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王都編
これからのこと(1)
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何とか獣から逃げ切った。精神も肉体も限界かもしれない。なんでこんな事になったのか。数時間かけてグレースは山を降り、川沿いに道をトボトボと歩いている。背後から追ってくる気配は無かったが、時折チラチラと周囲を見渡す。
なんかイギリスの片田舎みたいな風景……ここにヨークミンスターとかあったら勘弁フォックスウッドだな。良い景色だけど……これからどうすべきなのか。そもそもトラップとは何なのか?分からない事が多すぎて、思考が停止しそう。でも、考えないと。
ふぅっ……と息を吐いてグレースは川の岩陰に腰を下ろした。
「ねぇ、ツッキー。まだそこにいる?」
グレースはさっきまで左後に浮かんでいた月読命を探した。
「はいはーい!いるよぅー!どした?」
月読命はグレースの前に現れるとしゃがんでグレースの顔を見上げた。
「とりあえずさ、次すべきことと、最終目標教えて。ツッキーもずっとは居れないんでしょ?」
月読命は夜を統べる神だ。朝が来ると神殿に帰ると言う。
「そうだねー。ま、棚ぼたで予言崩したからこれからはやりやすいと思うけど」
「予言を崩した?」
グレースは前屈みになり顎を両手で支えて月読命に顔を近付けた。
「そ。本当はグレースちゃんが降り立ったあの場所、トラップ解除しても魔粒子濃度高くてさ、噴火ばりの魔粒子の噴出が起きるはずだったんだよね。でも騎士も集まってるし、グレースちゃん魔粒子ガンガン吸収するわで魔粒子から発生するはずの魔獣でなかったのよ。で、予言もはずれたわけ!ラッキーラッキー!」
魔粒子とな?なにそれ。予言外れて良かったのかな?
「簡単に言うと、この世界は魔粒子によって生かされてる」
ほぅ。生かされてるのか。
「この星自体が魔粒子の塊で、本来なら地上の魔粒子が薄くなると、その分ひっぱられるように地殻から魔粒子が湧き出してくる」
3へぇ。かな?
「自然は緑や青の魔粒子、大地は赤と黄の魔粒子。ってな具合に基盤となってんだよね」
「魔粒子過多になると腐って魔物になっちゃう。怖いよねー!」
の割には楽しそうだなツッキー。
「なら、この川の水も魔粒子で出来てるの?魔獣って倒せるの?」
「そうそう。魔粒子に水を構成する、地球で言えば水素と酸素みたいなのがくっついて水という形を作ってる。魔獣は周辺の魔粒子濃度下げてやると魔獣の魔粒子が奪われて倒せるよん。騎士が持ってた白剣でも倒せるね」
「白剣?」
「魔粒子を一切含まない剣。それで斬りつけると魔獣の魔粒子を吸収して分解する。特別な剣だねー」
なるほどねー。で、魔粒子は人体にはどう影響してるんだろう。
「生き物は?まさか、血の代わりが魔粒子とかって事?」
月読命は顔の前で手をヒラヒラ振って笑った。
「いやいや、血は一緒かな。ここの星はさ、元々獣しかいなかったみたい。でも、テュルケットは人間の姿形が好きだったし、会話が出来る子供が欲しかったのさ。だから、神子として人間を作って獣と交わらせた。でも異種同志が結び合っても子供は成せないから魔粒子で人間と獣の遺伝子を結んだ。さっき居た騎士達もそう」
え?テュルケットマジか?獣と人間を交わらせたの?エグいな。
「でしょ?キモいよねー思考が!」
「だから。思考読むのやめて!丸裸でいる気分になるから!」
アハハハハと月読命は笑って腹を抱えた。
「で、もしかして!あの虎もそうなの?」
さっきの虎は全身毛で覆われて、鋭い牙に爪を持ってて、人間には見えなかった。
「まぁね。魔粒子で特徴を繋いでるから人間にも虎にもなれる。まぁ弊害も多いみたいだけど」
「弊害?」
なんだろう。満月になったら変身しちゃうとか、かな?
「まぁ、グレースちゃんに番が出来たら教えてもらいなよぉー!楽しみだね!ハーレム!」
いや、何それ。要らないよ、番とか。マイクとの結婚で満腹ですよ。でもなー。双葉に会う為にはこっちで結婚しないとだもんなー。
グレースは目を閉じて記憶を辿った。
ママって呼ぶ声をもう一度聴きたい。生まれてすぐ授乳したあの瞬間の奇跡をまた味わいたい。あぁ、会いたいなぁ。
「とりあえず、歩きは不便だろうからあれ使おう!」
月読命はグレースの懐にある玉を指で突いた。
「おぉ、忘れてた。」
グレースは懐から玉を取り出し、猫神から言われた様にキスをした。すると、玉から光が溢れて真っ赤な鳥が出てきた。
ピィーーーーーーーーー!
