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王都編
私、御輿に乗ります。(1)
しおりを挟む「バ◯ス!」
「バ◯ス!」
「バーー◯ルス!」
ちょっと!全裸!こちとら全裸!
な、何!?誰?どちら様!?
なんで血まみれの男が仁王立ち?
グレースは手と髪で胸と股を隠しながら、驚きと恐怖で破滅の異世界語を連発した。ハァハァと上がる息を整える事も出来ずに目を見開いて、血まみれの男を凝視する。
ビクトラも未だ垂れ流しの鼻血を止める事も出来ずに、グレースから目が離せずにいる。沈黙が続き、互いにこの沈黙がとても気不味くどうしたものかと、どちらからともなく声をかけた。
「「あのっ!」」
被ったーー!渾身の一声被ったよ!え、え、どうすべき?これ。
う、うん。譲ろう。
「「どうぞ」」
互いに譲り合う様に手を差し出したが、余計に気まずさが増えた。
グレースはキョロキョロと服を探して視線を彷徨わせると、ビクトラがそれに気づきマントを脱いで、そっとグレースの肩から身体を隠す様に包み込んだ。しかし、ぼたぼたと落ちる鼻血でマントは血まみれになってしまい、ビクトラは慌てて首元に巻いたスカーフで鼻を隠し、グレースに背を向けた。
「ありがとう。着替えてきますので、暫く外に出て頂けますか?」
グレースは気まずさで俯き顔を真っ赤にした。
「大変失礼致しました。外にてお待ち致します。」
ビクトラはそそくさと外に出ていった。
——— ちょっと、ちょっと!神様?どっかいないの?おぉーーい?聞こえてる?
———なにぃ。どしたの。何でまっぱなの。
知らない声が脳内に響く。服を慌てて着ながら脳内で状況を確認しようとグレースは声を上げた。
——— ごめんなさい、どちらの神様?ちょっと状況が飲み込め無いんですけども!
——— ニニギだよー。今休憩中で俺も良くわかんないだけど。朱雀は?何でいないのよ。アイツに聞いた?
グレースは内心で舌打ちした。
——— 朱雀さん?彼、今ご飯探しに行ってるんですよ!目が覚めたらツッキー居ないわ、両生になってて、小山の周り包囲されるし、血まみれの怖い人に裸見られるわでパニックです!誰が来てもらえません?
——— 今さ、こっち神奈月で出払ってんのよね。俺たまたま境界修復でこっち来てて、見てなかったから状況分かんないんだよね。どうしようか?とりあえず、服大変な事になってるからそれだけ直してあげるよー。後朱雀も呼んどく?
使えねーーー!ちょっと神様!サポートするから安心しろって言ってたじゃん!急に包囲地帯に放り込まれて、獣に襲われそうになるし、ツッキーは何の説明もせずに黙って消えるわ。何なの?本当何なの?
グレースはそこまで記憶力がなかった。毒吐いた全てがニニギに聞かれている事を忘れてひたすらに毒吐き頭を抱えた。
———ちょっとぉ、文句おおくない?いい年なんだからさ、臨機応変にミッションコンプ目指してよ。裸見られた位でワーワー言わない!減りゃしないよ。そんな幼児体型に誰も欲情しないから!
まさかのダメだしにグレースは我に返り赤面してプルプル震え出した。
——— さぁーせん。43にもなって見た目若返ってはしゃぎすぎました。申し訳ありません!全裸!気にしません!包囲、突破します!
グレースは敬礼をして胸を張った。
——— ほんっと勘弁してよね?なんならあのまま輪廻にぶっ込んで良かったんだよ。でも、アンタなら子供の為とかじゃなくても頑張れるってみんな思ったから力貸そうって、神々も権能貸したんだよ?
うっ!そう言われると何も言えない。
うぅ。静かに怒ってらっしゃる。天罰とかは勘弁して!
——— 個人の信仰や願いだけで生まれた様な付喪神の中にはさ、消えた奴もいるんだ。
——— え?消えた?神様が?
——— そうだよ。そっちは俺らの管轄外。手出しなんてそうそう出来ないんだよね。送り出す為にみんな相当力使ったし。でもさ、大事に愛してくれた人の子の為に、こっちの世界守りたいって。人に近い付喪神や土地神、使役獣は自身の全てをアンタに預けたんだ。彼等は輪廻には入れない。だってね、俺らは人の信仰から生まれた権能みたいなものだから。魂はない。信仰や愛情、感謝を貰えない神は消えるだけだ。
静かに彼等の悲しみとも、怒りとも思える言葉が心を揺さぶってくる。
涙が止まらない。私は双葉の事しか考えてなかった。
神様にも大切な誰かがいて、その為に力を持ってて、、、
私に託されたんだ。
——— 悪いとは思ってるよ。本当ならアンタはさ91まで生きれたんだ。孫もいて、旦那ともそれなりに上手くいってさ。
そう、だったんだ。
幸せに、、なれたんだな。あそこで。
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