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新生編

これからは俺がグレースだ。

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人間とは、何と愚かな生き物か。
この様にか弱き者を、何故こうも甚振れるのか。

「朱雀、もうグレース離しなよ。そろそろ行かなきゃ。」

天照様が朱雀の頭を叩いたよ。結構豪胆なんだな。天照様って。

「嫌だ。我はグレースとここで生きる。」

「それが出来ないのはわかってるでしよ?人間の体のダミーのままじゃグレースはここに居れない。」

ダミーだったんだ、、、これ。新情報。

「…朱雀。そんなにここに居たいならハウスしてなさい。」

「グレース!!!嫌だ!我は側にいたい!」

どっちだよ。

グレースは朱雀の頭を撫でると手を引いて天界の鳥居前に向かった。

天界で記憶が戻って三日。そろそろ出なきゃ。思い出したくもないけど、まぁ、ギリ未遂だったわけで。あの時、突っ込まれる本当寸前でした。危なかった。でも、身体中嬲られ、噛まれ、傷付けられて、弄ばれた。それだけで死んだほうがマシと思える苦痛。記憶がもどって発狂したり、気を失ったりしたけど、ツッキーが助けてくれた。
恐怖、怒り、羞恥、心の枷を取り除く手助けをしてくれて、今ではあの事を思い出しても恐怖で震える事もない。

「これ、外して受肉しなきゃ。力使えないみたいだし。」

胸に刺さっている魔法石が嵌まった手の平程の魔道具。これがある限り魂は肉体に固定されているけど、受肉している訳じゃないから力は使えないらしい。

朱雀が後ろから抱きついて頭を肩に沈めて呟いた。

「我が触れられなくなる。受肉などするな。」

「そんな訳にはいかないよ。もうすぐ魔粒子の爆発が起きるって。」

腰に回した腕の力が強くなる。

「我にも肉体が欲しい。そしたら我がグレースを受肉させてやれる。」

「そうなの?なら肉体作れないの?」

振り返って朱雀を見上げると泣きそうな顔の朱雀がいた。

何でそんなに悲しい顔をしてるんだろう?

「私は肉体を得られない。何故なら本体があるからだ。」

え?肉体はあるってこと?

「?どこにあるの?」

「天界の本殿にある。」

「なら、それ使ったら?」

「それでは人形ひとがたにはなれない。」

どういう事?

人形ひとがたになれないって?」

「我の本当の姿は鳥の様な姿だ。」

「うん。知ってる。」

「我がこの世界に顕現してこれより、伴侶を持ったことがない。」

「う、うん。ドンマイ?」

「故に交わりが無く、白虎や青龍の様に人の肉体を持てなかった。」

「?童貞だと人になれないの?」

何言ってんだこいつは。どういう理屈で人になれないのかが分からん。

「違う!そうではない。最初にグレースが我に口付けた宝珠があったな?あれは私そのものの力だ。神核と言い、玉の状態だと神珠や神玉と呼んだりもする。」

「白虎や青龍は、人界で人と交わり子を成してその子に神核を持たせる事で人の形を維持している。子供には神獣の神力と人間の血が流れているから、受肉をせずとも神核と肉体は融合する。そうやって神獣の力を繋いで来た。」

「だが、私はそれをしなかった。」

「なんで?」

「我の神核が求めなかった。どの世界を渡っても、我の求める人間はどこにもいなかったのだ。でも、グレースがいた。グレースだけを我の神核は求めている。だから、離れたくない。」

はぁ。子犬に懐かれた気分だ。可愛いけど、朱雀は執着の塊みたいだ。縛り付け、囲い込む。きっと自由は無くなるだろうな。
でも、ツッキーは朱雀が居れば心は壊れないから、絶対連れて行けって言ってたな。別に今の私ならそうそう心は壊れないよ。

「でもさ、子供が産まれないと人形ひとがたを得られないならどうしようもないじゃん。」

「子が産まれずとも人形ひとがたは得られる。交わった人間の力と我の力を繋げばいい。我は悔いていただけだ。気に入らなくとも誰かと番い、子を成していたならこんなに苦しい思いをしなくて済んだのにと。」

「我は言わば霊体。それまでは受肉していなかったグレースも我同様霊体に過ぎなかった。だから、仮の肉体でも触れられた。」

「何、あんた。って事は霊体以外に攻撃出来ないって事?守るって、、、触れられないならあんま意味ないじゃん」

「あの世界での攻撃や防御は魔粒子が使えるから問題ない。」

「じゃあ神核のままで問題ないじゃん。我儘言わないの。」

「……。それでは攻撃だけでは守れぬ事もある。結界などでは無力だ。それではグレースを守れないではないか。我の本来の力が使えたなら決して遅れは取らない。もう、グレースのあの様な姿は見たくない。」

心の奥底のドブの様な重い塊に熱が集まる。
傷付ける快感、悲しませた悦び、捻れた感情が湧き上がる。
声が響く。

あぁ、私が拗らせさせたんだな。
ごめんな。泣くなよ。男だろ?
子供みたいに丸まって、大きな肩震わせてさ。
そんなに俺が大事か?あぁ愛しいなぁ。執着が凄いけど。

愛情と欲望の火がグレースの中の鍵を焼き切った。
押さえつけられ、雁字搦めで奥深くに鎮められていた本能の目覚め。
もう、耐えなくても良いのだという安堵と解放感がグレースには満ちていた。

「ちょっと待ってて。動くなよ。調べ物が終わったら戻ってくるから。」


とりあえず、朱雀を落ち着かせよう。そして肉体を得る方法を調べてあっちに戻ろう。

さ、の可愛い猛獣にあげれるプレゼントを調べに行こう。







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