28 / 235
太陽の国 獣語
クロウの初恋(5)
しおりを挟む
「なぁ、ナナセ!クラッカーってなんだ!?」
走り出すナナセの隣に追いついた、斥候専門のサポート冒険者パランが質問した。その問いに赤面しながらナナセは「忘れて。緊張を解したかっただけ」そう言って加速した。
パランは頭を傾げながら「よくわかんねぇ奴だな、ナナセは」そう笑ってナナセを追い越しダンジョンの騎士隊に、隊長からの連絡を伝えに行く為駆けて行った。
「ファロと合流まで時間があるな…トラップ仕掛けとくか」
ロースの公園、街門側のゲート上部に闇属性攻撃の刻印を施すと、ナナセはその下にも刻印を刻んだ。そして上下の刻印が繋がると、その中にブラックホールを生み出した。すると下の刻印がブラックホールを飲み込み、上の刻印から吐き出され、また下の刻印に沈む。この連続したアクションに制約の刻印を施した。
「よし、これでクエスト登録した冒険者と騎士隊以外は入れないな。ついでにゴブリンは数が多いだろうからブラックホールに飲み込ませよう」
トラップの設置を終えたナナセは、街門が見渡せる公園のベンチに座り、刀にポーションと聖水を混ぜた対アンデッド用のアイテムを吸わせた。不思議とこの世界に共に来たであろう刀は刃毀れ一つせず、魔物の血を吸うと切れ味が更に鋭くなる。妖刀の類いだろうか?何度もこの刀には助けられてきた。今回も頼むぞ…愛刀。
ふぅっと息を吐いたナナセにファロが駆け寄り声を掛けた。
「ナナセっ!話は聞いた。試すのか?あれを」
「あぁ、実践だ」
「バートさんを助けないと、クロウの相手が大変になるからね」
「違いない」
ナナセは微笑んで、漆黒の美しい獣を見上げた。逞しい肉体に光りが集まる。その姿がなによりも好きだ…この美しい獣が私の番だなんて、私は幸せ者だ。手を伸ばし、ファロの腕を掴んでナナセは口付けをした。
ファロもそれに応えるように口を開いて、ナナセの舌を舐め上げ吸い付いた。
「帰ったら、二人目を作るぞ」
「おや、クロウの相手では役不足か?そうだな、クロウにも弟が必要かも知れないね。あぁ、思い出すだけでここがファロを思い出すよ」
下腹を摩り、ナナセは闘い前の昂りに欲を孕んだ眼差しをファロに向けた。
「あぁ、ここに思う存分飲ませてやる。俺も、久々にナナセを喰いたい…いいな?今夜だ、だからさっさと終わらせるぞ」
「あぁ、待ち切れない」
二人は肩を抱き合いダンジョンへと向かう。そこには交戦中に負傷した騎士隊がギルマスの治療を受けていた。
「おい、闘う前からおっ始める気じゃないだろうな?見えてたぞ!」
「あぁ、今夜の楽しみの約束をしたところだ」
「ファロ‼︎ そういう事は言わなくていいんだ!」
「ははっ!頼もしいな、そろそろ隊が引き上げてくるぞ」
「「いくか!」」
ナナセとファロは警戒態勢を取りながら後退する騎士隊を見定め、タイミングを測った。
「ファロ、私が先行する。10秒後から頼むよ」
「分かった。行け‼︎」
その声に、力を入れた左足をバネに飛び出したナナセは、音も立てずに騎士隊の合間を縫って、ゴブリンを斬り崩し騎士隊の逃げ道を確保してゆく。その姿に騎士隊は目を奪われた。ナナセの姿は目に捉えられずとも、視界に残る閃光がナナセの軌道だと分かったからだ。
「す、すごい…なん、だ…この速さは…」
その言葉が聞こえる前に、ファロが続き大剣でゴブリンの残骸と共にナナセの攻撃をすり抜け出したゴブリンを一太刀の内に押し返した。風圧で騎士隊は後方入り口に吹き飛ばされ、ゴブリンはダンジョンへと吹き飛ばされた。
ナナセはその風圧に背中を預け、更に奥へと飛ぶように進んだ。
「ドーゼム殿…これがS+ですか…」
「あぁ、Sがチームやパーティを組むと自動的にS+になるが、あいつらは相性が良い。だからSS以上の力を発揮する。魔獣からしたら厄介この上ないチームだ」
「我が隊に欲しい逸材です」
「コブ付きじゃあな、騎士隊の仕事は無理だろうな」
「はぁ、残念この上ない」
「指導教官として招聘したらどうだ?」
「‼︎ それは名案です。この闘いが終われば掛け合ってみましょう!」
「ははっ!頑張れよ?あいつらを落とすのは大変だぞ?なんせ欲がないからなぁ」
「成程、しかし落としがいがある」
ニヤリと笑うタルドに、ドーゼムはやれやれと笑いながら治療を続けた。
ナナセはゴブリン達の間を縫うよう進み、ゴブリンキングと対峙していた。間合いを詰めすぎないように距離を測り、背後から飛びついてきたゴブリンをかわしながらゴブリンキングの動きを見ている。
「ふぅん、あくまでも座して待つつもりかい?」
ナナセは左足を大きく後ろに下げ、縦に身体を開いて振りかぶると、重心を身体の中心にして斜めに円を描く様に、刀を振り下ろし斬撃を繰り出した。その斬撃に、右足の腱を斬られたゴブリンキングは咆哮を上げ、ダンジョンの壁にぶつかりながら突撃する。そしてナナセはゴブリンキングの足の間から背後に回り更に腱を切る。
「ナナセ!雷撃で足留だ!」
返事をする前にナナセは飛び上がり、脊椎に斬りかかり雷撃を食らわせた。プスプスと煙を吐いてゴブリンキングは硬直している。その姿を確認すると、慌てたゴブリン達がダンジョン入り口へ逃げる様に飛び出して行った。
そして後方入り口から、騎士隊に攻撃を受けたゴブリンの断末魔がダンジョンに響き渡る。
「よし、進もう」
「あぁ、アンデッドは無視するか?」
「どうだろう?数次第かな…多ければ崩すしかないよね」
「聖水ポーションは持ってきているか?」
ナナセはマジックバックから聖水ポーションを出すと、ファロに渡して、自身も頭から聖水ポーションを被った。
「私、アンデッド系苦手なんだ。あの腐敗感がね」
「なら俺がやろう」
「おぉ、頼もしい」
ナナセはファロの腰に腕を回し、デートでもするかの様に二人は歩みを進める。ダンジョン入り口からその様子を偵察していた、隣国との闘いから先行して戻った赤の騎士隊、隊長のロイが二人の姿を呆然と見つめた。
「…欲しいな、あの男」
そして、意識を取り戻したゴブリンキングが咆哮を上げると同時にロイはロングソードを鞘から抜いて、放たれた焔でゴブリンキングを丸焦げにした。
「美しい光景を穢した罪は重いぞ」
倒れたゴブリンキングの首を一刀両断し、その真っ直ぐに伸びた金髪を後ろに流すと、燃える赤い瞳でロイは二人の背中を見つめた。
走り出すナナセの隣に追いついた、斥候専門のサポート冒険者パランが質問した。その問いに赤面しながらナナセは「忘れて。緊張を解したかっただけ」そう言って加速した。
パランは頭を傾げながら「よくわかんねぇ奴だな、ナナセは」そう笑ってナナセを追い越しダンジョンの騎士隊に、隊長からの連絡を伝えに行く為駆けて行った。
「ファロと合流まで時間があるな…トラップ仕掛けとくか」
ロースの公園、街門側のゲート上部に闇属性攻撃の刻印を施すと、ナナセはその下にも刻印を刻んだ。そして上下の刻印が繋がると、その中にブラックホールを生み出した。すると下の刻印がブラックホールを飲み込み、上の刻印から吐き出され、また下の刻印に沈む。この連続したアクションに制約の刻印を施した。
「よし、これでクエスト登録した冒険者と騎士隊以外は入れないな。ついでにゴブリンは数が多いだろうからブラックホールに飲み込ませよう」
トラップの設置を終えたナナセは、街門が見渡せる公園のベンチに座り、刀にポーションと聖水を混ぜた対アンデッド用のアイテムを吸わせた。不思議とこの世界に共に来たであろう刀は刃毀れ一つせず、魔物の血を吸うと切れ味が更に鋭くなる。妖刀の類いだろうか?何度もこの刀には助けられてきた。今回も頼むぞ…愛刀。
ふぅっと息を吐いたナナセにファロが駆け寄り声を掛けた。
「ナナセっ!話は聞いた。試すのか?あれを」
「あぁ、実践だ」
「バートさんを助けないと、クロウの相手が大変になるからね」
「違いない」
ナナセは微笑んで、漆黒の美しい獣を見上げた。逞しい肉体に光りが集まる。その姿がなによりも好きだ…この美しい獣が私の番だなんて、私は幸せ者だ。手を伸ばし、ファロの腕を掴んでナナセは口付けをした。
ファロもそれに応えるように口を開いて、ナナセの舌を舐め上げ吸い付いた。
「帰ったら、二人目を作るぞ」
「おや、クロウの相手では役不足か?そうだな、クロウにも弟が必要かも知れないね。あぁ、思い出すだけでここがファロを思い出すよ」
下腹を摩り、ナナセは闘い前の昂りに欲を孕んだ眼差しをファロに向けた。
「あぁ、ここに思う存分飲ませてやる。俺も、久々にナナセを喰いたい…いいな?今夜だ、だからさっさと終わらせるぞ」
「あぁ、待ち切れない」
二人は肩を抱き合いダンジョンへと向かう。そこには交戦中に負傷した騎士隊がギルマスの治療を受けていた。
「おい、闘う前からおっ始める気じゃないだろうな?見えてたぞ!」
「あぁ、今夜の楽しみの約束をしたところだ」
「ファロ‼︎ そういう事は言わなくていいんだ!」
「ははっ!頼もしいな、そろそろ隊が引き上げてくるぞ」
「「いくか!」」
ナナセとファロは警戒態勢を取りながら後退する騎士隊を見定め、タイミングを測った。
「ファロ、私が先行する。10秒後から頼むよ」
「分かった。行け‼︎」
その声に、力を入れた左足をバネに飛び出したナナセは、音も立てずに騎士隊の合間を縫って、ゴブリンを斬り崩し騎士隊の逃げ道を確保してゆく。その姿に騎士隊は目を奪われた。ナナセの姿は目に捉えられずとも、視界に残る閃光がナナセの軌道だと分かったからだ。
「す、すごい…なん、だ…この速さは…」
その言葉が聞こえる前に、ファロが続き大剣でゴブリンの残骸と共にナナセの攻撃をすり抜け出したゴブリンを一太刀の内に押し返した。風圧で騎士隊は後方入り口に吹き飛ばされ、ゴブリンはダンジョンへと吹き飛ばされた。
ナナセはその風圧に背中を預け、更に奥へと飛ぶように進んだ。
「ドーゼム殿…これがS+ですか…」
「あぁ、Sがチームやパーティを組むと自動的にS+になるが、あいつらは相性が良い。だからSS以上の力を発揮する。魔獣からしたら厄介この上ないチームだ」
「我が隊に欲しい逸材です」
「コブ付きじゃあな、騎士隊の仕事は無理だろうな」
「はぁ、残念この上ない」
「指導教官として招聘したらどうだ?」
「‼︎ それは名案です。この闘いが終われば掛け合ってみましょう!」
「ははっ!頑張れよ?あいつらを落とすのは大変だぞ?なんせ欲がないからなぁ」
「成程、しかし落としがいがある」
ニヤリと笑うタルドに、ドーゼムはやれやれと笑いながら治療を続けた。
ナナセはゴブリン達の間を縫うよう進み、ゴブリンキングと対峙していた。間合いを詰めすぎないように距離を測り、背後から飛びついてきたゴブリンをかわしながらゴブリンキングの動きを見ている。
「ふぅん、あくまでも座して待つつもりかい?」
ナナセは左足を大きく後ろに下げ、縦に身体を開いて振りかぶると、重心を身体の中心にして斜めに円を描く様に、刀を振り下ろし斬撃を繰り出した。その斬撃に、右足の腱を斬られたゴブリンキングは咆哮を上げ、ダンジョンの壁にぶつかりながら突撃する。そしてナナセはゴブリンキングの足の間から背後に回り更に腱を切る。
「ナナセ!雷撃で足留だ!」
返事をする前にナナセは飛び上がり、脊椎に斬りかかり雷撃を食らわせた。プスプスと煙を吐いてゴブリンキングは硬直している。その姿を確認すると、慌てたゴブリン達がダンジョン入り口へ逃げる様に飛び出して行った。
そして後方入り口から、騎士隊に攻撃を受けたゴブリンの断末魔がダンジョンに響き渡る。
「よし、進もう」
「あぁ、アンデッドは無視するか?」
「どうだろう?数次第かな…多ければ崩すしかないよね」
「聖水ポーションは持ってきているか?」
ナナセはマジックバックから聖水ポーションを出すと、ファロに渡して、自身も頭から聖水ポーションを被った。
「私、アンデッド系苦手なんだ。あの腐敗感がね」
「なら俺がやろう」
「おぉ、頼もしい」
ナナセはファロの腰に腕を回し、デートでもするかの様に二人は歩みを進める。ダンジョン入り口からその様子を偵察していた、隣国との闘いから先行して戻った赤の騎士隊、隊長のロイが二人の姿を呆然と見つめた。
「…欲しいな、あの男」
そして、意識を取り戻したゴブリンキングが咆哮を上げると同時にロイはロングソードを鞘から抜いて、放たれた焔でゴブリンキングを丸焦げにした。
「美しい光景を穢した罪は重いぞ」
倒れたゴブリンキングの首を一刀両断し、その真っ直ぐに伸びた金髪を後ろに流すと、燃える赤い瞳でロイは二人の背中を見つめた。
0
お気に入りに追加
125
あなたにおすすめの小説
【完結】別れ……ますよね?
325号室の住人
BL
☆全3話、完結済
僕の恋人は、テレビドラマに数多く出演する俳優を生業としている。
ある朝、テレビから流れてきたニュースに、僕は恋人との別れを決意した。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?
すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。
翔馬「俺、チャーハン。」
宏斗「俺もー。」
航平「俺、から揚げつけてー。」
優弥「俺はスープ付き。」
みんなガタイがよく、男前。
ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」
慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。
終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。
ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」
保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。
私は子供と一緒に・・・暮らしてる。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
翔馬「おいおい嘘だろ?」
宏斗「子供・・・いたんだ・・。」
航平「いくつん時の子だよ・・・・。」
優弥「マジか・・・。」
消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。
太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。
「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」
「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」
※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。
※感想やコメントは受け付けることができません。
メンタルが薄氷なもので・・・すみません。
言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。
楽しんでいただけたら嬉しく思います。
嫁側男子になんかなりたくない! 絶対に女性のお嫁さんを貰ってみせる!!
棚から現ナマ
BL
リュールが転生した世界は女性が少なく男性同士の結婚が当たりまえ。そのうえ全ての人間には魔力があり、魔力量が少ないと嫁側男子にされてしまう。10歳の誕生日に魔力検査をすると魔力量はレベル3。滅茶苦茶少ない! このままでは嫁側男子にされてしまう。家出してでも嫁側男子になんかなりたくない。それなのにリュールは公爵家の息子だから第2王子のお茶会に婚約者候補として呼ばれてしまう……どうする俺! 魔力量が少ないけど女性と結婚したいと頑張るリュールと、リュールが好きすぎて自分の婚約者にどうしてもしたい第1王子と第2王子のお話。頑張って長編予定。他にも投稿しています。
紅(くれない)の深染(こそ)めの心、色深く
やしろ
BL
「ならば、私を野に放ってください。国の情勢上無理だというのであれば、どこかの山奥に蟄居でもいい」
広大な秋津豊島を征服した瑞穂の国では、最後の戦の論功行賞の打ち合わせが行われていた。
その席で何と、「氷の美貌」と謳われる美しい顔で、しれっと国王の次男・紅緒(べにお)がそんな事を言い出した。
打ち合わせは阿鼻叫喚。そんななか、紅緒の副官を長年務めてきた出穂(いずほ)は、もう少し複雑な彼の本音を知っていた。
十三年前、敵襲で窮地に落ちった基地で死地に向かう紅緒を追いかけた出穂。
足を引き摺って敵中を行く紅緒を放っておけなくて、出穂は彼と共に敵に向かう。
「物好きだな、なんで付いてきたの?」
「なんでって言われても……解んねぇっす」
判んねぇけど、アンタを独りにしたくなかったっす。
告げた出穂に、紅緒は唐紅の瞳を見開き、それからくすくすと笑った。
交わした会話は
「私が死んでも代りはいるのに、変わったやつだなぁ」
「代りとかそんなんしらねっすけど、アンタが死ぬのは何か嫌っす。俺も死にたかねぇっすけど」
「そうか。君、名前は?」
「出穂っす」
「いづほ、か。うん、覚えた」
ただそれだけ。
なのに窮地を二人で脱した後、出穂は何故か紅緒の副官に任じられて……。
感情を表に出すのが不得意で、その天才的な頭脳とは裏腹にどこか危うい紅緒。その柔らかな人柄に惹かれ、出穂は彼に従う。
出穂の生活、人生、幸せは全て紅緒との日々の中にあった。
半年、二年後、更にそこからの歳月、緩やかに心を通わせていった二人の十三年は、いったい何処に行きつくのか──
崖っぷち令嬢は冷血皇帝のお世話係〜侍女のはずが皇帝妃になるみたいです〜
束原ミヤコ
恋愛
ティディス・クリスティスは、没落寸前の貧乏な伯爵家の令嬢である。
家のために王宮で働く侍女に仕官したは良いけれど、緊張のせいでまともに話せず、面接で落とされそうになってしまう。
「家族のため、なんでもするからどうか働かせてください」と泣きついて、手に入れた仕事は――冷血皇帝と巷で噂されている、冷酷冷血名前を呼んだだけで子供が泣くと言われているレイシールド・ガルディアス皇帝陛下のお世話係だった。
皇帝レイシールドは気難しく、人を傍に置きたがらない。
今まで何人もの侍女が、レイシールドが恐ろしくて泣きながら辞めていったのだという。
ティディスは決意する。なんとしてでも、お仕事をやりとげて、没落から家を救わなければ……!
心根の優しいお世話係の令嬢と、無口で不器用な皇帝陛下の話です。
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる