうだけど…サリューン陛下が危ないんだ。ヤルダ殿が皇帝宮を掌握したって事は、オルポーツ様が自由になるって事だよ…陛下のお命が…下手したら狙われるかもしれない…今は宰相も大臣もいるから暴挙には出ないと思うけど、西の結界が崩れたら確実に…お命は無いと思う」


都は席を立つと、ワナワナと震えながら唇を噛み締めた。

そして、彼等を止める。そう決めた心に何故か迷いは無い。

「俺が…ヤルダさんを押さえる…カイリさんの力、借りてもいいかな？ジジさん」

ジジは都にカイリの面影を見た。

真っ直ぐで強い心が放つ七色の魔粒子。定めた先に進む彼の歩みは

誰にも止められない。皇帝になったあの日のカイリがそこに居た。

「あぁ、お前の心に俺は従おう…」

席を立ち、ポータルへと向かう都の後ろ姿にジジは呟いた。


「お帰り…カイリ」