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閑話

名探偵S サリザンドのSはソブリンのS

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 なんとサタンまでも支配下に置いていたサリザンドに、スレイブは

頭を抱えた。ルキフェルは喋る事すら制約で禁じられ、サリザンドが

懐から出した短刀で角を切られてのたうち回っている。

こいつ!悪魔より悪魔じゃないか!異界の物を召喚するのは並大抵の

力では出来ないはず、何でこいつには出来るんだ!

苦々しくサリザンドを見上げ探りを入れるも、結界でその探りは弾か

れてしまった。

「サタンは偶然だ。とある遺跡の呪法を解除したが、そこにサタンが現れた。この世界を見たいが自由に出れないと言ったからな、力を貸りる代わりに身体の一部を貸してやっている。悪さもしないようなんでな、そのままにしている。まぁ、俺がお前らを縛られるのもこいつの力に寄るところが大きいだろうな。」

「マジかよ…。それでか⁉︎お前の番が逆らえねぇのは‼︎」

「それは違う。純粋に俺の支配の呪法だ。」

「えげつない‼︎お前、それあの女に言うなよ?マジ嫌われるぞ!」

「はっ!馬鹿かよ。そんな簡単に呪法は使わない、一度だけた。使ったのは。」

「へぇー。それであんなに従順とか、余程素質があるか惚れてんだな?お前に。」

その言葉にサリザンドはニヤリと笑うとルキフェルを引きずって部屋を

でた。

「さて、で。この術者の目的は分かりそうか?」

「あー、多分な。あの絵の男を殺すつもりだったんだろうな。」

「あの絵…伯爵の息子か。けどなんで?」

「さぁな?あの塊ん中には術者以外に一体分の核があったからな。思いを遂げたんだろうよ。」

「ふん。まぁ理由などどうでもいいか、で何でこいつは召喚された?」

「こいつを召喚するつもりはなかっただろ。単に陣の選択ミスだな、誰かを呼び戻したかったんじゃないか?」

伯爵の息子は確か、王弟殿下と結婚されたはず…

「ダリアン!王弟殿下と妻君の無事を確かめてくれ!」

「サリザンド、何故だ?」

「この術者、伯爵の子息を狙ったみたいだ。無事だと良いが、もしかしたら…この塊だった物に取り込まれていたかもしれん。」

「な⁉︎ 詳細報告を至急上げてサリューン殿下に判断を仰ぐぞ!」

「俺はここの後片付けをしてから行く。こいつを連れて行け!」

「おい、スレイブ。お前俺の振りして行ってこい」

ちっ、本当コイツ悪魔使いが荒い!角を取り戻したらマジで真っ先に

食ってやる。

「へーへー。」

ははっ、ついでにこいつの番の味見でもしてやるか!あの魔粒子だけ

でも食わなきゃやってらんねぇ。

「都に手を出したら塵にするからな…覚悟しておけよ」

…こいつに目をつけられた番も可哀想なこったな。

腹ん中のドロドロした欲求が吐き出される瞬間、こいつの支配欲は

最高潮に達して、どうやって更に番を嬲るかを考えてる。

怖い怖い…悪魔すら恐れぬこいつは天界の統治者、アイツと良く

似てる。だからなのか?サタン様まで従っちまったのは。

「分かってるよ、それより角返せよ」

「全て終わったら、これをやろう」



 ダリアンはスレイブを連れてビクトラの元へ走った。

状況を説明し、至急皇帝へ報告が上がり王弟殿下とその妻ダントの

安否確認が行われた。しかし、二人ともダレンティアに滞在中で、

無事である事が確認されよくよく謎が深まった。魔道隊も総局も

相手が皇族とあり、対応を協議した上でダントに事情聴取への協力が

打診された。

「私に恨み…ですか?」

「えぇ、ダント様へなのか…伯爵か…王弟陛下かはまだ分かりません。しかし、標的となった事は確かでしょう」

「いえ、そんな事は無いかと」

「ではご家族でトラブル等はございませんでしたか?」

「…特には。婚約の事で多少トラブルが過去にあった程度ですよ。」

「トラブルですか?」

「私には、当家の養子となった兄がおります。義兄は予言婚姻でフルフォンド当主の三男サルベート殿と婚約を定められました。しかし、予言が発布される前に…分家の長男ヘルマイヤーと婚約しておりました。」

