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神話編
再会(1)
しおりを挟む帝都内のジジの家に戻ったルーナ達は、まず結界に保護されている
都の元へと向かった。部屋に入る前に、ジジがルーナに念のためにと
魅了の呪法を掛ける準備を始める。
「ジジさん、大丈夫だから!早く部屋の結界を解いてよっ!都に会わせて!」
「落ち着け、会えるんだから五分、十分程度も我慢できんのか?」
ルーナはジジの胸ぐらを掴むと、涙目で訴える。
「もう、充分待ったんだ!あんたに分かるか?知らないうちに姿が消えて…連絡も途絶え、自我が消滅したと聞かされた俺の気持ちが!魅了に掛かろうが、意識を失おうがかまわない!一目、都の無事な姿がみたいだけなんだ」
ジジは溜息を吐くと、ポンポンとルーナの頭を叩いて笑った。
「あぁ、その気持ち良くわかるさ。俺の場合は本当に死んでしまっていたけどな…だが都は、俺が生かしているんだから信じろよ。あいつは生きてるよ」
「クソっ!!…呪法でもなんでも良いから早くしてくれ!」
ジジは都の居る部屋の前で陣を張ると、指先を噛み切り数滴血液を落と
す。そしてポケットから出した魔石を数個、陣の中央に置くと呪法公式
を魔道具で描いた。
「ひぃっ!!ぐっ!!がはっ!!」
ルーナの魔粒子核に次第に呪法が刻まれ始め、ルーナの瞳の色が緑から
紫へと変化する。
「よし、終わった。他の奴らにお前の魅了がかからない様に結界を魔粒子核に張っておけ。都の魂が本体に戻ったら呪法を解いてやる」
「わかった。頼むよ…」
ルーナの心臓はこれでもかと鼓動を強くし、息が出来ない程だった。
「都、聞こえるか?今から結界を解くからな」
「ジジさん?もう戻ったの、早かったね。」
都の、声は違うがのんびりとした話し方にルーナは思わず叫ぶ。
「都⁉︎俺だ、ルーナだ!迎えにきたんだ!」
「え!?ルーナ!?ちょ、本物?」
ジジはクスクスと笑うと結界を解いて部屋を開けた。
認識阻害結界と防御結界、呪法無効化の魔道具が置かれた部屋で
ルーナは都の姿を探す。
「ジジさん、認識阻害解いてくれ!都が見えない!」
「慌てるなよ、解除するから」
ジジは人差し指で張った結界や陣の上から解除紋を描くと、結界が解か
れ徐々にカイリの姿をした都が現れた。
「その姿、都…なの?」
「ははっ、まぁね。色々あって初代皇帝の体を依り代させてもらってるんだ。ルーナ、久し振りだね…会いたかったよ。元気?」
ルーナはポロポロと大粒の涙をこぼしながら都に抱き着き声を上げて
泣いた。
「もう、もう…都には会えないと思った。ラファエラが都との繋がりが切れて…自我はもう無くなったって聞かされた。俺達がどれだけ絶望したかわかる?俺は都の消えた場所を探して…死ぬつもりだったんだ。少しでも都の側に行けるなら死んでも良いと思ったんだ…」
都はその言葉に、自分が如何に独り善がりの行動をしていたかを思い
知る。誰にも何も言わず、予言に記されたこれから起こるであろう邪神
や魔獣との対峙をいかに避けるか、その事ばかりを考えルーナ達の気持
ちを考えもしていなかった。
「ごめん、ごめんな?怖い思いをさせて…本当にごめんな。俺は自分に自信が無いくせに強請る事ばかりで、ルーナ達を傷つけた。もう二度とこんな思いはさせないから、顔を見せてよ」
都は、肩に顔を埋め泣き暮れるルーナの顔を両手で包むと、涙でキラ
キラと光る目元にキスをした。
「都、都…もうこんなのは二度とごめんだ。隊に戻ったらちゃんと隷属をするよ?嫌とは言わせないからね。都が死ぬときは俺が死ぬ時でもあるんだって分からせるからね?」
「それに、早く戻らないと…都が死んだとグレース様は思って暴れた…ほぼ、魔獣化してたよ…黒魔粒子が濁ってるんだ」
「…そうか。大丈夫だよ…どうなっても俺ならあいつを助けられる…グレースは俺で、俺はグレースなんだから…心配するなよ」
そう言うとジジ達の存在を忘れ、二人は不安を隠し抱き合った。
「で、城の状況はどうなっているんだ?やけに警備が緩いようだが」
ジジの質問に、ルーナが今の城の状況や騎士隊がヤルダに掌握された
た事を伝え、マラエカの立てた作戦について話した。
「という事は、ヤルダに都と四聖獣の入っているこの体を見せる訳にはいかないな。ルーナに二人を任せるから、ポータルで仲間と合流してくれ。俺はソレスを連れて指示されたポイントに行く。ついでにヤルダ達の目的を探ろうと思う…もしテュルケットの神体が残っているなら、お前等ではどうにもならない」
「マラエカ参謀長は神体の中に、淀みの世界に落ちた神や魔獣を入れ込んでぶつけ合うって言ってたけど、それは難しいって事?」
ルーナは都の手を繋いだままテーブルでジジの話を聞いた。
「あぁ。あいつは腐っても唯一神だ。唯一神の本当の意味を知っているか?」
「え?この世界で神として唯一認められてるって事じゃないの?」
都は膝の上で意識の無いソレスの獣体を撫でながら首を傾げる。
「いや、この世界にあいつしか神足り得る神核を持った者が居ないから唯一神なんだ。」
「神…足り得る神核?」
都は今はない神核を撫でる様に胸を擦る。
「あぁ、神核とは神力を生み出す核だが、あいつの核はこの星その物と言っていい」
ルーナと都は顔を見合わせ絶句していた。
「この星があいつの神核だと言ったのは、この星の核とあいつの神核が繋がっているからだ」
「天界で死んだ神々や、この地に堕とされた神は死ぬと神核は星の核に還り、神力は大地に流れ世界を充す。だが、あいつはそれを自身の神核に繋いで力を得ている。もちろん、普通の神核じゃ力は蓄えれない。規格外なんだよ」
「だから、あいつは唯一神なんだ。淀みに堕ちようが、この星から魂が離れようが神体に残る核があれば…あいつの神体は何度でも復活する。
そもそも何故あいつは淀みに堕ちた?」
都はテュルケットが堕ちた理由は分からないが、淀みで聞いた事や、
都がこの世界へ来ることになった経緯などを全て話して聞かせた。
「…そうか。アマルマ様はテュルケットに切り離されていたか…神殺しに、人殺し、理の破壊に権能譲渡…カイリの様に堕天してもおかしくはない状況だが、だとすればとっくの昔にそうなっていたはずだ。アマルマ様を切り離し、殺した時点でなぜ罰は下されなかったんだ」
「猿田彦達が言ってた…こっちの世界と俺が居た元の世界は治めてる神が違うから、簡単に手出しが出来ない。けど、テュルケットはそれが可能な程に神力を使って地球を攻撃したって。結構な力を使っているから、数百年は眠りから覚めないだろうって…それって力を使い果たしたから淀みに居るって事なんだと俺は思ってた。」
「それに、大国主が天帝なら何で手出しが出来なかったんだろう」
都は自身の天帝=大国主、という考えが間違いなのか?天界の状況が
分からず煩悶としていた。
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