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突然の報告
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気づけば空は夏模様。
もくもく立っている入道雲に、四方は蝉の大合唱。
王宮に来て半年以上が立つ。
わたくしはシンシアと共に王宮の一室を借りて生活しています。
『クリスさん』と親しんだ男性は本名をアレクサンダー・トール・ラファエル・ヴェルグランドと言います。
アレクサンダー王子殿下は即位し国王となられました。
しかし、アレクサンダー国王陛下は独身で王妃殿下がいません。
わたくしは国王陛下の側近として、魔法使いとして仕えています。
今は丁度自分の時間があるので、わたくしは本を読んでいました。
わたくしは兼ねてから読書が大好きでした。
読書をしては気に入った本をシンシアに渡していました。
シンシアは本を喜んで読んでくれました。
元漁師、アレクサンダー国王陛下は自ら手料理を振る舞うこどもあり、女性陣にモテモテ。
イケメンだし、頭脳明晰だし、欠点の無い人物です。
わたくしは度々国王陛下に呼ばれ、料理を食べさせてもらっていました。
そこにはシンシアもいました。
わたくしはシンシアと姉妹という事になっています。
本当にシンシアが実の妹だったらどれだけ良いでしょう。
義理の妹に散々泣きを見ましたので、シンシアのような妹がいる事をどれだけ微笑ましいか。
天と地の差です。
義理の妹と離れて幾日も過ぎましたが、義理の妹が何をしていようとわたくしには知りません。
ま、どーせエイブラハムとは結婚したに決まっている。
でもね、所詮略奪愛。
罰が当たって地獄に落ちていると良いわ。
うふふふふ。
わたくしってば何ということを。
そう言えば最近、シンシアを見かけない。
シンシアはどうやら、兵士を志望したらしいのです。
ゲルソン家では確かにわたくしの側近で警備役の1人でした。
シンシアは華奢な身体とはうらはらに、武術に長けているのです。
槍の扱いや剣の扱いも慣れたもの。
そう言えば、ヴェルグランド王国は女性兵士も優秀だと聞いていました。
シンシアがヴェルグランド王国で通用するのか……何だか心配でした。
しかし、シンシアは努力家。
何とか頑張ってくれるでしょう。
そんなシンシアは兵士になった事に加えて腰まであった長い髪の毛をバッサリ切ってしまったのです。
今はショートボブ。
しかし、ショートボブでも似合っているな~とわたくしは思っています。
シンシア……あなたって子は。
わたくしは魔法についての本を読んでいました。
どうやら、この国のどこかに魔法の壺があるみたいなのです。
どんな壺なのだろう?
かなり古い歴史があるみたいなのです。
と、その時。
トントン!!
ドアをノックする音がしました。
「はい」
「兵士長様がお呼びです」
兵士長様が一体わたくしに何の用だと言うのだろう?
わたくしはドアを開けました。
そこには精悍な顔つきの恰幅の良い男性と…………。
シンシアが立っていました。
二人は一体……。
「お姉様ですね?」
ドッシリとしたバリトンの声。
「は……はい、ユアン兵士長様」
「お姉さん」
「シンシア。どうしたの?」
「実は私達、婚約したんです。それをお姉さんに報告に」
「そうだったの!?」
わたくしは驚きました。
にわかには信じがたい。
シンシアとユアン兵士長が交際していたなんて聞いた事が無かったからです。
それに、ユアン兵士長様は、はちみつを溶かしたような金髪に、エメラルドグリーンの瞳、高い鼻という出で立ち。
どこをどう見てもイケメンそのもの。
だから、わたくしはてっきりユアン兵士長様は既に結婚しているのだとばかり思っていました。
「おめでとう!」
わたくしは二人を祝福しました。
「ありがとう」
シンシアがなんだか照れくさそうな顔をしています。
「ありがとうございます」
ユアン兵士長は頭を下げました。
「それにしても、仲の良い姉妹で羨ましい」
「ち……違うんです」
ユアン兵士長はわたくしたちが本当の姉妹だと思っているようです。
わたくしは否定しました。
「え!? どういうことなんだい、シンシア」
「実は私達、本当の姉妹では無いんです」
「そうなんです、ユアン兵士長」
「では、お二人はどんな関係で?」
「実はここだけの話……」
「私達、主従関係だったんです」
シンシアが重い口を開きました。
「主従関係!?」
「実はわたくしは元貴族令嬢で、シンシアはわたくしの側近でした」
「そうだったのかい? シンシア」
「は……はい」
「でもまた何で……」
「わたくし、シンシアと共に家を追われたんです」
「そうだったのか。で、もしかしてイマローム村で国王陛下と暮らしていたのもそのため?」
「そうよ」
と、シンシア。
「しかし、なぜ国王陛下はイマロームに逃げたのですか? 確か亡くなられたと……」
「はい。その事について……ですが僕が国王陛下を逃したんです。イマロームに」
「「え!?」」
「そして、国王陛下は亡くなっている事にして反乱軍から身を守ったのです。しかし、先代国王陛下と王妃殿下を助けられなかったのは大変不甲斐ないと思っています」
「そうだったんですか……」
「でも、反乱軍の降伏でこの国も安泰ですね」
「はい」
「ユアン兵士長様」
「なんでしょう。お姉様……いや、リンダ様」
「お姉様で良いですわ」
「そう……ですか」
「わたくしはもうゲルソン家の人間ではありません。シンシアとの主従関係は終わったのです」
「は……はい」
「ユアン兵士長様。シンシアを、妹を宜しくお願いしますわ」
「はい」
突然の報告にわたくしは驚きました。
結婚はシンシアに先を越されてしまいました。
わたくしは結婚できるのでしょうか?
なんだか不安になりました。
もくもく立っている入道雲に、四方は蝉の大合唱。
王宮に来て半年以上が立つ。
わたくしはシンシアと共に王宮の一室を借りて生活しています。
『クリスさん』と親しんだ男性は本名をアレクサンダー・トール・ラファエル・ヴェルグランドと言います。
アレクサンダー王子殿下は即位し国王となられました。
しかし、アレクサンダー国王陛下は独身で王妃殿下がいません。
わたくしは国王陛下の側近として、魔法使いとして仕えています。
今は丁度自分の時間があるので、わたくしは本を読んでいました。
わたくしは兼ねてから読書が大好きでした。
読書をしては気に入った本をシンシアに渡していました。
シンシアは本を喜んで読んでくれました。
元漁師、アレクサンダー国王陛下は自ら手料理を振る舞うこどもあり、女性陣にモテモテ。
イケメンだし、頭脳明晰だし、欠点の無い人物です。
わたくしは度々国王陛下に呼ばれ、料理を食べさせてもらっていました。
そこにはシンシアもいました。
わたくしはシンシアと姉妹という事になっています。
本当にシンシアが実の妹だったらどれだけ良いでしょう。
義理の妹に散々泣きを見ましたので、シンシアのような妹がいる事をどれだけ微笑ましいか。
天と地の差です。
義理の妹と離れて幾日も過ぎましたが、義理の妹が何をしていようとわたくしには知りません。
ま、どーせエイブラハムとは結婚したに決まっている。
でもね、所詮略奪愛。
罰が当たって地獄に落ちていると良いわ。
うふふふふ。
わたくしってば何ということを。
そう言えば最近、シンシアを見かけない。
シンシアはどうやら、兵士を志望したらしいのです。
ゲルソン家では確かにわたくしの側近で警備役の1人でした。
シンシアは華奢な身体とはうらはらに、武術に長けているのです。
槍の扱いや剣の扱いも慣れたもの。
そう言えば、ヴェルグランド王国は女性兵士も優秀だと聞いていました。
シンシアがヴェルグランド王国で通用するのか……何だか心配でした。
しかし、シンシアは努力家。
何とか頑張ってくれるでしょう。
そんなシンシアは兵士になった事に加えて腰まであった長い髪の毛をバッサリ切ってしまったのです。
今はショートボブ。
しかし、ショートボブでも似合っているな~とわたくしは思っています。
シンシア……あなたって子は。
わたくしは魔法についての本を読んでいました。
どうやら、この国のどこかに魔法の壺があるみたいなのです。
どんな壺なのだろう?
かなり古い歴史があるみたいなのです。
と、その時。
トントン!!
ドアをノックする音がしました。
「はい」
「兵士長様がお呼びです」
兵士長様が一体わたくしに何の用だと言うのだろう?
わたくしはドアを開けました。
そこには精悍な顔つきの恰幅の良い男性と…………。
シンシアが立っていました。
二人は一体……。
「お姉様ですね?」
ドッシリとしたバリトンの声。
「は……はい、ユアン兵士長様」
「お姉さん」
「シンシア。どうしたの?」
「実は私達、婚約したんです。それをお姉さんに報告に」
「そうだったの!?」
わたくしは驚きました。
にわかには信じがたい。
シンシアとユアン兵士長が交際していたなんて聞いた事が無かったからです。
それに、ユアン兵士長様は、はちみつを溶かしたような金髪に、エメラルドグリーンの瞳、高い鼻という出で立ち。
どこをどう見てもイケメンそのもの。
だから、わたくしはてっきりユアン兵士長様は既に結婚しているのだとばかり思っていました。
「おめでとう!」
わたくしは二人を祝福しました。
「ありがとう」
シンシアがなんだか照れくさそうな顔をしています。
「ありがとうございます」
ユアン兵士長は頭を下げました。
「それにしても、仲の良い姉妹で羨ましい」
「ち……違うんです」
ユアン兵士長はわたくしたちが本当の姉妹だと思っているようです。
わたくしは否定しました。
「え!? どういうことなんだい、シンシア」
「実は私達、本当の姉妹では無いんです」
「そうなんです、ユアン兵士長」
「では、お二人はどんな関係で?」
「実はここだけの話……」
「私達、主従関係だったんです」
シンシアが重い口を開きました。
「主従関係!?」
「実はわたくしは元貴族令嬢で、シンシアはわたくしの側近でした」
「そうだったのかい? シンシア」
「は……はい」
「でもまた何で……」
「わたくし、シンシアと共に家を追われたんです」
「そうだったのか。で、もしかしてイマローム村で国王陛下と暮らしていたのもそのため?」
「そうよ」
と、シンシア。
「しかし、なぜ国王陛下はイマロームに逃げたのですか? 確か亡くなられたと……」
「はい。その事について……ですが僕が国王陛下を逃したんです。イマロームに」
「「え!?」」
「そして、国王陛下は亡くなっている事にして反乱軍から身を守ったのです。しかし、先代国王陛下と王妃殿下を助けられなかったのは大変不甲斐ないと思っています」
「そうだったんですか……」
「でも、反乱軍の降伏でこの国も安泰ですね」
「はい」
「ユアン兵士長様」
「なんでしょう。お姉様……いや、リンダ様」
「お姉様で良いですわ」
「そう……ですか」
「わたくしはもうゲルソン家の人間ではありません。シンシアとの主従関係は終わったのです」
「は……はい」
「ユアン兵士長様。シンシアを、妹を宜しくお願いしますわ」
「はい」
突然の報告にわたくしは驚きました。
結婚はシンシアに先を越されてしまいました。
わたくしは結婚できるのでしょうか?
なんだか不安になりました。
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