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東のガーライドナイト領

勘違いの酒池肉林

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 夕刻までの間、皆グレースの部屋で明日からの進行スケジュールの

確認と、それに対する対応策や人員配置を打ち合わせていた。

ある程度終わると、それぞれが自由に寛いでいた。

ビクトラとアガット、リャーレは終始警戒を強め、周辺への結界と

警備の確認を交代で行い、交代と同時にグレースの隣りにべったりと

くっついていた。

「なぁ、グレース。警戒だけは怠るな?権能使えるならいつでも

発動出来る様にしとけ。」

グレースは神経を使いすぎると疲労が激しいのか、いつの間にか

都に代わっていた。

「ビクトラさん、ご苦労様です。交代まで後30分ですか?」

「あ、都様?いや、失礼しました。」

都はまだ慣れないビクトラの反応に笑って応えた。

「いえ、そんな堅苦しい対応をされると私も甘えたい時に甘えられないわ。ふふっ。」

「いや、なんと言いますか。難しいもんですね。」

「そうですね。一朝一夕にはいきませんね、私も、ビクトラさんも。」

都に代わったと聞いてルーナとサリザンドが慌てて側にやってきた。

「「都!」」

この二人がここまで都に懐くとは、ビクトラもソレスも思いもよらず、

驚いていた。

「都、体調は大丈夫?診ようか?」「都、遺跡の話をしようではないか!」

みな、グレースと都を中心に集まる様になった。都も、嬉しそうに

二人と話をしていて、都の精神状態が良くなった事にビクトラは

安心していた。

「そうだ、ビクトラさん。ちょっと良いですか?」

「はい、なんでしょう?」

手招きされて側に寄ると、都が懐から何かを取り出した。

「これを。」

それは24色の魔粒子が入ったダブルカフスだった。

「これは?」

「ダブルカフスです。付けさせて頂いても?」

「はい。ですがこれは一体どう言う物ですか?」

「御守りです。ビクトラさんを守ってくれるように。」

都は、隊服の詰襟のボタンに上から嵌め込むカフスで、強力な

強化と防御の加護が付与されていた。

「ありがとうございます!こんな色の魔粒子初めて見ました。」

「最後の仕上げです。こちらへ。」

そう言われて奥の寝室へ向かいら扉を閉めるとビクトラを

ベットに座らせ加護の祝詞を囁いた。

これはオルポーツに襲われた際、神々が唱えた物だった。

——— えにし手繰たぐれ、八咫やたの鏡に映るは真の光。禍事まがごとより守れ。

——— れきを手繰れ、草薙剣くさなぎのつるぎが斬るはよこしまなる物。禍事まがことよ去れ。

——— 天原あまはらに立ち、勾玉の赦すは穢れし邪なるもの。ビクトラ•ハイトゥーレ•ライディの禍事を消す。


最後にビクトラに深いキスをして囁いた。

「貴方の命はグレースの物。だから、逃げる事を恐れぬ様に。祝福を。」

するとボタンからオーロラのような彩鮮やかな光が溢れ、ビクトラを包んだ。

都の俯き少し照れた微笑みに、ビクトラは思わず抱き締め深く口付け

服に手を差し入れたが、都も抵抗せずに受けいていた。

「大隊長!何やってんですか?」

外からの横槍に二人は慌てて離れ、思わず笑ってしまった。

それから、他のメンバーにも同じ様にカフスボタンや、

ペンダントを渡し、祝福をした。

サリザンドはその魔粒子に興味深々で、明日の共寝の祭は

寝れないかも知れないと都は思った。


 「グレース様、お時間でございます。」

執事の案内で正装したグレース達は会場へ向かった。

すると、そこには食事を取れる様な席は無く、壁際にいくらかの食事と

お酒が置かれ、部屋の中は若い人狼族で埋め尽くされていた。

「「え?」」

その光景に、グレースやビクトラ達は顔を見合わせた。

「マジかよ。全然食い物ないじゃん。」

「これは、、なんと言いますか。」

リャーレも呆れて頭を抱えた。

「こりゃ、お見合いだべ。」「獣くさっ!」「これはこれは。」

一様にこの状況を新たな守護者選定会場だろうと認識して、

溜息をついた。

「グレース様!」

ピッヒが鷹揚に手を広げて近づいてきた。

「我が家の息子達と甥子でございます。是非御挨拶をと思いまして!」

グレースはウンザリして都とバトンタッチした。

「えーー。こんなんばっか。」

都は目を閉じて唸った。

それから全員と挨拶を交わし、これからの調査の話しなどを行ったが、

どんな話を行っても直ぐに惚れただの、愛が欲しいなど

頭の痛くなる様な話ばかりをされて、都はルーナを呼んで

部屋へ戻る事にした。

「ピッヒ男爵。申し訳ありませんが、グレース様のお加減が優れませんのでお部屋に戻らせて頂きます。」

ルーナはピッヒに声をかけて下がろうとした。そして通り過ぎる間際に

耳打ちした。

「先程の話、何もご理解されていない様ですね。残念です。こんな勘違いの酒池肉林、呆れて物も言えません。それでは。」

ルーナはピッヒと目も合わせず都の元へ向かった。

そして残されたビクトラ達は、グレースへ守護者として自身を推薦して

欲しいという斡旋希望者に取り囲まれて身動きが取れなかった。















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