「して、そのヘルマイヤー殿は今どちらに?」

「……魔獣に襲われて…亡くなりました」

「それはお辛かったでしょう。では、義兄殿は次期伯爵の地位で?」

「いえ、義兄は出奔致しまして…行方知れずなのです。」

「義兄が出奔した後、フルフォンド家のマッケント騎士隊長が当家へ押しかけて来た事があったのです。彼もまた、サルベートと恋仲にあった様で予言婚姻は受けても、自身も愛妾として受け入れて欲しいと…」

「成程…サルベート殿と彼は今もまだフルフォンドに?」

「いえ、予言婚姻は絶対です。幸い、当家は家名指定だけでしたので私と歳の近い伯父が義兄に代わりに彼と結婚し、今は帝都西の屋敷に居るはずです。騎士隊長はわかりません」

ダリアンはフルフォンドの二人が関係しているかも知れないと考え

部下に目配せをして調査に向かわせた。

「ダント様、左手を宜しいですか?」

サリザンドに扮したスレイブがダントに左手を出すよう、右手を差し

出した。

「え?私の…ですか」

「はい。別に酷い事をする訳ではありませんよ」

おずおずと左手を差し出したその手をスレイブは受け取ると、鼻を

近付けクンと匂いを嗅いだ。

「貴方、禁忌の呪法に触れましたね?」

ビクッと手を震わせたダントはスレイブを見上げた。その瞳は微かに

震えている。

「な…何を言っているのですか?」

「誰ですか?術を掛けたのは…貴方は被害者だ。加害者ではない、だが、被害が広がれば貴方も加害者になりますよ…」

ダントは目を瞑りスレイブの指をぎゅっと握り締めた。

話した内容に嘘は無いが、話していない事がある事にスレイブは

気付いていた。真実を述べるのか、虚偽で逃げ切るか…どうでるのかを

スレイブは楽しんでいた。

「半年前…義兄が現れたのです。そして共に帝都を出ようと言われました。私はその願いを拒みました。義兄は…狂ったように叫び出して、私は怖くなり屋敷を飛び出したのです。それ以降の事は私には分かりません。」

「何故、今更貴方を呼び出し出奔を勧めたのでしょうか?」

ダリアンはペンで頭を掻きながらダントに質問を投げかけた。

ダントは震える両手を固く結び、額にて着けて過去を話し出した。

「私がまだ40の頃、義兄は…私の…恋人でした。しかし、父に知られ…義兄は私を守るために、ヘルマイヤーと婚約しました。その後、私の婚約が決まり…義兄はヘルマイヤーを伴い戦に出て、その戦でヘルマイヤーを失い…戦から戻った兄は人が変わってしまった。」

「それで、貴方と寄りを戻したいと…?」

「ええ、しかし…私は夫と共に居ることを望みました。義兄には申し訳無いと思っています。しかし、人の変わった義兄は私の愛した義兄ではなかったのです。」

「ダリアン、伯爵を調べた方が良い。あの二人目の核は伯爵の物かも知れない」

ダントは椅子から立ち上がると談話室から飛び出した。

「おい!伯爵家へ急ぎ連絡をしろ!」

「ダリアン、ダント様はまだ嘘を吐いているぞ」

「…何故だ?」

「あの呪法は死者の魂を呼び戻す物だ、義兄殿が呼び戻したい魂は誰だ?」

「…さぁ。分からない事がまだ多すぎる」

スレイブは『能無し』と内心で嘲りながらヒントをだした。

「ダント様が義兄を呼び戻したかったんじゃ無いか?」

「どういう事だ?」

「はぁ、義兄は既に死んでいてダント様は義兄を取り戻したかった。呪法を使ったのは呼び戻しに失敗して現れた悪霊か、憎しみに囚われた義兄の魂か…だろうな。だから、ダント様の絵に制約が掛かっていた」

「制約?」

「止針」

「はぁ?何で絵なんかに」

「もう、理性も知性もない。執着だけで動いているんだぞ?悪霊なんて…ダント様の姿絵を本人と思ったんじゃ無いか?」

「何でダント様はそんな嘘を?」

「さぁな。」

まだ屋敷に居るサリザンドのお手並拝見とばかりに、スレイブは舌舐め

ずりをして窓の外、皇帝宮の都の私室を見下ろした。
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