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第2章 貴石の花園
28.花の読書会
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「あっ、いた!どこへ行ってたんですか…って、何故侍女の格好を?」
アルマは自室に戻る途中、廊下でミアとばったり出くわした。
「えっと、暇だから皆のお手伝いしてたのよ」
「全く、アリー様は…。そんなになるほど側室は退屈ですか?」
ミアはアルマの姿をじっと見て言う。
アルマが発した予想外の言葉にコハクがぽかんとしているうちに、彼女のもとから逃げてきたのだ。
そのため、額には汗が滲み髪は乱れてしまっていた。
「イスアから聞きましたよ、エカチェリーナ様の所へ挨拶へ行くんでしょう?髪も化粧もちゃんとしなくちゃ。さっ、早く部屋へ」
アルマはミアに引っ張られ自室に戻る。
侍女の服はひょいと脱がされ、またあの窮屈なドレスに身を収められてしまった。
「アリー、待っていたわ」
「お時間いただきありがとうございます、エカチェリーナ様」
午後、エカチェリーナを訪ねると、彼女は数人の女に囲まれて本を読んでいた。
取り巻きの女達も十分に綺麗で美しいが、そんな彼女らが引き立て役に見えるほど、エカチェリーナの美しさは派手で優雅な香しさで目を引く花のようだ。
「読書会でしたか。出直しましょうか?」
「いいのよ。アリーもこっちへ座って」
周りの取り巻きはアルマのことを歓迎してないようだ。
表情を扇子で隠しても、蔑むような目付きでわかる。
(いくら、王に見初められた者が花園に入ると言ったって、実際は有力な大臣や貴族のお嬢様が送られてくるのがほとんどだもんね。庶民には手厳しいわけだ)
侍女や女中が側室になるなど、所詮町娘の夢物語なのだ。
いいとこ出の娘がそれを体現してしまったアルマのことを疎ましく思っても不思議ではない。
「後でお話したいことがあるのですが…」
「側室就任の挨拶のこと?そんな慣習より、読書を楽しみましょうよ。イスア、アリーにも本を」
アルマの手に収まるほどの小さな本が渡された。これは小説の本の大きさだ。
表紙には少女に手を差しのべる王子様の絵が描かれている。
(王道の恋愛小説ね、エカチェリーナ様の趣味かしら)
「アリー様?そんなに表紙を眺めていたって物語は分かりませんわよ?」
「もしかして文字がお読みになれないんじゃないかしら」
「まぁ、アリー様には絵本のほうがよかったかしら」
なかなか表紙を開かないアルマに、取り巻きの女達は次々に口を挟む。
相当下に見られてるのだろう。容赦がない。
けれど、裏の世界で生きてきたアルマが、そんな温室育ちのお嬢様の意地悪にメソメソするわけがなかった。
アルマは自室に戻る途中、廊下でミアとばったり出くわした。
「えっと、暇だから皆のお手伝いしてたのよ」
「全く、アリー様は…。そんなになるほど側室は退屈ですか?」
ミアはアルマの姿をじっと見て言う。
アルマが発した予想外の言葉にコハクがぽかんとしているうちに、彼女のもとから逃げてきたのだ。
そのため、額には汗が滲み髪は乱れてしまっていた。
「イスアから聞きましたよ、エカチェリーナ様の所へ挨拶へ行くんでしょう?髪も化粧もちゃんとしなくちゃ。さっ、早く部屋へ」
アルマはミアに引っ張られ自室に戻る。
侍女の服はひょいと脱がされ、またあの窮屈なドレスに身を収められてしまった。
「アリー、待っていたわ」
「お時間いただきありがとうございます、エカチェリーナ様」
午後、エカチェリーナを訪ねると、彼女は数人の女に囲まれて本を読んでいた。
取り巻きの女達も十分に綺麗で美しいが、そんな彼女らが引き立て役に見えるほど、エカチェリーナの美しさは派手で優雅な香しさで目を引く花のようだ。
「読書会でしたか。出直しましょうか?」
「いいのよ。アリーもこっちへ座って」
周りの取り巻きはアルマのことを歓迎してないようだ。
表情を扇子で隠しても、蔑むような目付きでわかる。
(いくら、王に見初められた者が花園に入ると言ったって、実際は有力な大臣や貴族のお嬢様が送られてくるのがほとんどだもんね。庶民には手厳しいわけだ)
侍女や女中が側室になるなど、所詮町娘の夢物語なのだ。
いいとこ出の娘がそれを体現してしまったアルマのことを疎ましく思っても不思議ではない。
「後でお話したいことがあるのですが…」
「側室就任の挨拶のこと?そんな慣習より、読書を楽しみましょうよ。イスア、アリーにも本を」
アルマの手に収まるほどの小さな本が渡された。これは小説の本の大きさだ。
表紙には少女に手を差しのべる王子様の絵が描かれている。
(王道の恋愛小説ね、エカチェリーナ様の趣味かしら)
「アリー様?そんなに表紙を眺めていたって物語は分かりませんわよ?」
「もしかして文字がお読みになれないんじゃないかしら」
「まぁ、アリー様には絵本のほうがよかったかしら」
なかなか表紙を開かないアルマに、取り巻きの女達は次々に口を挟む。
相当下に見られてるのだろう。容赦がない。
けれど、裏の世界で生きてきたアルマが、そんな温室育ちのお嬢様の意地悪にメソメソするわけがなかった。
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