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第三章 魔法と神力と神聖儀式

5 それは夫婦仲を取り持つこと 1

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「ロアさん」

「はい、何でございましょうフロリア様」

「人生の中で黒歴史ってある?」

「黒……歴史?でございますか?」

「そう、思い出すだけで死にたくなる様な過去の事」

 無表情に一点を見つめるフロリアは、初めて食事を自室で1人取っていた。明け方に落ちた爆弾に今もまだ悶々としつつ、ハリィやアルバートと会う事を拒絶していた。

「ございますよ」

「どんな事?親に向かって女見せちゃったり、異性として好かれてるのかも?なんて勘違いを私じゃ無い私が盛大に誤爆したりした事よりも酷い?」

「……あ、いや……その」

「だよね。そうそう無いよねそんな事。は、ははっ、どんな顔してパパに会えば良いわけ?誰か殺してくんないかな。あ、死ねないんだったわ私。わーーーははははっ!あーー……マジ勘弁して欲しい」

「フロリア様、お気を確かに!」

 フロリアはフォークを持ったまま泣き笑いして、そのまま天井を見上げている。ロアとラナは溜息を吐くと、フロリアを残して部屋を後にした。

「ラナ殿、フロリア様はいつもあの様な情緒なのですか?」

「いえ、普段はとても快活で明るいお嬢様なのですよ?ただ、ご出自が複雑でらっしゃるので、抱えている問題も複雑なのです」

「はぁ」

 扉の外で、2人は呼ばれる迄はここで待機しようと扉の側に立った。ロアは騎士隊員が着ている様な詰襟の服にパンツ姿で、腰にはサーベルを携えていて、側仕えと言うよりも護衛に重きを置いている様だった。

「ロア、フロリア様に貴族の常識はありません。時に突飛な事をなさいますが、そこに悪意はありません事を知っておいて下さい」

「えぇ、昨日の件でそこは理解しています。ただ、あの女神の御姿からあの様にお変わりになると不安になりますね」

「不安?」

「時にあの様に成長なさるのでしたら、いつもお召し物を持参しておく必要がありますよね。ですが、フロリア様の御衣装は多くありませんし、貴族の子女が着るには些か地味な気が致しますが」

「あぁ、それもそうね。なにせカナムの姪御の服のお下がりですからね。そうだ!旦那様にお願いしてお買い物に出掛けるのは如何かしら!そうすればトルソン様との仲も戻るかもしれませんわ!」

「それは良きアイデアですね」

 そうと決まるとラナの行動は早かった。王城に今後の対応について協議する為に呼ばれていたアルバートとハリィに遣いを出して、メイヤードにフロリア用に幾らか予算を貰えないかと交渉した。

「お召し物を揃える?それはどちらのフロリア様の分です、ラナ」

「御二方分です。いつ何時お姿が変わるか私達にも分かりませんから、急に子供の姿になったり、大きくなったりすればお召し物もこの前の様にボロボロになりますわ。それに、出先にて変わる様な事があれば、どちらの替えも常に携帯しておく必要がありますよね」

「もちろん、それに異は無いのですが当家の予算を使うのはちょっと難しいかもしれませんよ?」

「何故ですか?」

「トルソン様です」

「はぁ」

 フェルダーン家が予算を組んだ所で、何故ハリィが問題となるのか、ラナは首を傾げた。

「自分の娘の衣装代を、他家が払うとなれば……分かりますよね?」

「あ、あー…。そうですね、失礼しました」

 プライドの問題なのね?まったく、それならばトルソン様は事前にその予算をメイヤードさんに預けておくべきでは?そんな事をラナは考えつつ、今から買い物に行きたいが何とか費用を工面出来ないかとメイヤードに聞いた。

