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東のガーライドナイト領

神が鎹

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 はぁ。すごい、遊園地のミラーハウスに入っているみたい。

明るくてキラキラして、目がくらみそう。入口から見た感じだと結構

近くにあるもんだと思ったけれど、結構な距離歩いているよね?

幻覚か、制約か、まるで辿り着く事を拒むように中心に佇む人との

距離は一向に縮まる気配がなかった。

「これは、結界なのでしょうかね?まったく先に進めていない。」

サリザンドは鑑定用のスコープを付けたまま辺りを見回すが、困った

ことに呪法や制約の類は一切なく何が原因で先に進めずにいるのかが

サリザンドを以てしても全く分からなかった。

――― 都、サリザンドに権能使わせて。

使わせてって。そんな使い方なんてわかんないでしょ?私だって調和と

破?さっきの以外の権能自力じゃわからないし。

――― ニニギが神官に聞けって言ったよな?マルスに聞いてみろよ。

いや、私もマルスさん苦手なんだよね。

こう、信仰第一っていう感じがさ。私達自身を見てくれてないって

いう所が何というか、苦手。でも、まぁ仕方ないか。

「ルーナ、ルーナ。お願いがあるのだけれど、いいかな?」

都に呼ばれて隣を歩くルーナは屈んで耳を都の口元に寄せた。

「何、どうしたの?怖くなっちゃったの?」

子供をあやすが如く甘く囁くルーナに、都は照れながらマルスと

神力について話をしたいから二人で話しても良いかと伺いを立てた。

「え!?大丈夫なの?隊長とのやり取りを聞く限りだと危ないんじゃない?俺も隣にいるよ、不安だし。」

「だからだよ。アガットさん、ビクトラさんに関わる人はまるごと軍関係者って認識で壁が出来てそうだし。私一人の方がまだ歩み寄る事が出来ると思うんだよね。」


えぇぇ、いくらそうであっても都とマルス神官長を一緒にしたくない!

あの人の目ってなんか都に対してだけ色が違うんだよねぇ。

ただでさえサリザンドが加わって俺との時間が減ったっていうのにさ、

ここにきてマルスも都推しに仲間入りとか本当に勘弁ならないよ。

俺だけだったのに…都の魅力を知っていたのはさ。嫌だな…本当に。

「ルーナ。真名繋がっているから丸聞こえ、結界忘れてるよ。」

「え!?しまった!忘れて!都、今のは無し!全然思ってない!!」

心の声が筒抜けなの忘れてた!俺ってば超恥ずかしい奴じゃん!

しかも、サリザンドが加わったのが嫌だとか言ったら都また色々気に

しちゃうじゃないか!俺のアホ!バカ兎!しまったぁぁぁぁ!!

「ふふっ、大丈夫だよ。私の事一番わかってくれているのはルーナだし、私が会いたくなる男の人もルーナだけだよ?だから浮気なんてしないよ。」

「まぁ、サリザンドはなんていうか…抵抗できないというか。好きなんだけど、ルーナみたいに安心して寄りかかれる感じじゃないの。なんていうか催眠に近い気がするから、サリザンドの事は許して!」

ルーナの反応イマイチだな…なんでマルスと話をするだけなのにここま

で神経を使わないといけないのか、納得いかないけど、えぇいままよ!

押し切れ私!秘儀!上目遣いに恋人繋ぎ!あーんどほっぺにチュー!

頼む!信じて!ルーナ!この秘儀使用 MP 量が尋常じゃないんです!

結構限界なんです!都の秘儀に倒れたのかどうかは分からないが、

ルーナは都の額と手の甲にキスをして許してくれた。

「わかった、信じるよ。まぁ、サリザンドは俺が都側だったとしても
抵抗出来る気がしない。あれば別物。彼氏は俺だけでしょ?」

「…う、うん。そうだよ!だからマルスと話しても良いかな?」

「いいよ。終わったら俺の隣に帰ってきてね?」

ルーナは“彼氏”認定を得てホクホクと一人前を歩き出し、その後ろ姿を

見送ってから都はマルスに意を決して話しかけた。

「マルスさん、すみません。お聞きしたい事があるのですが宜しいでしょうか?」

声を掛けてきたのが都だとわかり、幾分軟化した態度でマルスは

返事をした。

「はい、何でしょう。如何されました、ご気分でも悪いのですか?」

「いえ、そういうわけではないのですが。以前マルスさんも会ったニニギを覚えてらっしゃいますか?」

「えぇ、あの壮麗な使徒様ですね?」

「彼は使徒ではなく数多の神の内の一人なので、神なのです。」

「これは失礼致しました。都様の生前の世界では多くの神が存在すると伺っておりますが、その様に多くの神がいらっしゃるのですね。」

「えぇ、多すぎて八百万の神と人は言います。いえ、その神の存在の話ではないのですが、ニニギが皆様神官の方々に神力について知識を得ろと言われたのです。何かご存じですか?」

マルスは、神より我々から知識を得よと神託を受けたという都の言葉に、思いのほか気分を良くし嬉々として話し出した。

「えぇ、えぇ。勿論でございます!何なりとご質問ください。」

ちょっと面倒臭いなと思いながら話し出したマルスとの会話は、

以外にも都の知識欲求を満たし、都のマルスへの苦手意識はかなり薄く

なった。そして終始、驚き感嘆しながら色々な表情を見せる都に対して

マルスも『神グレース』としてではなく、都という一人の人間に好感を

抱いた。神力の詳細については、マルスも神核を持っていない為よく

わからないという事であったが白使いの魔粒子の使い方、魔粒子から

魔導や呪法、制約をどう使うのかを細かく教えてくれて、神の声を聴く

為には体内の魔粒子を合わせ白にして、外に放出する必要があるのだと

教えてくれた。

「そんな事出来るのですか?すべてを白にするという事は体内で生成される色は捨てるという事ですよね?それは自殺行為なのではないのですか?」

マルスはニコリと微笑むと、「体内で巡る物を体外で身体に纏わせるだ

けの事。忍耐力と精神力でなんとでもなります。」と教えてくれた。

ルーナにもたれ掛かりながらまさかのスポ根に都はサリザンドに

それが可能なのだろうかと気が遠くなった。
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