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神話編
四聖獣
しおりを挟む仙人ジジの結界に囚われた都は、結界によりラファエラとの繋がりを
断ち切られてしまった。次第に魔粒子補給が出来なくなり身体から力が
抜けて行くのを感じる。
「あぁ、これヤバいやつ。ちょっと、俺の魔粒子補給の繋がり切って何するつもりだよ!」
ジジは結界の外から都を見下ろすと、更に結界を張り身体を構成して
いた魔粒子を分解させた。都の依代の形は消え、結界には七色の魔粒子
だけが浮いている。
「お前、何なんだ?何で核が一切ないんだ!」
「頼む、結界を解いて…話を聞いて。」
結界に声だけが響き、ジジは頭を掻いた。
「お前、名前は?」
はぁ!?名乗ったよね、俺⁉︎ マジかよ、人の話聞かない系?
「グレースだよ。」
「いや、本当の名前だ。お前の名前はなんだ?」
「身体の名前はグレース。魂の名前は都だ。」
「都、お前はどこから来た。」
「…天界。」
「やはり、カイリ…カイリ!俺が分かるか?」
分かるもんかい‼︎ あー…ヤバい。俺そろそろ限界かも。
「たす、け、、て。」
村の入り口で結界を張るソレスはどうするべきか悩んでいた。都の
側にいるべきだが、ジジの言う何かも気になりこの場を離れられずに
いる。
都様が連れて来たって何だべ?オラ不安になってきただ。
村の入り口をウロウロしながらソレスはジジの家を見つめていた。
すると、ゆらゆらと黒魔粒子が揺れて村の入り口に人が現れた。
「グレース様か?なしてここにおるだ!すぐに戻るだよ!作戦が失敗してしまうだ!」
「我の加護を受けし小僧よ、そこを退け。」
「あ、あんた誰だっぺ!」
「我等は四聖獣、其処をどけ。」
グレースだがグレースでは無い、凶悪で最悪な何かが村に入って
しまった。ソレスは慌てて依代の制約を解き、龍となって空を飛ぶ。
「都様!どーか無事でいてくんろ!」
昨今帝都では白魔粒子汚染が深刻化していて、境界や神殿の白使い
だけでは数が足りず、西のイルスとフルフォンド領から援軍として白
使いと神官、護衛騎士が1000名帝都入りしていた。調和の効果も全
土に広がるまでにはまだ時間がかかるため、サリューンも渋々帝都入り
を許可した。
しかし、彼等は浄化と銘打ち騎士隊本部の正門、裏門に駐留すると言い
出し、ビクトラやアガットなど隊長クラスの異議申し立ても魔道隊総局
長であるヤルダは突っぱねて押し通したのである。
結局、騎士隊本部や騎士棟、訓練所までが実質封鎖された。
帝都に戻ったグレース達は、魔道騎士隊の作戦室に籠ってマラエカ
達の立てた作戦を聞いていた。
「ここから、白魔粒子の浄化と調和を行います。」
マラエカが指したポイントは騎士教会の地下水槽だった。
ここは皇城の上下水道とも繋がっている上、城外の浄化施設のハッチ
さえ切り替えれば一般家庭用水路にも調和が行き届くポイントだった。
「同時に西とサムオール、オーランド、ガーライドナイト、フルフォンドを封鎖、自治領権、代行権を剥奪します。西は大隊長よりすでに権利返上書を頂いていますから、武装解除は完了済です。ですが、情報統制の為に大隊長には領地のポータル全ての停止処理をお願いします。」
「既に完了している。今やイルスは陸の孤島だ、入る事も出る事も出来ない。北は大丈夫なのか?」
「はい。北は当主と話が着いています。オルポーツ様達のやり方に納得されてらっしゃいませんでしたから、独立も止む無しと返答が返ってきています。フォールム殿が既に北入りしてますから、大きくは動かないでしょう。」
「ね、オルポーツはさ、どう動く?なにするつもりだろう。」
グレースはビクトラから魔道具経由で補給を受けながら話を聞いて
いた。都が離れてから黄の魔粒子の消耗が激しく、黄色持ちのビクトラ
とルーナから五時間置きに補給を受けている。
「まだ動けないはずです。あちらの今回の目的はあくまでも帝位簒奪とグレース様に調和をさせる事です。しかし、離宮と繋がらないこのポイントからなら帝都だけに調和をもたらせられます。」
「そっか。上手くいくかな?俺この状態で不安だよ。」
「魔粒子の減りが早いんだ。都に何かあったんじゃ…。」
その言葉にルーナ、サリザンド、アガットは慌てて三名で魔粒子の
慣らしを行いグレースに流し込んだ。
ブツッ……
「ガッ‼︎ウォエッ‼︎ハッウゥゥ‼︎」
急に吐き出したグレースに皆驚き、ルーナが慌てて保護結界と診療を
始める。
「魔粒子が溢れてる‼︎俺達が入れた以上だ‼︎」
「錫杖かして!」
ルーナはグレースの錫杖をサリザンドから受け取ると魔道具に当てがい
魔粒子を吸収して行く。
「グレース!しっかりしろ!息をしろ、ゆっくり、ゆっくりだ!」
——— グレース、大丈夫か?我と代われ。お主は神核で休むといい。
「ビクトラよ、大丈夫だ。大事ない。」
ラファエラが現れ立ち上がると、足元に陣を描き唱えた。
「我の声に集え、白虎、玄武、朱雀、青龍。其方等をこの魂の護りとする。姿を現せ。」
錫杖を陣の中心に置くと錫杖からグレースとそっくりの人形が現れ、
ラファエラと向き合った。酷く禍々しい黒魔粒子を纏い、周囲を威圧
しながらグレースのコピーは地を這う様な声でラファエラに話しかけ
てきた。
「其方は使徒か。」
「そうだ、今はこの方に仕えておる。この方の魂の片割れとの繋ぎが切れた。その方の魂を持ち身体となりお守りして欲しい。」
「テュルケットはどうした。」
「淀みよ。」
「ククククク!あははは!そうか、そうか!良いぞ、アマルマはどうした?アイツは死んだか?」
「まだだ。だが、テュルケット神を止める為に天界よりこの方々は転生なさった。今各地の調和を行っておる。急いでくれ、西の意識が壊れそうだ。」
「まぁ、良いわ…相分かった。いずれは解放されるのであろうな?」
「この方々はお優しい。まるでカイリ様の様にな。」
「そうか、カイリでは無いのだな?」
「違う。カイリ様の魂は天界の雲海にあるだろう、今は先帝と共に居られるさ。」
「…そうか。なら良い、そなたどこまで知っておる。」
「全てだ」
グレースのコピーはゆらりと揺れると霞の様に消えて居なくなった。
「なっ、何だったんだ今の…」
ビクトラとリャーレは鳩尾に手を当てラファエラを見た。
「聖獣を呼んだ。この地の聖獣は神核となり各々引き継がれておったからな。ビクトラとリャーレからは白虎と玄武、オルポーツからは青龍、天界より朱雀を呼んだ。」
「俺の神核を抜いたのか?」
「そうだ。朱雀は天よりの慈悲だな、何処におったのか知らぬが一番に現れよった、まるで待っていたかの様よな。」
「おい、それって大丈夫なのか?」
「あやつ等も待っておったのだろう、青龍など半身淀みに浸かっておる程にオルポーツに痛めつけられ怨んでおるしな、出してやれて良かった。だが、西の結界は保たぬな。」
「都に結界となって貰わねば。」
「おい、それはどういう事だ?お前、都には何の問題は起きないと言っていただろう‼︎」
サリザンドは服従の権能を解き放ちラファエラに詰め寄るが、表情を
変えないラファエラはサリザンドの首を掴むと胸の魔道具から鎖を
伸ばして魔粒子核と繋いだ。
「真名を名乗れ、都と繋いでやる。さすれば都へ声が届く。」
「な、何故、声を届ける必要がある…何故だ…おい、まさか」
「都も最後にお主の声を聞きたかろう」
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