「どうしますかねぇ?」

 メイヤードが溜息を吐いたその時だった。丁度エントランスから門番と共にダダフォンが現れて声を掛けた。

「なんだぁ?嬢ちゃんに何かあったのか?」

「ヴォルフ様⁉︎こ、これはお出迎えも致しませんで失礼致しました!ラナお迎えをしなさい」

「はいっ!」

「あーあー、いい、いい。ちょっと嬢ちゃんに会いに来ただけだからよ」

「フロリア様にですか?」

「あぁ。いるんだろ?」

「はい。ですが如何なさったのですか?突然」

「いや、話がしたくてよ」

 メイヤードとラナはダダフォンを連れてフロリアの部屋へ向かうとノックした。

「フロリア様、メイヤードでございます。ダダフォン様がお見えでございます」

「ダダフォンのおじちゃん?」

 ダダダっと駆け寄る音がして、カチャンとドアノブを回すと隙間からフロリアがひょっこり顔を出した。

「おー、元気か?」

「おじちゃん、どうしたの?フローにご用?」

「あぁ!暇ならよ、俺とちょっと出掛けねぇか?」

「えー。今からラナさんとロアさんと3人でデートなのに」

「そんなのいつでも行けるだろ?俺とは最後かもしんねぇからよ」

「どう言う事?」

「俺は聖騎士団を辞める事にしたんだ」

「は⁉︎」



 人混みの中、フロリアはダダフォンと手を繋いで歩いていた。しかし、何を話せば良いのか分からず、フロリアは黙ったままダダフォンを見ていた。

「視線が痛えよ。まぁ、この先の店にでも入って話でもするか」

「うん」

 高級店の立ち並ぶ道を2人は歩いていたが、誰も彼もがダダフォンを見ては手を振ったり声を掛けたりしていて、フロリアは彼が英雄というのは本当だったんだと、彼への評価を何段か上げた。

