13 / 200
王都編
虎は自ら首輪を着ける(3)
しおりを挟む朱雀の言葉にライディは無意識に冷気を放っていた。怒りとも、悲しみとも感じられる湿った冷気。朱雀は冷気がグレースに触れぬ様翼を開いて冷気を払う。感情のコントロールも出来ぬのかと、嘲笑しながらビクトラに近づいた。試すかの様な目とその細い指で、ビクトラの心臓をツンと突く。ビクトラは朱雀の意図する事を理解した。
———完全なる服従を示せ———
そう、言っているのだと。
ビクトラは朱雀に、さもそれは当然とばかりに睨みつけ笑った。
「見縊るなよ、この焼鳥野郎。」
「良く見ておけ。俺は主人を定めた。」
ビクトラは朱雀の手を叩くと自身の心臓に右手の爪を差し込んだ。
「ライディ家当主、ビクトラ•ハクトゥーレ•ライディの名を以て白虎を枷とする。主を永遠の鍵とし、その言にのみ力を顕現す。俺を縛れ白虎!」
ビクトラは足元に左手で陣を描くと、魔粒子が身体中から抜け出し黒い手となった。そして首を締め付ける様に集ってくる。ぐっと苦悶の表情を浮かべるライディだったが、更なる強い枷とする為に爪をより深く突き刺した。
そして一瞬の発光が終わると、漆黒の縞模様がビクトラの首をグルリと囲んで首輪の様な彫りがそこにしっかりと刻まれていた。
倒れ込みそうな疲労感を耐えつつ、ハァハァと息を整える。
「くくく、あははは!馬鹿だな、本当に白虎というのは。」
朱雀は笑いながら椅子に腰掛けた。
「ぐっ、、、何がおかしい。俺は、これで満足だ。」
朱雀は憐れむ様な眼差しで吐き捨てた。
「主人になってくれたら良いなぁ、ビクトラよ。主人にな。」
「どういう意味だ。」
ビクトラは朱雀に掴みかかったが、力を制限されたビクトラは軽くあしらわれただけで扉へと吹き飛ばされた。
「追々分かるだろうよ。それよりも主人がもう数刻で目覚める。王都へお連れする為の手筈を整えろ。時間がない。」
ビクトラはハッとして、立ち上がりグレースの足元に駆け寄ると膝を着いて一礼した。そして朱雀を見ずに扉へ向かった。
「手筈はこちらで整える。テュルケット様を大々的にお迎えしよう。」
朱雀は眉をピクリと上げ思案した。
このままテュルケットとして主人を王都へお連れする方が何かと不便は無い、しかし主人の権能はテュルケットとは違う。直ぐにバレるだろう。どうするべきか、こいつにだけは話しておくべきか。
こいつの忠誠は形を以て示された。主人に牙を向ける事はない。それに、真実の一端でも知らねば、かえって面倒を作りかねない立場にこいつはいる。不満だか仕方あるまい。ビクトラとして認めよう。
「ビクトラよ。お前だけには伝えよう。主人の真実のカケラを。」
0
お気に入りに追加
273
あなたにおすすめの小説
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
BL
レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
【完結】あなたに撫でられたい~イケメンDomと初めてのPLAY~
金色葵
BL
創作BL
Dom/Subユニバース
自分がSubなことを受けれられない受け入れたくない受けが、イケメンDomに出会い甘やかされてメロメロになる話
短編
約13,000字予定
人物設定が「好きになったイケメンは、とてつもなくハイスペックでとんでもなくドジっ子でした」と同じですが、全く違う時間軸なのでこちらだけで読めます。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
普通の学生だった僕に男しかいない世界は無理です。帰らせて。
かーにゅ
BL
「君は死にました」
「…はい?」
「死にました。テンプレのトラックばーんで死にました」
「…てんぷれ」
「てことで転生させます」
「どこも『てことで』じゃないと思います。…誰ですか」
BLは軽い…と思います。というかあんまりわかんないので年齢制限のどこまで攻めるか…。
強制悪役令息と4人の聖騎士ー乙女ハーレムエンドー
チョコミント
BL
落ちこぼれ魔法使いと4人の聖騎士とのハーレム物語が始まる。
生まれてから病院から出た事がない少年は生涯を終えた。
生まれ変わったら人並みの幸せを夢見て…
そして生前友人にもらってやっていた乙女ゲームの悪役双子の兄に転生していた。
死亡フラグはハーレムエンドだけだし悪い事をしなきゃ大丈夫だと思っていた。
まさか無意識に悪事を誘発してしまう強制悪役の呪いにかかっているなんて…
それになんでヒロインの個性である共魔術が使えるんですか?
魔力階級が全てを決める魔法の世界で4人の攻略キャラクターである最上級魔法使いの聖戦士達にポンコツ魔法使いが愛されています。
「俺なんてほっといてヒロインに構ってあげてください」
執着溺愛騎士達からは逃げられない。
性描写ページには※があります。
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる