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第一章 転生と始まり

12 それは絆を繋ぐこと 〜ハリィ•トルソンへの罰

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「え、ちょっと待って……これってリアルタイムじゃないの?」

 まさか、ずっとこんなRPGの王道ゲームのアレみたいな魔法を何時間も連発していたとか無いよね?嘘だと言って!


「聖、ここに来て直ぐに言ったと思うが、この天上界は全ての時間と言う概念の上に成り立ってはいない。ある場所ではここでの1刻が一生であったり、逆に数秒にも満たぬ世界もある。故に其方はここで既に数ヶ月、数年分は成長している可能性がある」

「ならっ!リットールナに戻ったらどうなってる?」

「そうよな。難しいのは其方の神体しんたいがオーウェに残るフェリラーデの魔力を使って構成されておるという点だ。肉体の時間はオーウェの時を刻み、魔力や神魂しんこんはこちらの時間で成長しておる。その成長に体もいくらか引っ張られてしっかりとしてきたからな。だがどうなるか分からんな。元のサイズに戻っておるかも知れぬしな。トルトレス、こちらは下界より早いのか?」

「さぁな。時間という概念でこの世界と下界を比べた事も無いからな。こちらに戻ってどの位経ったのかなど考えてもおらんかった」

「私的にはここに来てまだ2時間位な体感なんだけど、あっちじゃもう何時間も経っているって事はリットールナの方が時の進みが速いって事でしょう?」

「そうかもしれんな」

 なんってザルなんだ!少なくとも主神なんでしょうがよ!こんなんで良く朝とか夜を司ってるな。大丈夫かな?

「あぁっ!そんな事より!早く帰らなきゃパパさん死んじゃうよ!」

「「はぁっっ」」

 溜息深っ‼︎いや、お互い一緒に居るなら寂しく無いでしょ?何でこんなに仲良いのに認めないかな。困ったお兄ちゃん達だよ、全く。

「ねぇ、こうさ。気軽に連絡取り合える方法無いの?それが出来れば寂しく無いよね?私あんな祈祷とか儀式やるの無理なんだけど」

「ならばそれを使え」

トルトレスはイナバを指さした後、手を合わせその手の隙間に息をふっと吹きかけた。彼の手の中には、ホログラムの様な小さな宇宙が出来ていた。そして、それを聖のドレスのリボンに括り付けられた兎のぬいぐるみに押し付ける。

「ちょっ!イナバさんに何したの!パパさんからのプレゼントだから大事にしたいのに!」

「彼奴の不愉快な魔力など其方に必要ない。我の力を注いでやりたいがな、どうも相性が悪い。トルトレスの力で悪いが我慢してくれ……其方と離れる我々の辛さなど、分からぬだろうがな」

 出たよ。ヤンデレ。ハイハイ、拗ねない、オーラ出さない!睨まない!

「分かってるよ。だって2人はお兄ちゃんなんでしょ?家族と離れるのが辛く無い訳ないじゃん。実際この体の元を辿れば2人の神体しんたいと一緒な訳だし。なら家族でしょ?家族なら、離れた場所に居ても絶対忘れないし、お互い嫌な事をしなければずっと仲良くいられる……でしょ?」

そう、私の嫌がる事をしなければ!天上界からパパさんに嫌がらせでもした日にはマジぶっ飛ばす。

「「……そうだな」」

何よその顔。スンとしちゃって……まさか考えてたな。

「本当にやめてよね!パパさんやアルバートさんも家族なんだから!2人が傷付いたら私、泣いちゃうよ?2人を呪い続けるからね」

「分かった、分かった。ほら、さっさと行くぞ。そろそろあの者の命が危ういからな」

そうでした!

「早く行こっ‼︎」




 もう何時間、ハリィはそこで立ち続けているだろうか。
俺は本当にこの親友を見誤っていた。何処かで、いざとなったら陛下にフロリアを差し出し、何とか辞職程度で事を納めようと算段していたのに。当然、己の命とは引き換えれないのだからな。こいつも諦めもするだろうと思っていた。だが、ここまでするとは。

親友の姿に、俺は思い返す。

 フロリアを見つけたあの日から、フロリアの痕跡を消す為に、俺は密かにあの村の生き残りを他国へ逃したり、屋敷勤めの者の記憶を混濁させ辺境領地に勤め場所を変えたりした。中にはその経緯で命を落とした者も居て、それは俺の従者の1人だった。仕方が無いと割り切ってはいたが、何処かでどうして俺がここまでしなくてはならないのか。そんな理不尽さに苛立っていた。
 
 だが、毎日我が子の様に聖を、フロリアを可愛がるハリィを間近で見ていたせいか、俺は……思った。これはこの友人の幸せに繋がる為の悲劇だったのではないか。そう思えるなんて……不思議な物だ。
 
 俺は必死に力を解放するハリィを見ていた。本来なら今すぐに止めるべきなのだろう、だがそれを俺は出来ずにいる。だってそうだろう?こいつがその命を捨ててまでフロリアを取り戻そうとしているのだから、俺が止められる筈も無い。しかし、このまま見過ごせもしない。

「っ!クソっ!ハリィ、代われ!」

「嫌だ‼︎これは俺の娘の為なんだ!他の誰かにその役目は譲らない!」

「馬鹿野郎!その娘が戻って来た時にお前が死んでいて何の意味がある!代われ!」

 俺の聖魔力の質は聖女には劣るが、それを除けばこの国随一だと自負している。ならば応えてくれ!

「天に座します我等が主人あるじよ!一点の曇り無き心で乞い願う!今一度、我等の元にフロリアを返し賜え‼︎」

 生まれ持ってで無くては持つ事ができない聖魔力は、肉体と精神の鍛錬だけでは鍛えられない。神への絶対的な忠誠と信仰心、自己犠牲による痛みが力を強くし、行使をスムーズにする。ならば友の為、訳も分からず産み落とされた哀れな魂の為に俺は俺を贄にする。


ドンッドドンッ!ドンッドドドンッ‼︎

錫杖の柄で床に叩き、一定のリズムで音を鳴らすアルバート。大きく息を吸い込むと、腹に力を入れ顎を引き、噛み締めた歯の隙間から音と共に聖魔力を吐き出した。

「アーフェィヨゥオゥーアィ ドゥォウドゥォウ グゥエイニィ」

 何とも言えぬ、喉の奥を鳴らす様な、低い音の狭間に生まれた様な声で呪文を唱え始めた。ぐったりと床に倒れ込んでいたハリィはその呪文に目を見開き手を伸ばす。

「アッ……アルッ、アルバート!」

「ハリィ、後は頼むぞ。師団長として国を守れ」

 最後の仕上げの魔力を放てば、俺はもう意識を保てないだろう。元々ギリギリの状態だったんだ。悪くて植物状態、良くて即死だ。後者を頼むぞ。神よ……。


『やめてーーーー!』

 とてつもない怒号が屋敷を包む。体が魔力に押しつぶされそうになり、誰もが膝を着き歯を食いしばっていた。

『愚か者よ。其方の命などで我等の心痛を癒せると?それは如何許いかばかりかの?』

 チラチラと、七色の光の粒が舞い降る空間から、天井の高さ程のトルトレスとクローヴェルが姿を現した。そしてささっと手を払う。すると魔力の圧はスっと消え、誰もが「はっ」っと息を吐いた。

「パパっ!アルバートさん!」

 二柱の足元から、以前よりほんの少しだけ体つきがしっかりしたフロリアが飛び出してきて、倒れ込む2人に飛びついた。

 何が起きたのか誰にも分からなかった。急に現れた巨大な2柱の神に、居なくなった筈の幼いフロリアがそこにいる。そして、満身創痍のハリィとアルバートにべたりとくっついていた。

 フロリアを見つめたまま、呆然としているハリィ。キラキラと光を身に纏うフロリアの目からは大粒の涙が頬を伝いハリィの顔に落ちてゆく。混乱した頭で、ハリィは震える手でその頬に触れ、ふにゃりとした柔らかさに、確かにここにフロリアが居るのだと実感した。

「あぁっ!あぁぁぁっ!フロリア、ヒジリィ‼︎」

 殆ど力が入らない腕で、フロリアを抱きしめその頭に、頬に、額にハリィは何度もキスをした。そして幻ではないのか?と囁いた。

「パパ、ごめんなさい!ごめんなざぃ!ごめんなざぃぃ」

「うぁぁぁっあぁっ!フ、フロ…リア、俺のっ唯一フェリラーデ


 抱き合う2人を見下ろすトルトレスとクローヴェルは、感動的な再会に苦々しい顔をしつつ、ドス黒いオーラを垂れ流したが、何も言わずに手のひらに乗せたイナバと聖が名付けたぬいぐるみを投げ落とした。

「……こ、これはハリィがやったぬいぐるみ、なのか?」
  
 アルバートはそれを拾い上げると、フロリアの前に差し出した。しかし、真っ白だった筈の因幡の白兎はその色を黄金色に変え、目は赤い魔石に変わっていた。

「へ?」

「わ、私が……差し上げたのは。白い兎では……無かったでしょうか」

「何これ‼︎こんな兎やだっ!ふわふわの毛も無くなって質感もなんかビニール貼り付けたみたいじゃん……さっきのあれのせい?うそぉ。やめてよぉ」

フロリア?お前……なんか流暢に話せてないか?」

 そう言われ、フロリアは口をぱかりと開き舌をぐるぐると回してみる。そして「あえいうえおあお」と何度か言って見せた。

「うん、なんかお口良くまめる!」

「「まめる?」」

 ん?まめるよ。言わない?まめる。標準語だと思ってたよ。

「うん。まめる!回るって事!ペラペラだぁ!」

「あ、あぁ。良く分からんが、これでガキっぽさが減るな」

 はぁっと息を吐き、アルバートはフロリアの頭をポンと力なく撫でた。

「それにしても何してくれたの?私の真っ白なイナバさんが……クレーンゲームの景品みたいになってる……可愛くない」

ぶうっと口を尖らせ、聖はそのゴテゴテ、テカテカとした元イナバを嫌そうに摘み上げた。

「我の神力しんりょくが篭っておるからだ。その瞳の色はレネベントが力を練った物だ。あらゆる攻撃も意味を為さぬ」

「えー……せめて元の姿に魔法で戻せない?」

「その程度の事、其方のパパとやらにさせればよかろう」

「フロリア……フロリア様。私が致しますよ」

 我に返り、いつもの柔和で全ての感情を覆い尽くす様な笑みを見せるハリィ。フロリアはその顔をじっと見つめ、すこしカサついた頬を両手で包むと笑った。

「ふふっ、パパの嘘つき」

「え?」

「本当はもっとギラギラして神様もびっくりの凶悪な顔してるんでしょ?」

「……はっ……あ、」

「私は本当の顔の方が好きだよ?だってすっごく格好良かったんだもん!今日はいつもと違う隊服でごちそうさまってかんじ!」

「えぇっ?そ、その……」

「後ね、フロリア様よりフロリアの方がいいし、フローだともっと嬉しいかも!ヒジリィはやっぱり発音おかしいから、無理しなくていいよ」

 ハリィはフロリアの肩に頬を預けると、ボロボロと溢れる涙を隠さず嗚咽を上げた。

「パパ泣いてるの?」

「はい、そうです。そうなんです……嬉しくて、幸せで、愛しくて」

「別にいいんだ。誰だって人に良くみられたいし、ぜんぶさらけ出していないからって騙されたとか、げんめつしたって言う人ほど嘘つきだから。でも、フローはパパの隠したいお顔の方が好みなんだ!氷の王子様って感じでさ」

 
 見せたく無かった。
誰に嫌われようと、非難されても構わなかった。
何故なら、既に砕けた心にこれ以上の傷は付きようが無いからだ。
だが貴女が、フローが私の前に現れてからというもの、久しく忘れていた恐怖という感情を思い出したんだ。
私の本性を知ったなら、見られたなら。きっと恐れて近寄ってはくれないだろう、そう私は恐怖した。しかし、フローはこんな私を好きだと、格好良いと言ってくれた。親にも、兄弟にも恐れられ忌み嫌われた私の素顔を見たのに。

『フローだけだ』

 この言葉以外で、私の中に渦巻く感情を言い表せないのは私が弱くなったせいか?それでも良い、私はこの子の側で生きて行く。

「ふふ、私もフローがどんなにお転婆さんでも大好きですよ」

「ありがとう!パパ大好き!」

「もう、2度と……黙って側を離れないで下さい。こんな恐怖は1度で十分です」

 止まらない涙、フロリアの服はじっとりとハリィの涙で濡れ、ハリィの緑の隊服もフロリアの涙と鼻水と涎でびちゃびちゃだった。



「「もうそろそろよいか」」

良い加減にしろと言わんばかりの顔をしたトルトレスとクローヴェル。
2柱はフロリアの頭を大きな指先でつつくと、幾つかの注意をし始めた。

「良いか聖、其方の体は彼方の世界で成長した神力しんりょく神体にくたいに合っておらぬ。少しの感情の起伏で暴走する。常に心穏やかに、力の制御の修練を怠るな。それと……」

「?」

「「聖の為とは言え、其方のパパとやらは随分な聖願をしたものだ」」

「こらぁっ‼︎それは私が悪かったからでしょ!黙って行った私が悪いの!それに、誘拐したの2人じゃん!」

「「ゆっ、誘拐……はぁ。そうであったとしても、主神たる我等を侮辱した罪は許されぬ」」

 ハリィはその言葉に、体を起こすと跪いた。そして頭を垂れたまま「罰は何なりと」と覚悟を決めている。しかし、納得できないフロリアは両手を広げハリィの前に立った。

「お兄ちゃん達!やめてよ!」

 【お兄ちゃん】その言葉に、周囲の人間は目を見開きゴクリと息を飲む。その音が静かなホールに、やけに大きく響いた。そしてハリィやアルバートも黙ってはいたが、目をぐっと瞑りそれ以上は何も言ってくれるなと呆れている。言い合うフロリア達に、次第に2人はきっとフロリアの事だ、神をも篭絡したのだろう、そう思う事でついてはいけない状況を、全ての思考を手放したのだった。

「「聖よ、我等主神がこの世の絶対なのだ。異論は認めぬ、さもなくば秩序は乱れ争いの火種となる」」

 どういう事?ちょっと神様に文句言っただけで戦争が起こる?そんな訳ないじゃん!

「「この世界には、簡単に命のやり取りを可能とする魔力があるのだ。魔力の行使をどうやって制限する?法や刑罰でそれをどこまで管理できると言うのだ。聖、お前ならば可能か?今この場に居る全ての者が一斉に魔力を使用したとして、それを抑え込む術が其方にはあるか?それを可能とする絶対的な神力、それを行使する為には例外を作る事は許されぬ」」

ぐぬぬぬ!出来ないって分かっててそういう質問する人って居るよね?本当にムカつくわぁ~!
でも、そうなんだろうな。誰も対抗する事も、抵抗する事も出来ない存在……それは争いの完璧なる抑止力だ。

「でもっ!大袈裟!ジャ●に訴えるよ!」

 また訳の分からぬ事を。そうトルトレスは言いながら、きつい口調で話を続けた。

「「我等神が何故永遠とも言える長き時を、命の為に存在し続けるのか。其方は天上界で知った筈だ」」

え?知らないよ?人間に祈れ、信仰しろってウザ絡みするのって単に寂しいからじゃなかったの?んんっ何か私見落としてた?

「えと、なんだっけ?」

「「……はぁ、困った妹だ。輪廻転生を経て、更なる高みを目指し命を繋ぐ為、そして我らが与えし星を守る為だ。またあの星々の様な最期を見たいか?」」

 あ、あれか!!……確かに信仰や祈りが無ければそうなるかもしれないけれど、パパさんの怒りは尤もで、罰を与える様な事でもないでしょう?

「ううん、でも」

「「でも、ではない。その者が我が罰を免れた。それがどういう意味を持つか分からぬか?」」

「さぁ?家族なんだし、家族間の喧嘩や言い合いはどこにでもあるでしょう?それにいちいち罰与えてたら一家全滅だよぉ」

 【お兄ちゃん】に続いて【家族】という単語が出て来た事で、ハリィとアルバートはいよいよ体から力が抜けて、カレーナは気を失った。しかし、フロリアと2柱の問答は続いて行く。

「「馬鹿者!神が神の定めた戒律を破って如何する?この者が罪を逃れた。それは神は存在しない、罰を与える存在は居ないと言っているも等しいとは思わぬか?人は容易く己を甘やかす。その結果の後始末すら己で出来ぬと言うのにだ」」

 天上界でも見なかった、きつい言葉に、口調に、表情にフロリアは自分が間違っていたと理解したが、素直になれず、唇を突き出しもじもじと上目遣いで2柱を見上げた。

「「うっ」」

 フロリアにその顔をされれば、2柱はそれ以上強くは出られなかった。そしてそれを察したハリィはフロリアの体を抱き寄せ向き合い言葉を掛ける。

「……フロー。大丈夫です、私が罰を受けるのは当然の事なのです。しかし、その罰すら私は嬉しいのです」

「パパ?」

「フローを取り戻す為、死ぬことも構わぬと。そう思えた己が誇らしいのだから」

 はぁ。どうしてこうもこの世界の人は頑なで曲げられないのだろう?もっと自由な思考で善悪を多方向から見れたらいいのにと思うのだけど。まぁ、それがこの世界の当たり前で……仕方が無いんでしょ?譲るしかないのかな。パパさんの私への愛情なのだろうと思う事にしよう。

「どんな罰にするの?」

「「聖、其方に降りかかるであろう全ての厄災の身代わりとなってもらう」」

「はぁっ!?ちょっと、ふざけないでよっ!そんな事私が望むわけないじゃない!お祈りの回数を増やすとか、お百度参りするとか、もっとあるでしょう?それに、私の神体からだは何のためにあるの?朽ちないんでしょう?だったらそんな厄災を引き受ける必要……」

 そう、私に厄災の意味はない。だが、罰を下したという事実が重要なんだ。
途端にこのおバカ兄弟が頼もしくて、優しい神様に見えて来たよ!慈悲深いハカナームトに祝福を!
そんなキラキラとした眼差しを向けるフロリアに、2柱はコホンと咳をすると真剣な眼差しでハリィを見下ろした。

「「汝はハリィと言ったか?」」

「はい。ハリィ・トルソンと申します」

「其方と聖の魂を繋ぐ。如何なる時も全ての厄災をその身に受ける事を、受け入れるか」

 ハリィは満面の笑みで、2柱の足元に近寄ると足の甲に口付けをする。そして「全ての罰を受け入れます」と言った。

「「ならば其方の髪と聖の髪を切り落とし、結び固めよ」」

はっ?髪、切っちゃうの?この綺麗な髪を?ブリーチでも、カラーリングでも出せない程の綺麗なキラキラ光る私の自慢の髪を⁉︎うぇぇん!

「フロー、許してくれますか?」

うぅっ。仕方ないなぁ。

「いいよ。パパとお揃いの髪型にしようかな」

「ふふ。それでは男の子と間違えられてしまいます。駄目です」

 おずおずと、近付いてきたラナはその手にナイフを持っていた。流石にハサミをこの場には持ってきてはいないかと、フロリアはコクリと頷いた。
 ハリィは片膝を着き、両手を高く持ち上げ2人の髪を切り落とし、固く結んだ物を差し出した。

「「我に捧げよ、今この瞬間よりハリィ・トルソンの魂は聖の盾となる」」

それは手のひらの上で燃え上がり、ハリィの心臓を何かが締め付ける。
「うっ」とハリィは唸ったが、それを耐え抜き微笑んだ。

「「罰は下された。其方を聖の仮初の守護者として認める。だが、次はこの様な甘い罰では済まぬと心得よ」」

「有難き幸せにございます!」





あくまでこんなイメージ。です。

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