「さ、着いたぞ。俺のカミさんの店だ」

「え?結婚してたの?」

「何だよ。俺が結婚してちゃ悪いか?」

「いやぁ、何か奥さんとか想像出来ないんだけど」

「まぁな。一緒に暮らしてねぇし、あいつの体面の為に結んだ婚姻だ。あちらさんは結婚している自覚もねぇだろうよ」

「本気?さいてー」

「……そうだな。本当に」

「?」

 店の扉を開けると、そこは貴族を相手にしている店だからか、調度品が至る所にあって、煌びやかな店だった。

「いらっしゃいませ……だ、旦那様?」

 店の店員がダダフォンを見るなり駆け寄り声を掛けた。

「お久しぶりでございます旦那様!ご健勝そうで何よりでございます」

「ヤーン、久しぶりだな。なぁ、あいつはいるか?」

「オーナーですか?えぇ、いらっしゃいますよ」

「なら部屋を空けてくれねぇか?こいつと飯にしてぇんだけどよ」

 店員は、手を繋いでいるフロリアに目をやり、ダダフォンと交互に視線を彷徨わせた。そして、まさか隠し事か?そんな視線でダダフォンを見つつ、口をパクパクとさせていた。

「馬鹿野郎!そんなんじゃねぇよ。こいつは次期聖女だ」

「‼︎ か、畏まりました!急いで部屋へご案内致します!」

 2人は案内されて一番見晴らしの良い個室に通された。

「では、オーナーを呼んで参りますので、今暫くお待ち下さい」

「あぁ、頼んだ」

 それまで黙って彼等のやり取りを聞いていたフロリアは、テーブルに置かれたお茶請けの果物の砂糖漬けを手に取りパクリと食べた。

「何でここに連れてきたの?」

「まぁ、なんだ。もしできるなら、嬢ちゃんに祝福を与えてもらいてぇ奴がいてよ。ちょっと良い飯食いながら頼もうかなと」

「祝福?無理だよ」

「何でだよ。昨日はあんなにすげえのしてたじゃねーか」

「それはお兄ちゃん達がいたから出来たんであって、私1人だと無理だよ」

「なぁ、頼むよ。試すだけ……試してくれねぇか?」

「ならちゃんと話して。そしたらお兄ちゃん達か5形威けいいに力を借りれるかもしれないから」

 その言葉を聞いたダダフォンは、安堵した顔でフロリアの頭に手を乗せ撫でた。その顔は、いつもハリィが見せる様な優しい笑顔だった。

「ねぇ、本当。何があったの?」

「……俺はよ、自由にしてやりてぇ奴がいるんだよ」

「それって昔の恋人とか?」

「そんなんじゃねぇの!」

 ダダフォンはガブリと水を飲むと、ふぅっと息を吐いて窓の外を眺めた。物憂げなその表情に、フロリアは彼らしく無いなと茶化した。

「似合わないよ?そんな物憂げな顔」

「煩せぇな!まぁ……そうだな。どこから話すかな」

 ぽつりぽつりとダダフォンのおじちゃんは語った。元々彼は平民で、魔力の多さから、辺境に居を構えていたある魔道士が弟子にならないかと声を掛けたそうだ。そして彼は、その魔道士から魔法を習い、剣術まで教わったらしい。おじちゃんが15になると、もう教える物は無いと言い残し魔道士はその屋敷を捨てて何処かへ消えてしまった。まだ教えを請いたかった彼は、魔道士を探す旅に出た。

 1年探し回ったおじちゃんだったけれど、何処を探しても見当たらず、ついに隣国にまで足を伸ばしたらしい。そして丁度その頃、隣国ライネヘンでは魔人による被害が拡大していて、ダダフォンのおじちゃんが訪れたある村に魔神一歩手前の魔人が現れたと言う。

「で?討伐したの?」

「あぁ……」

「何でそんなに辛そうなの?」

「その魔人が師匠だったんだ」

「それは、また……ご愁傷様です」

「ご丁寧にどうも」

 ぺこりと互いに頭を下げた所で、ノックが響いた。

「おう、いいぞ、入ってくれ」

「えっ?話は?」

「また後でな」

 扉が開かれると、そこにはいかにもお貴族様といった、豪奢なドレスに身を包んだふくよかな女性が立っていた。

「ダダフォン!まったく、連絡の一つも寄越さないで何なの?」

「悪ぃなサーシャベル」

「何、貴方何があったの?怪我でもしたんじゃ無いでしょうね?見せなさい!」

いつもとは違う雰囲気のダダフォンに、サーシャベルと呼ばれた妻は近付き顔をその手で掴んだ。

「何でもないから!……まぁ、座れよ」

 ダダフォンの隣に座ったサーシャベルは、ダダフォンの顔から目を離さず、フロリアの存在にも気付いていない様であった。

「えーと……」

「悪いな嬢ちゃん。こいつがカミさんのサーシャベル。おい、この子が次期聖女で、フェリラーデ様だ」

その言葉に、何を言っているんですと言いながらフロリアに目をやったサーシャベルは目を見開いた。

「ウォーター……オパールの瞳?」

「あぁ。前聖女様の一人娘だ」

 その言葉に、サーシャベルはガタッと席を立つと一歩下がってカーテシーで挨拶をした。

「これはとんだ失礼を致しました。私、ダダフォン•ヴォルフの妻、サーシャベル•イヴェリー•ダダフォン伯爵夫人にございます。フェリラーデ神のお導きによる結を頂きました事、望外の喜びにございます」

 上位の者から返答があるまで頭を上げられない事を思い出したフロリアは、慌てて席を立つとぺこりと頭を下げて名前を言った。

「あっ、こ、こちらこそ、トルトレス神の導きにより、えっと、縁を結べました事、う、嬉しくおもいます!あと、ダダフォンのおじちゃんにはいつもお世話になっています!私はフロリア•トルソン、多分4歳です!」