赤い鳥は一鳴きすると全身から焔を散らし、周囲を煌々と照らしていて、まるで天高く燃え上がるキャンプファイヤーの様で美しかったが、その炎の威力に都は戦き目を剥いている。
「………」
その鳥を指刺しながら、グレースは月読命に振り返り、口をアワアワさせたが、今までの情報過多も相まって、処理できずバタリと倒れてしまった。
なんかイギリスの片田舎みたいな風景……ここにヨークミンスターとかあったら勘弁フォックスウッドだな。良い景色だけど……これからどうすべきなのか。そもそもトラップとは何なのか?分からない事が多すぎて、思考が停止しそう。でも、考えないと。
ふぅっ……と息を吐いてグレースは川の岩陰に腰を下ろした。
「ねぇ、ツッキー。まだそこにいる?」
グレースはさっきまで左後に浮かんでいた月読命を探した。
「はいはーい!いるよぅー!どした?」
月読命はグレースの前に現れるとしゃがんでグレースの顔を見上げた。
「とりあえずさ、次すべきことと、最終目標教えて。ツッキーもずっとは居れないんでしょ?」
月読命は夜を統べる神だ。朝が来ると神殿に帰ると言う。
「そうだねー。ま、棚ぼたで予言崩したからこれからはやりやすいと思うけど」
「予言を崩した?」
グレースは前屈みになり顎を両手で支えて月読命に顔を近付けた。
「そ。本当はグレースちゃんが降り立ったあの場所、トラップ解除しても魔粒子濃度高くてさ、噴火ばりの魔粒子の噴出が起きるはずだったんだよね。でも騎士も集まってるし、グレースちゃん魔粒子ガンガン吸収するわで魔粒子から発生するはずの魔獣でなかったのよ。で、予言もはずれたわけ!ラッキーラッキー!」
魔粒子とな?なにそれ。予言外れて良かったのかな?
「簡単に言うと、この世界は魔粒子によって生かされてる」
ほぅ。生かされてるのか。
「この星自体が魔粒子の塊で、本来なら地上の魔粒子が薄くなると、その分ひっぱられるように地殻から魔粒子が湧き出してくる」
3へぇ。かな?
「自然は緑や青の魔粒子、大地は赤と黄の魔粒子。ってな具合に基盤となってんだよね」
「魔粒子過多になると腐って魔物になっちゃう。怖いよねー!」
の割には楽しそうだなツッキー。
「なら、この川の水も魔粒子で出来てるの?魔獣って倒せるの?」
「そうそう。魔粒子に水を構成する、地球で言えば水素と酸素みたいなのがくっついて水という形を作ってる。魔獣は周辺の魔粒子濃度下げてやると魔獣の魔粒子が奪われて倒せるよん。騎士が持ってた白剣でも倒せるね」
「白剣?」
「魔粒子を一切含まない剣。それで斬りつけると魔獣の魔粒子を吸収して分解する。特別な剣だねー」
なるほどねー。で、魔粒子は人体にはどう影響してるんだろう。
「生き物は?まさか、血の代わりが魔粒子とかって事?」
月読命は顔の前で手をヒラヒラ振って笑った。
「いやいや、血は一緒かな。ここの星はさ、元々獣しかいなかったみたい。でも、テュルケットは人間の姿形が好きだったし、会話が出来る子供が欲しかったのさ。だから、神子として人間を作って獣と交わらせた。でも異種同志が結び合っても子供は成せないから魔粒子で人間と獣の遺伝子を結んだ。さっき居た騎士達もそう」
え?テュルケットマジか?獣と人間を交わらせたの?エグいな。
「でしょ?キモいよねー思考が!」
「だから。思考読むのやめて!丸裸でいる気分になるから!」
アハハハハと月読命は笑って腹を抱えた。
「で、もしかして!あの虎もそうなの?」
さっきの虎は全身毛で覆われて、鋭い牙に爪を持ってて、人間には見えなかった。
「まぁね。魔粒子で特徴を繋いでるから人間にも虎にもなれる。まぁ弊害も多いみたいだけど」
「弊害?」
なんだろう。満月になったら変身しちゃうとか、かな?
「まぁ、グレースちゃんに番が出来たら教えてもらいなよぉー!楽しみだね!ハーレム!」
いや、何それ。要らないよ、番とか。マイクとの結婚で満腹ですよ。でもなー。双葉に会う為にはこっちで結婚しないとだもんなー。
グレースは目を閉じて記憶を辿った。
ママって呼ぶ声をもう一度聴きたい。生まれてすぐ授乳したあの瞬間の奇跡をまた味わいたい。あぁ、会いたいなぁ。
「とりあえず、歩きは不便だろうからあれ使おう!」
月読命はグレースの懐にある玉を指で突いた。
「おぉ、忘れてた。」
グレースは懐から玉を取り出し、猫神から言われた様にキスをした。すると、玉から光が溢れて真っ赤な鳥が出てきた。
ピィーーーーーーーーー!
赤い鳥は一鳴きすると全身から焔を散らし、周囲を煌々と照らしていて、まるで天高く燃え上がるキャンプファイヤーの様で美しかったが、その炎の威力に都は戦き目を剥いている。
「………」
その鳥を指刺しながら、グレースは月読命に振り返り、口をアワアワさせたが、今までの情報過多も相まって、処理できずバタリと倒れてしまった。
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