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新生編

あなたの為に出来ること(2)

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暗闇で、アマルマと俺は語り合った。
この国の事、神の事、魔粒子の事を。そしてたまに感情が爆発して俺は泣いて、朱雀とヴィクとグレースの名を叫んだ。
ここで意識を戻してからどれだけの時間が経ったのか、落ち着いた筈の心に恐怖の風が吹き荒れた。

「俺は、、死んだんだろうか?」 

これはアマルマへの問いなのか、自分への問いなのか分からない。けれど、漠然とした恐怖がどこからか込み上げてこの言葉を押し出した。

「えぇ。肉体と魂は離れているでしょうね。」

ヒュッと声が鳴る。
俺の身体は神々が人界で使う肉体を依代にしている。それは地球の人界では強度を保って使用できるけど、天界では長時間形を留めておけない。それに、魔道具による強制固定がされていても、元の身体が人のそれとは構造が違う上に、タイレーンの人間とも肉体の構成細胞が違う。どの程度肉体と魂が固定されるのかは分からないとツッキーに言われていた。本当なら直ぐにでも受肉が必要だった。なのに、俺は自由に浮かれていた。天界の3日はこっちでは一ヶ月弱らしい。遊び呆けてたんだな。俺。
 俺がどうありたいとか、どうして欲しいとか、そんな女々しい事を言っている場合じゃなかったんだ。朱雀が可愛すぎて受肉させたり甘やかしたり、甘やかしたり、、、そんな事をしていた結果がこれだ。
落ち込んでても仕方ないのは分かってる。でも、そもそも俺はネガティブの塊だぞ?どうやったら前向きになれるんだ。
頭で深く物を考えるのも苦手だ。まぁ、これは眠ってるグレースも同じか。はぁ。どうしよう、どうしよう、どうしよう。答えが見つからないな。

「グレース、どうすればいいのかしらね?私達。」

「そうだね。本当にそうだ。どうすればいいんだろう。」

この無限に広がる闇の中に答えを探す様に、情報を拾う様に意識を拡散させる。何かヒントはないのだろうか。そう思いながら逡巡する。

ヒックッ。ヒック。ウゥ、ウゥゥゥ。グズッグズッ

泣き声が聞こえる。

「アマルマ、泣かないでよ。俺まで泣けてくるよ。」

頭を撫でる気持ちで声をかけた。

「私は、、泣いてないわ?」

「え゛っ?」

じゃあ誰だ?この泣き声は。

「誰か!誰かいる?泣いてる君!聞こえるか?」

「誰ですの?泣いてらっしゃらないで、声を頼りにいらっしゃい?」

二人で泣き声の主に呼びかける。しかし返答はない。何だったんだろう?

「うっ、うっ、、お前達は誰だ?」

急に声が耳元で囁かれた気がして慌ててしまって、叫んでいた。

「おぉぉぉぉっふ!!おぃぃーーー!やめろよ!ビックリしたじゃねーか!」

「あらあら、突然ね。貴方はだあれ?」

アマルマはそんなに驚かなかったのか、新しい住人に興味津々といった反応だった。

「私は、テュルケット。太陽神テュルケットだ。」

はぁぁぁぁ!!!ガチホモショタ神かよ!!!!

「あ、あなた。ティル、、、なのですの?」

「お前は誰だ?なぜその呼び名を知っている?」

声を聞いてもわからねぇなか。コイツ。

「お前、クソだな。」

ムカムカする。諸悪の根源がこんっなところで泣きべそかいて、あまつ殺したカミさんの事まで忘れてるなんて、マジこいつクソだわ。

「なんだ貴様は。」

「俺か?俺はグレース。」
「あぁ、ごめん、ごめん。それじゃ分かんねぇよな。」
「こっちの名前の方がお前は好きかな?」
「……神居都。神居双葉の母親さ。転生して今はグレースって名乗ってる。」

腹が立っていたグレースは、嫌悪感と憎しみ、恨みを隠す事なく言葉に乗せてテュルケットを責め立てるように言い放った。

「初めまして。諸悪の根源、テュルケット。」

「グレース、、グレース。」

アマルマが宥めるように俺を呼ぶ。けれど憎しみに着いちまった炎は簡単には消えない。消せない。ごめん、アマルマ。君の半身だったね、夫だったね。子供の父親だったよね。でもね、そう、「」んだよ。だから責めていいんだ。いや、責めるべきなんだよ。コイツの為にもね。

「お前がオレを殺した。お前に!俺は!殺されたんだ!」

闇に声がこだまする。しかし、あっという間に静寂が闇に訪れて、また最初のように孤立した様な感覚を三者が感じていた。

「何とか言えよ。クソ野朗。」

悪態を吐くしかなかったグレースは、罰が悪そうに吐き捨てた。

「お前が、予言の災厄か。」

その言葉にまたしても怒髪を衝かれたグレースは怒号を上げた。

「ふざけんなよ!色ボケが!お前はなぁ!エルザードに嵌められて、良いように使われてたんだよ!予言を使って各地に魔粒子爆発やこの星の魔粒子の核を爆発させようとだってしてもいる!!それを!止めるために双葉がこっちに来る筈だったんだ!」

「お前、エルザードに双葉殺すように言われたろ。」

「何故、、それを。」

テュルケットの声が上擦る。神が私情で人殺しをした。その事実がテュルケットを苛んでいた。

「厄災の予言、八百万の天災を身に宿し予言を終わらせる。」

「これって、字面じゃ地球の八百万の神々に選ばれた神子がこの世界終わらせるって言ってるように見えるけどさ、嘘じゃねーか。」

「なっ!私の権能を疑うのか!?」

「だから、それを利用されてんだよ!お前がどれだけナルシストかは知らねえけどさ、見えた物を偽りなく伝えてられているかどうか、お前は分かんのかよ?それが本当だってなんで言えるんだよ!」

「人の命を奪う事は神にとってそんなに軽い、息を吐く程度のことなのかよ!?」

「しかも偉そうに、他のシマまで出張でばりやがって。なぁ、その予言で双葉は死んでるんだろ?でもなぁ。生きてるよ。ちゃぁんと、生きてる!」

グレースの怒りは治らなかった。抜かれた刀の鞘はどこにも見当たらず、アマルマも声を掛けれずにいた。グレースは只ひたすらに斬りつけていく。テュルケットの息の根をとめるまで。

「考えたことあったか?八百万の神々がこの星潰す為に、自分の子供を殺してオタクらん所に送り込む必要があるのかどうか。八百万の神々だって地球の日本ってちっせー国守るだけの神だぞ?それなのに、遠いこんな星潰してさぁ、誰得だよ!?エルザードが未来永劫、予言で国を導きたかったのなら、子供に権能を渡せば良かったんだ。でも、なんでそれをしなかった?」

「おい!ザル頭!考えた事はあったのか?」

オイオイ!またダンマリかよ!コイツ朱雀より頭悪りぃじゃねーか!
俺の、、都の、マイクの、双葉の人生返してくれよ。

「グレース、、私は、お前の為に、何ができる?」

ブチっ。

「なーにーもーできねぇぇからぁ!テメェもこんな所にぶち込まれてんだろがい!まじ大概にしろよ!本当お前が神で良くこの星成り立ってんな!」

怒りが頂点に達した時、ポゥっとグレースの指先が光った。





























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