 その返事に、サーシャベルはびっくりして顔を上げれずに居たが、ダダフォンが笑い出した為、はっとして頭を上げた。

「いつも主人がお世話になっております。フロリア様、どうぞお席へ」

「あ、はいっ!……おじちゃん、抱っこ」

「あー。へいへい、ほらよ」

 少し高めの椅子に、自分では座れずダダフォンに座らせて貰うと、フロリアはテーブルの上のお茶請けにまた手を伸ばした。

「おじちゃん、奥さん呼んでどうする?奥さんにも関係あるの?」

「あぁ、祝福をして欲しいのはカミさんになんだ」

「ダダフォン⁉︎」

 急に何を言い出すのかと、サーシャベルは目を見開いた。その顔は親が子を心配している様な表情で、フロリアはこんな大きな子供の面倒はさぞ大変かろうと頬杖をついた。

「で、さっきの師匠の話となんの関係があるの?」

「俺が討伐したのは、俺の師匠でカミさん……サーシャベルの兄だったんだ」

「ダダフォン⁉︎貴方何を急に言い出すの?まさかまだ引き摺っているの?」

 えーと。じゃあ何でダダフォンのおじちゃんはサーシャベルさんと結婚したのかな?

「俺は知らなかったんだ。師匠が隣国ライネヘンの筆頭魔道士長だって事……そして師匠に婚約したばかりの妹サーシャベルがいたのをよ」

「でも、お師匠さんはずっとリットールナの辺境に居たんでしょ?」

「あぁ。だが、常に転移魔法で国には帰っていたそうだ。そして俺を置いて消えた日が、サーシャベルの婚約式だったんだ」

「え?って事はサーシャベルさんはライネヘンの人なの?」

「あぁ。俺が2人の事を知ったのは、魔人化した師匠を殺して国に戻って5年後だったよ」

「で?」

 私はサーシャベルさんを見たけれど、サーシャベルさんは物凄く怒っていて、ダダフォンさんを今にも殺しそうな顔をしていた。大丈夫?ダダフォンのおじちゃん……。

「俺はそれから国に戻り平民の傭兵団に入って、聖戦や魔獣討伐に参加したんだ。そんでよ、15年前の魔人の大量討伐で武功を上げ英雄なんて持て囃されて気付けば聖騎士団に入っちまって……」

「話が見えないよ。何でサーシャベルさんに祝福が要るの?」

「俺が師匠を魔人化させちまってたんだ。俺は平民で、教会にも碌に行かないクソ野朗でよ。師匠が代わりに浄化してくれてたんだ……それを知らずに俺は呑気に身体の調子がいいとか言ってたんだぜ。笑えるよな……師匠が魔人化しちまったせいで、カミさんの婚約は流れちまってよ、俺は申し訳なくて。カミさんをこっちに呼んで結婚したんだ」

「……馬鹿なの?」

私は口が滑って本音を口にしてしまった。だけど、言ってしまった物は仕方ない。

「で?祝福ってなに?まさか離婚して新しい縁が結べる様に祝福して欲しいとか思ってるの?あぁっ!だからお役御免で退団?」

「その通りだよ。なんだよ、意外と賢いな」

「本当おじちゃん馬鹿!」

「全くその通りですわね、フロリア様」

 ニコリと私に微笑むサーシャベルさんの顔は、顔中に怒りマークが見えていて、あぁ、女心を分からない唐変木とはこう言う男を指すのかと思った。

「あのさぁ。何で今更そんな事をしようと思ったの?」

「昨日の嬢ちゃんの祝福を見ちまったらよ、俺は俺の身勝手さに気付いちまって。あぁ、俺はカミさんに女としての喜びなんて一つも与えてやれて無かったなって。婚約破棄されちまって、どの貴族にも相手にされねぇ状況を作った俺が責任取らなきゃと思ってたんだ」

「で?今更離婚して放り出すの?」

「そうじゃねーよ。」

頬杖を着いて遠くを見るダダフォンは振り返る。高嶺の花である貴族令嬢だったサーシャベルに、ダメ元で婚約を申し込んだ。全ての事情を話した上で、師匠の分まで幸せにすると誓ったが、いざ結婚してみるとサーシャベルを見る度に師匠の残像がチラついて、自分のした事の恐ろしさにサーシャベルと向き合えなくなっていった。決して彼女が嫌いな訳ではなく、いつも支え導いてくれる彼女はダダフォンにとって無くてはならない存在だったが、もうこれ以上自分なんて男に縛り付けて置く事は出来なかった。

「カミさんは頭が切れるし、人望も厚い。よく見りゃ愛嬌のある顔してるし……もっと良い男がいる筈なんだ」

 その言葉を聞いたサーシャベルは立ち上がるとダダフォンの座る椅子の足置きにヒールに引っ掛けて蹴り上げた。

「「⁉︎」」

「馬鹿だ馬鹿だと思ってましたけど、ここまでとは思いませんでしたわ!」

 確かに。どう見てもサーシャベルさんはダダフォンのおじちゃんの事好きだよね?すっごい心配してるの分かるし。これ気付かないとか、良く騎士団でいられたね?びっくり。

「私がいつ貴方との結婚に不満があると言いまして?」

「言わなくても分かるだろ。お前は家にも帰ってこねぇし、いつもここに居るだろ。それに、俺の顔を見りゃいつも眉間に皺寄せてよ、俺が憎いって顔に書いてあんだよ」

「おじちゃん、多分それ心配してるお顔なんじゃない?それに、サーシャベルさんも、同じ様に思ってたんじゃないの?自分を見れば師匠さんの事思い出すんじゃないかって」

「んな馬鹿……な……」

 フロリアの言葉に、サーシャベルは眉間に皺を寄せながら涙目でダダフォンに背を向けた。微かに震えるその背中を見たダダフォンは驚いている。

「そう、なのか?サーシャ」

「言われませんと気付きませんの⁉︎」

「そりゃ、そう、だろ。お前だって、その。なんだ、」

 はいはい。ご馳走様。腹を割って話せば済んだのにね。1人で暴走してりゃ世話ないよ。結局、ダダフォンさんは奥さんにベタ惚れだし、サーシャベルさんもダダフォンさんにベタ惚れなのね?なーんで今更離婚でどうにかなると思ったのかね?お互いその歳で独り身になりゃ次の相手なんてそうそう見つかんないでしょうよ。だったら互いに大事にすりゃあいいのにね!素直が一番よ?素直が。……そう、素直が一番なんだ。

「よーし!分かった!この拗れた結、私がばーーーんと解決して差し上げましょう!」

「いやっ、嬢ちゃん、そのっ。もう、いいっつうか……」

ダダフォンはサーシャベルの腕を掴んだままフロリアを見た。しかし、フロリアは椅子の上に立って居て、手を上に上げていた。

「おいっ!」

「私は次期フェリラーデ。トルトレスとクローヴェルの妹にして5形威けいいと仲良し!私が命じる!ダダフォンとサーシャベルの結の拗れを解き、あるべき姿に結よ戻れ!祝福!」

バーーーンッ!どやーーーー!

「「?」」

「あれ?」

 確かに、お兄ちゃん達やえんちゃんが居た時は頭に呪文の決まり文句みたいな言葉が浮かんでいて、それを言い換えたりしてなぞっていた。今日はそれっぽくやれば何とかなると思ったんだけど。

「んーー!どやーー!どやーー!あーーん!ちゃんと2人を祝福したいのに!」

「「ぷっ」」

「‼︎」

 笑った!笑ったなっ?酷いっ!こんなに2人を祝福しようとしてるのにっ!

「ひどいっ!2人が向き合えるよ様に結を直してあげようとしてるのにっ!」


 ダダフォンはフロリアを抱き上げると、その顔を見上げ笑う。祝福など得なくともサーシャベルの心の内に自分が居たという事が分かり、ダダフォンは何とも言えないくすぐったさを感じていた。そしてその気付きのきっかけを得られたのはフロリアのお陰だと抱きしめた。

「いいや、ちゃんと貰えた。向き合うさ、これから一生かけて」

「やだー!ちゃんと祝福する!もっかい!もっかいさせて!」

「くくっ、お前、負けず嫌いだなぁ」

「フロリア様、宜しければお食事でもなさいません事?当店の味はなかなかですのよ。お腹が満たされれば、その御力もきっと発揮出来ますわ」

 ぐぬぬぬっ!2人して馬鹿にしてっ!やってやるったらやってやるんだから!

















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