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神話編
短気は損気(2)
しおりを挟む「あのなぁ。都だって戸惑ってお前らにどう接して良いか分からなかったんだよ。だから一人になりたかったんだ。ルーナやサリザンド、朱雀にソレスはお利口だ。分かっててちゃんと待てが出来る。」
ビクトラのリャーレ、アガットは頭を抱えてグレースに不満をぶつけた。
「い、いや、だから!それを何で俺達に話して下れない!俺達だって都を大事に思ってるさ!だから心配したんじゃないか。俺達だってグレースじゃない都を心配しているんだと分かってもらいたかっただけだろ!それに、殺されていたかもしれないんだ。都の不安や心配もわかる、わかるが自分の状況をもう少し分かって貰わなければ困るんだよ。」
全然分かってないな。こいつら…。
もういいや放っておいて帝都へ向かおう。これからの巡行にはこいつら
抜きで行こう!別にこいつらが居なくても戦力的には問題ないし、魔粒
子の問題だってラファエラに策があるらしいからルーナ達で十分
だろう。俺は朱雀が居れば性的欲求はとりあえず満たされるし。
「わかった。もういい、ちょっと俺は出てくる。大丈夫だ、コレットとガットを連れて行く。お前等はここで好きなだけお茶でも飲んでろ。コレットとガットなら都も普通に会話できるしな。安心だろ?じゃあな。」
グレースはローブを羽織り部屋を出ようとし、その後ろ姿に三人は
見放された事に気が付き咎めた。
「なぁグレース。俺らはお前らの道具じゃないんだ。心があるんだよ、愛したのはお前で都じゃなかった。それは…どうしようもない事だろ?でも、お前に抱く様な愛じゃないが確かに俺達も都を好きで、大切に思ってるさ…だから抱いた。分かって欲しかったからだ。視界から居なくなるだけで不安になるし、怒りを覚える。なんで傍にいないんだってな。それに、お前より優しくしてるだろ!?」
その言葉に、溜息を吐いて諦めた。
本物の馬鹿には何を言っても理解が出来ない、しかし説明をしてやら
なきゃこいつらも納得はしないだろう。そう思い、グレースは踵を
返すとドサリとベットに寝ころびポンポンとベットを叩いて三人を
呼んだ。
「馬鹿だね、お前たちは本当に。都と俺の違いって何さ?どこに違いを感じてるのよ?一緒だろ。感じる部分も、欲している物も、俺達は一緒なんだよ。話し方でお前等は俺に惚れたのかよ?優しいって意味違うから!」
その言葉に三人は顔を見合わせ首を振った。
リャーレは子供に言い聞かせる様に、また分かって貰えない事を残念
がるように後ろから抱きしめ溜息交じり呟いた。
「グレース様?全然違いますよ。貴方と都様は全然違う。仰る答えは同じでも考え方も、表情も、感情も、仕草も全て違う。同一だと言うのはあなた方二人だけですよ。」
リャーレはグレースの前髪をそっと撫でながら微笑み口づけ言葉を続けた。
「いいですか?グレース様、例えるならば貴方は太陽の様なお方です。熱く燃えて私達を焼き殺さんとする程に熱を与える。一方、都様は月や星々の様なお方です。穏やかで柔らかい光で包もうとされる。これは、どうあっても同じではないのです。」
「太陽の光が無ければ月は輝けないし、月の光が無ければ太陽に焦がされるだけで安らぎを得られない。もちろん、これはルーナやサリザンドからしてみれば逆なのかもしれませんが、お二人は全く違のですよ?」
「なら月を太陽と同じように愛でられないものか?」
アガットはグレースの足に口づけながら囁き、太腿に手を伸ばす。
「愛でているさ、月は美しいからな。太陽はまぶしすぎて眺められない。だが、俺達は熱く焦がされる事に喜びを感じてしまった。もう後戻りはできない。それに、月は眺めているだけで満たされる。それ以上を求めてはいけない。」
求めてはいけない?いけないってなんだ。都がいつお前を拒否した、
逆だろう?
「見つめられるだけの月の悲しさは誰が癒す。他人任せかよ?太陽も月も与えるだけで与えられていないじゃないか。まぁ、太陽は焦がす事で喜びを得ているからな。月は可哀想だな。」
グレースは都の寂しさがようやく理解できた。
なんで、いつもあんなに自分を卑下して愛されないと泣くのだろうと
思っていたが、そういう事なのかと都に同情した。
「はぁ、グレース。都様はそんなに俺達に愛されたいのか?どうされたいのかが俺にはわからん。」
腹を撫でるビクトラの手を取り神核へそっと触れさせ小声でビクトラに
耳打ちした。
「意識を指先に集中してろヴィク。」
「おん?あ、ああ。」
グレースは神核に向かって意識下で話しかけた。
「だってよ?都。どう愛されたいんだ?」
——— いや、何突然。意味が分からないんだけど。それに別にそこまで求めてないんだけどな。ルーナとサリザンドでお腹いっぱいだし。
「嘘つけ、俺がヴィクに見つめられると羨ましそうに『目が本当に奇麗だな』って思ってるの分かってんだぞ?それにアガットに髪結いしてもらえるのが羨ましいって思ってるくせに。リャーレともっと話がしたいって俺が変わるの待ってる時もあるだろ?バレバレなんだからさ、隠すなよ」
——— それは思ってるよ。ただ、俺を神の様に扱って欲しくないんだよ。ビクトラさんはなんでか俺を神かその化身かの様な眼で見るから冗談も言えないし、揶揄う事も出来やしない。
——— アガットさんは露骨にグレースのおまけ扱いだしな。言葉は丁寧だけど拒否されてるのは辛い。偶然手が触れただけで手をはたかれたんじゃさ、嫌でも思うだろ?俺がいない方いいんだなって。俺もアラフォーだったんだ、大袈裟に騒ぎ立てたり責めたりはしやしないけど、寂しくはあるよ。
———リャーレさんはすぐに俺が表に居るってわかるから、話をする事なくルーナかサリザンド呼んできてさ、気を使ってくれているのかもしれないけれど普通に仲間や友達として話位したって良いじゃないか。
——— 俺にはルーナとサリーが居てくれて十分だって本心から思ってるよ!それ以上の存在にビクトラさん達を望んでないだろ?
「それを妬んでるって言うんだよ、都。」
——— いや、妬むって程の事じゃないだろ。ただ、少し。やっぱり俺はこの世界では異世界人なんだな、馴染めないんだなって思っちゃっただけだよ。
——— それなのに、やめてくれって言っても抱くしさ。俺をどう思って抱いたわけ?そういう対象として見てるならさ、もっとあるだろ?それなりの接し方がさ!その、女性器だってさ。俺にとっては大事な部分なんだよ、雑に扱って欲しくない。わけわからない場所なら手を出して欲しくなかった。唯一俺が女だったって記憶が残っている場所なんだから。グレースにもわかるだろ?
「まぁ、実感はしないけど都の記憶から理解はしてるよ。前世では月物だってきついの何とかしようとしてたし、検診だってちゃんと行ってたよな。それにいつかは双葉を迎える場所だし、大事にしたいのは分かるよ。」
——— 俺は…考えないといけない事や、やるべき事が山ほどあるのに、なんで皆の事ばかり気にしてしまうんだろうな。もう、彼らの反応にいちいち一喜一憂するのが嫌なんだ。
——— 逃げるなってグレースは言うけど、向き合って答えが出るのか?出ないよ。彼らだって俺をどう扱えば分からないのに、答えが出るはずも無い。だから無理に俺をビクトラさん達に愛させようとしなくて良いんだ。俺にはグレースとラファエラ、ルーナにサリーがいる。それで十分満たされてるから。
——— だからさ、あんまりビクトラさん達を苦しめてやるなよ。可哀想だよ、自由にさせてあげな?
「じゃあなんで抱かれたんだ?すぐに俺と代われば良かっただろ。俺はてっきりそうする物だと思ってたよ。」
——— …。
「俺がヴィク達を好きな様に、都だって愛されたかったんじゃないか?別に俺はそれで嫉妬したりはしない。逆になんで求めないんだっていつも思ってる。俺が言うつもりのない言葉を言える程には思っているんだろうって感じているけど?」
——— なんでだろうな?嬉しかったのかな、俺を繋ぎ留める事が抱く事だったっていう彼らの選択が。なんで、俺はグレースみたいになれないのかな。俺は…
——— 確かに、好きだよ。
——— 毎日、目が覚めるまで戸外で俺らの気配を探って警備してくれてさ、巡行の隙間に帝都に戻って隊の仕事をして、きっと俺らの知らない所で色々根回しをしてくれている。それなのに俺達の我儘まで聞いてくれて…世界の為だって言っていても、日々の姿見たらさ。そんな男達に惚れないわけがないじゃないか。だから、言わないよ。その言葉は呪いみたいなものだから。グレース、俺の代わりに彼らを大切にしてよ。
「なんで、俺達を愛してくれないんだろうな?俺が愛さないからか?愛しているって言えばこいつらは都も愛してくれるのか?」
——— いやいやいや、そういう事じゃないでしょ!
——— 彼らは俺らの様に互いを同一視していない。個としてみているんだから、当然だろう?グレースはサリューンが好きだろ?友達として。
「あぁ。好きだよ?あいつ面白いし。」
——— じゃあオルポーツは?
「いや、選択支が間違ってるだろ。」
——— そういう事だよ。サリューンの父親はオルポーツだ。サリューンがオルポーツは俺だって言っても、同じように接する事は出来ないだろう?だから、仕方がないんだよ。
——— 俺が、グレースと一つになれたならこんなに悩むこともなかったのにね。グレース、ごめんなぁいっつも俺の事で悩ませてさ。
長い沈黙の後に都が意を決して想いを伝えた。
——— すこしさ、俺一人で旅に出たいんだ。神核から抜けてもいいかな?ラファエラが一時的に依り代作ってくれる言うからそれに乗り換えようと思うんだ。みんなと離れて俺はどうすべきか考えたいんだけど、いいかな?
都の提案に、グレースは混乱した。ビクトラの指を魔道具から引き抜き
その場をグルグルと周りはじめ、爪を噛みながら「ダメだ、ダメだ!」と唸っている。
途中まで話を聞いていたビクトラも、都の出した提案に大きく溜息を
吐くと部屋を出て行ってしまった。残されたリャーレとアガットはどう
するべきか分からずに、コレットに警護を任せてビクトラを追った。
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